発達障害児を育てる親御さんたちは皆、遅かれ早かれ【子どもの進路選択】という壁にぶつかりますよね。
正しい選択をするには多くの労力を割くこともあるでしょう。
しかし、何をもって正しいとするのか、それは非常に難しく、はっきりとした答えがないのが実際のところではないでしょうか。
今回は、発達障害児の小・中学校への進学時に、保護者の皆さんが知っておくべきことをご紹介します。
医師、学校、サポート機関ではなかなか伝えきれないことも織り交ぜて書いていきます。
お子さんがまだ小さい場合には参考までに、また、就学間近のお子さんがいらっしゃる保護者の皆さんには就学までの不安を取り除き、最善の学校選びができる一助となる内容になっているはずです。
ぜひお役立てくださいね。
「適正就学」とは
子どもに発達障害があっても、目に見える大きなハンデがなければ、親は障害のない子ども達と同じように育てていきたいと思うものですよね。
しかし、子どもが成長していくにつれ進路選択に迷う親御さんはとても多く、なかなかうまくいかないことが増えていってしまいます。
「進路」とは字の通りお子さんが将来進んでゆく道筋のことですが、その道筋はその子にあったもの(生き方)でなければなりません。
そして、能力を伸ばせる環境であることも重要です。
発達障害がある子どもは、潜在的能力が充分に備わっていたとしても、本来の力を発揮することが難しい場合がほとんどです。
そのため、お子さんの進路選択の際に親御さんが最も考えておくべきことは、「子どもの持つ能力が最大限に発揮できる環境であるかどうか」という点です。
そうした教育の場を選び就学させることを「適正就学」といいます。
また、進路選択をする際には「子どもの状態に合った教育環境を用意する」ことが選択基準の根幹になければなりません。
それは、時には難しく覚悟が必要な場合もありますが、保護者の皆さんの決断によって「適正就学」をさせてもらえた子どもは幸せを感じながら成長していきます。
将来の進路選択の道もしっかりと切り開いていくことができるでしょう。
しかし、そうでない教育環境を選択した場合、親も子もお互いにストレスを抱えてしまう結果になるかもしれません。
いつでもチャレンジすることは大切ですが、世間体やネガティブな先入観で判断し「適正就学」ができない子どもを作ることは、子どもだけでなく親にとっても悲劇なのです。
💡長期的な観点からみた進路選択とは
子どもの成長にはいくつもの節目がありますね。
発達障害を持つ子も持たない子もそれは変わりません。
しかし、発達障害を持つ子には、障害を持たない子と同じように教育を受けさせることがよい方向につながる場合と、そうでない場合があります。
その時々のお子さんの状態に合わせて、常に教育環境を整えていくことは親御さんにしかできないことです。
その際に考えておくべきことは、上でも述べた「適正就学」の視点を持つことと、それに加えて、お子さんの進路の大まかなスケジュールを把握しておくこと。
それらが決断を下す際の強みになります。
- 就園前や就学前の年齢:相談支援(保健所、子ども支援センター)などに問い合わせ、乳幼児ならば療育機関を利用すべきか、またどのように接していけばよいかなどを考えていく。
- 幼稚園・保育園児:小学校入学の前に準備することは何かなどを相談する。
- 幼小学校・中学校に進学している場合:相談支援(相談をセンター、発達障害者支援センターなど)を利用する。
- 高校への進学準備:中学2年生の秋頃から始める。(在籍している学校の特別支援教育のサポートを受けることも可能)
- 高校進学後:就労を意識した進路先を決定。相談支援(全国障害学生支援センター、発達障害者支援センター)やそれぞれの進学先のサポートを受けながら、さらなる高等機関への進学を検討する場合も。いずれにしても社会人となり就労、自立できるようにしていくことが最終目標。
上記が大まかな進路スケジュールです。
こう考えてみるだけでも長い道のりであることは確かですが、一歩一歩成長していくお子さんの姿は親御さんの喜びとなるはずです。
そのためにも、子どもの「就労・自立」という最終目標を見据えた最適な進路選択をすることが重要となります。
頼るべきサポート機関や準備すべきことを把握しておくと、先の見えない不安に陥ることも少なくなりますよ。
次から、発達障害児にとって「適正就学」に成り得る小・中学校の進学先を挙げていきます。
それぞれの学校における強みや特性がありますので、どのような教育が受けられる場所なのかだけでもつかんでおくと良いでしょう。
就学前に考える選択肢
幼稚園・保育園の年長の時期を迎えるお子さんには、学校選択の時期が目前に迫っていますよね。
発達障害を持つ子どもの進学先にはどのような選択肢があるのか、まずはその点を知ることが大切です。
すでに多くの情報をお持ちの保護者の皆さんには、どのような進路選択がお子さんに必要なのか再度検討しながら目を通していただければ幸いです。
公立小学校
小学校では子どもたちの状態に合わせ、適切な指導を行う特別支援教育が実施されています。
以前に比べると、この特別支援教育が広く普及し始め、公立小学校でもそれぞれの子どもの特性に配慮した教育が受けられるようになってきました。
クラスは一般的に、通常学級、特別支援学級、通級指導教室にわかれ、支援を必要とする子どもの状態に合わせてどの教育環境を選ぶかが決定されます。
通常学級
- 通常学級とはいわゆる「普通学級」のこと。
- 通常学級では基本的には一斉指導形式で授業が進められますが、中には学級をいくつかのグループに分け、少人数制の指導や習熟度別の指導が行われることもあります。
- ADHDなどの発達障害の特性が出やすい子どもの場合、通常学級でうまくいくかどうかはクラスでの理解や協力体制が得られるかどうかがポイントになるため、担任教師の力量や学校のサポート体制も大切です。
- 常に見守り続ける体制を整えてから、入学させることが理想。
特別支援学級
- 主に障害(知的障害)がある子どもが在籍する少人数学級のこと。
- 対応は子どもの状態に合わせて行われます。
- 担任制ですが、必ずしも専門の知識を持った教師が担当するわけではなく、担当となった教師が必要に合わせて研修を受けながら対応しているのが現状です。
- ほとんどの場合、特別支援学級に在籍していても通常学級との交流は頻繁に行われます。
- 通常学級の中にもきちんとイスと机が用意され、まわりの子どもたちにも受け入れられやすい態勢作りが教師によって形成されていますが、その体制作りの裏では特別支援学級と通常学級と保護者の連携は必須となります。
- 意思の疎通や対応の共通認識がなされて初めて、子どもが安心して過ごせる環境に成り得ると考えておくとよいでしょう。
通級指導教室(通級教室)
- 通常学級で行われる個別指導や少人数指導よりもさらに細やかな指導が受けられる教室のこと。
- 基本的には通常学級に在籍しながら週に何時間か苦手科目の補修や、対人関係や生活面での問題のサポートなどを行います。
- 教師の空き時間などを調整して実施されることが多く、場合によっては他校まで出向くケースもあります。
- 通級指導教室でも学校との連携が必須。
- 公立小・中学校で特別支援教育が始まって約10年ほどが経ちますが、この間、支援を必要とする子どもたちをとりまく教育現場も少しずつ変化してきました。
- 現在では小学校に就学する上で、子どもの自尊感情を育て、成功体験を積み重ねていける教育体制も少しずつ整ってきたのではないかと感じています。
お子さんが公立小学校へ就学した場合、上記3つの学級のいずれかに在籍することになります。
通常学級以外での生活を選択すべきか迷った時、どうしてもわが子を通常学級に通わせたい気持ちはよく分かりますが、発達障害の子どもが大勢の子どもがいる教室の中で、まわりと同じように学び続けることは大きな負担となる場合もあるのです。
是が非でも通常学級に!という気持ちがあっても、通常学級に在籍しながら通える通級指導教室や、少人数で学べる特別支援学級も選択肢のひとつとして心に留めておくと良いのではないかと筆者は思っています。
また、入学時は特別支援学級であったとしても、学年が上がるごとに通常学級への変更も可能です。
お子さんの状態に合わせて、様々な対応を学校と検討していくとよいでしょう。
特別支援学校
特別支援学級では、子どものニーズに合わせた専門的な教育を行っています。
将来自立していくための生活能力の向上にも力を入れている点が特徴です。
特別支援学校と小学校との違いは、子どもの状態に合わせた専門性の高い教育が受けられること。
例
- 施設や設備面でも支援体制が整えられている。
- 子どもが学校で何か問題を起こすのでは?」という保護者の不安も軽減される。
- 何かあった場合には速やかに適切な対応をしてもらえる点でも安心。
また、日頃から教育相談も受け付けていて、専門家からの助言や援助も受けやすい環境であることも保護者にとっては心強いでしょう。
さらに、進学、就労までの手厚いサポートもメリットです。
就学したばかりの小さなお子さんには、自分のことは自分でできるようになるための生活指導にも力を入れ、身の回りのことは自分でできる力を付けさせていきます。
つまり特別支援学校とは、それぞれの子どもが抱える問題を克服し、将来的な自立を目標とした教育が進められていく学校だともいえますね。
特別支援学校には幼稚部、小学部、中学部、高等部まで設置してあるのが一般的です。
小学校に該当するのは小学部ですが、どの年齢からでも入学することができます。
比較的障害の程度が重い子どもを対象とし、知的障害のない発達障害の子どもを対象とした特別支援学校はありません。
入学にあたっては、療養手帳の交付や医師の診断書が必要な場合もあります。
検討する場合には直接支援学校に問い合わせるか、子ども支援センターなどで詳しい情報収集を行うことから始めるとよいでしょう。
特別支援学校に通わせるべきか、公立小学校に通わせるべきか、この進路選択で悩まれる親御さんは多いものです。
ほとんどの場合、可能であれば公立小学校への進学を希望されますし、それが親の本音だと筆者は思っています。
しかし、迷っているということは、わが子には手厚いサポートが必要であると認識されているのも事実なのではないでしょうか。
お子さんによっては、専門性の高い少人数でじっくり学べる環境のほうが向いている場合もあります。
もしも、周りの目を気にして、あるいは先入観から支援学校をなんとなく避けてきたという場合には、実際に見学してみることで印象が変わるかもしれません。
事実、見学後に特別支援学校への進学に方向転換される親御さんも多くいらっしゃいます。
お子さんの状態にもよりますが、選択肢のひとつとして検討される価値は十分にありますよ。
学校選択制とは
これまでの公立小・中学校では、住んでいる場所の通学区域内の学校へ入学することが一般的でしたが、最近では「市区町村内」の複数の学校から進学する学校を選べる「学校選択制」を採用する市区町村も増えてきています。
「学校選択制」のメリットは、特別支援教育に熱心な学校があれば例え通学区域外に住んでいてもそこにお子さんを入学させることができること、保護者が希望する学校を選択できることです。
そこまでする必要があるのかどうか悩む親御さんも多くいますが、現在の公立学校ではどの学校も特別支援教育を実施しているものの支援体制の整備にバラつきがあるのが現実です。
そのため、通学区域内以外に教育環境が整った学校がある場合にはそちらの学校への進学を検討することができるようになっており、またそちらを選ぶ親御さんもいらっしゃいます。
条件
- 希望先の学校が「学校選択制」をとっていることが前提。
- 他の市町村区への就学となるため、一定の手続きを行い、教育委員会間での話し合いも必要。
- 校区外になるため通学に関する問題や、引っ越しを検討しなければならない場合もあり、それらの対応も視野に入れて考えておくこと。
実際には「やってみなければ上手くいくかどうかはわからない」という領域のことではありますが、もしも他の地域に理想的な学校があれば検討してみることは決して無駄なことではありません。
上手くいかなければ、その市区町村内の別の学校に転校することも可能です。
詳細は自治体の方針や地域の実情によるところが大きいので、検討される場合は一度お住まいの地区の教育委員会等に相談してみるとよいでしょう。
中学校の選択肢
小学校を卒業し中学校へ進級する際には、再び進路選択をすることになります。
公立中学校でも引き続き特別支援教育が実施されますが、中学校でも学校により支援体制に温度差があるのは否めません。
小学校からの引継ぎがうまくいくかも大きなポイントとなります。
また、中学校では高校へ向けての進路指導が行われます。
そのため、中学校を選ぶ際には将来的な進路を見据えた視点を持つことも大切になってきます。
この時期は主に義務教育にあたる期間であり、小・中学校の選択はお子さんの将来へ向けた基本的な力を育む重要なものです。
さらにこの時期の思春期を迎えた子どもには何かと手がかかるのも事実であり、その後には就労や自立に向けて最も重要となってくる高校への進学が待っています。
そのため、それを支える保護者には大きな負担がかかってくることが予想されます。
もしも過剰なストレスを感じるようであれば、あまり深く考え込まないようサポート機関(相談センター、発達障害者支援センター)などをうまく頼り、リフレッシュ・チャージするなど親御さんご自身の心のケアも必要です。
中学校の選択肢には、まず自宅から近い公立中学校か通学区域にある他の公立中学校、あるいは特別支援学校の場合は中等部への入学になります。
さらに私立受験を含めると、大きく4つにわけることができます。
小学校と重なる部分もありますが、ここからは中学生に必要な観点を加えてご紹介します。
公立中学校
中学校でも小学校と同様に、特別支援教育が実施されています。
通常学級にするか、通常学級に在籍しつつ通級指導教室を利用するか、特別支援学級にするのか大きく選択肢は3つ(各学級や教室の特徴は小学校と同じ)です。
小学校との大きな違いは、高校への進路指導を考えていかなければならない点です。
一般の高校に進むのか、特別支援学校の高等部へ進むのか、あるいは就労かで取り組むべき課題も変わってきます。
- 一般の高校に進む場合:通常学級で学習に遅れが目立つようであれば、通級指導教室で遅れた分を補う必要が出てくる。
- 特別支援学校の高等学校に進む場合:特別支援学級で担任と早い段階からの情報収集を進めておくことが大切。
- 就労する場合:上記同様。お子さんの状態に合わせた教育環境を整えておかなければなりません。
どの教室に籍をおくかもケースバイケース。
小学校では支援学級で学んでいた子どもが、中学校からは通常学級で普通に過ごすこともありますし、その逆もあります。
学年が変わる毎に環境を見直し、必要があれば変更することも可能です。
お子さんにとって最適な環境を整えるためには、やはり早い段階からの進路スケジュールを把握し、それに合わせた教育を行うことが大切です。
そのためには常に可能性のある進学先の情報収集は欠かせませんし、学校との連携もより深めていかなければならないでしょう。
特別支援学校
特別支援学校とは、従来の盲学校、聾(ろう)学校、養護学校を合わせた学校です。
主な目的は、前にも述べた自立と生活支援が中心です。
特別支援学校の中等部へ進学したお子さんは、そのまま高等部へ進学するか、就労することを選択される場合が多いようです。
中等部では将来への進路を早い段階で明確にできれば、それに合わせた専門の教育が受けられます。
それがそのまま「将来の自立」へと直結する場合も多くあり、子どもに合わせた「生きる力」を培う場として最も有力な教育環境ともいえますね。
学校選択制
中学校でも学校選択制が導入されています。
小学校同様に学校選択制を導入している学校であれば、区域外の中学校であっても選択することができます。
また特別支援学級を希望していても区域内に対応できる学校がない場合には、選択制を導入していなくても区域外の学校を選ぶことも可能です。
学校選択のポイントは、支援が充実している環境を選ぶことです。
詳細については、通っている小学校やお住まいの地区の教育委員会等に相談してみるとよいでしょう。
私立中学校
お子さんの中学校への進学を考える際、私立中学の受験を検討したい場合も出てくると思います。
私立中学校のメリットは、小中一貫校である場合が多いため6年間をかけてじっくり高校卒業後の進路を考えられる点にあります。
長期的な教育体制を整えやすい点や、その学校独自の特色ある教育を受けられる点も私立校ならではであり、大きな特長です。
私立中学を受験する場合には、教育方針と学習面、生活面が子どもにとって好ましい環境であるのかどうかを判断する必要があります。
中には発達障害児を積極的に受け入れている学校もありますし、反対に支援体制はゼロに等しいという学校もあります。
学校の実情を知るためには学校見学をしたり、実際にその学校に通っている子どもの親に様子を聞くなどして十分な情報を集め、検討していくことが大切です。
また、私立校の場合は金銭的な負担もかかってきます。
入学金の他に毎月の授業料や設備費もかかりますので、公立中学校に比べて金銭面での負担はかなり大きくなることを考えておく必要があります。
就学前の準備
発達障害の子を持つ親御さんが、お子さんの就学前に整えておくべき教育環境作りについてご紹介します。
この教育環境作りとは、保護者だけで行うものではなく、学校や様々なサポート機関と連携しながら少しずつ作り上げていくものです。
そのため、長期的に考えて一歩一歩進めていくというスタンスでいることが大切です。
まずは早い段階での情報収集から始めていきましょう。
お子さんが4歳になる頃を目安に始めると余裕が持てます。
前にご紹介した教育機関の中から、お子さんの状態に合いそうな学校をピックアップするといいと思います。
情報を集める際には書籍やネットの情報も有効ですが、現在お子さんが通っている幼稚園、保育園、療養所などの先生に相談してみるのもいいと思います。
💡各機関との連携の進め方:小学校へ進学する場合
各機関との連携を深めるといっても、初めて就学されるお子さんを育てる親御さんは何をしていいのか分かりにくいのが現状でしょう。
ここでは実際に就学前の準備として、各機関と連携を進めていくために親がすべきことはどんなことなのかを具体的にご紹介します。
ただし今回は「就学先が小学校」に決まっている子どもの場合を前提としているため、全てのケースには当てはまらないかもしれませんが、参考までに読んでいただけると幸いです。
具体的な就学先が決まったら、安心してお子さんを預けられるよう各機関と連携した支援体制を作っていく必要があります。
小学校へ入学する場合に考えられる各機関とは、現在お子さんが在籍している幼稚園や保育園、それから小学校がメインになります。
他にもこれまで関わってきた専門機関やサポート機関も含まれます。
以下にそれぞれの機関との連携方法についてその一例をご紹介します。
小学校との連携作り
特に保護者と密に連携を深めていくべきは、やはり進学先となる小学校です。
多くの場合は、この進学先に保護者と在籍している幼稚園や保育園が連絡を取り合い、受け入れ態勢を整えていくことになります。
お子さんの持つ発達障害の特性と支援の必要性を伝え、進学先の小学校に理解を求めていくことが重要です。
その際には、お子さんに関する様々な資料をまとめたもの(書き方やフォーマットなどは自由です)を一緒に添えておくと情報共有がしやすくなりますよ。
簡単にまとめたものでも、あるのとないのとでは大きな違いがあります。
受け入れる側の小学校では、保護者から得た情報を元に具体的な対応策を検討していくのが一般的な流れとなりますので、どんな情報でも欲しいと思っています。
遠慮せずに伝えるべきことは全て伝えることが、その後のスムーズな連携につながると思っておくとよいでしょう。
ただし、その際には「こうしてほしい」「こうしないといけない」という一方的な要求だけにならないように注意することも大切です。
学校側の提案には一度は必ず検討してみるなど、柔軟な姿勢でいることが進学先との信頼関係を上手く作っていくためのポイントです。
特別支援コーディネーター
小学校との連携作りの際にキーパーソンである特別支援コーディネーターとは、主に小学校と保護者やサポート機関との連携、調整を行う調整役のような役割を担う人物で、小学校の教頭や教務主任がコーディネート役をつとめていることがほとんどです。
保護者がはじめて小学校に相談に行く際には、多くの場合この特別支援コーディネーターが窓口になり、また、お子さんの就学前には特別支援コーディネーターが中心となって、小学校側の受け入れ態勢を整えていきます。
必要であれば、専門機関などのサポート申請を行うのもコーディネーターの役割です。
そのため、入学前後からコーディネーターと保護者が接する機会は多くなります。
新年度の体制が整えば、養護教諭や担任となる教師を含めたより深い連携作りが進められていくことになります。
在籍している幼稚園・保育園との連携の仕方
お子さんの特性や受け入れ方法が分からなければ進学先の小学校は必要な支援体制を検討することができないため、お子さんが在籍している幼稚園や保育園から、お子さんに特化した支援のノウハウを進学先に伝えてもらうことは非常に有効な方法です。
しかし、学校、保護者、幼稚園(保育園)の三者が集まって話し合う機会を持つことは実際には困難なことでしょうから、親御さんが仲介役となって幼稚園(保育園)から情報をもらい、それを小学校に伝えていくことも大切です。
その際にも、簡単なレポートのような形にまとめておくと伝わりやすくなります。
その他のサポート機関との関わり方
就学前から相談してきたサポート機関がある場合には、就学後も相談に乗ってもらうようにするといいでしょう。
特にお子さんが小さい頃からサポートを受けてきた機関には、お子さんに関する情報がたくさん残っているはずです。
就学後にそのような情報が欲しくなることもあるかもしれません。
多少距離ができたとしても、継続したサポートを受けるようにしましょう。
またサポートを受けるもう一つのメリットは、ストレスがかかってくると狭くなりがちな視野を多方面との関りを持つことによって狭めてしまわないようにする効果もあります。
「個人的には利用できるサポートは全て利用する」くらいに考えておくとよいのではないかと筆者は思っています。
連携作りが上手くいくかどうかは、実は保護者の働きかけによるところが大きいのが事実です。
進学先の小学校が熱心な場合は、保護者の負担も軽減されますが、そうでない場合もあるでしょう。
そうならないためにも、進学先選びの段階で、きちんとした連携作りが進められるかどうかもある程度判断しておくことが必要です。
就学相談とは
就学相談とは、障害のある子どもや気になる点が多い子どもの望ましい教育環境について、専門の相談員と保護者が一緒に考える場として各自治体ごとに設けられている窓口のことです。
この就学相談では、関係者が集まり子どもの状態を把握しながら就学先を検討・決定していきます。
(ここでの関係者とは、相談の窓口である教育委員会と特別支援学校などの専門機関、または進学先となる学校、そしてその時点でお子さんが在籍している幼稚園・保育園のことです)
就学相談のメリットは、子どもに必要な支援はどのようなもので、その支援を受けるにはどのような方法があるかについて、多角的な視点からの意見を聞けるという点です。
この就学相談は就学先を決めるためだけでなく、お子さんとの関り方を見直すよい機会としても、積極的に活用してみてください。
就学相談の受け方については、お住まいの地域の教育委員会に電話をかけて、相談内容について簡単に伝え、どこに連絡すればよいかを教えてもらいましょう。
その後相談機関内で会議が開かれ、担当者が決まると連絡が入り、そして担当者と保護者との間で実際の就学相談がスタートします。
各自治体ごとに流れが前後する場合もありますが、大体このような流れで進んでいくと思います。
子どもの就学について何をすべきか分からないという場合にも、積極的に活用されることをおすすめします。
まとめ
子どもの将来に関わる進路選択はどんな親でも悩むものです。
しかし、適切な環境を選択することができれば、子どもは親の心配をよそに大きく成長していきます。
それは発達障害児も同様です。
そのためにも、適切な就学先を判断するには、早めに行動することが大切です。
就学前のお子さんがいらっしゃる場合は、4歳を過ぎた頃から始めることをおすすめします。
まずは情報収集から始めてみてください。
ある程度情報が集まったら、近くのサポート機関や教育委員会に相談してみるとよいですよ。
少しずつでもかまいません。
無理せずに、一歩一歩進めてみることが最も大切です。
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