発達障害児は環境の変化や集団生活を嫌うため、デイサービスへ預けられずに苦労されている親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、苦手なデイサービスを克服し、親御さんやお子さんがより楽しく生活していくための方法と、デイサービスへ通うことで得られる「療育効果」「就学準備」「親御さんの休息の仕方について」役立つ情報をお伝えします。
ぜひ参考にしてくださいね。
デイサービスとは
児童発達支援事業の取り組みのひとつに「デイサービス(施設にて療育の必要性があると認められた児童を対象に支援をおこなうもの)」というものがあります。
日常生活の基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練、その他必要な支援を行う(通所)
〇対象児童
集団療育及び個別療育を行う必要があると認められる未就学の障害児
(引用:厚生労働省『概要』PDF)
乳幼児健診で「発語がない」「指さしをしない」「表情が乏しい」など、発育の遅れが明らかな場合に限り、未就学児を対象としたデイサービス「幼児療育センター」を勧められます。
幼児療育センターでは、未就学の3歳から6歳を対象に生活の基礎を育てます。
子どもやその親御さんの困りごと、発育記録をもとに「個別療育」と「集団療育」に別れ、個々に合わせた課題に取り組むことが可能です。
下記、個別療育と集団療育についてそれぞれ詳しくご説明していきます。
「できる」をはぐくむ個別療育
担当指導員と一対一で、プログラムに沿った取り組みをおこないます。
個々の発育状況に合わせた教材を使用し、乗り物の名称や色、大小など、言語概念の理解を深めていきます。
様々な知育教材を活用することで、模倣力や視覚認知力が養われ、コミュニケーションが苦手な子ども達も安心して学ぶことができます。
「ルール」を学ぶ集団療育
発達障害児にとって、集団生活の決まりごとは大きな課題です。
それは、小学校生活において、規則やマナーを身に着けることを前提とする一方、子どもの発育が伸び悩み定着することの難しさを痛感するからです。
集団療育では就学後に備えたプログラムを実施しており、基本的な「見る」「聞く」「話す」訓練をはじめ、1秒でも長く椅子に座っていられるよう、工夫や対策を取ります。
さらに、デイサービスへ通う子ども達や指導員と関わることでコミュニケーション能力を高めることが可能です。
子どもがデイサービスへ行きたがらない理由3つ
発達障害児は人が多く集まる場所や騒音を苦手とする場合が多いため、デイサービスのような集団生活を要する場面を徹底して拒むことがあります。
例えば、今日の午前中はデイサービスへ行く日と仮定します。
親は予定を把握することができますが、小さな子どもは理解することができないため、親が出かける用意をしたときに子どもは「お買い物かな?」「お散歩だ!」と心の中で喜ぶわけです。
それが、子どもが大嫌いなデイサービスだとしたらどうなるでしょうか?
当然ながら、泣きわめいてかんしゃくを起こし、パニックに陥ることもあります。
発達障害児も大人と同じように、嫌なことや苦手な場所は鮮明に記憶しているものです。
「子どもだから平気」と軽く流すのではなく、まずは、子どもがなぜデイサービスへ行きたがらないのか、親御さんのほうから理由を探ってあげましょう。
そこで、子どもがデイサービスへ行きたがらない具体的な理由を3つ挙げてみました。
人が多く集まるデイサービスが苦手
発達障害の特性に程度はあるものの、集団行動や集団生活を極端に苦手とする子どもは多いです。
デイサービスには年齢が異なる子ども達が大勢集まるため、輪の中に入れず孤立したり、遊び声が騒音のように聞こえ、耳を塞いでしまったりすることがありますが、こういった場合は、無理に子ども同士を関わらせようとするのは止めましょう。
ひとりで黙々と遊びたい時もありますし、心が許せるようになった時にぎこちないながらも自然と自分から関わっていくようになります。
小児精神科の先生より、このようなアドバイスをいただいたことがありました。
「まずは、人と関わろうとしない子どもの『視線』を見るべき。子どもは、ちゃんとお友達のほうを見ているではありませんか。視線の先にお友達がいたならば、いつか関われる時期がきます。発達障害児は、自分が安心して過ごせる場所かどうか、様子をみているだけなのだ」と。
子ども同士のトラブルが多いから苦手
発達障害者はこだわりが人一倍強く、自分の中に決まりごとがあります。
そのため、周囲からは「ワガママで自己中心的な人」と誤解されてしまいますが、発達障害者本人には自覚がなく、なぜ自分のルールがまかり通らないのか不思議なのです。
これは、子どもの場合も同じ。
鬼ごっこやゲーム遊びなど、勝ち負けにこだわる特性があるため、本来の遊び方から脱線し、それぞれが自分のルールを優先してしまうのです。
そうすると、子ども同士のトラブルが頻繁に起こりやすくなるため、「デイサービスは楽しくない」「自分の気持ちを誰も分かってくれないから行かない」と、なるわけです。
自由に行動したいのに押さえつけられるから苦手
発達障害児には自分のマニュアルがあります。
自分がしたいことや行動パターンが確立されているため、指導員や周囲から阻止されることが苦痛で仕方がないのです。
しかし、デイサービス本来の目的は、発達障害児の日常生活における基本的な指導や適応訓練であり、子どもが可能な範囲で就学に向けてそれらを身に着けていくことが理想です。
そうすると、椅子に座る訓練や本の読み聞かせなど、やらなければいけない訓練と自由に行動したい子どもの気持ちとの間にズレが生じてしまうわけです。
押さえつけられることを極端に嫌う子どもには、初めは良い意味で放置をします。
これが驚くほど効果的で、一通り施設内を見せて回るだけで不思議と泣き止むことがあります。
デイサービスの指導員が、時間をかけて上手に寄り添い、習慣化するよう促してくれます。
まずは、子どもの気持ちを落ち着かせ、ここは安心して通える場所であることを肌で感じてもらいましょう。
また、椅子に座る習慣は、小学校へ行くための大切なステップです。
我が子の場合は、日頃からお家で椅子に座る練習をさせ食事中は「ご馳走さま」をするまでは、立って歩き回らないということを徹底して言い続けました。
初めは、我が子が集中して椅子に座れるように、視界に入りそうなものをなるべく排除し、大好物の食べ物で気を引く作戦を試みましたがどれも失敗。
一番効果があったのは、非常にシンプルではありますが「根気強く言い聞かせる」ことでした。
デイサービスへ通い始めてから3年後の年長児の頃には、指導員の簡単な指示が理解できるようになり、療育中も30分以上じっと椅子に座り集中して教材に取り組めるまでに成長。
デイサービスの適切な訓練のおかげで、想像以上の療育効果を実感することができました。
デイサービスを上手く活用して親御さんも息抜きを!
子どもがデイサービスへ行きたがらず、憂鬱な日を過ごしている親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
発達障害児に限らず、育児はとても体力がいるものです。
食事の準備に加え、洗濯や掃除、身の回りのお世話など、作業に追われて体を休める時間がありません。
これが発達障害児ともなれば、親御さんの消耗するエネルギーは相当なもの。
例えば、発達障害児に多動性が見られた場合、部屋中走り回って遊び倒すので、目で追うだけでも疲れてしまいます。
そんな時は、子どもと少しだけ距離を置いてみませんか。
デイサービスを上手く利用し、親御さんの息抜きをする時間を確保することも大切です。
まずは、どのようにしたら子どもがデイサービスへ通えるか、下記に具体的な方法を挙げました。
一つ一つ自分と当てはめながら工夫や対策を考えていきましょう。
無理に集団に入れない
子どもにデイサービスへ通ってほしいからと無理に連れていくことはやめましょう。
一度訪れて拒否した場合は、まずは指導員に任せて様子を見ます。
子どもが暴れて取り乱す場合は、個室や別部屋で落ち着かせることも可能ですが、日を改めてチャレンジしてみることも効果的です。
我が子は、初めて訪れる場所や「人」が大の苦手で、混乱すると手あたりしだい物を投げつける子どもでした。
私も試行錯誤の連続でした。
そんな我が子が、落ち着きを取り戻すようになったきっかけは、指導員の寛容な心と、子どもに対する粘り強い声かけがあったからです。
その後は、施設内の滑り台やトランポリンで楽しそうに遊ぶ姿が増えて、子どもが自らデイサービスへ行きたいと発言するまでになりました。
まずは、指導員と子どもの信頼関係を築くことを優先し、親御さんは様子を見ていきましょう。
子どもがデイサービスへ通えるようになると、親御さんの自由な時間が確保できるので、美容室や買い物へでかけてリフレッシュすることができます。
初めは、デイサービスへ行きたがらない子どもをもどかしく思うこともあるでしょうが、ここは親御さんの踏ん張りどころです。
根気強く通い続けることで、子どもはしだいに慣れていきますので安心してくださいね。
叱ったあとは大袈裟に褒める
デイサービスへ着いた途端、子どもが泣いてしまうことがあります。
施設内へ入ってさらに泣きわめく子もいれば、視覚に入る全てに興味津々になりピタリと泣き止む子どももいます。
どちらにせよ、発達障害児が療育の第一歩を踏み出せたことは、とても大きなことです。
大袈裟なくらい褒めて、「デイサービスのお友達が遊ぼうと誘ってくれているよ!」と、ここぞとばかりに楽しい場所であることを親御さん自ら行動で示してあげましょう。(施設内の遊具で一緒に遊ぶと効果的)
また、デイサービスは様々な子どもが利用するため、お片付けや整理整頓、お手洗いなど施設の決まりごとがあります。
もちろん、勝手なルールは通用しませんので、子どもが泣いて怒っても、駄目なものは駄目と強く言い切れる親御さんの気持ちが大切です。
しっかりできた時は、必ず褒めてあげましょう。
すぐに覚えることはできなくても、声をかけて軌道修正することで習慣化されていきます。
習慣が身に着くと、次に何をしなければいけないのかやるべきことを把握しやすくなるため、子どもが安心してデイサービスへ通えるようになります。
実際に、我が子は発達障害特有の感覚過敏から靴下を履きたがらない子どもでしたが、デイサービスの訓練を通して、靴下や上靴の履き方を練習するうちに自然と克服することができました。
以前は、デイサービスへ着くなり靴下をポイポイとその辺に放り投げることが頻繁に見られ、何度も叱ったことがあります。
今考えるとお恥ずかしいのですが、「子どもが『できない』ことは、親の躾が足りないからだ」と誤った捉え方をしているところがありましたので、これを機に深く反省をしました。
その後は、積極的に指導員と連携をとり、子どもが一人でできるようになるまで、毎週の課題として取り組むことにしました。
そこで気が付いたことは、叱ってばかりいても子どもの心には響かず、行動で示してあげなければ、理解が難しいこともあるということ。
指導員は、靴下の絵柄から話題を広げ、子どもが靴下に意識が向くよう促していました。
それを毎日お家で繰り返した結果、数カ月後には子どもが自ら靴下を履くように。
一年中、裸足で過ごすことが多かった我が子ですが、ホールで遊ぶためには靴下と上靴を履かなければいけないという基本的な流れを把握できるまでに成長しました。
どんな小さなことでも、できた時は「上手だね!できたね!」と大袈裟に褒めてあげることが、子どもの発育に繋がるのだと実感しています。
ご家族のサポートが重要
時には、デイサービスへ通うことが親御さんの負担になってしまったり、「子どもは行かせてあげたいけれど、この日は別の用事を優先したい」と思ったりする時もありますよね。
デイサービスへの同行は、必ずしもいつも同じ人でなくてはならないというわけではなく、お身内のどなたかでも問題はありません。
地域にもよりますが、保護者同伴型のデイサービスや時間に応じて子どもを預かる保育型のデイサービスがあります。
保育型であれば、親御さんの急用や息抜きをしたい時に利用することもできますが、保護者同伴型の場合は、週に1回~2回定期的にデイサービスへ通うことになります。
これでは、毎週のようにデイサービスへ通わなければいけないので、親御さん一人では心身ともに疲れてしまいます。
一人で抱え込まず、時にはご家族のサポートを受けることも必要です。
子どもがデイサービスを楽しく利用するためのポイント
子どもがデイサービスへ楽しく通うためには、親御さんの発達障害に対する前向きな気持ちが重要です。
大切なことは、発達障害を克服することではなく、子どもの個性とどう向き合っていくかです。
我が子は、友達付き合いが苦手で口数が少ないタイプですが、デイサービスに通われている、お友達や指導員と、すごろくやトランプなどでコミュニケーションを取りながら、お友達と関わる楽しさを学んでいきました。
小学一年生になった今では、自分からお友達を誘えるまでに成長し、放課後は地域の児童館で楽しく過ごしています。
このように、デイサービスでは、個々の発育に見合った指導やプログラムを実践することで、どれだけの成果が現れるのか、定期的にカリキュラムの見直しや面談がおこなわれます。
それぞれのお子さんが抱える課題をクリアしていくためには、デイサービスでの訓練が必要なのです。
子どもがデイサービスを楽しく利用できるよう、ポイントを2つご紹介します。
保護者と交流を深める
子どもをデイサービスへ通わせることで大勢の親御さん達と出会いますが、実はこの繋がりこそが重要で、子どもの悩みや困りごとを打ち明けていくうちに「大切な仲間」へと発展するケースが多いのです。
どんな些細な悩みも、親御さん達と共有することで気持ちが楽になり、ポジティブな思考に切り替えていけます。
既にデイサービスへ通われている親御さん達と交流を深めていくことは、発達障害に関する知識や問題行動の対処の仕方などを学べる機会でもあります。
我が子の場合は、特に就学先の問題で苦労をしましたので、学校の情報交換は大変助かりました。
というのも、学校を選ぶ基準については、地域性や子どもの発育状況が大きく関係しており、我が子は排泄に介助が必要だったため、養護学校を視野に入れて行動していたのです。
ところが、4歳半を過ぎた頃でしょうか。
排泄が自立し始め、今度は特別支援学校にしようか区域の小学校へ入学させようか迷うようになりました。
ありがたいことに、デイサービス(幼児療育センター)では、就学先の面談や見学も同行していただけましたので、指導員や親御さん達に相談しながら、就学先を事前に把握することで我が子に合わせた入学準備をすすめることができました。
このように、時には指導員や育児の先輩のアドバイスを上手く取り入れながら、自分流の育児を作り上げていくことも大切です。
見栄を捨てる
発達障害児を育てていく中で、一番重要なことは「見栄」を捨てることではないでしょうか。
学力やスポーツ、友人の多さ、全てにおいてどんな親御さんも我が子に期待はするものです。
発達障害児の親御さんたちは皆、それらが上手くいかないことを、じゅうぶん理解しておられると思います。
しかし、縄跳びが跳べない、自転車が乗れないなど、周囲と比べて焦る気持ちが表面に現れてしまうこともあるわけです。
実際に、デイサービスで訓練していても、皆が走り回っている中、自分の子どもだけが棒立ちで浮いている……、こんな経験はありませんか?
確かに、周囲と比べて自分の子どもは発達が遅れていると感じることもあるでしょう。
しかし、親御さんの気持ちだけが先走りしても、子どもはそれについていくことができません。
親御さんが子どもの気持ちに寄り添ってあげることで、安心してチャレンジすることができるのです。
子どもが不安を抱えてしまわないように、緩やかな成長を広い心で待つようにするとよいでしょう。
子どもに色々な経験をさせたいとお考えの親御さんは、子どもと一緒に軽いスポーツを始めてはいかがでしょうか。
スイミングは発達障害児も気軽に習得でき、また体幹やバランス感覚が養われ協調性が磨かれるためオススメです。
バスケットボールなどとは異なり、ポジションの把握や空間処理が不要なため、上達しやすい傾向にあります。
子どもが疲れている時はデイサービスを休むことが大切
毎日、育児や家事と忙しくされている親御さんですから、時には子どもをデイサービスへ預けて、リフレッシュしたい日もあることでしょう。
しかし、子どもが疲れている時は、デイサービスを休むことも大切です。
発達障害児は縛り付けられることを嫌うため、お家でたった一日休むだけでも安心して穏やかに過ごすことができます。
デイサービスを休んだ日は、近くの公園や人の少ない散策コースを狙ってお出かけするとよいでしょう。
一緒にお出かけできる友人を誘えると、もっと育児を楽しむことができます。
まずは、苦手なデイサービスを克服し、子どもが安心して通えるようサポートしていきましょう。
まとめ
デイサービスが苦手で療育を受けられない子、初めての環境に戸惑う子、様々な事情を抱えた親御さん達がおられると思います。
初めは苦戦続きで、もしかするとデイサービスを「諦めようかな」と気持ちが揺れてしまうこともあるかもしれませんが、年齢が上がるにつれて「できる」ことが少しずつ増えてくると、子どもの興味や視野が広がり、遊び方や行動も成長していきます。
そのためにも、積極的に子どもに体験させる場を与えてあげることが大切です。
数年前、我が子は多動性を理由に地域の幼稚園にお断りをされた経験があります。
当時のショックは大きく、理由を知らずにニコニコ笑っている我が子を見るたび、心の底から申し訳なく毎日泣いて過ごしました。
そんな我が子ですが、現在は多動が治まり、泣いたり笑ったり、元気いっぱいの小学校生活を楽しんでいるようです。
さらに、アルペンスキーを習得し、日々努力している我が子の姿は、強くたくましくさえ感じています。
デイサービスを利用していなければ、こんなふうに成長した我が子の姿を見ることはできなかったでしょう。
デイサービスで学んだ4年間は、私たち家族のかけがえのない宝ものです。
時には、知人の何気ない一言で、悔しい思いをすることもあるかもしれませんが、子どもに対して精一杯の愛情をそそぎ、一喜一憂しない強い心で前を向いていきましょう。
絶対に乗り越えていけますよ!
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