我が家の発達障害グレーゾーンの5歳児は習い事が大好きです。
もちろん、初めはついていけるのか不安で、恐る恐る始めました。
しかし、たくさんの成功体験を積むことができたおかげでとても楽しく通っています。
習い事が成功した理由は本人が好きなことを選んだことと、理解のある教室や先生に出会えたからでした。
発達障害グレーゾーンだけど、習い事をさせたい
初めの1歩を踏み出すには好きなことから
「東大家庭教師友の会」によると、東大生が小さい頃にしていた習い事ベスト3は多い順に水泳、ピアノ、英会話というデータがあります。
うちには発達障害グレーゾーン(未診断)の5歳児がおりますが、まだ幼稚園児といっても、周囲のお稽古熱は侮れません。
降園後はお稽古事で忙しくしているお友達が多く、「うちの子では参加が難しい内容の習い事に通えるなんて羨ましいな。何か趣味になるようなものを見つけてあげたいけれど、いろいろなハードルが高すぎる!」と思うことがしばしばあります。
同じように、お子さんが発達障害という親御さんの中には、自分の子にも何か習い事で楽しみや才能を見つけてあげたいと感じている人も多いのではないでしょうか?
息子の場合、そんな親の想いをよそに習い事をさせるにあたってまず立ちはだかるのが
- 興味の範囲の狭さ
- 新しいことを嫌がる
この2つの特性の壁です。
例えば、息子は一度経験したことを好む傾向があります。
大嫌いなピーマンでもお勉強のドリルでも、一度でも「おいしかった」「楽しかった」という経験があれば次からはスムーズに取り組むことができます。
しかし反対に、どんなに大好きな(と思われる)遊びでも、成功体験をするまでは参加しようとしません。
2歳からの療育の成果でこの壁は3mぐらいから1mほどに縮んだ感じはしますが、それでもなお健常児に比べるとハードルは高く、大きな1歩を必要とします。
さらに、その1歩を踏み出すには、「本人が好きなこと」を「自分で選ばせる」ことが大切。
普段から息子ができる範囲で様々な経験をさせて、少しでも興味を持ったことは広げられるように心がけています。
苦手なことを克服させるための習い事はアリ?
よく聞くのが、「運動が苦手だから体操教室に入れようかな」「集団行動が苦手だから厳しめのスポーツ教室に行かせようかな」などの苦手なことを克服するために習い事をさせるということです。
もちろん、本人が行きたいと言って楽しく通えるのであればとてもいいことなのですが、1つ注意したいことは、自己肯定感の低下による二次障害です。
例えば、発達障害の子どもには特性として不器用さを持っているケースが多く、ダンスや体操など、複雑な動きを必要とする習い事はお友達と同じようにできず、失敗体験になり自己肯定感を下げてしまう場合もあり、注意が必要です。
他にも、集団行動ができずにコーチや先生に怒られ、「もう習い事はこりごりだ!」となってしまうことも。
苦手分野を克服するために習い事を選ぶなら、
- 発達障害に理解のある教室を選ぶ
- グループ指導ではなく個別指導を選び、指示が入りやすい環境にする
などの工夫をすることでスムーズに続けられますよ。
発達障害の子におすすめと言われる習い事3つ
ピアノやバイオリンなどの楽器系
一般的に、発達障害児におすすめといわれている習い事の1つがピアノやバイオリンなどの楽器を使う習い事です。
特にピアノは左右の手がそれぞれ違う動きをすることから脳機能を高め、器用さだけではなく運動能力や言語能力、IQまで向上させるとして知られています。
先に挙げた東大生の習い事でも2位にランクインしているピアノは、確かに発達を促してくれそうですね。
個別に見ていただける教室も多く、聴覚に過敏さがなければぜひトライしてみたい習い事の1つです。
絵画などの工作系
絵を描くことや工作をすることが好きなお子さんの場合は、絵画教室や造形教室などがおすすめ。
作品を介して自己表現できる工作系の習い事は、コミュニケーションを苦手とするタイプの子どもの情緒を育んでくれます。
自治体によってはアートセラピーという療育プログラムを実施しているところもあり、絵が上手だから芸術分野に何か才能があるかもしれない、と期待できるお子さんだけではなく、手先が不器用で絵は苦手、という場合でも発達を促す効果が期待できると考えられます。
水泳や体操、サッカーなどの運動系
ADHD系のエネルギーが有り余っているお子さんにおすすめだと言われているのが、運動系の習い事です。
ADHDの原因は脳の前頭連合野の機能障害だと考えられています。
運動によって刺激を与え、脳を活性化することで症状の改善が見られるケースも多く、特に全身を使った運動が推奨されています。
さらに、脳の感覚処理が未熟な未就学の子どもの場合は感覚統合の面からもADHDの症状にアプローチできるため、運動はおすすめなんだそう。
しかし、サッカーや野球などのチームスポーツは、
- ルールを守れない
- こだわりがある
- 正しく状況を理解できない
などの特性が強い場合はチームメイトに迷惑をかけてしまい、本人の自己肯定感が下がるというリスクも考えられます。
未就学児の習い事の場合、楽しむことをメインとしているスクールが多いためそこまで問題視されることはないですが、気になる場合や就学後も長く続けさせたいと考えているなら、水泳や体操などの個人競技にすると良いですね。
発達障害グレーゾーンのうちの子の習い事事情
体を作ることをメインに運動系の習い事3つ
うちの息子は運動系の習い事を3つしています。
- 水泳教室
- 体操教室
- サッカー教室
この中で、最初に始めたのは水泳でした。
小さい頃から水遊びが大好きだった息子。
毎日お風呂に潜っているのを見て、年少のときに水泳教室へ入れました。
大好きなプールに通えるとあって、息子は嫌がることなく大張り切り。
興味の幅が狭く、落ち着いて話を聞くことが難しい3歳児だったためどうなることかと思いましたが、意外なことにコーチの話を頑張って聞いていました。
また、規定のことができるようになると上位のクラスへどんどん昇格できるという達成感もあり、習い事での成功体験をうまく積ませてあげることができていると思います。
体操教室とサッカー教室は、年中に上がるタイミングでお友達と一緒に通い始めました。
どちらも本格的なスクールではなく、スポーツに親しむ程度の優しい教室を選んだことに加えて、既に水泳教室で「習い事は楽しい」という成功体験を獲得できていたため、喜んで行っています。
たまに不器用さがでてみんなと同じ動きができないことがあっても、お友達が教えてくれたり、コーチがフォローしてくれたりするので安心して見ていることができます。
我が家では、どれも将来プロの選手にさせたいとか競技として続けてほしいと思ってさせているわけではなく、体を動かし、脳を育てることを目的として取り入れています。
上手くなってほしい、という願いはもちろんありますが、息子が楽しみながら通え、情緒の発達の手助けになることが一番だと思っています。
就学を見据えて学習塾も
運動系の習い事のほか、現在は就学を見据えて学習塾にも行かせています。
言語療法や療育の個別指導でも近いことはしてくれますが、より苦手な部分をフォローするためにしっかり座って勉強をさせてくれる学習塾を選びました。
元々は「勉強なんて幼児には必要ない!」と思っていましたが、明らかに、近い未来に躓いているであろう息子を見ていると、そうも言っていられなくなりました。
同じ発達障害児の中では、他に公文も人気です。
集団の中で苦手なことに躓く前に、個別にケアをしてあげたいと考える親御さんが多いようです。
失敗だった習い事たち
現在は運動系の習い事3つと勉強系の習い事1つで落ち着いていますが、ここにたどり着くまでにうちの子には失敗だったと感じた習い事もあります。
📌ピアノ
本人が通いたいと言ったので体験に連れて行きましたが、目の前のピアノに大興奮。
全く指示が通じず、先生に申し訳なくいたたまれなくなり入会はできませんでした。
📌スケート
体幹が鍛えられるかも、と「転ぶのは痛いから嫌」という本人の意思を無視して入会したスケート教室。
何とかなだめて通わせていましたが、シングルタスクな息子はバランスを取りながら指示を聞くことが難しく、3回で断念<しました。
📌厳しめの幼児教室
「何としても長時間座れるようになってほしい!」と健常児向けで厳しいと評判の幼児教室に入れたこともありました。
意外なことに数回は楽しく通っていましたが、「ぼくはみんなよりできないから」という話をするようになったので、慌てて退会しました。
親のエゴでかわいそうな思いをさせてしまった幼児教室やスケートは論外ですが、ピアノはまたやりたいと言っているので、もう少し大きくなったら再チャレンジもありかな?と考えています。
習い事を始めるまで心配だったのはこんなこと
一斉指示を理解しにくいのについていける?
発達障害児には一斉指示を理解しにくいという特性を持つ子もいます。
息子の場合も集団の中に入ると一点に集中し続けることができず、話を理解することが難しいという課題がありました。
習い事を始めてみるまでは周りの子についていけないのではないか、迷惑をかけてしまうのではないかととても心配でしたが、実際に始めてみると、そこはさすが幼児クラス。
どの習い事でも指示が分かっていない場合は先生が個別に声をかけてくださったり、子どもたちが理解しやすいように工夫されていたため問題なく乗り切ることができています。
大体の習い事は幼稚園よりも集団の規模が小さい分、先生に集中しやすい環境にあると感じました。
さらに、息子はパターン化した行動を好むため、一度でも流れややり方を理解してしまえば次回以降はスムーズに対応できることが分かり、初めに心配していたような周りについていけないということはありませんでした。
お友達とのコミュニケーション
コミュニケーションに難がある息子にとって、話し合いでチームを決め、しかも勝ち負けがあるチームスポーツはかなりの難関と思われました。
一人でも逸脱した行動を取ると、チーム全体に迷惑がかかるからです。
しかし、チームスポーツだからこそ、お友達が教えてくれたりお互いに応援し合ったりなどの経験が増え、結果的にとても良いSST(ソーシャルスキルトレーニング)になっていると感じています。
また、仲がいいお友達と一緒に始めたこともコミュニケーション面でプラスになりました。
一人では恥ずかしくて入っていけなかったと思われる場面でも、お友達と一緒だったのでスムーズに参加でき、新しいお友達も増えました。
保護者の目が気になる…
一番心配だったのが保護者の目です。
送迎時にしかお互いの子どもの姿を見ることがない幼稚園と違い、習い事ではずっと子どもが活動する姿を見学することになります。
「パニックになったらどうしよう?」「(息子を受け入れたことで)スクール側にクレームが入ってしまったらどうしよう?」ととても不安でした。
しかし、実際に始めてみると、どの保護者も自分の子ども以外は意外と見ていないことに気が付きました。
さらに、発達障害はなくても未就学の4、5歳の子どもたちはまだまだ指示が通じにくかったり、夕方になると疲れから機嫌が悪くなったりして泣き出してしまうこともあります。
息子は低年齢で始めたこともあり、特に悪目立ちすることなくなじむことができました。
習い事を始めてよかったのはこんなこと
運動系の習い事の場合、指示が簡潔で分かりやすく集団行動の練習になる
「能力を伸ばしたい、楽しみを見つけてあげたい」と始めた習い事でしたが、他にも思わぬ収穫がありました。
それは集団行動です。
集団に入ると指示の理解度が一気に落ちてしまうという特性を持っている息子への指示ははっきりとした声で、簡潔に出すことが求められます。
運動系の習い事の場合、コーチや先生方はほとんどが体育会系なので大きな声で簡潔に指示を出してくれ、それが息子にはとてもよく合っていました。
幼稚園で指示を半分ぐらいしか理解できず、モタモタとお友達を見ながら行動する息子しか知らなかった私は、きびきびと活動する彼の姿を見て仰天しました(と同時に、息子が抱える困り感も実感することとなりました)。
いろいろなことに挑戦して自信が付いた
「わからないことはあまり挑戦したくない」「失敗も嫌」というタイプの息子ですが、習い事を通じて自信が付き、自己肯定感が高まってきたように感じます。
「楽しかった!できた!」という経験だけではなく、普段の遊びにも習ったことを取り入れるという発展のさせ方や、それをお友達や先生に褒めてもらうなどの経験は習い事をしていなければできませんでした。
習い事をきっかけとして、息子は数多くの成功体験を持つことができたのです。
発達障害児の習い事には理解のある先生と環境が必要
習い事の内容よりも先生との相性が大事
うちの息子は幸いなことに4つの習い事全てを楽しんでくれていますが、これは好きなことを中心に選んだからだけではなく、理解のある先生に見ていただいていることも大きいと思っています。
どの習い事でも、発達障害のグレーゾーンだということを事前に伝え、特性や息子の扱い方のポイントをお話ししたうえで、快く引き受けてくださった教室だけを選びました。
それまでは優しく接してくれる療育の先生しか知らなかったため、手のかかる息子を受け入れてくれる教室があるのか疑問でしたが、実際にはほとんどの教室で親身になって相談に乗ってくださいました。
発達障害児用のプログラムを利用することもひとつの手
民間の児童発達支援事業所や学習塾では、発達障害児向けの習い事プログラムを準備しているところもあります。
内容もプログラミングやロボット製作、絵画、体操教室やダンスなど、多岐にわたります。
「いきなり普通の習い事ではついていけるか不安」という人は、このような発達障害児用のプログラムを利用してみるとよいですよ。
発達を促すために、自宅でできることもたくさんある
発達障害の子におすすめのおもちゃ
おもちゃひとつとっても、独特の遊び方をすることが多い発達障害児。
うちの息子は一応正しい遊び方はできたものの、3歳を過ぎるまで「あのおもちゃがどうしても欲しい!」と意思表示してくれることはありませんでした。
視覚的に刺激の強いiPad以外は、何を与えてもあまり喜ぶことなく受け入れて静かに遊んでいました。
きっと、彼にとってはどれもあまり興味がわかず、全部同じもののように感じていたのでしょう。
そんな中、療育で体験し、ヒットして後日購入したおもちゃは下記のふたつ。
- くみくみスロープ
- マグフォーマー
くみくみスロープは、いろいろなパーツを自由に組み立てて、ピタゴラスイッチのようにボールを転がすコースを作ることができるおもちゃです。
コースを自分で組み立てられるようになるまでは、大人がコースを作ってあげると良いでしょう。
ボールが転がっていく様子を追視して楽しむだけでも、見る力を鍛えることができます。
何かが落ちたり、転がったりする姿に魅力を感じる子どもはとても多く、息子も集中して遊んでいました。
5歳を過ぎた今は自分でコースを組み立てて遊んでいます。
組み立てには予測をする力が必要なため、苦手分野の補強を遊びながらできるうえに、自分で作ったコースで実際に遊ぶことができるので達成感も味わうことができているようです。
また、マグフォーマーとは、マグネットが四角や三角の図形の中に埋め込まれたブロックで、図形が得意なタイプの子どもたちに大人気です。
図形を組み合わせて車や観覧車などの好きな形を作ることができ、くみくみスロープと同じように自分で作ったもので遊べます。
複雑な形を作ることが難しくても、マグネット同士をつまんで離したりくっつけたりする動きは手先のトレーニングにもなります。
マグフォーマーは空間認知能力を向上させ、数学的な思考を鍛えてくれるため健常児にも人気のおもちゃですね。
ちなみに、息子は図形が得意なタイプではないのですが、壁に貼り付けて模様を作ったり、床に並べて街を作ったりと違う楽しみ方で遊んでいます。
自宅でできる親子遊び
仕事をしていて習い事への送迎が難しい場合や、特性を理解してくれる教室が周りにない場合でも、発達を促すために自宅でもできることはたくさんあります。
例えば、我が家で取り入れているのは、作業療法の先生に教えてもらった紙コップを使った遊びです。
用意するものは、ビー玉と紙コップだけ。
親はビー玉を持ち、子どもは紙コップを持って、ダイニングテーブルを挟んで向かい合って立ちます。
そして、親が転がしたビー玉を子どもが紙コップでキャッチ。
慣れてきたら、斜めに転がしたりスピードを上げたりして楽しみます。
ビー玉を大きいスーパーボールに変えたり、転がす速さをゆっくりにしたりなど工夫すると小さいお子さんでも楽しむことができ、おすすめです。
単純な遊びですが、この遊びで転がっているものを追視したり、どうなるかを予測したりする能力が育ち、将来的にはコミュニケーションの面で役立ちます。
また、周囲の発達障害児の親御さんが高い確率で購入しているのが家庭用のトランポリン。
脳に刺激を与えて発達を促すだけではなく、体幹も鍛えてくれるトランポリンは発達の遅れが気になる子どもにぴったり。
療育でも積極的に取り入れられていますね。
さらに、自宅でできる親子遊びだけではなく、趣味を見つけてあげるために何か習い事を、と考えているなら、家庭教師もおすすめです。
特に、楽器を使う習い事は、自宅まで訪問して教えてくださる先生が多くいらっしゃいます。
新しい環境が苦手なお子さんでも、慣れた自宅なら落ち着いてトライすることができるかもしれませんね。
まとめ
今回は、発達障害グレーゾーンの5歳の息子の習い事事情と自宅での遊びについて紹介しました。
就学後は事情や課題が変わってくることを覚悟していますが、現在は発達を促し、楽しいことを経験させるための手段として十分な役割を果たしてくれています。
多くの健常児が通っている習い事。
発達障害だからこそ、発達を促し才能を見つけるためにいろいろな経験をさせてあげたいですよね。
一口に習い事と言っても、健常児向けの教室だけではなく発達障害児向けの教室やお稽古事の家庭教師など、様々な選択肢があります。
もしお子さんが興味を示したことがあったら、あれこれ心配するよりまず体験させてあげましょう。
発達を促す貴重な経験が得られるだけではなく、思わぬ才能が発見できるかもしれません。
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