【amazon評価】★★★★★★★
発達障害の子どもの中には「相手の気持ちが分かりにくい特性」をもった子どもがいます。
この場合、コミュニケーションをとる場面で相手を傷つけてしまったり、自分が傷ついてしまったりすることがあります。
この本は「子どもと一緒に見ることのできる本」なので、子どもとコミュニケーションについてお勉強をしたいときにオススメの本です。
「おつきあい」、つまり「人とのコミュニケーション」に焦点をあて、イラストと簡単な文章で子どもにも分かりやすく書かれています。
小学校低学年、または特別支援学級の子どもにも適しており、幼児(3~5歳児)でも楽しく見ることができます。
内容は約20項目に分かれていて、例えば「あいさつ」や「あやまる」など、基本的な生活習慣とも言えるところから、「けんかとなかなおり」や「きまりをまもる」、「わからないことをきく」など、実際に集団生活で過ごす上で発達障害の子どもがつまずきやすい状況まで具体的に書かれています。
特に良い点は、イラストが非常に分かりやすいところです。
相手の気持ちが分かりにくいという特性をもった子どもには、イラストに描かれている「表情」がとても分かりやすいようです。
文字が読めなくてもイラストを見ながら、「こう言ったら、お友達はこの(悲しい)お顔になるよ」と説明をすると、私の言葉とイラストの「表情」が合致して、より理解が深まっていきました。
私が実際に幼稚園教諭として子どもたちと関わっていた時にも、子どもと一緒にこの本に書かれているイラストと文章を見ながらよくお話をしたものです。
「次はこうしようね」とか「どうしたらいいと思う?」とか…子どもの気付きにつながる支援の一つとして用いていました。
この本を使う上で一つ困ったことは、ADHDによく見られる「不注意」の特性をもった子どもへの支援です。
この本の中にはたくさんのイラストが描かれているので、本を見ながら話をするとどうしても、他のイラストに目が移り、注意が散漫してしまうのです。
その場合は「今はここを身に着けたい!」という場面を決めておいて、その部分だけをポケットに入るくらいの小さなカードに書いておきます(私は仕事柄、身体を動かすことが多かったので、ラミネートをかけていました)。
そして、その場面になった時には必ずそのイラストカードを出すようにしていました。
初めは、私が言葉で説明をしたり、子どもが分かっているか確認の作業が必要だったりしました。
しかし、何回も繰り返していくうちに、いつものイラストカードを見るだけで子ども自らが「あっ!」と気付くようになり、次第に行動に変化が表れるようになりました。
この本をもとにして、ご家庭で作ったイラストカードを園や学校の先生にも渡しておくことも一つの良い手立てだと思います。
さらにこの本の良い点は、「大人が気付きにくい子どものつまずきポイント」がしっかりとおさえられているところです。
例えば、「やくそくをまもる」と言うページでは、約束の仕方から書かれています。
一緒にカレンダーを見て確認をしたり、メモに書いて残しておいたり、お母さんやお父さんに伝えて一緒に覚えてもらったり……など、とても具体的です。
しかも、子どもたちが成長をしていっても役に立つことが書かれているのです。
この本を困ったときのバイブルにしておくと、「子どもの時には通用していたのに、大人になったら生きづらくなった」ということも少なくなるでしょう。
実はこの本は、シリーズ全4巻のうちの1冊です。
他にも「身の回りのこと」や「食事のこと」「外出時のこと」があります。
他の本も素晴らしい本です。
ただし、手に入りにくいことが難点です。
私はいろいろな書店を見て回りましたが、この本を見つけることはできませんでした。
大型書店やインターネットを利用することが必要かもしれません。
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