多くのADHDの特性を持つ大人は、仕事の場面において様々な悩みを抱えていることでしょう。
例えば・・・
・人間関係が上手に築けない
・正確性やスピードを求められる仕事がこなせない
・咄嗟の判断を求められても答えられない
・時間やスケジュールの管理が行えない
・やるべきことが沢山あると余裕がなくなる
これらをうまく行うためには、自分の特性を知り、苦手なことを把握して、事前準備・対策をとることが重要です。
この記事では、ADHDの特性を持つ人の、仕事における悩み事を紹介し、その解決法について具体的に説明しています。
解決法があなたのヒントとなり、明日からの仕事が少しでも楽になれば幸いです。
職場での人間関係を円滑にするポイントと苦手な仕事の解決法
コミュニケーションとは、相手がいての会話のやりとりですから、ただ一方的に自分が話すだけでは成り立ちませんね。
コミュニケーションを円滑に取るには、
- 相手の言わんとしていることを理解する
- 相手の言葉の意図を想像する
- どのように話せば相手に伝わるかを考える
- 自分が放つ言葉で、相手がどのような気持ちになるかを考える
これらのことが必要です。
つまり、頭の中で言葉のやりとりの計画を立てて話すことがコミュニケーションなのですが、ADHDの特性を持つ人は計画を立てることが苦手(計画を立てる前に頭に思い浮かんだことを実行してしまう)なために、これが困難になります。
また、会話中でも自分の考えで頭の中がいっぱいになったり、他のことに気を取られがちです。
コミュニケーションを取る際に、このような状況に陥ったことはありませんか?
- 相手のことを思いやらない発言
- 相手の意図とはかみ合わない発言
- 相手の話を聞いていないような態度
- 一対一なら良いが、大勢になると話すタイミングがわからない
- プライベートでの付き合いに発展するのが面倒で、会話の途中で逃げ出したくなる
- 仕事に関する真面目な会話はできても、世間話になった途端に何を話せば良いかわからない
職場の上司や同僚との関係性はコミュニケーションで作られるため、コミュニケーションが苦手だという特性を持つADHDの人が、人間関係を上手く築けないことはよくあることです。
気づけば、自分だけが蚊帳の外ということもあるでしょう。
ADHDの特性を持つ場合、基本的に一人で進めて完結する専門的、職人的な仕事がおすすめです。
一人でできる専門的、職人的な仕事
- ライター
- イラストレーター
- 学者、研究者
- ポスティング
- トラックの運転手 など
また、誰でも自分の雰囲気に合う職場、合わない職場はあります。
面接や見学の際に雰囲気を見極めることが、後々の人間関係で悩まないためにも大切です。
その上で、人間関係を解決するポイントを3つ提案します。
💡ポイント1:必要最低限のイベントにのみ参加する
職場全体の新年会や送別会などのイベントは参加するが、一部のグループやプライベートな関わりは一切持たない、と割り切って接する方法です。
「この人はプライベートな話はしない」という印象をみんなに持たせて、それを突き通します。
💡ポイント2:聞き役に徹する
コミュニケーションをとる際、基本的には聞き役にまわり、要所要所でのみの発言に留めます。
聞き役に徹することによって、味方を増やせる可能性が高くなるのです。
「ええ」「それはすごいですね」「本当ですか?」「おもしろいですね」など、上手に相槌を挟みながら、相手の話を楽しんで聞くようにしましょう。
💡ポイント3:フォロー役をみつける
リーダーや上司に自分の特性について理解をしてもらい、自分のフォローに回ってもらうことで人間関係を円滑に進めることが可能となります。
正確性・スピード性が求められる単調な仕事
ADHDの特性を持つ人が苦手とすることのひとつが「正確に、スピーディ―に、同じ仕事を繰り返すこと」です。
工場のラインに立つ仕事や、お金に関わる仕事などが当てはまります。
ADHDの特性を持つ人には下記の特徴があるため、単調な仕事や正確性を追求される仕事、スピードを求められる仕事は向いていません。
仕事をしていて、このような事を感じたことはありませんか?
- 不注意やうっかり忘れ
- 集中力のなさ
- 飽きやすさ
- 疲れやすさ
一方、自由度が高く、自分のペースで進められる仕事は得意とします。
しかし、予定を先延ばしにしてしまう傾向がある人や自分で計画を立てることが苦手な人は、「いつまでにここまで仕上げる必要がある」という大枠が決まっている仕事のほうが取り組みやすいでしょう。
どちらにせよ、正確性・スピード性を求められる仕事に就くことは避けるようにすると良いですね。
自分の苦手ポイントを理解し、苦手なことが求められる仕事は選ばないということも大切です。
それでも、正確性・スピード性が求められる単調な仕事に出会ってしまった時、どうすれば良いでしょうか。
ここでは2つのポイントを提案します。
💡ポイント1:十分な時間を取る
「自分は他の人よりも時間がかかる」ということを自覚し、十分な時間を確保して取り組むようにしましょう。
また、ひとつひとつの工程ごとに確認作業を入れることも大切です。
💡ポイント2:休憩を取る
飽きて手が止まるようであれば、一旦休憩を挟みましょう。
取りかかる前に、下記のように明確な区切りを決めることもオススメです。
- 「何時まではこの仕事をする」と決める
- タイマーを用いて「20分間は作業を続ける」など
咄嗟の判断を求められる仕事
ADHDの特性を持つ人は、咄嗟に判断を求められることが苦手です。
仕事中、このようなことに悩んだことはありませんか?
- 反射的な受け答えをしてしまったばかりに、後々困る
- 電話応対が苦手
特に、電話の受け答えを苦手とする人が多い傾向にあります。
なぜなら、電話は会話の理解に時間をかけられないためです。
また、情報をじっくり整理してから自分の答えを出すことができません。
情報の整理が追い付いていないのに、「答えを求められている」 = 「返答しなければ」となり、焦って応えてしまうのです。
ここでは、咄嗟の判断を求められた時の4つのポイントを提案します。
💡ポイント1:整理する時間をもらう
自分の中で情報がまだ整理できていない時、もう少し時間が欲しいという時は答えをすぐには出さず「確認してから、後でご連絡してよろしいでしょうか」と了承を得ると良いでしょう。
誤った答えをその場で伝えて後から訂正するよりも、正確な答えをしっかり確認して、後から伝えるほうが大事です。
💡ポイント2:事前準備
咄嗟の判断が難しいのであれば、先に起こることを予測し、答えを用意しておくと良いでしょう。
- こういうことを聞かれるかもしれないから、上司に確認しておく
- ここがよくわからないから、自分で確認しておく
- 会議の場では、自分の話すことはメモで用意しておく など
十分な事前準備を行うことで、いざという時に慌てたり焦ったりすることが少なくなりますよ。
💡ポイント3:マニュアルの準備
自分の中でマニュアルを用意しておくのも良いです。
更に、わからないこと、自分では解決できないことがあった時、誰に確認するかなど、困った時の対処法をいくつか用意しておくと安心です。
💡ポイント4:FAXやメールの活用
電話が苦手な場合は、目で見て文章を確認できるFAXやメールを連絡手段として用いると良いですよ。
やるべきことが増えてパニックになってしまう時は……
ADHDの特性を持つ人は、一度にたくさんのことを同時進行することが苦手です。
イレギュラーな仕事を頼まれた時、仕事が立て込んでいる時、こんな事で悩んだことはありませんか?
- どれから手をつければよいのかわからない
- やり始めたが、全て中途半端なままで、結局どれも終わっていない
一般的には、やるべきことがたくさんある場合、優先順位が高いものから片づけていきますが、そのためには、納期や仕事の重要度と照らし合わせて、優先順位をつけることが必要です。
しかし、一度に色々な情報を処理することが難しいADHDの人にとっては、それらは簡単なことではありません。
やるべきことが多い時は、書き出しと手順がポイントになります。
💡書き出し
やるべきことを一旦すべて書き出してみましょう。
以下の3点を書き出します。
- 仕事内容
- 納期
- 仕事の優先順位
優先順位がわからない場合は、何を優先すべきかを上司や同僚に確認しましょう。
後から「あれ、まだできてないの? 何でこっちを先にやったの?」と言われるよりも、先に確認しておくほうが賢明です。
「そんなことまでいちいち聞かなくても……」と思われても、失敗するよりは良いです。
また、「やるべきことを一枚一枚付箋に書いて貼り、やり終わったら付箋を外していく」という方法もあります。
しかし、この方法は付箋の管理ができず、付箋をなくしてしまうという事態に陥るケースもあるため、1枚の大きな紙に1番から順番にやるべきことを書くようにすると見やすくて確実ですよ。
💡手順
- 優先順位1番の仕事から順番に確実に終わらしていく
- 終わったらその都度、提出・報告し、チェックを入れる
- 次の優先順位の仕事に取り掛かる
並行して複数の仕事を進めるのではなく、ひとつずつ確実にこなしていきましょう。
時間・スケジュール管理
ADHDの特性を持つ人は、時間やスケジュールの管理が苦手です。
スケジュール管理において、こんな事で悩んだことはありませんか?
- 予定を忘れる、または間違える
- 納期を忘れる、または間違える
- ダブルブッキングしてしまう
- イレギュラーな仕事が入った時、スケジュールを組み直せない
ADHDの特性を持つ人は「チャイムが鳴って、今からは○○する時間」「チャイムが鳴り終わって、○○の時間は終わり」と学校のように区切りがあり、一日の枠組みが出来上がっているほうが動きやすい傾向がありますが、実際の仕事の場面では、後から後からイレギュラーな仕事が入ってきますよね。
イレギュラーな仕事が入ってきた時にいつもとは違うタイムスケジュールで動かなければいけませんが、ADHDの特性を持つ人は瞬時にスケジュールを組み直すことが難しく、また、「スケジュールを書くこと自体を忘れてしまう」「書いたスケジュールを確認し忘れる」という場合も多いため、
- 納仕事が入る度に、スケジュールを書き込む
- スケジュールを確認するタイミングを決める
上記の2点を習慣化するようにすると良いですよ。
※仕事が入ったタイミングでスケジュールを書き込まなければ、その仕事は忘れてしまう可能性があるため注意が必要です。
また、書き込んだスケジュールは確認しなければ意味がありません。
「朝昼晩」「トイレに行くタイミング」など、確認しやすいタイミングを見つけましょう。
スケジュールを作る時のポイント
- 書き込みが簡潔であり、ひと目で見てわかりやすいこと
- その仕事が「変更不可能」か「変更可能」かを区別すること
継続するためには「簡単であること」が一番です。
自分なりのフォーマットを作って、自分が把握しやすいように見える化しても良いですね。
また、イレギュラーな仕事が入った時にスケジュールを組み直せるように、その日時までに必ず終わらせる必要がある仕事なのかどうかを識別できるマークをつけておくことも良いでしょう。
最後に、予定・スケジュールの管理ツールを紹介します。
一般的には、手帳ですが、次の2つを活用することもできます。
💡卓上カレンダー
卓上カレンダーは広げなくても書き込め、ひと目で予定がわかるため、タイムスケジュールは難しいかもしれませんが、ざっくりとした予定やTo Doリストの記入に適しています。
書き込んだ卓上カレンダーを持ち歩くことも良いですよ。
💡スマートフォンのアプリ機能
今はスマートフォンのアプリが充実しています。
タップやマイクに喋るだけで簡単に入力でき、事前に通知してくれるアラームやリマインダー機能もあります。
これらの機能を有効活用するのもひとつの方法です。
まとめ
ADHDの特性を持つ人は、「一生懸命やっているのに、どうして上手くいかないんだろう」と、苦労したり悩んだりすることも多いことでしょう。
ADHDの特性から、苦手なことは何度やっても苦手のままであり、同じやり方を繰り返していても解決できることではありません。
ほんの少しの事前準備と対策で、随分と仕事が行いやすくなります。
また、始業時間より早めに出勤して、一日の流れを確認・準備しておくだけでも、スムーズに仕事に取り掛かれるはずです。
「これが自分の仕事のやり方だ」と自分のやり方を貫きましょう。
仕事での失敗はストレスとなり、自信をなくすきっかけとなります。
次に同じ仕事を行うことも億劫となります。
事前準備や対策で失敗を減らし、ストレスや自信を失う機会を減らすように、仕事と向き合っていきましょう。
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