発達障害者が部下にいる人へ|上手な接し方や指導法を解説

会社員たち

発達障害者の社会進出は年々増えています。

中には、発達障害者を部下に持つ人もいることでしょう。

でも、発達障害に対しての理解はまだ社会に十分浸透しているとは言えず、とつぜん発達障害の社員が自分の元に配属されてきたら、戸惑ってしまう人がほとんどではないでしょうか。

「発達障害者って、健常者どこが違うの?」
「どうやって接すればいいんだろう?」
「どんな仕事を任せればいいの?」
「発達障害のことを何にも知らないけど、上司としてうまく彼らを指導していかれるだろうか?」

と、わからないことばかりで、このような不安を抱えている人も多いと思います。

世間では発達障害について正しい知識を持っている人はまだまだ少なく、障害者雇用促進法の改正により障害者雇用枠は増えているにもかかわらず、発達障害者自身も、受け入れる会社側も、お互いに手探り状態でやっているのが現状です。

実は、発達障害者とのあいだで生じる問題は、「発達障害がどういうものかよく分かっていない」といった周囲の無知から生じているケースも多いため、発達障害のことを学び、適切な接し方を知れば、無用なトラブルを避けることができます。

この記事では、主に職場で発達障害の部下との接し方に悩んでいる人に向けて、「発達障害の特徴、できることとできないこと、効果的な指導の仕方、彼らへの上手なサポート方法」を具体的に解説していきます。

明日からでもすぐに実践できるヒントがたくさんありますので、これから発達障害者の部下を持つ人、すでにその渦中にいて悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。

発達障害者の特性を理解する

発達障害者の特性を理解する発達障害者はそれぞれの特性により、健常者よりもはるかに生きにくさや困難さを感じながら生活しています。

ひと口に発達障害と言ってもタイプはさまざまですが、一般的によく見られる特性は以下のようなものです。

  • 忘れっぽい
  • 手先が不器用
  • 人の気持ちが読めない
  • マナーやルールを理解しづらい
  • こだわりが強く物事に柔軟に対応できない

これらは、社会の一員として自立して働いていくにはマイナスになることばかりですね。

発達障害特有のこうした性質は先天性のものであり、いくら本人が自覚していても努力だけで改善していくのはなかなか難しいものです。

忘れ物をしやすい、衝動性を抑えられない、うっかりミスが多い、人に無神経なことを言って怒らせてしまうなど、そんな自分の特性に彼ら自身もたいへん苦しんでいるのです。

たとえミスをしてしまっても、それはわざとではなく特性の影響であることがほとんどであるため、まずは彼らのそうした境遇をよく理解することが重要です。

そして、マイナス面ばかりに目を向けず、彼らの持つ能力を見つけ出してそれぞれの適正に合った仕事を任せることが、お互いがストレスなく仕事を進めて行くカギとなるでしょう。

受け入れる側の心構え

では次に、発達障害者を職場に迎えるに当たって、事前に知っておくと良い心構えを紹介します。

働きやすい環境作りをする

働きやすい環境作り周りの働きかけやサポートの仕方によって、彼らをとりまく職場環境は大きく左右されます。

まずは発達障害者がリラックスして仕事に向かい、自分に合った仕事で実力を発揮できるような環境作りが大切です。

そのためには、上司だけではなく彼らに関わる同僚にも、発達障害に関するある程度の知識を持ってもらうとよいでしょう。

なぜなら、理解者が多ければ多いほど発達障害者たちをとりまく環境を改善しやすく、彼らのストレスを大幅に減らすことが可能になるからです。

できることを伸ばしていく

できることを伸ばしていく発達障害の特性により、健常者が無意識にやっていることが彼らにとっては非常に困難であるケースがあります。

そこで重要なのは、「できないことよりも、できることを伸ばしていく」という考え方

できることや得意なことに関しては、非常に高い集中力を発揮してレベルの高い仕事をこなす発達障害者が大勢います。

苦手なことをできるように指導するよりも、できることをさらに伸ばしていく方が、本人にとっても周囲にとってもストレスのない方法です。

過保護になり過ぎない

過保護になり過ぎない本人の特性に寄り添うことは大切ですが、会社はあくまで仕事をする場所ですから、すべてを「特性だから仕方ない」と受け入れるわけにもいきません。

例えば、周囲に迷惑となるような問題行動に対しては、本人とよく話し合い、一緒に改善策を見つけていくことが大切です。

時には、解決に向けて家族や医師の助言を得ることも必要でしょう。

また、特別なサポートが必要だからと、あまり過保護になり過ぎてもよくありません。

なんでも先回りしてやってあげたり甘やかしたりというのは、彼らの自立を妨げることにもなりかねません。

あくまで「自立をうながすサポート」が前提となります。

上司として、以下の点を意識して指導を行っていくのがポイントです。

  • 彼らなりのペースを把握し、それに合わせて成長を見守る。
  • 過保護にならないように気を付ける。
  • 彼らが本当に困ったときには、適切な形で手を差し伸べる。

では、具体的にどんな接し方をしていけばいいのか、順番に見ていきたいと思います。

指示、指導をするときに気を付けること

仕事中に指示を出したり指導をしたりするときは、トラブルを避けるためになるべく「簡潔さ」と「わかりやすさ」を心がけましょう。

あいまいな表現を避ける

あいまいな表現を避ける発達障害者は、いわゆる「あうんの呼吸」といったものや、あいまいな表現、抽象的な言葉を理解するのが苦手です。

そのため、指示や指導をするときは、「何を」、「何日(何時)までに」、「どういった手順で」など、具体的に指示するようにしましょう。

仕事を覚えるまでは根気強く説明する

仕事を覚えるまでは根気強く説明する複雑な指示は、一度聞いただけではなかなか覚えられません。

本人がしっかり身に付けるまでは、その都度最初の行程から丁寧に説明する心構えが必要です。

また、一度に多くのことを指示するのではなく、Aの仕事が終わったらBを指示し、Bが終わったらCの指示をするといった具合に、ひとつずつ指示を出していくのがポイントです。

仕事の変更は早めに伝える

仕事の変更は早めに伝える発達障害者は、急な変更に対応するのがとても苦手です。

もし指示していた仕事に変更が生じたら、なるべく早めに本人に伝えましょう。

会社では急な予定の変更は日常茶飯事のため、いつでも万全に備えておくことは不可能ですが、少しでも本人の混乱を避けるため、早め早めの指示出しで、本人が余裕を持って変更に対応できるよう配慮するとよいですよ。

メモや図、写真などを利用する

メモや図、写真などを利用するいくら「簡潔に分かりやすく」といっても、仕事が絡むことなのでどうしても指示内容が複雑になることもありますね。

そんなときは、口頭で伝えるだけではなく、手順をメモに書いて渡したり図や写真を利用したりして、指示を視覚化するのがおすすめです。

発達障害者の「感覚異常」に気を配る

感覚異常発達障害者の中には、感覚が敏感過ぎる「感覚異常」の人がいます。

健常者には何でもないことが、発達障害者には耐えがたい苦痛になることもあるため、職場での理解とケアが必要です。

感覚過敏とは、音や光、匂いなどの刺激を、健常者よりも過剰に受けてしまうこと。

それらの刺激により、周りには極端とも思えるほどの拒否反応を示すことがあります。
 
聴覚過敏・視覚過敏・嗅覚過敏など、人によって現れ方はさまざまです。

感覚過敏の人に対して、配慮したいことを以下にまとめます。

聴覚過敏

耳せん発達障害者に限らず、特定の音が苦手な人は多いと思いますが、発達障害者の場合は聴覚過敏によって、逃げ出したいほどの不快感や頭痛などの身体的不調を引き起こすことがあります。

苦手な音は人によって異なりますが、大きな音や不快な音以外にも、人の話し声や特定の音楽を嫌うこともあります。

職場では、適度に休憩の時間を設けるとか、場合によっては耳栓を利用してもらうなどの対策を講じるとよいでしょう。

視覚過敏

視覚過敏視覚過敏の人は、光やさまざまな色彩を見ると目を突き刺すほどの刺激を感じて気分が悪くなることがあります。

本人にとっては目を開けていられないほどつらいもので、とくに光の反射や蛍光灯の明かり、フラッシュの光、白い色、色のコントラストの強さなどが苦手なケースが多いです。

なるべく視覚を刺激する光や色の少ない場所にデスクを配置し、落ち着ける環境を用意してあげることが大切です。

嗅覚過敏

嗅覚過敏特定の匂いに過敏に反応し、ひどい場合には頭痛や吐き気をもよおすこともあります。

嫌いな匂いは本人にとって大きなストレスとなるため、まずは匂いの元を突き止め排除することが望ましいです。

もし排除することが難しい場合は、消臭剤を利用する、まめに換気をする、マスクを着用してもらう、匂いの発生元から席を離すなどの工夫をしましょう。

触覚過敏

触覚過敏体に触れる感覚を極端に不快に感じる人がいます。

子どもの頃から、たとえ自分の母親であっても抱きしめられたり手をつないだり頭を撫でられたりといったスキンシップをいやがり、社会に出てからも誰もが何気なく行っている握手や肩をポンと叩くなどの気楽な行為にさえ強い拒否反応を示すため、周囲を戸惑わせてしまうことも多いです。

職場では、触覚過敏のある部下に対し、不用意に体に触れないように配慮しましょう

感覚の鈍さについて

声掛け感覚に過敏に反応する一方で、自分の状態にひどく鈍感になるケースもあります。

例えば、

  • 体が疲れている自覚がない
  • 痛みや体の不調に気付かない

など、身体感覚に鈍くなるせいで疲れやストレスが蓄積し、ある日とつぜん寝込んでしまったり、うつ病を発症してしまったりすることも。

そのようなことを避けるため、職場では「そろそろ休憩しては?」と声掛けをしたり、不満や悩みを聞いてあげたりなど、日ごろから本人の様子を気に留めていたわってあげることが大事です。

仕事に集中しやすい環境を整える

仕事に集中しやすい環境を作る発達障害者は、視覚過敏や聴覚過敏により、目の前の仕事に集中できないことがあります。

刺激が多い場所では気が散って仕事どころではなくなってしまうため、仕事場の環境作りはとても重要です。

状況に応じて以下のような工夫をし、本人が集中して仕事に向かえる環境を整えましょう。

  • デスクをパーテーションで区切る。
  • 仕事に関係ないものはデスクの上に置かない。
  • スケジュール表や図解した作業表などを目の前の壁に貼る。

また、発達障害者は変化に対応するのが苦手なため、社内の書類や文具の収納場所をむやみに変えるのは避けたほうが無難です。

共用のものを使ったら必ず元の場所に戻すよう、部署内に協力を仰ぐとよいでしょう。

発達障害者は、物があるべき場所にないというだけで平静を保てなくなってしまうことがあります。

この特性を理解し、本人が安心して仕事に取り組めるような環境作りを目指しましょう。

もし問題行動があったらどう対処する?

パニック発達障害者は、自分の思い通りに仕事が進まなかったり、予期しないことが起きたりすると、パニックにおちいって急に大声で叫んだり、泣き出したり、物を投げたりといった問題行動を起こすことがあります。

もしこのようなことが起きたら、周囲の人は以下の対応を心がけましょう。

  • まずは冷静になり、相手の行動に過剰に反応しないようにする
  • なぜ問題行動を起こしたのか、その原因を探る
  • 本人が落ち着くまであえて放っておく
  • 声を荒げて叱らない
  • 理屈で理解させようとしない

本人がパニックを起こしている最中に、周囲の人間が一緒になって騒いでしまっては、ますます問題行動がエスカレートしてしまう可能性があります。

まずは冷静になり、相手の安全を確認したうえで、パニック状態が落ち着くまで別室で休んでもらうのもひとつの手段。

「何をしているんだ!」などと大声で叱ってしまうと、本人はますます自信をなくして殻に閉じこもってしまうので、絶対にやめましょう。

また、問題行動を早く収めようと、このような行動を容認してしまうのも良くありません。

発達障害者が問題行動を起こしたら、まずはその引き金となった原因や本人の気持ちを推し量ることが大事です。

その後、本人とよく話し合い、「困ったことがあったら、ひとりで解決しようとせずに周りに助けを求める」など、解決策を一緒に考えるとよいでしょう。

また、パニックを防ぐには、できるだけ想定外のことを避けるのが効果的。

そのためには、前述のように仕事内容や予定が変更になった時は、速やかに本人に伝えることが重要です。

注意をするときのポイント

注意をするときのポイント仕事のミスが続くときや、勤務態度に問題がある場合には、上司として本人に注意をしなくてはなりません。

しかし、注意の仕方によっては相手を深く傷付けてしまい、上司や職場への不信感を高めてしまう可能性もあります。

それを避けるため、注意をするときのポイントを紹介します。

感情的にならない

感情的にならない頭に来たからといって感情のままに叱ってしまうと、発達障害者は自分の人格を否定されたように感じ、パニックを起こしたり自信を失ってしまったりして、仕事へのモチベーションが落ちてしまうこともあります。

注意をするときは感情的にならず、相手のミスや態度を冷静に指摘することを心がけましょう。

厳し過ぎる叱責は逆効果

部下を育てる仕事には厳しさも必要ですが、毎日のように注意する、ミスのたびに叱るなど、あまりに厳し過ぎる指導はNGです。

発達障害者にはより手厚い指導が必要なのは間違いありませんが、あくまで相手はひとりの大人です。

相手の自尊心に配慮した注意の仕方をしましょう。

一方で、何をやっても許してしまうような優し過ぎる対応も良くありません。

注意をする時は、厳しくなり過ぎず、甘くなり過ぎず、広い心を持って「部下を育てる」という感覚で行うのがポイントです。

具体的な改善方法を示す

具体的な改善方法を示すただ自分の行動を注意されただけでは、どうすればいいのか分からない人もいます。

注意をしたら同時に、ではどうすれば良いのか?の改善方法を示すことが肝心です。

何をすればいいのかがハッキリすれば本人の迷いも消え、ミスを減らしていくことができるでしょう。

やることを明確化し、相手の迷いをできるだけ減らしてあげるのが大事です。

褒めることも大切

褒めることも大切注意をしたことが改善されたら、その場ですぐに褒めるのがポイントです。

褒められることで本人にとっては正しいやり方の再確認ができる上に、意欲の向上にもつながります。

誰でも褒められればうれしいものですが、とくに発達障害者は自分に自信が持てずに絶えず不安を感じていることが多いため、褒められたり自分を認められたりすることは精神的に大きな支えになります。

暗黙のルールの教え方

簡潔に・わかりやすく・具体的に暗黙のルールやマナーというものは、人との関わりの中で自然に習得していくものです。

しかし、発達障害者は他人の気持ちを想像することが苦手なため、こうした暗黙の了解といったデリケートなルールやマナーが身に付いていない場合があります。

ですが、社会の一員として最低限、身に付けておきたいルールマナーもありますよね。

これを本人に教えていくのも、上司の役目だと心得ておく必要があります。

本人に伝える際は、「簡潔に・わかりやすく・具体的」に、という点に気を付けます。

例えば、相手との距離感がつかめないために、部長や課長などの目上の人に対して馴れ馴れしい態度を取ってしまうことがありますが、そのような行動は慎むべきだと知ってもらう必要があります。

また、ADHDの人は特性のひとつである衝動性から、会議中などに思いついたことを次々発言し、会議の進行を妨げてしまうケースもあります。

こうした場合にも、仕事に支障が出ないように対策を講じる必要があるでしょう。

例えば、「会議中は、意見を求められた時以外は発言しない」、「疑問点があったらメモをしておき、後でまとめて質問する」など、事前に決まりを作っておくことが重要です。

ひとつひとつ丁寧に説明し、社会の暗黙のルールを学んでもらうようにしましょう。

発達障害者に対する効果的な対応例

ここでは、実際に職場で起こりがちなトラブルをピックアップし、効果的な対応の仕方を説明していきます。

仕事のミスが多い

仕事のミスが多い発達障害の中でもADHDの人は、集中力が続かずつい気が散ってミスをおかしてしまいがちです。

また、仕事中でも意識がほかのことに向いてしまい、指示されたことを忘れてしまう例もあります。

このようなことが何度も続くと、周囲の人は困ってしまいますよね。

どのように対処していけば良いのでしょうか。

💡【対応例】

デスク周囲ができる対応としては、本人のデスク周りになるべく刺激になるようなものを置かず、仕事に集中しやすい環境を作ることです。

また、指示は口頭だけではなく、内容を記入したメモや表を本人の目の入りやすいデスクの前の壁などに貼り付けるなどの工夫も効果的です。

その際は、「何を」、「いつまでに」、「どんな手順で」といった具合に、具体的に指示内容を記入するのがポイントです。

納期を守れない

大人 ADHD 仕事自閉症スペクトラムやADHDの人は、仕事の段取りを組むことが非常に苦手です。

そのため、見通しを持って計画を立てることができず、想像以上に時間が掛かって納期までに仕事を終えられない、という事態が起こりがちです。

💡【対応例】

指示はひとつずつ出す一度に複数の指示を出すと混乱してしまうため、指示はひとつずつ出すのが基本です。

また、作業のスケジュールを表などにして視覚化し、いつでも目に入る場所に張り付けておくのも効果的。

仕事を指示したあとも、仕事の進み具合を常に気にかけ、もしうまく進んでいないようなら計画を変更するなどして対応しましょう。

また、納期を守ることがいかに重要かという点について、改めて話をする機会を持つのも良いですね。

人を不快にさせることを言ってしまう

失言発達障害者は相手の気持ちになって考えることが苦手なため、感じたことをそのまま口にしてしまったり、相手の事情を考えず不躾にミスを指摘したりと、相手に不快感を与えるような言動をしてしまうことがあります。

💡【対応例】

早い段階で対応人とのコミュニケーションは、発達障害者がいちばん苦手としている分野です。

決して悪気はないのですが、そのままでは周囲にも悪影響が及ぶため、早い段階で対応することが大事です。

まずは、「人の見た目について不用意に発言することは、相手を深く傷付けることがある」ということを教えなくてはなりません。

また、会社の決まり事を守るのは大切なことですが、人にはそれぞれ事情があり時には守れないケースもあること、目上の人間にミスを指摘するのは自分の役割ではないことなどを、しっかり理解してもらいましょう。

お礼や謝罪ができない

反感発達障害者は、人に感謝の気持ちを伝えたり謝ったりするのが不得意です。

人に親切にしてもらっても何の反応も返さず無言だったり、相手に迷惑をかけて叱られても謝罪はおろか反省している素振りも見せなかったりするため、「素直じゃない」、「反省していない」などと相手から反感を買うことが多くなります。

💡【対応例】

決まりを作るこのような礼儀を欠く言動は、発達障害者にはよく見られます。

対応としては、「こういう場合はこのように行動する」といった決まりを作るのがおすすめです。

例えば、人に何かをしてもらったら、笑顔で「ありがとうございます」と感謝の言葉を伝える、また注意を受けたときは、言い訳をせず「すみませんでした」と謝るなど、行動を明確に指示するのがコツです。

いったん習得すれば、次からは決まりを守って行動できるようになるでしょう。

覚えるまでは根気強くサポートすることが大切です。

最悪の事態を避けるために周囲が配慮したいこと

二次障害発達障害者が周囲の理解を得られない状況に置かれると、心の病気を発症してしまうことがあり、これを「二次障害」と呼びます。

二次障害には、うつ病やパニック障害、強迫性障害、アルコール依存症、ひきこもりなどがあり、中には長期に渡って薬物治療が必要になるケースもあります。

一番注意したいことは、うつ病が原因の自殺願望。

うつ病になると自分に対する無力感や自責の念から、衝動的に命を絶とうとしてしまうことがあります。

特に自閉症スペクトラムの人は、想像力の乏しさから自分の死が家族に及ぼす影響を連想するのが困難なため、つらい出来事に直面すると突発的に自殺を考えてしまうことがあるのです。

こうした最悪の事態を避けるためには、家族や職場の上司・同僚など、身近な人が自殺のサインを見逃さないことが肝心

以下のような変化が見られたら要注意です。

  • 以前よりイライラして怒りっぽくなる
  • 落ち込んでいる様子で喜怒哀楽があまりない
  • 人を避けてひきこもりがちになる
  • これまで好きだった物事に興味を失う
  • 「死にたい」「いなくなってしまいたい」など自殺を連想させる言葉を発する

このような症状が見られたら、それは自殺のサインかもしれません。

早めに専門医を受診して適切な治療を受けるよう、働きかけてあげる必要があります。

まとめ

まとめ今回は、発達障害者が部下にいる方へ向けて、効果的な指導の仕方やサポート方法を紹介してきました。

社会に出て働こうとする発達障害者は、社会の中に自分の居場所を作ろうと、皆とても真剣に仕事に取り組んでいます。

その特性により、どうしても健常者よりも仕事に時間がかかったり、失敗が多くなったりということはありますが、「社会人として自立したい」という気持ちはもしかしたらとても切実なものかもしれません。

周囲の人は、その前向きな姿勢と彼らの努力をぜひ正しい方向へ導き、彼らが自立心を持って積極的に社会で活躍できるよう、サポートをしてあげて欲しいと思います。

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