自閉症スペクトラムの特性のある子の特徴に「かんしゃく」があります。
✔ 大声をあげる
✔ 泣き叫ぶ
✔ 床や壁に頭を打ち付ける
✔ 顔面を掻きむしって血が流れても止めない
✔ 物を壊す
✔ 相手を攻撃する
など、自分の希望が通らなかったり、思い通りの結果が得られなかったりした時にかんしゃくを起こすことがあります。
かんしゃくは正しい対処法で止めるように指導しなければ、後々、手に負えない事態に発展します。
こちらでは、自閉症スペクトラムの特性のある子の「かんしゃく」に対する正しい対処法を紹介します。
自閉症スペクトラムの子が見せるこだわり
自閉症スペクトラムの特性を持つ子どもの中には、特定の事柄に強くこだわるタイプの子がいます。
こだわりが強すぎるため「交代する」「誰かに譲る」「順番を守る」ということが苦手です。
周りの人からすれば、「そんなの別にいいじゃない」と言いたくなるようなことでも受け入れることができません。
色々な場面で自分の中のルールがあり、そのルールが聞き入れられないとかんしゃくを起こしてしまいます。
多くの場合「自分がやりたい、勝ちたい」という強烈な欲求が原因です。
こだわりの例
- エレベーターのボタンを押したい
- ジャンケンに勝てないと泣く
- 着替えてグラウンドへ出て行く時、一番に出られないと怒る
- 授業中、発表のために手を上げたら、最初に当ててもらえないと怒る
この特性は家の中では親や兄弟が要求を聞き入れてしまうことが多く、本人の要求が通る状況が当たり前になりがちが、幼稚園や小学校、友達と遊ぶ時など、集団の中では思い通りにならないことが当たり前ですよね。
このため、「ルールが守れない」としばしば指摘されたり、対人トラブルが起こったりします。
ここから、いじめ、不登校、孤立など、本人にとって良くない状況に陥る例は少なくありません。
また、負けることに異常な恐怖を感じていたり、人より劣っていると感じることに耐えられないケースもあります。
こだわりを完全に消すことはできませんが「交代」「順番」「勝敗を付けることではない」「負けることもある」といったことを本人に理解させ、本人が納得できるように意識を変えさせなければなりません。
かんしゃくの3つの対処法
- 一時間以上延々と泣き叫ぶ
- 大声で叫びながら暴れる
- 座り込んで床にガンガン頭を打ち付ける
- 絶叫しながら顔を掻きむしる
- 物を破壊する
- 相手に危害を加える
など、かんしゃくには様々なタイプがあります。
周囲の人が恐怖を感じるくらい異様な状況に見えることもあり、外出先でかんしゃくを起こされた親は途方に暮れてしまったり、外出すること自体が怖くなってしまいます。
筆者の娘のかんしゃくは泣き叫ぶタイプ。
ジャンケンで負けただけで「勝ちたい!」と叫び、自分が勝てるまで勝負を挑んだり、泣き叫んだり、ふてくされて相手を罵倒したり、つばを吐きかけたりするようなこともありました。
これは年上の人、同級生、年下の子など相手を選びませんし、場所も状況も関係ありません。
こうしたことを事ある毎にやっていては、誰も遊んでくれなくなりますし「あの子は自己中心的で傲慢」と避けられるようになってしまいます。
かんしゃくは早急に手を打たなければ、自分にとっても相手にとっても気持ちのよい良好な人間関係を築くことができなくなるのです。
今の日本の社会では良い人間関係を築けない人は本当に肩身が狭く、場合によっては自立も難しくなります。
そうならないためにも、できるだけ早く対処しましょう。
【対処法1】絶対に要求を呑まないこと!
かんしゃくの対処法で一番重要なのは【絶対に要求を呑まないこと】です。
一度でも要求を呑めば、子どもは「暴れれば要求が通る」と覚えてしまいます。
このような誤った学習は後から矯正することが非常に難しく、かんしゃくの内容や頻度がエスカレートすることも多くあります。
たとえ、どんなに泣き叫んで暴れて危害を加えてくるようなことがあっても、絶対に要求を呑まないこと。
かんしゃくは一時間以上続くこともありますが、根負けしないことが重要です。
子どもだけで遊んでいる時に力で相手を抑え込んで要求を通し、間違った学習をしてしまうことがあります。
かんしゃくを起こす子には大人が必ず付き添い、要求を通そうとしたら止めなければなりません。
かんしゃくによって欲求が満たされる状況は絶対に避けましょう!
【対処法2】基本は「無視」
子どもがかんしゃくを起こしている間は「無視」をすることが基本となるため、一切反応しないようにしましょう。
「止めなさい」というような声掛けも「親の気を惹ける」「注目してもらえる」ということになるので、完全無視を貫きます。
大抵の場合、かんしゃくを起こしている間、子どもは興奮状態にあり、本人の要求を呑む提案以外何も聞き入れません。
落ち着くまで別の部屋に移動するようにしてください。
また、家族にも協力してもらうことが大切です。
祖父母や兄・姉といった優しい対応をする人がその場に居ると、ついつい甘えを許す声掛けをしがちです。
しかし、かんしゃくを許す行為は子どものためになりません。
ただし、本人がケガをしないようなサポートは必要です。
床や壁に頭を打ち付ける場合は間にクッションなどを挟んだり、人を傷付ける場合は無言で腕を押さえるなど、本人や他人に害が及ぶことは阻止します。
長いと一時間以上続くケースもありますが、絶対に要求を呑んだり、「大丈夫?」「止めなさい」などの声掛けをしたりしないでください。
【対処法3】落ち着いてから、行動を再開する
かんしゃくは「誰も何も反応してくれない」と分かれば自然に止まります。
本人が落ち着いてから声掛けをし、行動を再開しましょう。
例えば、「テレビのリモコンを押したい!」と泣き喚いた時は、リモコンを取り上げて放置します。
そして、落ち着いたらテレビをつけて見せます。
再びかんしゃくを起こしたらテレビを消して、リモコンを触れないところに置いて放置します。
これを繰り返してください。
- かんしゃくを起こす → 要求が通らない(自分が欲しい結果が得られない)
- かんしゃくを起こさない → 自分にとって良いことがある。
上記を繰り返し覚えさせましょう!
親や周囲の人に忍耐力が必要ですが、じっくり腰を据えて向き合ってくださいね。
かんしゃくは止めるものではない
かんしゃく対策の目標は「対処法を本人が身に付けること」
かんしゃくは【欲求の爆発】です。
障害がなくても、希望が通らないと不快に感じたり残念に思ったりすることはありますよね。
腹に据えかねた時にはついつい相手に罵声を浴びせてしまったり、物に八つ当たりしたり、大きな声を出してスッキリしたい!と思ったりしませんか?
こういったことは多くの人が経験していることだと思いますが、大抵は、「悔しい」「残念」だと感じても、気持ちの切り替えが比較的簡単にできますよね。
しかし、自閉症スペクトラムの特性を持つ子は気持ちの切り替えが苦手です。
ちょっとしたことでマイナスの気持ちが爆発する起爆スイッチがONになってしまい、なかなかOFFにできないのです。
この「感情の爆発」「起爆スイッチ」が【解決のカギ】です。
かんしゃくは、起こさないよう抑え込むのではなく、かんしゃくが起こる状況を避ける方向に気持ちを誘導するか、爆発方法やタイミング、規模をコントロールすることで解決していきましょう。
かんしゃくを起こす前に、プラスの声掛けをする
かんしゃくが起こらない方向へ自分の感情を持っていく方法をご紹介します。
声掛けの一例:「リモコン操作をやりたい!」と怒る子どもの場合
- リモコン操作をする前に「今はママがボタンを押します。ニュースが終わったらチャンネルを変えてね」と言ってから、ママがリモコンを操作しましょう。
- この声掛けは「リモコン操作ができるタイミング」がはっきりしており、「貴方が操作をしてもいい」という前向きな内容になっています。
- こうすることで「今、リモコン操作ができなくても、次に機会が来る」ということが理解できます。
- 繰り返し実践することで「今はママ。次は私がリモコンを操作するね」というような、言葉のやりとりができるようにしていきましょう。
まずは、保護者がかんしゃくが起こる場面を把握する必要があります。
子どもがかんしゃくを起こしそうだと思ったら、そうなる前に「前向きな言葉で声掛け」をしましょう。
かんしゃくで要求を通すのではなく、交渉することを覚えさせるのです。
同時に、順番・交代も学ばせましょう!
私の娘の場合、姉妹で「どちらがお風呂に入浴剤を入れるか」でケンカになることがありました。
自閉症スペクトラムの姉のほうが常に自分がやりたい!と主張し、妹をお風呂から閉め出したり、叩いたりしていました。
そこで「パパ・ママ・姉・妹みんなで順番に入浴剤を入れる」というルールを決め、一覧表を作って【誰がいつ担当か】を明確にしました。
一覧表を見れば、自分に順番が回ってくる日がいつなのか見通しを立てることができ、また、他の人がやることを許せるようにもなります。
この方法ですべてのかんしゃくが起こらなくなった訳ではありませんが、ケンカは少し減りました。
※自閉症スペクトラムの子どもには、ネガティブな言葉よりも前向きな言葉の方が心に響きやすいようです。
やる気を引き出すためにも、本人が嬉しいと感じる言葉で声を掛けるほうが良いですね。
例えば「我慢しなさい!」という禁止・否定の言葉はなく「ママの次にやっていいよ」というような、肯定の言葉による声掛けがお勧めです。
怒り・悔しさの発散方法を覚える
もうひとつ、かんしゃくを治す方法に「感情の爆発のタイミングや場所、規模をコントロールする方法」があります。
この方法は、本人や他人に危害が及ばない範囲で感情を爆発させるものです。
発達に遅れや障害がない人が、ストレス発散のためにバッティングセンターでバットを振ったり、カラオケで大声を出してスッキリする、というストレス発散法を実践しているのと同じ考え方ですね。
自閉症スペクトラムの特性を持つ子の場合、その場は耐えて後で発散する、というコントロールが難しいため、その場で実践できる方法を考えてあげましょう!
例えば、じゃんけんで負けた時に「勝ちたい!」と泣いて怒る子がいるとします。
その場合は、じゃんけんで負けた時に「その気持ちを発散するための方法(怒る以外の方法)」を教えてあげましょう。
筆者は娘に「じゃんけんで負けた時は、自分の手で自分の腰の当たりをポンポンポンと叩こう(ま・け・た!と心の中で言いながら、リズムを付けて叩こう)」と提案しています。
最初は嫌がっていましたが、母と妹で実践して見せ、変顔をしたり、おどけながら大げさに「ま~け~た~」と言って見せたりして、「面白い!」「私も真似したい!」という気分にさせながら教えると、少しずつ真似して実践するようになりました。
怒る・泣く以外の方法で感情を解消できるようになれば、不満が溜まることを回避でき、他人とトラブルになることも減るでしょう。
子どもに合った方法でマイルールが通用しないことを覚えさせ、かんしゃくを起こさないように教えると良いですよ。
たとえ小さなこだわり、かんしゃくでも許さない理由
子どもの要求は些細なものが多く、大人にしてみれば「これくらいいいか」と思えますし、かんしゃくが治まるまで無視し続けたり根気よく対処法を実践したりすることは本当に大変です。
要求を呑んであげたほうが本人は満足するし、親も楽だし、周囲から怪訝な目で見られることもありません。
それでも、かんしゃくを許してはいけない理由があります。
それは、「要求が通ると学習させると、成長してからもかんしゃくで要求を通そうとするから」です。
「かんしゃくを起こせば要求が通る」「自分のこだわりが優先される」と覚えてしまうと、かんしゃくは大人になってからも続いてしまいます。
成長し、体が大きくなって力も強くなった時、要求を通すために暴力を振るったり、相手が要求を呑むまで危害を加えたりするようになってしまったらどうでしょう?
特に男の子の場合、身長180cm、体重70kgを超えるようになってから「病気だけど酒を飲ませろ!」「可愛い女の子に自分の思いをぶつけたい」と大暴れするようになったら、母親は対応できるでしょうか?
……難しいですよね。
最悪の場合、かんしゃくが犯罪行為に発展する危険があり、社会に受け入れてもらえない存在になってしまったり、孤立していったりする原因になります。
身体の小さい子どものうちはまだ、大したことがありません。
しかし、中学生、高校生になって思春期(第二次性徴期)を迎えると非常に対応が難しくなっていきます。
できるだけ幼い頃から対処法を教え、実践できるようにサポートしていきましょう。
かんしゃくを注意する時の2つの鉄則
かんしゃくを注意したり、対処法を教えたりする時には鉄則があります。
- 短くて解りやすい言葉を使うこと
- かんしゃくを起こした時、その場で注意する
この2つを必ず守ってください。
ネガティブな言葉を次々とぶつけても、それは親の怒りの感情をぶつけているだけで意味がありません。
否定の言葉に敏感で落ち込みやすく、ひどいマイナス思考に陥る子も居ます。
そうなると、どんな言葉も受け付けなくなるケースもあります。
注意の言葉は必要最低限にしましょう。
また、後から「あの時はダメだったのよ」と言っても子どもには伝わりません。
必ず、その場で対応してください。
💡 分かりやすく、その場で対応すること。
これが鉄則です。
まとめ
かんしゃくには、粘り強く、辛抱強く向き合っていきましょう。
一朝一夕にはいかず、特効薬も即効性がある対処法もありません。
子どもの感情爆発は驚くくらい激しく、対応する親には想像を超える忍耐が必要になります。
心身共に疲弊してしまう親も少なくありません。
しかし、将来の子どものことを考えると、幼い頃から「かんしゃくで要求は通らない」と理解させなければなりません。
かんしゃくを起こしたその場で対処し、「気持ちのコントロール方法」や、「周囲に迷惑を掛けない感情発散法」を教えてあげましょう。
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