【ADHDの子どもの暴力・暴言】困った行動への対処法【具体例有】

発達障害

「すぐにカッとなる」「気に入らないことがあると暴れる」「友だちに手を出す」「親や先生に暴言を吐く」「モノを投げる」……そんな子どもの行動に悩んでいませんか?

なかなか言うことを聞かないわが子を、ついつい厳しく叱ってしまって、あとから自己嫌悪……「こんな毎日がいつまで続くんだろう」と疲れてしまいますよね。

実は、ADHDの子どもが暴れてしまう背景には、必ず本人なりの理由があります。

そして子どもは、その理由をじょうずに整理して周りに伝えることができず、困っています。

ですから、「なんで言うことを聞かないの!」「やめなさい!」と頭ごなしに叱っても、あまり効果がないのです。

本人の「困り感」が解決されないまま、叱られることによって子どもはどんどん「どうせ自分は悪い子なんだ」と自信をなくし、ますます悪循環に陥ってしまいます。

まずは彼らが、いったいどんなことで困っているのかを知ることが大切です。

そのうえで、対応・サポートしていけば、子どもはだんだん落ち着いて行動できるようになり、自分をコントロールする力を身につけていくことができるのです。

ここでは、よくあるシーンごとにADHDの子どもの暴力・暴言など困った行動の背景を分析し、親はどうやってサポートすればいいのか、具体的な対処法の3ステップをご紹介します。

1.まずはADHDの子どもの特性を知っておこう!

ADHD最近では『発達障害』がTV番組や雑誌・新聞などで特集されることも増え、ADHD、アスペルガー症候群、自閉症スペクトラムなどの言葉も知られるようになりました。

しかし、中には「ADHD=暴れる子・落ち着きがない子」「アスペルガー=コミュニケーション障害」などという不正確な情報も多く、「発達障害だから、こんなこともできないんだ……」と悲観的に考えてしまう親御さんもいらっしゃるかもしれませんね。

ADHDなど発達障害児の特性は十人十色で、そのあらわれ方や苦手なことも、人それぞれ違うのです。

できないことばかりでなく、できることや得意なこともたくさんあります。

彼らの行動の背景を探るためには、ADHDとはどんな障害なのか、どういう特性をもっているのか、正確な知識を知っておきましょう。

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1-1.ADHDの子どもは、脳の情報伝達の機能がちがう

ADHD_子どもADHD(注意欠如多動性障害)の原因はじゅうぶんに特定されていませんが、最新の研究では、生まれつき脳の情報を伝える機能に違いがあることが解明されてきました。

そのため、主に「感情のコントロール」や「行動の計画や実行」「思考力や集中力」などに、特性があらわれるのです。

不注意(集中力が続かない)、多動(じっとしていられない)、衝動(ガマンできない)などの特性があり、ひとりひとりタイプが違います

その特性が把握しづらいため、同じ失敗を繰り返してしまい、なかなか本来の実力が発揮できないでいるところは、共通しています。

生まれつきの脳の特性なので、完全に治療することはできません。

大人のADHDの人もたくさんいます。

しかし、ADHDだからといって、悲観することはありません!

本人が自分の得意・不得意を知り、うまく自分を操縦(コントロール)できるようになれば、特性をプラスに活かしていくことも可能なのです。

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1-2.自分の特性をつかいこなせば、強みに変えることが可能!

強みに変えるたとえば、「落ち着きがない」「思いつきで行動してしまう」「協調性がない」「気持ちが変わりやすい」など『困った行動』と思われやすい特性も、視点を変えれば、下記のようにポジティブな個性として強みにしていくことができるはず。

  • 落ち着きがない → エネルギッシュ
  • 思いつきで行動してしまう → 発想が豊か・アクティブ
  • 協調性がない → 独創性がある
  • 気持ちが変わりやすい → 切り替えが早い

実際に、ADHDの特性をもちながら、才能を活かして仕事をしている人も少なくありません。

ヴァージングループ会長で冒険家としても知られるリチャード・ブランソン、史上最高の水泳選手として知られるマイケル・フェルプス、ポップ・アイコンとして人気の歌手ブリトニー・スピアーズなどがADHDを公表しているほか、日本でも評論家の勝間和代さんや、紅白にも出場した人気バンドSEKAI NO OWARIの深瀬慧さんなどが特性をカミングアウトしています。

『天才と発達障害』(岡南)『発達障害は最強の武器である』(成毛眞)『「ズバ抜けた問題児」の伸ばし方 ― ADHDタイプ脳のすごさを引き出す勉強法』(松永暢史)などの本も出ているので、興味のある人は読んでみてください。

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1-3.自分の操縦法がわからず、困っている場合が多い

ADHDADHDの子どもたちは、人の迷惑になることをわざとやっているわけではありません。

まだ自分の操縦法がうまくわかっていないため、混乱し、困っているのです。

「そんなつもりじゃなかったのに」「本当は仲良くしたいのに」「親に迷惑をかけてしまった」と後悔することもあり、「いつも自分だけ怒られる」「きっと自分は親を困らせる悪い子なんだ」など、人知れず悩んでいることが多いのです。

また、ADHDの子どもがアスペルガー症候群などASD(自閉症スペクトラム)の特徴をあわせもっていることも珍しくありません。

認知や感覚が友だちと違うため、「他の子と同じようにやっているつもりなのに、うまくいかない」「授業や先生の指示が理解しづらい」「興奮したり緊張すると、パニックを起こしてしまう」「友だちの中で浮いてしまう」など、さらなる生きづらさを抱えてしまいがちです。

子どもが自らの特性や他の子との違いに気づき、自分の苦手をセルフサポートしながら力を発揮していける術を身につけていくには、時間がかかります。

しかし、親御さんが彼らの困り感の原因を知り、援助していくことで、その生きづらさは必ず軽減されるのです。

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2.シーン別:ADHDの子の困った行動。その背景を解説

ADHDADHDの子どもが暴力をふるったり、暴言を吐いてしまう背景には、どんな理由があるのでしょうか? 

彼らはどんなことに困っているのでしょう。

ここでは、よくあるケースを3つ紹介し、その理由を解説します。

2-1. ≪ケース1≫自分の思う通りにいかないと暴れてしまうK君

≪K君の場合≫

掃除10歳のK君は、元気いっぱいで何ごとにも積極的。

「お掃除してね」と頼むと張り切ってお手伝いをしてくれるのですが、掃除機のかけ方が乱暴だったり、雑巾がちゃんと絞れていなかったり、片づける場所を間違っていたり、かえって足を引っ張ってしまいます。

「ちゃんとやってよ」と注意すると、怒って物を投げたり、壁を蹴ったりして暴れる始末です。                  

K君にはASDやLD(学習障害)があるため、もしかしたら、どうしたらじょうずに掃除ができるのか、やり方がわかっていないのかもしれません。

親御さんの真似をしながら自分なりに一生懸命やっているつもりなのに、いつも叱られるというジレンマに悩んでいます。

「ちゃんとやってよ」と注意されても、あいまいな表現を想像するのが苦手な特性をもつK君には、「ちゃんと」がどういう状態なのかイメージするのが難しいのです。

どうしたらいいのかわからなくなり、物を投げるなどやつあたりしてしまい、あとで後悔するという繰り返しになっているのでしょう。

「ちっともお手伝いになっていない」「何度も教えているのに!」と思ってしまうかもしれませんが、ここは少しガマン。

何事にも積極的に取り組むのはK君のよいところなので、まずは「お手伝いしてくれて、ありがとう」と伝え、意欲を認めてあげることが大切です。

そして、「何度も教えているのに」と思う気持ちをグッと抑えて、もう一度、どうすればいいのか丁寧にやり方や手順を教えてみましょう。

「わかっているかどうかを確認しながら、一緒にやってみる」「手順を箇条書きにする」「わかりやすく絵に描いて貼る」など、できるだけ具体的に伝えることがポイントです。

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2-2.≪ケース2≫ガマンができず妹に手をあげてしまうHさん

≪Hさんの場合≫

姉妹5歳のHさんには、ふたつ下の妹がいます。

ふだんは優しいHさんなのですが、妹と仲良く遊ぶことができず、蹴ったり叩いたり、すぐに手をあげて妹を泣かせてしまいます。

お母さんが「お姉ちゃんなんだからガマンしなさい」「暴力はダメ」と叱ると、「嫌い!」「バカ!」などと言って反抗します。 

ADHDの子どもを育てる親御さんのお悩みベスト10の上位に必ずエントリーしてくるのが、きょうだいとの関係

すぐにきょうだいに暴力をふるったり、泣かせてしまったりして、片時も目が離せず、困っている親御さんも多いはず。

しかし、安心してください。

しっかり対処すれば、そんな状況がずっと続くわけではありません。

Hさんが妹に手をあげてしまうのは、自分の行動をコントロールすることが難しいから。

妹が大事なオモチャを横取りする、遊びの邪魔をするなど、Hさんを怒らせるような行動をしている可能性が大。

感情を抑えられないHさんは、ついついカッとなって手をあげてしまうのでしょう。

「私だけが悪いんじゃない」と主張したくても、5歳のHさんはまだ自分の気持ちを整理してうまく言葉にすることができず、ついつい暴言を吐いてしまうのです。

頭ごなしに叱るのではなく、まずは落ち着いて「どうしたの?」と何があったのかを聞きだしましょう。

そして、ゆっくり本人の主張に耳を傾け、「妹があなたの大事なオモチャをとったから、腹がたって叩いちゃったのね」と共感し、気持ちを整理してあげる時間が必要です。

そのうちだんだんと、自分で気持ちを整理し、言葉で説明できるようになってくるはずです。

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2-3.≪ケース3≫感覚過敏があり、友だちとのトラブルが絶えないT君

≪T君の場合≫

合唱1年生になったばかりのT君は、家では特に問題がないのに、学校ではトラブルが絶えません。

体育館でコーラスコンクールの練習中に、隣にいたS君にいきなり殴りかかりケガをさせてしまいました。

学校からは「口論になり、T君がS君を殴った」と連絡がありましたが、親御さんがT君に事情を聞いたところ「S君が先に自分にぶつかってきたのに、謝らなかったから殴った。S君が悪い」と言い張ります。

実はT君には感覚過敏があり、S君がT君に軽くぶつかったことが、ケンカの原因でした。

S君は大したことだと思っていなかったのですが、T君にとっては耐えられない刺激だったのでしょう。

ADHDの子が友だちに暴力をふるってしまう理由のひとつとして、感覚過敏が隠れていることは少なくありません。

自閉症スペクトラムの人によくみられる特性で、「触られるのが苦手」「大きな声や音が苦手」「まぶしい光や蛍光灯が苦手」など、人によって感じかたはさまざまです。

子ども自ら「自分には感覚過敏がある」と気づくことは稀なので、周りが気づいてあげられないと、本人に強いストレスがかかってしまってしまいます。

特に休み時間や体育館での活動など、さまざまな音が混沌と響くところや、人がたくさん集まる場所など、刺激の多い環境でストレスが爆発しやすく、ちょっとしたことがトラブルのキッカケになります。

感覚過敏のあるT君にとって、体育館でコーラスコンクールの練習をするということは大きなストレスで、既にストレスフルな状態だったのかもしれません。

「家では問題ないのに、学校ではトラブルが多い」という場合は、学校内の刺激の多さが引き金になっている可能性が高いので、すぐに担任の先生、もしくは発達障害に詳しい特別支援教育コーディネーターや養護教諭などに相談しましょう。

そのうえで、できるだけ刺激を減らす工夫をしたり、カームダウンスペース(気持ちを鎮めることができる空間)を用意するなど、本人が落ち着ける環境をつくってもらう必要があります。

ストレスフルな状況が続くと、不登校になってしまうリスクも考えられるので、家ではゆっくりリラックスできる時間をつくることも大切です。

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3.悪循環に巻きこまれないで。3ステップで、冷静に対応!

深呼吸ADHDの子どもが怒っている時や暴れている時は、頭に血がのぼり、行動のコントロールができなくなっている状態ですので、親御さんはその状況に巻き込まれないよう、できるだけ冷静に対処するのがポイントです。

「何をやっているの!」と怒りたい気持ちを押さえて、まずは深呼吸!
 
子どもが自分の行動をコントロールできるように、サポートしていきましょう。

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3-1. ≪STEP1≫安全な場所やカームダウンスペースに避難させる

STEP1ADHDの子どもが興奮している状況の時、頭ごなしに叱ったり、一方的に強い語調で「なんで?」と問い詰めたりしても、悪循環に陥るだけ。

特に子ども同士の場合、売り言葉に買い言葉でトラブルが大きくなってしまったり、大ゲンカに発展する危険があるので、まずは、本人が気持ちを鎮めることができる安全な場所に避難させるとよいでしょう。

お互いに言い分があるはずですが、特性が理解されていないとADHDの子どもが不利な立場にたってしまいがちなので、その場で無理に解決しようとしないほうが、うまくいくことが多いのです。

また、学校や幼稚園の先生に「とにかく、子どもが興奮している時は安全な場所に移動させてください」とお願いしておくとよいですよ。

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3-2.≪STEP2≫ 落ち着いている時に、対策を一緒に考える

STEP2本人の気持ちが鎮まり、落ち着いている時に「なぜ、その行動に出たのか」「原因は何だったのか」一緒に行動を振り返り、K君の場合「一生懸命に掃除をしていたのに、注意されて悔しかったんだね」、Hさんの場合「大事なおもちゃを妹にとられて腹が立ったんだね」、T君の場合「敏感だから、ぶつかられてつらかったね」などと本人の気持ちを認めたうえで、「どうすればよかったのか」「次に同じことがあったら、どうすればいいのか」、今後の対策を考えましょう。

そのうえで、「傷つけた相手に謝る」「片づける」など、自分がやってしまったことの責任をとらせることも必要です。

年齢が低い場合は、「謝りに行こうか」「一緒に片づけようね」など、協力して後始末をしましょう。

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3-3.≪STEP3≫ 悪い行動を叱るのではなく、よい行動に注目する

STEP3大切なことは、悪い行動を厳しく叱ることよりも、よい行動を認めていくこと。

落ち着いて行動できた時や、気持ちを切り替えられた時に、「今、怒りそうになったのに、ガマンできたね」「ちゃんと相手に自分の気持ちを伝え、話し合えたね」「謝ることができて、よかったね」などと認め、ポジティブなフィードバックを行いましょう。

「ガマンしたことで、友だちと仲良く遊べた」「話し合ったことで、気持ちが収まった」など、対策を講じたことで「前よりもうまくいった」と実感できる経験を積むことが、必ず成長につながります。

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4.親御さんも気持ちを整理し、ストレスをためないこと

ストレスをためない子どもの行動は一朝一夕で劇的に変化するわけではありません。

1歩進んではまた戻る……の繰り返し。

モノが壊されたり、暴言を吐かれたり、兄弟や友だちとのケンカが絶えなかったり……。

見守る親御さんの側もストレスがたまり、「どうしてわからないの!」「何度も注意してるのに!」と声を荒げたくなることもあるでしょう。

そんな時は誰かに思いっきり愚痴を言って、「やってらんないよ!」という気持ちを吐きだす時間をつくり、親御さんもストレスをためすぎないよう意識するとよいですよ。

ADHDの子どもの成長を愉しみながら、ゆっくりと気長に見守る余裕をもつためには、親御さんにもがんばっている自分を認め、受けとめてくれる存在が必要なのです。

専門家(カウンセラー、心理職、医師など)、親の会等の支援グループなど、ADHDに詳しい相談できる場所を確保しておきましょう。

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まとめ

まとめいかがでしたか? 

ADHDの子どもの暴言・暴力には、理由があることをわかっていただけたでしょうか? 

確かに時間はかかるかもしれませんが、親御さんが諦めずにポイントをおさえながらお子さんと接することで、成長と共にだんだんとお子さん自身が自分の行動を振り返りながら、よりよい行動を選択していけるように変わっていけるはずです。

暴言・暴力の渦中にいる間は、「こんな子育てが、いつまで続くの?」とネガティブな気持ちになりがちですが、必ずいつかトンネルを抜ける日が来ます! 

子どもの力を信じて、応援していけるといいですね。

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