こだわりが強いと言われている発達障害児。
「完璧主義だなあ」と感じたことはありませんか?
我が家の子どもたちも、台風が来ている時など、「結局学校はあるの!?ないの!?どっちなの!?」と、自分ではどうにもできないことでパニックになってしまうことがあります。
曖昧な状況が苦手な発達障害児は、つい、白黒はっきりさせたくなってしまうのです。
小学校一年生の頃の子どもたちは、学習に対しても完璧を求めるあまり、パニックになることが多々ありました。
学校にいる時にもパニックになることがあり、その理由まではわからない先生や周りの生徒たちを困らせてしまうこともありました。
学校という親からは見えない場所で、
- 自分の子どもがどのような行動をしているのか
- 自分の子どもがどのように困っているのか
- 子どもと自分は学校にどうなってほしいと思っているのか
また、
- パニックなどの行動によって周りの子や先生たちはどのように感じているのか
- 周りの先生、生徒たちは子どもにどうなってほしいと思っているのか
それぞれの意見をすり合わせることによって、自分の子どもだけでなく、すべての生徒にとって居心地のいい教室になるようにと、私が学校や教育委員会に掛け合った時の方法などをお話しします。
学校への対応で困っている、学校にどこまで親の希望を話していいのか悩んでいる、そんな人へのヒントになれば幸いです。
担任の先生とのかかわりの持ちかた
子どもが毎日顔を合わせる担任の先生。
小学校までだと、起きて顔を合わせる時間は親である自分よりも長い、ということも珍しくはないはずです。
そんな担任の先生に配慮をお願いしたい時、かかわりの持ちかた次第ですんなりいくこともあれば、なかなか進まないこともあります。
我が子たちが宿題に対して完璧主義を貫こうとしていた時の、先生とのかかわりの持ちかたをご紹介します。
学習に対して完璧主義だと困ること
発達障害児のこだわりの一つ、完璧主義。
- 自分が決めた道順じゃないといや
- いつもの順番じゃないとダメ
など、マイルールを守りたがる傾向にある発達障害児は、色々なことに対して完璧主義を発揮します。
我が子たちも同じで、家族がお風呂に入る順番や夕飯とお風呂の順番など、毎日行われるものの順番を変更することはとても難しく、また、学習に対しても完璧主義を発揮することが多かったため、その点が特に気になっていました。
100点が取れないことにパニック(長男)
「こう」と教えられたから「こう」である、と素直に受け入れることができず、納得するまでつき詰めてしまうタイプの長男は、小学一年生から算数でつまずいてしまいました。
「算数のテストで間違った部分を直す」という宿題が出た時、100点を取れなかったことに対して、長男は「こんな問題を作ったほうが悪い!」と怒りだしたのです。
それからというもの、テストや宿題で正解できないと怒ってしまうようになりました。
「100点を取りたい」「マルが欲しい」という考えが、問題を作った人に対して爆発してしまったのです。
宿題も完璧に提出したい(長男)
家庭学習として宿題が毎日出されていましたが、それらの問題が思うように解けないと泣いて怒ってパニックになってしまうことが多々ありました。
パニックになっている子どもを見ることはつらいですよね。
見かねた私が「それなら、もう宿題は終わりにして寝よう」と提案することもありました。
しかし、完璧に宿題を提出することにこだわる長男は「徹夜してでもやる!!」と諦めてくれず、パニックはひどくなるばかり。
見ている私への八つ当たりも酷くなり、ほとほと困り果ててしまいました。
100点が取れないなら、全部やらない(次男)
次男は小さい頃から多動が酷く、読み聞かせも好きではない子でした。
そのため、授業が退屈ということはなかったようですが、逆に自信がない問題には取り組めないということがよく起こりました。
「100点を取りたいけれど間違えてしまいそうだな」という心配があると、テストそのものを白紙で出してしまうのです。
100点が完璧なのだから、100点を取れないのなら最初から取り組むのをやめてしまう。
これもある意味完璧主義なのですが、本人の評価として残る点数が0になってしまうので、先生も私も慌ててしまいました。
宿題も完璧に提出したい(次男)
家庭学習も同じで、宿題の中にわからない問題があると取り組むことができず、ぐずぐずと時間だけが過ぎてしまうことが多々ありました。
たとえ最初の問題は解ける問題だったとしても、2問目、3問目に少し難しそうな問題があると、最初の問題も解こうとしないのです。
それでも、長男と同じく「宿題を提出すること」にはこだわるため、宿題ができない自分に怒り、泣き、パニックを起こしてしまうことがよくあり、「途中まででもやればいいよ」「やってみたけどできなかったと連絡帳に書いておくよ」「大丈夫だよ」と言ってもなかなか諦められず、困りました。
宿題について、子どもとの話し合い
宿題を出すことにこだわるあまり、二人とも睡眠時間を削ってしまうという状態になっていました。
22時頃まで起きていることに心配があったので、子どもたちと宿題について二つの約束をしました。
☑できない問題は飛ばして次の問題をやる
難しそうな問題があったらそれは後回しにして、それ以外の問題を優先して取り組もう、ということです。
できない問題を飛ばして次の問題に取り組むのは本当に難しく、「順番通りにやらないといけないんだもん!」と初めのうちは大きな抵抗がありました。
しかし、取り組む問題以外の部分を隠してあげると、素直に見える問題だけを解くことができました。
☑宿題に取り組む時間は、遅くとも21時まで
「21時までにできなかった部分は、お母さんが責任を持って先生に伝えます。怒られるのもお母さんがします」という約束をしました。
これも、子どもたちから「みんなが提出している宿題を自分だけ提出できないなんて困る、イヤだ」という声が上がりました。
この経験をバネにして、普通級に所属していた長男は宿題を終わらせることができるようになっていき、また、特別支援級の次男は、それまで「宿題を出さないと先生に怒られるかもしれない」ことが怖くて仕方なくて(実際は先生は注意はしても怒りませんが)めそめそと泣いてしまっていましたが、「先生に怒られることもお母さんが引き受けます」という点に納得して、寝るほうが大事だと途中で宿題をやめて寝られるようになりました。
学校と家の矛盾をなくす
家での宿題に関するかかわりに限界を感じた私は「これでは子どもたちにとって家が疲れる場所になってしまう」という考えから、「宿題はできなくてもよい」という結論に達しました。
宿題があるがゆえに子どもと喧嘩のようになってしまうことが多く、また、学校から疲れ果てて帰ってきている子どもたちのストレスになってしまうと考えたからです。
しかし、子どもたちがこだわるように、宿題は毎日みんなが提出するものです。
それを、親が勝手にやめさせることはできません。
💡対策:現状を学校に伝える
子どもがそのまま学校に行ったら宿題を忘れたことになり、注意されてしまうでしょう。
私は担任に、連絡帳を使って子どもたちの家での様子を伝えました。
宿題が子どもたちにとってどれだけストレスになっているのかを伝えるため、宿題に取り組む時にパニックになる様子を書いたのです。
すると、その日の下校後に担任から電話連絡があり、子どもたちに合った宿題の出し方を一緒に考えてもらうことになりました。
✔学校に伝える時のポイント
ストレートに「宿題を減らしてください!」だと、先生も「どうして?」と感じてしまいますよね。
そのため、家で宿題に取り組む時の様子、宿題が終わらない時の子どもたちの反応や行動をそのまま伝えました。
- このように本人も家族も困っているのですが、先生の経験上こういうお子さんはどうしてきましたか?
- どうしたらいいか一緒に考えてもらえませんか?
というスタンスで話しを持ち掛けたほうが、先生も一緒に考えてくれる確率が上がり、お互い気持ちよく話し合いができるようになりますよ。
📌宿題の量を減らす(長男)
長男が特に抵抗を感じていた宿題が、漢字の書き取りでした。
長男は、小学校一年生当時にWISC検査をした結果、国語力が130以上あり、ひらがなカタカナはもちろん、漢字もたくさん理解していました。
そのため、「わかっている漢字をノートにひたすら練習する」という漢字の書き取りをする「理由」がどうしても理解できず、取り組むことに対して抵抗を感じていたのです。
問題を解く、算数や国語の読み取りなど他の宿題は取り組むことができたので、漢字ノート1ページの宿題を免除してもらうことになりました。
📌宿題は全部できなくても怒らないと約束してもらう(次男)
完璧にやり遂げないと提出できない次男については、先生が本人と「もし宿題が途中まででも難しすぎてほとんどできなかったとしても、怒ることはしない」という約束をしてくれました。
「できない問題を飛ばして、できる問題だけをやってもいい」ということも確認してもらいました。
発達障害児は完璧主義ゆえに、許可されていないことをするのが怖いと感じていることもあります。
先生と「中途半端でもいいんだよ」という確認をすることで、子どもは安心することができます。
現在では、子どもたちの多様性について先生方の理解も進んでいますが、当初はかなり反論がありました。
そんな時も、こちらの意見を押し付けるのではなく、お互いにすり合わせていけるような働きかけを親がすることで、子どもを安心させてあげることができるようになります。
教育委員会など学校の上の機関とのかかわりの持ちかた
子どもの日々の学校生活について、色々な問題が起こった時などにまずは担任の先生と連絡を取りますよね。
担任の先生だけでは判断が難しい問題などの場合は、学年主任、教頭、校長、他にも、スクールカウンセラーや巡回相談員の先生など、様々な先生とかかわります。
それぞれの先生たちとお話をしてもどうしても問題が解決しない場合や、その問題は解決すべきものだと自分が強く感じている場合、学校を管轄する教育委員会に連絡することができます。
ここでは、長男が小学校一年生だった頃、私が教育委員会に出向いて話をすることになった経緯や、その後どのように変わったかのお話をします。
学校だけで現れる問題行動
発達障害の診断があっても家では集団行動がないことから、家庭内ではそれほど問題を感じないお子さんでも、小学校など集団で行動する必要が出てきた時に問題が生じてしまう場合が多いですよね。
長男もまさに、小学校入学後に集団行動ができないという点から診断につながりました。
📌一年生の勉強が退屈で立ち歩いてしまう(長男)
長男は3歳頃から文字に興味を持ち始め、「これなに?」と聞かれて答えているうちに5歳頃には、ひらがな、カタカナ、アルファベットの読み書きができるようになっていました。
そのため、小学校入学後すぐの頃の授業はそれほど一生懸命に受けていなくてもテストで簡単に100点が取れてしまったため、長男にとって大変退屈なもののようでした。
ひらがなを何文字か書き取りをする授業の時などは、自分の分をさっさと終わらせて、立ち歩いてはいけない時間にもかかわらず他の子たちのノートを見てまわっていたのです。
親側の希望
・発達障害の診断があるので、生活指導支援員を付けてほしい
長男は小学校入学後に、多動が目立つという理由から相談を勧められて診断を受けたため、先生たちは長男に発達障害の診断があることを知っていました。
同じ一年生の中に入学前から教育委員会に相談していたお子さんがおり、そのお子さんには生活指導員が付いていたため、「うちの子にもぜひ生活指導員をつけてほしい」とお願いしました。
学校側の希望
・立ち歩かれるのは困るので、お母さんが付き添いで学校にきてほしい
当時、親の介護と次男が2歳になったばかりなこともあって丁寧にお断りしたのですが、何か問題行動があるたびにお願いされました。
何度お断りしても、「他の多動のお子さんの親御さんも毎日お弁当持ちで来ていますので、●●さんも……」と半ば責めるように言われてしまいました。
ケース会議
お互いの希望がどうしても合わず、長男も周りも困っている日々が続いたある日、学校からケース会議をしたいと連絡がありました。
ケース会議とは、子どもにかかわることの多い先生と親とが、学校での指導方針、家庭での対応方法などを話し合うために行われる会議のことです。
私としても、付き添うことは難しいため「これは話をするチャンスだ」と思い、参加しました。
会議のメンバーは、私と担任、教頭、教育委員会の巡回相談員さんでした。
📍意見の相違
会議で学校側から上がったのは、やはり、私に学校で付き添ってほしいという話でした。
長男は幼稚園の頃、先生の指示に従って行動することもできていましたし、座っているべき時間にはきちんと座っていることができていたため、発達について特に指摘されることもなく、入学時には加配のお願いなどもせず、普通級に入学しました。
私が頼んだ生活支援員については、「年度途中からの生活支援員の増員はできないことになっているので」と、あっさり断られてしまいました。
お互いの意見をすり合わせた結果、来られる時に少しの時間でもいいから学校に行く、ということで、その日は家に帰りました。
📍教頭先生の言葉
その会議の中で私の心に引っかかったのが「学校も困っているんです」「発達障害は、普通学校が専門的に受け入れるものじゃないんです」という教頭先生の言葉でした。
「困っているのは本人です!」と、声を大にして言いたかったのですが、その言葉はぐっと飲みこみました。
ここで同じ勢いで言い返してしまうのは、得策ではないと感じたからです。
いったん家に帰り、落ち着いてから行動しようと考えました。
当時、発達障害に対する理解が薄かったとはいえ、すでに文部科学省から「発達障害は普通学校が担当する」という通達が出ていました。
私は長男に診断が付いてからというもの、発達障害に関する情報を色々と調べていました。
その中に書いてあったことと相反することを、教師のトップである教頭先生が言ったのです。
教頭先生がこの通達を知らないで言ったのか、他の親御さんが来てくれているのだから私にも学校に来るべきだというために言ったのか、真意はわかりません。
教育委員会に相談
発達障害児の親が付き添いで学校にくるのが当たり前、となってしまうのはおかしいのではないか?という思いから、市の教育委員会に相談をしました。
教頭先生とは先日のケース会議の時に意見が違うことがわかっていましたので、直接、教育委員会にメールを送ることにしました。
メールを選んだ理由は、電話では感情的になってしまうこともあるだろうし、きっと伝えきれないと感じたからです。
現在はほとんどの市町村がホームページを持っていて、それぞれの課にあててメールが出せるようになっています。
小学校に関することなので、管轄する教育委員会にメールをしました。
同時に、自分の意見が独りよがりなのではないかという心配と、市民の代表である市議会議員に意見を聞いてみたいと思ったため、そちらにも同じ内容のメールを出しました。
市議会議員もホームページやブログなどを開設していて、連絡先としてメールアドレスを公開していたり、連絡フォームを設置していたりします。
ホームページにある自己紹介や政策案を読んで、特に子どもについて多く書かれている市議会議員にメールを送りました。
✔相談メールに書いた内容
- 教頭先生の言っていることが文部科学省の通達と違う
- 担任や特別指導クラスの先生たちの発達障害に対する理解が薄く、問題行動があると親に対応に対する正解を求めてくるが、親も専門家ではないので答えられない
- 答えたとしても、「学校では対応できない」と断られてしまうことが多く、親も困っている
これらをメールしたところ、教育委員会から「一度お話しする機会を持ちましょう」という返事がありました。
市議会議員さんは「発達障害というのは初めて聞いた」と仰り、色々と勉強してくれたようでした。
長男の主治医のと頃まで行って発達障害に関する話を聞いてくれ、本当に親身になって考えてくださったのです。
また、教育委員会との話し合いの場に市議会議員さんも同席すると言ってくれたため、大変心強く感じました。
教育委員会との直接の話し合い
教育委員会から二人、そして市議会議員、私、計4名で話し合いました。
まず、教育委員会側から「教頭の発言は教育委員会の指導とは違うものなので、今一度、各学校の校長教頭に対して文部科学省の通達の再確認をする」という回答をもらえました。
これは本当にありがたい話でした。
発達障害に対する理解が薄い、先生方の知識が少ないことに関しては、教育委員会側も認めてくださったため、「ぜひ先生方の発達障害に対する理解度をあげてほしい」とお願いをしました。
そのための活動として、県内の他市町村が夏休みや長期休暇などを使って、特に特別支援クラスの担任や、普通クラスの担任を持つ先生に対して発達障害に関する講習会を行っているという実例を挙げて説明をしました。
教育委員会側も市議会議員さんも賛成してくださり、また、市議会議員さんは議会で提案をして予算が下りるようにと行動してくださったため、翌年から先生向けの発達障害に関する講習会が開かれるようになったのです。
自治体に働き掛ける時のポイント
特に役所関係は、他の自治体の実例があると動きやすいです。
自治体の仕事の運び方に、前例がないことをやりたがらない、と感じることがありませんか?
そのため、私は近くの自治体の研修会の実例を探し、プリントアウトして持参しました。
インターネットで探すと、自治体が主催の発達障害の勉強会や、対象が先生の発達障害に関する研修会の実例をみつけることができました。
また、子どもたちの主治医にも相談をして、学校向けの資料や主治医が開催した勉強会のチラシなどを提供してもらいました。
これらの実物があることで、教育委員会も自治体内で動きやすくなるということでした。
すぐに変化はないことを心に留めておき、足りないサポートがあることを意見表明していく
教育委員会に直談判したからと言って、すぐに自分の子どもを取り巻く環境に変化が現れるかというと、そういうわけにはいきません。
しかし、自分の子どもに対して変化がないからと言って、我慢して過ごさせることが正しいことでしょうか?
発達障害の概念が広まるにつれ、発達障害と診断される子どもは増えています。
しかし、診断されただけでその後のサポートはまだまだ足りないというのが現状です。
その「サポートが足りない」という情報は、今、学校で生活している子どもたちにしかわかり得ないことです。
それを知り得るのも、親である私たちだけです。
今、学校に対してしてほしいと思っていることは、私たちにしかわからないことなのです。
自分の子どもが卒業してしまうから、何もしなくてよいでしょうか。
自分の子ども以外の発達障害児が、私たちと同じサポートが足りないと感じるままにしておいていいのでしょうか?
そこで声をあげ、行動に移すことができるのもまた、私たちだけなのです。
まとめ
発達障害児を育てていると、本当に疲れることが多いと感じます。
しかし、学校や社会に出た時に、そこが子どもたちが過ごしやすい場所になっていたらいいなという考えから、私は役所でも学校でも質問をしたり意見をしたりするようにしています。
障害がある人にも暮らしやすい社会を。
そのためには、障害がある人が何に困っているのかを見えるようにすることが必要です。
車いすを使う人のためにバリアフリーが進んだように、発達障害者たちのためのバリアフリーも整備されていくといいですよね。
そのためには、障害によって何が大変だと感じているのかを可視化する必要があります。
車いすで困っている人を目にすれば一目で分かりますが、発達障害で困っている人は見た目ではわからないのです。
親御さんたちには、ぜひ、声をあげる勇気を持ってほしいと思います。
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