今現在、ADHDの特性を持つあなたが「毎日毎日怒られてばかりいる」「私は仕事のできない人間かもしれない」「何をやってもダメ」と思っているとしたら、それはあなたが仕事の出来ない人間だからではなく、「自分の持つ特性に合った仕事に就いていないから」かもしれません。
ADHDの人にとって、苦手な業務と得意で才能のある業務は、ある程度はっきりしています。
この記事を読んで、現在仕事に悩んでいる人が、「私は仕事のできない人間ではなく、適した仕事に就いていないだけなんだ。自分に適した仕事に就けば、もっと力を発揮して、楽しく仕事ができるはず!」と前向きになれることを願います。
ADHDの母は“特性”に合う「適職」に就いていた
ADHDの特性をもつ母は、新卒から定年まで、ずっとフルタイムで働き続けてきたワーキングマザーです。
私を産んだ後もすぐに復帰し、0歳の私を保育園に預けて、本当によく働いていました。
母を見てずっと思っていたことは、「ADHDの母にとって、今の仕事は本当に天職なのだろうな」ということでした。
家庭内では、ADHDの特性ゆえに夫婦喧嘩や親子喧嘩が絶え間なく起こり、また、意図せぬ失敗に家族がフォローしなくてはならない事態も頻繁に起きていました。
けれどそんな母が、仕事上ではミスはあれど、職場の人間関係で大きなトラブルを起こしたり、休職したり、また定年前に退職するようなことが一度もなかったのは、ADHDの特性と仕事がマッチしていたからだと感じています。
📌母の仕事は保育士
母は保育士でした。
保育の仕事は、これから挙げる『ADHDの人は避けたほうが良い要素』が少なく、『ADHDの人に合う要素』が詰まっている仕事でした。
保育士という仕事は、専門的知識及び技術をもって、児童や保護者に寄り添い、教え導いていく仕事のプロです。
そういった保育の仕事には、「子どもが好きな人」「人に対して優しさを持てる人」「ミスや失敗を(子どものために)みんなでカバーしようとする人」「チームワークを大切にしようとする人」が多く集まる傾向があります。
そのため、母がADHDの特性ゆえに小さなミスや勘違いを頻繁にしてしまっても、「お互い様ですよ」と助けてもらっているようでした。
母自身も他の職員のミスをカバーすることに一生懸命でしたし、「みんなでカバーし合うことが当たり前の雰囲気」が、ADHDの母にとって心地よかったのだと思います。
また、保育の仕事はADHDの人に多く見られる『アイデアマン』の力が発揮できる仕事でもありました。
「ここをこう工夫したら、もっと子どもたちが自分で自分のことができるようになるかもしれない!」
母のそういったアイデアが、次々に採用され、子どもたちの成長へとつながっていることは、間接的に聞く、娘の私にもわかりました。
そして、ADHDの特性でもある「じっとしていられない」ことは保育の仕事では全く気になりません。
終始動き回る園児たちに、定年間近とは思えないほどフットワーク軽く全力で付き合っていた母。
保育の仕事は、ADHDの母にとって本当に天職だったと思います。
定年まで勤め上げられたのは、ADHDの特性に合っていたから。
では、どんな仕事がADHDの特性に合っていて、どんな仕事は避けたほうが良いのか、具体的に整理していきましょう。
ADHDの特性と相性の悪い仕事4選
小さなミスも許されない仕事
ADHDの特性である『注意欠陥』。
どんなに努力しても、その特性から大事なことを忘れてしまうこともありますし、対策をしていても対策自体を忘れてしまうことだってあります。
そんな『注意欠陥』という特性に、『少しのミスも許されない仕事』は非常に相性が悪いのです。
具体的には、細かい事務作業がメインの仕事、数字やスケジュールの管理が膨大にある仕事などは、失敗してしまう可能性が高く、避けたほうが良いでしょう。
事務、経理、生産管理、品質管理等の仕事などです。
スピードと正確さが最も重視される仕事
私自身、ハンバーガーを売る、大手ファストフードチェーンで働いていたことがあるのですが、「この仕事は、母みたいな人には合わないだろう」と思っていました。
格安ファストフード店に求められることは「安さ」と「速さ」と「正確さ」であり、ADHDの人が得意なアイデアを出すことや、臨機応変さは重視されません。
混雑している時にレジに立っていて、「あ、あのお客さんドアを開けられなさそう」という気遣いゆえに、注意が逸れてしまうと目の前の業務が流れるように進んでしまい、結果、お客様やマネージャーから怒られることになるのです。
大混雑する三連休などの日には、ひとつのミスがさらに混雑させる事態となるため、とにかく「正確に」、そして「早く」がプレッシャーとなって押し寄せてきます。
ADHDの特性である「多動性」と聞くと、「早く動ける」と勘違いする人もいますが、早く動けるのは「自分が〇〇したい!!」と思った時であり、「機械のように一定に早く動き続ける」とはまた異なる特性です。
ファストフード店や、終始レジが混雑しているファストファッション系の販売員などの仕事は、よほど内容が好きでない限り、避けたほうが良い仕事といえるでしょう。
言われたことを言われた通りに行う単純作業
世の中には、言われたことを言われた通りに、淡々と作業していくことが最も重視される仕事があります。
工場のライン作業、製作系の内職、梱包作業、データ入力等です。
一見、仕事が複雑でない分、楽な仕事のように思えますが、ADHDの特性を持つ人にとっては、幾ばくか退屈に感じるかもしれません。
ADHDの人は、着想が得意なアイデアマンが多いと言います。
「ここをこうやったらもっと効率的になるのに!」「ここをこうアレンジしたらもっと素敵になる!」と沢山の素敵なアイデアを思いつき、衝動的に、改善案を上司に直訴したり、資料にまとめて提出したりするような『行動力の高い人』もいますが、「言われたことを言われた通りに」が求められる仕事は、従順に淡々と作業してくれる人のほうが上司に好まれるのです。
したがって、ADHDの特性の良い部分が生かされず、フラストレーションを感じる可能性が高いのです。
しつこく叱責する上司のいる職場
ADHDの特性ゆえに、わずかな小さいミスや勘違いを頻繁にしてしまうことがあります。
大抵の人は、それが業務に支障が無い限り「大丈夫」「すぐ直せば平気だよ」と流してくれるのですが、たまに、小さなことでも、しつこく叱責し、何度も何度も繰り返し「だからお前はダメなんだ」「どうしてこんな小さなミスを何度もするんだ」ということをわざわざ皆の前で怒る上司がいます。
もちろん、ミスはしないに越したことはありません。
けれど、こういったタイプの上司は、ADHDの人の良さや功績には一切触れず、出来ないこと不得意なことだけに注目し、とにかく怒りをぶつけたがる傾向があります。
そういった、『しつこく叱責する上司』のもとで仕事をし続けていると、「私はダメなんだ」「ADHDだから仕事が出来ないんだ」と、自己否定感を抱いてしまい、仕事の能率も下がってきてしまいます。
そういった悪循環は絶ちましょう。
あなたがガマンし続ける必要はないのです。
ADHDの特性と相性の良い仕事4選
アイデア・着想の求められる仕事
ADHDの特性を持つ人は、脳の前頭前野の抑制機能が弱いため、衝動的に行動してしまう反面、集中すればするほどアイデアやひらめきが出てくる傾向が強いと言われます。
そんな、アイデアや着想を生かせる仕事こそが、まさに、『ADHDの人の“強み”を生かせる』仕事なのです。
具体的には、「思いついたことを(上層部の許可や面倒な手続きをしなくても)すぐに実行できる」小さな会社や、人とダイレクトに関わる仕事です。
フットワークの軽さが売りになる仕事
ADHDの母のもとで育ち、ずっと感じていたことはADHDの特性ゆえの『フットワークの軽さ』です。
思いついたらパッと行動できる、「重い腰を上げて」という言葉はほとんど当てはまらないほど、「これイイネ!」と思ったらすぐに行動できる力。
ADHDの人にとってその衝動的なフットワークの軽さは、当たり前のように感じているかもしれませんが、凡人の私からしてみたら、それは素晴らしい力だと感じています。
そういった『衝動的なフットワークの軽さ』が売りになるような仕事は、ADHDの特性を強みに変えることができます。
たとえば、不動産の営業などの仕事は、足で稼げと言われるくらい、フットワークの軽さが非常に大事になってきます。
お客さんが「実は、○○町にある家が気になっていて…でも、別に今日じゃなくていいです」と言ったとします。
そんな時、営業の人が、お客さんの「少し気になるな、見てみたいな」という気持ちをすぐにキャッチし「思い立ったが吉日、すぐに車出すので、5分だけでも見ていきましょう!」と、乗り気で誘い出してくれたなら、自分からは腰を上げない人も「着いていくだけなら楽だし…」と、背中を押されることでしょう。
身体が動かせる仕事
ADHDの人は「じっとしていられない」「落ち着きがない」と言われますが、それは裏返すと「活発である」「機敏である」ということ。
母が保育士の仕事を長く勤め上げたのも、「活発さ」や「機敏さ」を生かすことができたからだと思います。
じっとしていられないなら、「じっとしていられちゃ困る!」と言われるような仕事を選べば良いのです。
たとえば、下記のような仕事です。
- 運搬や配達の仕事
- ポスティング
- 清掃
- 巡回警備
- インストラクター ……など。
これらの仕事以外にも、常に動いていなければならない仕事はたくさんあります。
情熱が必要な仕事
ADHDの特性を持つ人と一緒に仕事をしている中で、もっとも心を動かされるのは、「ADHDの人が、自分の『○○したい』を主張している時」です。
その熱量に圧倒されるのです。
ADHDの特性に「衝動性」がありますが、その衝動性は、「やる気」や「情熱」となって、周りを感化させたり、影響力を持ったりすることがあります。
たとえば、下記のような仕事です。
- 教師など、「人を育てる」仕事
- コーチやカウンセラーなど、「人を勇気づける」仕事
- チームのリーダーなど、「周りを引っ張っていく」仕事
これらの仕事は、そういった熱いパッションが時にとても重要です。
「やりたい!」「これが皆のために大事だ!」と心から熱くなり、主張できる力は素晴らしい力です。
そういった力が煙たがれることなく、大事にされるような仕事に就くことが大切です。
大切なのは、自分を生かせる仕事に就くこと
無理はしない、頑張りすぎない、工夫する
ADHDの特性を持つ人は、苦手なことと得意なことがハッキリしている傾向がありますが、「継続することが何より大事」「そのくらい乗り越えろ」「自分の苦手と向き合わないでどうする」といった周りの人の言葉に、必死でガマンしたり、無理して続けようとしてしまう人が多いのが現状です。
しかし、本当は、苦手と得意がデコボコしている分、苦手なことはできるだけせずに得意なことを強化し、ADHDの特性を最大に生かすほうが自分にとっても周りにとっても有益なはずなのです。
頑張りすぎず、どうやったら苦手なことをしないですむか、工夫することに着目してみましょう。
毎日怒られているなら転職も視野に入れる
ADHDの特性を持つ人にとって、脳の障害ゆえに、どうにもならないことに対して毎日怒られることは、心にも身体にも悪影響です。
あなたがもし今、職場で毎日のように叱責されたり、嫌な思いをしているのであれば、それはADHDの特性と仕事とが合っていない可能性があります。
毎日怒られていることに耐え続けていると、鬱病や対人恐怖症など二次障害を招きかねません。
まだまだ日本は、最初に就いた仕事を定年まで勤め上げる人が多く、それが美徳とされていますが、自分を守るために勇気をもって転職や業務内容の変更、配置転換願い等を検討することは、決して悪いことではないのです。
まとめ:必ず「適職」はある。「天職」もある
この記事を読んでくださっているあなたは、ADHDの特性ゆえに悩むことが多い人生だったかもしれません。
けれど、それは、学校や仕事など、標準的な型に当てはめた「こうでなければならない」環境下にいたせいも大きいのです。
学校と異なり、仕事は今や「標準的な型」はありません。
働き方も内容も、多岐にわたって存在しています。
毎日しんどい思いをしながら無理して続けなくてもいいのです。
辞めてもいいんです。
ADHDの特性ゆえに、怒られることが多いと「私は能力が低い、仕事が出来ない」と思いがちですが、絶対にそうではありません。
必ず自分に合う「適職」はあります。
適職に出会うことができたら、様々なアイデアを出し、行動力豊かに活躍できるでしょう。
頑張らなくていいんです。
自分が、より自分らしく輝ける仕事を、決して諦めないでください。
自分にとって心地よい仕事を探すことを、諦めないでください。
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