発達障害児(者)に「ヘルプマーク」の所持をオススメする理由

ヘルプマーク

発達障害児(者)に「ヘルプマーク」の所持をオススメする理由最近、街中でもポスターや、実際に身に着けている人を見かけることも多くなった、赤地に白の十字とハートマークが描かれた「ヘルプマーク」。

ヘルプマークを身に着けていると、発達障害のある子どもと交通機関を利用したときに席を譲ってもらえたり、子どもが迷子になったときに周りの人が戸惑うことなく対応してくれたりと、プラスに働くことが多いと言われています。

少しずつ認知度があがっているヘルプマークですが、似たような用途で使われるマタニティマークに比べると、意味や使い方などはまだそう広くは知られていません。

今回はヘルプマークについて、発達障害児に持たせることをオススメする理由や使い方の具体的な例、また、第三者としてヘルプマークを身に着けた人を見かけたときの対応について詳しくご紹介します。

こちらの記事を読むと、ヘルプマークの効果的な使い方がわかるようになり、同時に「ヘルプマークを身に着けた人にどう接したらよいか?」という不安を取り除くことも可能になります。

ヘルプマークのことをよく知り、役立てることで、今までより生活がしやすくなるかもしれません。

ぜひ、参考にしてみてください。

ヘルプマークとは

義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方など、外見から分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう、作成したマークです。(引用:東京都福祉保健局より)

オリンピック現在、ヘルプマークは全国的に普及が進んでおり、2020年(東京オリンピック・パラリンピックの開催年)を目標に、その認知度をさらにあげようとポスターの掲示やテレビ番組で取り上げるど、積極的に周知を呼び掛けています(東京都の一部の交通機関では、車輛内等の優先席にステッカーが貼られています)。

2017年6月現在、ヘルプマークを取り入れている都市は、東京都・大阪府・京都府・和歌山県・徳島県・青森県・奈良県・神奈川県・滋賀県と少しずつ増えてきています。

まだ対象となっていない都市に住んでいる場合は、ヘルプマークを自作することが認められていますが、その際には寸法や比率を含めて、ガイドラインに従うことが義務付けられています。

また、作成・活用状況の確認・把握のため、遅滞なく「東京都福祉保健局障害者施策推進部計画課 社会参加推進担当」まで報告する必要があります。

(作成・活用の要件/要約)
  • ヘルプマークの主旨に合致すること。
    • ※主旨に合致するか否かの判断がつかない場合は、まずは上記担当の課に確認をすること。
  • 東京都が定める「デザインガイド」を遵守すること。
    • ※都が提供する見本と同じものを作成する(都が提供する画像をそのまま使用して作成する)こと。
    • ※ヘルプマーク単体で身に着けるカード等を作成したい場合は、担当の課に確認をすること。

ヘルプマークヘルプマークの裏面には、緊急時の連絡先や服用中の薬、配慮してほしいことなどが記載できるようになっており、身に着けておくことで、いざというときに必要な援助を円滑に受けることができます。

このように、周囲に妊婦であることを知らせることが目的のマタニティマークと似たような目的を持つヘルプマークは、対象者が広く、また、裏面のシールによって持ち主が、具体的な配慮を周りに知らせることができます。

対象となる人について

ヘルプマーク義足や人工関節を使用している人、内部障がいや難病の人、身体・知的・精神の障がい者、妊娠初期の人など、外見からは分からなくても援助や配慮を必要としている人が対象となります。

ヘルプマークは「支援を必要としている」ことを知らせるためのマークであるため、外見からはわからない障がいのある人や、病気の人の心強い味方になります(病気治療中の通院時に、交通機関を使う場合は特に、ヘルプマークを持っていると安心です)。

特に発達障害児は苦手なことが多く、外見からは判断できません。

  • 電車やバスの中で長時間立ち続けることができない(立って待っている、ということができない/集中できない)
  • いつも同じ車輛、同じ場所にいないと落ち着かない
  • バスの中では一人掛け席にしか座れない(他人と肩が触れあうことに抵抗を感じる)

など、本人にしかわからないことやこだわりがあり、交通機関を使うことや出かけることをおっくうに感じる子どももいるかもしれません。

もちろんそれは子どもだけではなく、大人の発達障害に悩む人にもあてはまります。

自分の体幹の弱さに、通勤が苦痛だと感じている人もいるかもしれません。

「もしも倒れたときに……」「優先座席に座っていて、咎められてしまったときに」などといった「周囲の人に自分の状態を知ってもらいたいとき」に、ヘルプマークが活躍してくれるはずです。

ハンディキャップがあることに対して、負い目を感じたり、隠そうとしたりするのではなく、勇気を出して「こうすればもっと自分は生活がしやすくなる」「何かあったときに、こうしてもらえれば助かる/じょうずに対処することができる」などと開示することで、ハンディキャップがある人もない人も、お互いが無理なく気持ちよく過ごせるようになります。

ヘルプマークは、その理想に近づくための足がかりになるのではないでしょうか。

配布場所について

✔ 東京都

  • 都営地下鉄各駅(押上駅、目黒駅、白金台駅、白金高輪駅、新宿線新宿駅を除く)駅務室
  • 都営バス各営業所
  • 荒川電車営業所
  • 日暮里・舎人ライナー(日暮里駅、西日暮里駅)駅務室、ゆりかもめ(新橋駅、豊洲駅)駅務室
  • 多摩モノレール(多摩センター駅、中央大学・明星大学駅、高幡不動駅、立川南駅、立川北駅、玉川上水駅、上北台駅)駅務室(一部時間帯を除く)
  • 東京都心身障害者福祉センター(多摩支所を含む)
  • 都立病院
  • 公益財団法人東京都保健医療公社の病院等

✔ 大阪府

  • 福祉部障がい福祉室障がい福祉企画課
  • 府各保健所
  • 大阪府内市区町村(詳しくはそれぞれの市町村にお問合せください)

✔ 京都府

  • 京都府庁障害者支援課(1号館4階)
  • 京都府家庭支援総合センター
  • 京都府精神保健福祉総合センター
  • 京都府難病相談・支援センター
  • 京都ジョブパーク
  • 京都府各広域振興局(保健所など)
  • 児童相談所(宇治・京田辺・福知山)
  • 北京都ジョブパーク
  • 各市町村

✔ 和歌山県

  • 和歌山県庁福祉保健部障害福祉課
  • 各振興局健康福祉部保健福祉課
  • 和歌山市障害者支援課及び保健対策課

✔ 徳島県

  • 障がい者相談支援センター(障がい者交流プラザ)
  • 発達障がい者総合支援センター ハナミズキ
  • 発達障がい者総合支援センター アイリス
  • 県内保健所(徳島・吉野川・阿南・美波・美馬・三好)
  • 精神保健福祉センター
  • 県障がい福祉課(徳島県庁1階)
  • 県健康増進課(徳島県庁2階)

✔ 青森県

  • 市町村の障害福祉担当窓口

✔ 奈良県

  • 市町村の障害福祉担当課

✔ 神奈川県

✔ 滋賀県

  • 県庁障害福祉課
  • 大津市保健所
  • 草津保健所
  • 甲賀保健所
  • 東近江保健所
  • 彦根保健所
  • 長浜保健所
  • 高島保健所
  • 各市町の障害福祉担当部署

※すべて各窓口での配布となり、郵送での対応はしていません。また、受け取りの際に、障がい者手帳や診断書などの掲示は不要です。

※上記は平成29年6月現在での情報であるため、詳しくは各窓口にお問い合わせください。

使い方

ヘルプマークかばんの持ち手などにそのまま取り付けます(チェーンやひもなどを用意する必要はありません)。

ヘルプマークと一緒にもらうシールに「緊急連絡先」や「配慮してほしいこと」などを書くことができ、マークの裏面に貼り付けることができます(任意)。

ヘルプマークを身に着けている本人が意識を失っているとき(事故や災害時など)でも、シールに「緊急連絡先」や「服薬している薬のこと」「必要な配慮」が書かれていると、マークを見た人がスムーズに対応することができ、非常に役に立ちます。

丸い形をしているマタニティマークとは違い、縦長のヘルプマークは思ったよりも存在感があるため、「目立ちすぎて少し気になる」といった場合はスカーフなどとともにカバンに取り付けると良いかと思います(「目印」となることを目的としているため、隠れてしまって見えなくならないよう注意をしてくださいね)。

発達障害児の「迷子札」として使用する場合

発達障害情報ナビ発達障害児はその特性から、「落ち着きがない」「迷子になりやすい」といったケースが多く、周りへの注意がおろそかになる場合もあります。

万が一子どもとはぐれてしまったときに、ヘルプマークは「迷子札」としての役割も果たしてくれるのです。

📌 シールに書く内容例

ヘルプマーク

  • 子どもに障がいがあること(服用中の薬があれば、その旨も)
  • 緊急連絡先(連絡のつく電話番号など)
  • 子どもの苦手なこと(人見知りが激しい、大きな音が苦手など)
  • 対応時に配慮してもらいたいこと(ゆっくり話してあげてほしいなど)

子どもがいつも持っているカバン(リュックなど)の目立つ場所につけておくと目につきやすく、気づいてもらいやすいです。

カバンを子どもが持ちたがらない場合は、ズボンのベルトループに通しておくと良いですよ(ベルトループがない場合は、ブローチや安全ピンなどでズボンやスカートの腰のあたりにつけておくと良いです)。

迷子になってしまった子どもは、発達障害の有無にかかわらず、パニック状態におちいってしまっていることでしょう。

気付いた人が声をかけても、親の連絡先をじょうずに伝えることができないかもしれません。

発達障害児は特に、人と関わることを避けたがる性質や言葉のキャッチボールが苦手だという性質から、会話をすることすら難しい場合もあるかもしれません。

そういったときに、目立つ場所にヘルプマークを身に着けていることで、気付いた人が困らずにスムーズに対応することができ、親への連絡が取りやすくなります。

「対応してくださってありがとうございます」とシールに書き添えておくことも良いかもしれませんね。

災害時や緊急時の活用について

発達障害情報ナビ災害時や緊急時(交通事故など)にヘルプマークを身に着けていることで配慮が必要だということに気付いてもらいやすく、万が一意識を失っている場合にも、服用中の薬の有無や緊急連絡先などが明記されていると対応がスムーズに進みます。

📌 発達障害児(者)の場合の例

  • 日常的にADHDの治療薬を飲んでいること(二次障害により、安定剤などを日常的に服用している場合も明記するとよい)
  • 話せる言葉が少ないこと(例:「イヤ」という一言しか話せない/自閉症の特性のひとつ/なるべく「はい」か「いいえ」で答えられる質問をお願いする旨書いておくとよい)
  • 感覚過敏、または鈍感であること(怪我をしていても本人は痛がらない場合がある など)
  • 本人の慣れているものを好むこと(お気に入りのタオルがあり、それを持っていると落ち着く など)

📌 その他、発達障害に関わらず……

ヘルプマーク

  • 内部障害のこと(例:心臓にステント(血管を広げたまま保持するための金属の筒状の網)やペースメーカーが入っているなど)
  • 妊娠初期であること
  • 日常的に服用している薬があること(おくすり手帳を持っている場合は、その旨も書いておくとよい)
  • 血液をサラサラにするための薬を服用していること(抗凝固薬や抗血小板薬など/出血がとまりにくくなるため、非常に注意が必要です)

上記のような内容がヘルプマークに明記されていると、救急隊員が対応するときにも非常に役に立ちます。

また、被災したときなど、通常の配布場所でヘルプマークを受け取ることが難しい場合は、画像を印刷して使用することも可能です(その場合は、「カラーで印刷すること」「大きさは拡大、又は縮小可能ですが、マークを変形しないこと」を遵守してください)。

ヘルプマークを身に着けた人を見かけた場合

ヘルプマーク第三者としてヘルプマークを身に着けた人を見かけた場合、もしもその人がつらそうにしていたら「電車やバス内で席を譲る」「駅や商業施設などで声をかけるなど」を意識してみてください。

ヘルプマークを身に着けている人には、下記のようなケースも考えられます。

💡例えば……

  • 一見、健康そうに見えても、疲れやすかったり、つり革につかまり続けることが難しかったり、自閉症スペクトラムの特性のひとつである「体幹の弱さ」から、同じ姿勢を保つことが困難な場合がある。
  • 外見からわからない分、優先席に座っていると不審な目で見られ、ストレスを受けてしまうこともある。
  • 突発的なできごとに対して臨機応変に対応することや、状況把握が困難な人、立ち上がる、歩く、階段の昇降などの動作が困難な人もいる。
  • てんかんを患っている人が、外出中にてんかん発作を起こして倒れてしまったときのために、周りの人に自分のかかりつけの病院、主治医に連絡してもらうことをお願いする旨シールに書いている。

ぜひ、勇気を出して声をかけてみてくださいね。

「ヘルプマークを身に着けていてよかった!」体験談

発達障害情報ナビここでは、実際にヘルプマークを身に着けていて、「よかった!」と感じた人の体験談をご紹介します。

様々な理由からヘルプマークを身に着けている人がいるということを、下記の体験談から知ってもらえると幸いです。

📝 体験談(1)

知的に障害のある我が子の通園バッグに、ヘルプマークをつけています。

ヘルプマークひとと会話をすることが難しいため、もし何かあって保護されたときに周りの人が対応に困ると思い、ヘルプマークをつけることに決めました。

親である私の携帯電話の番号(緊急連絡先)や、泣き止む方法、子どもの苦手なことをシールに書いています。

子どもと一緒にバスに乗ったときに、席を譲ってもらったことがあります。

なるべく我が子と一緒に行動するようにしていますが、何かあったときの「お守り」としてヘルプマークをつけています。

📝 体験談(2)

私は足の血管に持病があり、ヘルプマークをカバンにつけています。

バスより電車に乗っているときに声をかけられることが多く、立っていることがつらいときと感じているときに席を譲ってもらえたこともありました。

バスではお年寄りや子連れが多く、「若い人は立つ」という暗黙のルールのようなものがあるため、ヘルプマークのポスターを貼るバスが増えればいいなと思います。

📝 体験談(3)

私はクローン病を患っています。

急に激しい腹痛におそわれたり、低血糖でフラフラしたりすることがあります。

以前、電車の中でめまいを感じ、目の前が暗くなりかけたときに、近くにいたサラリーマンが優先座席に誘導してくれたことがあります。

倒れる前に優先座席に座ることができ、助かりました。

📝 体験談(4)

パニック障害を患っているため、カバンにつけています。

他人と身体が密着することがダメなこともあり(スペースのあまりない電車の中は特に)ふだんは座ることはありませんが、座席を譲ってくださったときはありがたく座っています。

また、発作が起きて苦しいときに優先座席に座っていて、周りの人に心ない言葉をかけられたときに、ヘルプマークを見てかばってくれた人もいました。

📝 体験談(5)

私の足には人工骨が入っており、痛みが出ることがあるため、出かけるときは必ずヘルプマークをカバンにつけています。

自分の状態とかかりつけの病院、緊急連絡先を裏面のシールに書いています。

電車内で痛みが出て、座り込んでしまったときに席を譲ってもらったことがあります。

パニックになりかけていたので、ヘルプマークの裏面を見てもらって、理解してもらいました。

シールに詳細を書くことを恥ずかしいと感じる人もいらっしゃるみたいですが、私のように自分でうまく説明できないときに、シールに詳細を書いていると周りの人も冷静に対応することができるため、なるべく細かく書くほうが良いと思います。


上記の体験談のように、ヘルプマークを身に着け、裏面のシールに自分の状態や緊急連絡先を詳しく書くことで、周囲の理解や配慮を得られやすくなることがおわかりいただけるかと思います。

ぜひ、参考にしてみてください。

さいごに

ヘルプマーク私は障がい者手帳を持っていますが、その障がいは外見からはわかりません。

発作などの症状がないときは普段通りの生活を送ることができますが、「電車に乗っているときに、もしも症状が現れたら……」「苦しいと感じていることを、周りの人にうまく伝えることができるだろうか?」といった、不安から、ヘルプマークをカバンにつけて出かけることを決めました。

ヘルプマークを知ったキッカケは、SNSに投稿されていた見ず知らずの人の書き込みで、その投稿には、「たくさんの困っている人に知ってもらいたい」といったメッセージとともに、ヘルプマークの写真が載せられていました。

また、交通事故に遭った際に(そのときは意識があったため問題はありませんでしたが)もしも、意識を失っていたら、救急隊員に緊急連絡先や服薬治療を行っていることをきちんと伝えることができなかったかもしれないといった経験からも、同じように、見た目からはわからない障がいや、病気を患っている友人にもヘルプマークのことを伝えています。

自分の子どもや自分がヘルプマークを身に着けることで、生活がしやすくなるかもしれないと感じた場合は、ぜひ活用することを検討してみてください。

ヘルプマークを身に着けることによって、事故を未然に防ぐこともできるかもしれません。

しかし、誰もヘルプマークのことを知らなければ、子どもたちや自分が困っているときに助けてもらうことができません。

ヘルプマークが正しく理解され、活用されるためには、

  • 多くの人がヘルプマークについて正しくその目的や意味を知っていること
  • 配慮を必要とする人が目立つ場所にヘルプマークを身に着けていること

この二点が必須となります。

ぜひ、ヘルプマークのことをお知り合いのかたや先生たち、職場の人などに話し、広めてください。

私がヘルプマークのことを知るキッカケとなったように、SNS上で発信することもよいと思います。

ヘルプマークは、SOSを正しく周りの人に理解してもらうためのものです。

自分の身に何かあったときに「助けてください」と周りに救いを求めることや、自分のハンディキャップについて包み隠さず書き示すことは恥ずかしいことではありません。

いち早く「困っていること」に気付いてもらうため、そして、適切に対応してもらうために必要なことなのです。

ぜひ、勇気を出して意思表示をしてみてください。

障がいのある人も、外見からは分からなくても【援助】や【配慮】を必要としている人々も、健常者の人々も、すべての人が気持ちよく公共施設を利用できるよう、ヘルプマークをもっとたくさんの人に知ってもらいたいと願っています。

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