一般的に発達障害とは、自閉症スペクトラム障害、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)の三つに分けられ、複数の発達障害を持っているお子さんも多く存在します。
また、女児よりも男児のほうが多いと言われており、これは遺伝子や性ホルモンなどの違いで男児の脳が女児の脳よりも、何らかの影響を受けやすいためだと考えられています。
こちらのページでは、発達障害に悩む保護者の皆さんにお伝えしたいことをまとめています。
ぜひ参考にしてくださいね。
三つの発達障害の特徴と注意しなければいけないこと
自閉症スペクトラム障害、ADHD、LDについて
✓自閉症スペクトラム障害
アスペルガー症候群、高機能自閉症、広汎性発達障害が含まれます。
- 人とのコミュニケーションが苦手
- 偏った強いこだわり
- 感覚がアンバランス
- 言葉の遅れ
✓ADHD(注意欠陥多動性障害)
ADHD(注意欠陥多動性障害)では、多動的な行動が目立つ傾向があります。
- じっとできない
- 衝動的過ぎる
- 忘れ物が多い
- 集中力が持続しない
✓LD(学習障害)
学習障害を持つお子さんは、全てが苦手なわけではなく、特定の分野の学習が苦手であることが一般的です。
- 読字障害
- 書字表出障害
- 算数障害
注意しなければいけないこと
発達障害児と健常児に知能指数の変わりはなく、また、知能指数が明らかに高い発達障害児も多く存在します。
しかし、発達障害児は健常児と比べると問題に対する対応が乱雑に見えることが多く、感情の表し方も大きく異なります。
乱暴に感情を表し、他のお子さんを攻撃したり、自分の頭を強く叩く、壁に叩きつけるなどの自傷行為をしたりしてしまう発達障害児も多く存在します。
また、よく落ち込んで自分を責めてしまうため、学校などで社会生活を送るときに問題が生じることが多く、学校でいじめを受けてしまったり、自分を肯定できずうつ状態になってしまったりすることもあります。
攻撃的な面が多く出る発達障害児の場合、小学校高学年や中学生になると反社会的な行動に走ることもあるため、注意深く見守る必要があります。
また、家庭でも親御さんがお子さんとの関係に悩むことが多く、子ども自身もどう対応すれば良いのか分からず心のままに行動をしたことが問題児として扱われてしまい、大きなストレスを抱えてしまうこともありますので、注意が必要です。
発達障害は心理的な環境のせいではない
発達障害は家庭環境や家族との関係が原因だと思いがちですが、子どもの心理的な環境が悪いからというわけではありません。
「厳しくしつけ過ぎたせいで、ストレスを感じて脳が変質してしまったのではないか」と相談をする親御さんもいれば、「他の兄弟ばかり可愛がってしまったことが原因なのでは……」と反省する親御さんもいますが、保護者のしつけや家庭環境が原因ではないということは、学術的に立証されています。
発達障害には様々な種類がありますが、その種類ごとに色々な研究(研究の内容は「何が原因で発達障害が起こるのか」「その特性はどのように定義されるのか」など)が行われ、いずれの研究によっても心理的な環境には原因がないと示されてきました。
しかし、少しずつ正しい理解が進んできてはいるものの「我が子の発達障害は育児の結果である」と親御さんが責任を感じてしまうことは多く、社会的にはまだそこまで理解は進んでいないのが現実です。
また、発達障害児を育てる保護者が、発達障害について深く知らないために過度に発達障害児を恐れ、「自分の子どもが発達障害を持つ子から暴力を振るわれないか」 「子どもに悪影響が出ないか」などの質問を学校の先生にすることもあります。
例えば「ADHDは上手に子育てをしていないから」と誤解をしている親御さんもいらっしゃいますが、実際は「ADHDも他の発達障害と同じように、脳の行動や感情のコントロールを司る部分が健常児と異なる」ことが原因で起こります。
また、「ADHDは攻撃的な子や多動的で落ち着かない子が多い」といった負のイメージが強く浸透していますが(これは、そういった特性を持つお子さんが、学校などの社会で目立つからだと考えられます)実際は大人しいタイプの子が多く、目立たないがために印象に残らず、発達障害児であると気付かれないといったこともあり、保護者でさえも気付いていないといったケースもあります。
しかし、発達障害の表れ方に個人差はあれど、社会で生きづらさを感じて孤立することはどの子にもあり得るのです。
それは、発達障害に関する知識を保護者や周りの人達が持っていないことから起こります。
発達障害児の保護者、健常児の保護者、学校の先生、そして子どもたちを含む社会全体が、発達障害について正しい理解をする必要があります。
発達障害の原因
発達障害は脳の障害であり、また、ある遺伝子を持っている子どものうち、発達障害として現れる子どももいればそうならない子どももいます。
原因遺伝子については研究が進められていますがまだわからない部分も多く、健常児であっても発達障害の原因の遺伝子を持っていることもあると言われています。
また、(発達障害児が特別なわけではないのですが)昨今、環境に問題がある可能性が示されてきています。
それは「栄養の問題」です。
まだ詳しくは分かっていないことも多いのですが、米国の小児科学会は、子どもの発達障害と有機リン系の農薬などの農薬の関係についての報告をまとめています。
有害な化学物質を避けることは子どもにとっても大人にとっても有益といえるため、今からでも有害な化学物質を避けるようにすると良いでしょう。
他の子よりも劣っているというわけではない
人にはそれぞれ個性があり、性格や感じ方も一人ひとり違いますが、それは個人を構成する遺伝子が異なるから。
遺伝子の情報によって私たちの体つきや声、性質などが決まります。
発達障害は現代社会で少数派であり、社会に適合しにくいため「障害」と名付けられ様々な対策が取られていますが、他のお子さんよりも劣っているというわけでは決してありません。
人間の優劣は医学的に判断されるものではありませんし、皆等しい価値を持っています。
近年、発達障害と診断されるお子さんが増え続けていますが、それは発達障害についての研究が進み、理解が深まったからなのです。
発達障害についての研究は診断基準も精度が上がり、細かな発達障害の兆候についてもどんどん詳しくわかってきているため、今までであれば発達障害児と健常児の境界にいると判断されていた子どもでも、発達障害の基準を満たすと認められるようになってきました。
また、親御さんの理解が進み、医療機関を訪れるお子さんが増えたため、「少し扱いにくい子」という程度で診断がつかなかった子も発達障害の診断をつけてもらえるようになりました。
発達障害は個性の違いとも捉えられます。
障害という言葉に捉われず、お子さんの個性を伸ばす援助方法を模索しましょう。
保護者の不安について
発達障害児を育てる親御さんは、健常児の親御さんよりも生きがいを感じにくいことが報告されており、育児のストレスや不安、疲労感も多いのが特徴です。
さらに、発達障害児を育てる親御さんは、うつ病にかかるリスクや子どもを虐待するリスクも高いとされています。
つまり、それほど親御さんは精神的な負担を感じているということです。
親御さんに発達障害がなくお子さんのとる行動を理解できない場合、否定的な感情を抱いてしまうため、お子さんの発する言葉や行動に恐怖をおぼえてしまうのです。
さらに、こういった場合、外からは好奇の目で見られることも多く、お子さんを信じられず、親御さんは二重に苦しい思いをしてしまいます。
発達障害児は少数派だからこそ、親御さんは強い孤独感をおぼえ、情緒不安定になりがちですが、近年では発達障害児の保護者同士の交流会も多く存在します。
そういった場所に足を運ぶことで同じ悩みを共有でき、孤独感を和らげることができるかもしれません。
もしも孤独を感じている場合、一度交流会に参加してみてはいかがでしょうか?
また、保護者の捉え方に差があることも良くありません。
例えば、お父さんがお子さんの障害を認めずに性格の問題であるとして、強く叱る、行動を正そうとする、更生させようとすることがありますが、それは発達障害児に良い影響を与えません。
発達障害は性格の問題ではなく脳の構造が原因なのですから、叱るだけではいたずらにお子さんの自尊心を傷つけることになってしまいます。
お母さんとお父さんが障害を受け入れ、知識を同じように得て、同じ方向を向いてお子さんと向き合う必要があります。
そして、親御さんが心身ともに健康であることは、お子さんの適切な発達にとても大切なことです。
子どもの発達障害は親の育児の結果起こるものではありませんので、自分を責めて落ち込む必要は全くないのです。
逆に、うつ状態になってしまうとお子さんの発達にも良くない影響が出てしまう恐れがありますので、心を明るく健やかにお子さんの可能性を信じてサポートをしていきましょう。
我が子を信じること
発達障害児が発する言葉は時に過激で、戸惑うこともあるでしょう。
また、暴力的な面には恐怖をおぼえることもあるでしょう。
しかし、お子さんの発する言葉が、発達障害でない人の発する言葉と同じと捉えて恐れる必要はありません。
発達障害児は脳の構造が健常児とは少し違うために、過激な言葉が出てきてしまうのです。
発達障害児の心が健常児の心よりも荒れているということではありません。
暴力的な行動も、本人のパニックから出てきているのです。
まずはお子さんを理解して、受け入れ、愛情を持ってサポートをし、状況を良くしていきましょう。
周囲の理解がないことが大きなストレスとなっている親御さんは多いでしょうが、そういった時はブログなどを通じて情報を発信してみてはいかがでしょうか?
周囲の理解を深めることになるのでオススメです。
発達障害児・発達障害者が社会で生きづらさを感じ、うつなどの二次障害を発症することもある現状はあるべき社会の姿ではありませんし、私たちはすべての発達障害者が堂々と社会で活躍できるような社会を作りあげていかなければなりません。
その方法を、社会、発達障害児を育てる保護者、健常児を育てる保護者、学校の先生お子さんを持たない人など、すべての人で模索していく必要があります。
それは成熟した社会にとって必要なことです。
この先、研究もどんどん進みます。
企業や学校、NPOなども行動を起こしていくように進めていくことが大切です。
参考文献
Thomas E.Brown (2015)
「ADHD FROM Stereotype Science」
Educational Leadership
飯島恵(2005)
「発達障害児の問題点と対応」
順天堂医学会学術集会
和田浩平(2016)
「高機能広汎性発達障害児をもつ父母の心理的体験と社会的援助の在り方」
名古屋大学
黒田洋一郎、純子(2013)
「自閉症・ADHDなど発達障害増加の原因としての環境化学物質」
KAGAKU
坂爪一幸(2012)
「発達障害の増加と懸念される原因についての一考察」
早稲田教育評論
松本歩(2014)
「発達障害の原因遺伝子の同定・解析」
自治医科大学大学院医学研究科博士課程学位論文
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