子どもの発達について指摘を受けると「まずは専門家に相談してみましょう」と言われますし、指摘されなくても「不安だから相談したい」ということがありますよね。
しかし、「専門家って誰?」「何科に行くの?」「子どもをどうやって診察するの?」「診断名はすぐにもらえる?」など、疑問や不安が多いことでしょう。
そんな親御さんたちに向けて、今回は子どもの発達について診察・診断してくれる専門医や病院・施設の探し方、選ぶポイント、早く診断を受けるためのコツや事前準備についてご紹介します。
発達障害の診断は小児神経科へ
小児神経科とは
子どもの発達の遅れは小児神経科にいる小児神経科医に診てもらい、発達の遅れの程度や障害の内容について説明、診断をしてもらいます。
小児神経科とは、子どもの発達全般を診てくれる科であり、けいれん、運動・知能・感覚・行動または言葉の障害など脳、神経、筋に何らかの異常がある小児の診断、治療、指導を行います。
【詳しくは】一般社団法人 小児神経学会
https://www.childneuro.jp/modules/general/index.php?content_id=2
縁遠いように感じるかもしれませんが、実は1歳半健診・3歳児健診などの節目の健診時に、頭や体の成長だったり発達に遅れがあると指摘されると小児神経科医で検査を受けるように勧められるため、意外と身近な小児科の専門医なのです。
小児神経科の探し方
残念なことに、小児神経科という看板を掲げている病院はほとんどありません。
小児科の中に「実はここにも小児神経医がいるんです」という場合が多いため、探し出すのが大変なのです。
各病院の口コミを読んだり、かかりつけの小児科医に紹介してもらったり、一般社団法人 小児神経学会のHPに掲載されている医師名簿や施設リストを参考にしてみてください。
※小児神経学会HPに掲載してあるリストは便利ですが掲載内容が最新でない場合もあり、すでに医師が別の病院へ移動していたり、施設が運営方針を変えているケースもあるため、病院にかかる前に必ず電話で医師が勤務しているのか、診察してもらえるのか確認してくださいね。
小児神経科で受ける検査と診断方法
発達障害は小児神経医が下記を参考にしながら、総合的に判断をして診断名を出します。
- 医師と子どもの対話
- 医師と親の対話
- 子どもが部屋で遊んだり絵本を読んだりしている様子を観察する
- 発達診断に用いられる検査(新版K式発達検査、乳幼児精神発達診断法など)の結果
医師の他にも、臨床心理士や臨床発達心理士が検査を手伝うことがあります。
一人あたりの検査時間が1時間以上かかることもあり、1日に診てもらえる人数が限られています。
また、子どもの様子をできるだけ詳しく正確にチェックするため、診断名をもらうまで何度も通院するのが一般的です。
医師の考え方にもよりますが、少なくとも2~3回は病院に通って診察を受け、その後、診断名を聞くことになります。
病院が遠い場合や共働き世帯などでは通院を負担に感じてしまうかもしれませんが、それくらいかかることを頭においておき、スケジュールを組む必要があります。
少しでも早く小児神経科医に診てもらう方法
希望してもすぐ診察を受けられない現状
実際に病院を探し、発達の遅れや障害について診てもらいたいと希望しても、残念ながらすぐに診てもらえない場合が非常に多い昨今。
実は、小児神経医は全国で1,000人ほどしかおらず、また、子どもの行動観察や検査を実施できる専門の設備が整った施設も数が限られており、受診希望者の数と、専門医・専門施設の数が釣り合っていないのが現状です。
このため、診断を希望しても「新規患者の受付停止中」「診察の申請書は受け付けるけれど、初診がいつになるか不明」「日時指定で若干名」というケースもあり、希望どおりに受けられない場合が多いのです。
キャンセル待ち・順番待ちで、施設からの連絡をひたすら待つことになりますが、希望しておかなければ医師の診察は受けられません。
診察を希望する場合はできるだけ早く施設を探して予約したり、予約のチャンスをうかがうことをお勧めします。
そして、医師の紹介状を手に入れることが優先的に診察してもらう方法となります。
※「紹介状無しでは診察を受け付けない」という病院もあります。
医師の紹介状は療育施設を利用する時に役立つこともあり、療育施設から病院を予約してもらえることもあるので、ぜひ手に入れておくことをお勧めします。
紹介状を手に入れる方法には2つあります。
✓かかりつけの小児科医に書いてもらう
「より詳しい診察を受けたいので紹介状を書いて欲しい」と申し出て小児科で、発達検査ができる施設や小児神経医を紹介してもらいましょう。
✓自治体が運営している発達支援センターで手に入れる
自治体によっては、決まった日に小児神経医がセンターに来ることがありますので、相談してみてください。
ただし、発達支援センターも予約制である場合や、平日の昼間しか相談できないなど制限があることがよくあります。
センターに連絡し、利用できるかどうか確認してみることをお勧めします。
なお、発達支援センターに予約を入れておくと「明日の朝一番の枠がキャンセルになったのですが、どうですか?」というような連絡をもらえることがあります。
私の娘も発達支援センターで心理士と相談するのは3ヶ月後だったのに、直前のキャンセル枠に飛び込めたことがあります。
予約できるところはとにかく押さえておくことで、医師の診察を早く受けられるチャンスが巡ってくることがあるのです。
病院選びのポイント
発達診断をしてくれる病院には、就学前・就学後・進学の時・学校でのトラブル(発達障害が原因の不登校だったり、二次障害)・就職の時などに診断・相談をお願いすることになります。
定期的に長期間通って成長過程を本人や親が把握し、問題を解決したり将来を考える足掛かりにします。
長い付き合いになる病院なので、苦痛や不安なく通って心置きなく相談できる所を選びたいですよね。
親にとっても、子どもにとっても安心できるところかどうか見極めるためのポイントをご紹介します。
💡病院選びのポイント
- 医師や臨床心理士は信頼できる人か
- 子どもが苦痛を感じないかどうか
- 相談する環境が整っているかどうか
- 療育施設との連携はどうか
- 自治体との連携はどうか
相手が信頼できる医師でなければ長く付き合うことはできません。
親や子どもが納得できるような対応をしてくれる人かどうか、相性やフィーリングを大切にしましょう。
本人が怖がったり、嫌がったり、苦痛を感じるような病院は避けましょう。
発達障害児の多くが敏感な感覚を持っていて、音や光、匂いなどに鋭く反応することがあるため、外からの刺激をシャットアウトして静かに過ごせる場所があったり待ち時間を短くする工夫がされているか、トイレなどの設備は利用しやすいよう配慮がされているかなどの設備面もチェックしてみてください。
📌私の娘の場合
私の娘は匂いに敏感だという点と、自動洗浄機能付きトイレがダメだという特性があります。
地味ですが、トイレが非常に困るクセモノです。
最近のトイレはとても優秀です。
人が個室に入ったのを感知して便座が開き、ノズル洗浄がスタートし、用を足し終わったら自動洗浄するといった便利な機能が付いています。
色々な人が利用する病院では、こうした新しいトイレが多いようですね。
しかし、こうしたトイレは大人が利用した時に丁度よくセンサーが働くようになっている場合が多く、子どもが利用すると、用を足している最中なのに突然、水が流れてしまうことがあります。
私の娘はその大きな音に驚いてしまい、外出先でトイレを利用できなってしまった経験があります。
外では頑なにトイレを拒み、お腹が痛くなっても我慢し続け、便秘や膀胱炎になるのではないか、とハラハラしたものです。
母子でトイレに入って徐々に慣らし、「あぁ、そろそろ大丈夫かな」と感じたところでまたトイレの新機能に驚き、外のトイレがダメになる……この繰り返しが2年以上続いた時は、外出が本当に億劫で仕方がありませんでした。
病院選びは慎重に行うことをお勧めします。
診察前に欠かせない親がやるべき準備
子どもの発達に関する診察はじっくり時間をかけて行われます。
- 親と医師の対話
- 子どもと医師の対話
- 遊んでいる子どもの様子を医師や臨床心理士がチェックする
- 発達検査 など
色々な角度から発達の度合いをチェックして、総合的に判断されます。
こうした診察うち、医師が親に聞く項目はほとんど決まっており、どこの病院でもだいたい同じことを聞かれます。
しかも、医師が親に聞く項目というのは「発達の度合いを検査する検査項目」だと言われています。
この項目の中身は、妊娠中や出産時のこと、首が座った時期や喃語が出始めた時期など、子どもが生まれる前から、生まれた時、生まれてから今までの成長記録を事細かに尋ねられます。
スムーズな診察のためには事前準備が欠かせません。
病院によっては「予め問診票に必要事項を書いてきてください」とHP上に質問事項を掲載していることがあります。
【問診票の例】
どんぐり発達クリニックの問診票
http://www.donguri-clinic.com/
突然聞かれても正確にパパッと答えられない場合も多いため、一度、この問診票をプリントアウトして書き込んでみてください。
そうすることで医師との対話がスムーズになり、より正確で早く診断を受けられるようになりますよ。
紹介状・予約無し、初診で診断してもらえた私たちの経験談
ここまで、医師や病院の数が少なくて診察を受けるまで時間が掛かる、紹介状などを準備しておけば早く診察を受けられる可能性がある、診察を少なくとも2~3回受けた後に診断してもらえるとご紹介してきました。
しかし、私の娘は小2の時、小児科へ予約無しで行き、初診で自閉スペクトラム症と診断してもらえたのです。
娘は2歳から家庭療育をスタートさせ、4歳から療育施設に通っていますが、診断してもらったのは小2になってからです。
娘が小児神経医のもとへ行ったのは、初診1回限り。
小児神経学会のHPに掲載されていた施設名をチェックし、その翌日に予約無し・当日受付で診察してもらい、約1時間の診察で診断名をもらいました。
その後の通院も不要(療育に通えば問題なし。診察の必要があるなら来院)という結果に。
「予約なし」「初診で診断」「通院不要」というのは、なかなかないと思います。
気兼ねなく話ができる医師も「本当なら初診で診断したりしないんだよ」と笑っていたので、本当にレアなケースなのでしょう。
ただ、診断してもらえたのには理由があります。
その理由を下記に挙げていきます。
- 娘は小2で、できることとできないことがはっきりしている
- 1時間くらいは椅子に座って待っていられる
- 医師と向かい合って会話ができ、要求にも応じることができる
- 4歳、5歳、6歳の時に療育施設で受けた発達検査の結果を医師に提出
- 小1の学校の通知表を提出
- 通っている療育施設は、病院が提携している施設である
- 療育手帳(障害者手帳には数種類あり、そのうち知的障害を持つ人のための障害者手帳)を持っている
- 病院のHPに掲載されていた問診票を持参
- 母親が診断を希望
医師いわく「本来なら病院で実施する検査の結果を持っており、療育手帳や学校の成績など第三者が判断して作成した書類も揃っていたから診断できた」とのことです。
もし、これが2~3歳児で何の検査も受けたことがなく、初対面の医師と向かい合って話をすることができない状態だと、まず、初診で診断してもらうことは難しかったでしょう。
娘の場合は、ラッキーもありましたが、診断のための判断材料があったことがポイントだと感じています。
私の娘のように、医師の診断を受ける前に療育施設などで発達に関する検査などを受けていて、結果を持っていれば短時間で医師の診断を受けられる可能性があります。
発達に遅れや障害がある場合、「医師の診断を受けて発達の程度を確認し、診断を療育に活かす」という方法もあれば「医師による診断名なしでも、必要と思われる療育を適切に受けさせればいい」という考え方もあります。
どちらを選択するか、これは親次第、子どもを取り巻く環境次第と言えるでしょう。
幸運にも、娘は理解ある保育園に通い続けることができ、療育施設も半年待ちだったけれど診断名なしで利用が可能で、療育手帳も取得できました。
就学相談にも診断名は不要で、就学後も特に診断名が必要になることはありませんでした。
このため、診断は小2まで受けずにきました。
しかし、何かある度に「専門医に診断してもらいましたか?」「医師とは相談していますか?」「相談できる医師や病院はありますか?」と自治体や学校にチクチク言われ続けるので、その度に「お前は診断を受けていない」と指摘されているような不快感・ストレスがありました。
発達に遅れや障害がある場合に利用できる保険や制度がありますが、申請しようとすると「診断を受けたか」という質問がちらつきます。
また、障害を言葉で説明するより、診断名や手帳の種類を伝えるほうが理解されやすかったり「親がちゃんと障害に対して対応している」「相談先がある」「児童相談所が把握している」といった安心感のようなものがあったりします。
診断を受けるかどうかは「障害が確定するようで怖い」という親御さんもいらっしゃることでしょう。
しかし、娘が2歳以降、発達の遅れを感じ続けてきた私は「診断してもらえるなら、してもらっているほうがなにかと便利だ」と確信しています。
ケースバイケースで状況は違うものになると思いますが、タイミングや状況が整えば意外にさっくりと診断を受けられることもありますよ。
まとめ
発達の遅れを感じる、または発達障害の不安がある場合は積極的に小児神経医の診断を受けましょう。
小児神経学会のHPに小児神経医の名前や、診断をしてくれる施設名が掲載されていますので活用してくださいね。
病院や医師は、親と子ども双方に合っているところを選ぶようにしてください。
大抵、長期間、定期的に継続して通うことになりますので、施設選びは慎重に行いましょう。
診断は何度か通院した後に受けることができますが、条件がそろえば初診で診断してもらえることもあります。
発達障害の対策を考える時、医師の診断をとっかかりにするか、療育からスタートするか、人によって判断が分かれるところだと思いますが、タイミングが合えば意外にあっさりと診断してもらえることもありますので、療育・診断両方について常にアンテナを張り、子どもの成長を見守ることに活用してみてください。
そして、親や子どもに合った病院や医師を見付けて、よき相談相手として利用していきましょう。
【参考】
一般社団法人 小児神経学会
https://www.childneuro.jp/
どんぐり発達クリニック
http://www.donguri-clinic.com/
コメント