自閉症スペクトラム(ASD)の特性を持つ子どもは、一般的な環境の中で生活したり、他の子と同じような接し方をされていると「生きづらさ」を感じることが多くなってしまいます。
しかし、家族や周囲の適切な理解とサポートがあれば、自閉症スペクトラム(ASD)であっても自分の能力を発揮し、将来社会で活躍することができるのです。
本記事が、自閉症スペクトラム(ASD)とはどのようなものかを知るきっかけ、そして二次障害を防ぐきっかけになれば幸いです。
自閉症スペクトラム(ASD)とは
「自閉症スペクトラム」とは、アスペルガー症候群や自閉症に関連する障害の総称のことです。
「自閉症」というと、自分の内側にこもりがちでなかなか言葉を発しない、または通常より言葉の遅れがあるというイメージを持っている人も多いかもしれませんが、最近では自閉症ととらえる範囲が広くなり、それに伴い自閉症に該当する特性の幅も広くなりつつあります。
知的障害のない「アスペルガー症候群」の特性を持つ子どもに言葉の遅れはないため、自閉症というイメージとは多少異なるように感じられますが、現在ではアスペルガー症候群を含め、似たような障害も自閉症の一種として考えられています。
また「自閉症スペクトラム」のことを英語では「Autism Spectrum Disorder」と言い、日本でもその単語の頭文字をとって「ASD」と呼ばれています。
本記事でも、自閉症スペクトラムを「ASD」という表記で使用します。
ASDの特性を持つ子どもの特徴
ASDといっても、その特徴を一言で現すことは困難です。
特性には個人差があり、どんな形で現れるのかは子どもの数だけ違ってきます。
ASDの特性を持つ子どもの数は全世界共通で1万人あたりに15~20人、男女比は8:2の割合で存在が認められています。
現れ方には色々あるものの、共通している特徴的な特性として下記が挙げられます。
- 人と関わることやコミュニケーションが苦手。
- 興味のあるものに対して強いこだわりを持つ。
- 感覚がアンバランス。
このように共通する特徴だけを見てみると、前述したようなマイナス面だけが目につきますが、ASDの特性を持つ子どもには、ずばぬけた記憶力や芸術面で秀でた才能が備わっていることも多くあり、ASDでない子どもと同様に、ASDを持つ子どもにも秘められた可能性は未知数であると言えますね。
ASDを引き起こす要因
現在、ASDと診断される子どもは増加傾向にありますが、これは環境や医学の向上により発見される機会が増えてきたとも考えられるため、10年前と今とではどちらが多いのかを判断することは難しいと言われています。
ASDを引き起こす要因についても未だに分かっていないことが多く、今も研究が進められています。
現段階でASDを引き起こす要因と考えられていることは「脳の働きや、脳と体をつなぐ中枢神経のトラブルによるもの」ということだけで、詳しいことは解明されていません。
自閉症スペクトラムは「自閉症」という言葉から「心を閉ざしてしまう」、つまり心理的な要因により発症する障害というイメージを持たれることもありますが、実際はそうではありません。
ASDが引き起こされる要因は、前述した「脳機能のトラブル」によるもので、愛情不足や誤った子育てにより発症するものではないことが確認されています。
では、ASDの発症要因のひとつに【遺伝】はあるのでしょうか?
結論からいうと、ASDの発症要因が遺伝であるという可能性はゼロではありません。
子どもは親から色々な情報を受け継いで生まれてきます。
顔や体の一部が似ているように、親にASDの遺伝子があれば、その子どもも親と同じ脳内の情報を受け継いで生まれてくる可能性は決して否定できないのです。
ASDが発症するには複数の要因が関わっており、現段階では遺伝的な要素もそのひとつとして考えられています。
しかし、その関連性がはっきりと分かるようになるにはまだまだ時間が必要なようです。
ASDは完治できる?
ASDのお子さんを持つ親御さんにとって、ASDが「完治」するのかどうかは非常に気になる点ですよね。
ASDのような発達障害の場合、「完治」という言葉よりも、診断名が必要なくなる状態まで「発達」することはできる、というほうが適切です。
「発達する」とは、この場合、障害によって生きづらさを感じていた子どもが、家族や周囲のサポートによって日常に支障をきたさない状態になることを指します。
そのため「ASDを完全に完治させる!」という意気込んだ発想ではなく、「サポートが必要なくなるまで子どもをしっかり発達させてあげよう」と考えると、親御さんの心の在り方にも余裕が出てくるでしょう。
ASDではない子どもと同様に、ASDを持つ子どもも一歩進んでは元に戻り……を繰り返しながら成長していきます。
親御さんが心に余裕を持っているかどうかが、お子さんの心理状態にも大きく影響します。
まずは、お子さんがサポートを必要としなくなる状態を目指せるような環境作りを優先して考えてみてはいかがでしょうか。
💡ASDの子どもの自立
ASDのお子さんを持つ親御さんが気になることのひとつに、お子さんの【将来的な自立】があげられます。
【将来的な自立】は前述したように、誰のサポートも受けずに一人で生きていける状態にまで「発達」することができるのかどうかに関わってきます。
現在の保育や学校現場では、以前よりも発達障害に対するサポート体制が整いつつあります。
発達障害に対する理解が進んでいるアメリカなどと比較すると、日本はまだまだ発展途上の段階ですが、ASDの障害があっても専門学校や短大、大学に進学する人は増加傾向にあります。
それに伴い、現在進行形で進路の選択肢はどんどん広がってきていると言えるでしょう。
またASDの特性があっても、社会で活躍し自立している人も決して少なくありません。
ASDを持つお子さんが将来自分らしく社会生活を送っていくためには、親御さんがお子さんの特性をよく理解し、様々なサポート機関と連携しながら得意なことは伸ばし、苦手なことはカバーできる力を養える教育環境を選択し、社会生活に支障をきたさなくなるまで個々の能力を発達させていくことが大切なのです。
自閉症スペクトラムの主な特性
ここでは自閉症スペクトラム(ASD)の主な特性について具体的にご紹介します。
ASDの主な特性は3つありますが、さらにそれ以外にみられる特性についてもまとめています。
また、現段階ではASDの疑いがあるという状態のお子さんについては、特性が全く同じではないかもしれませんが、そのような傾向があればASDの可能性は高いと考えられます。
ぜひ、現在のお子さんの状態と照らし合わせながら読んでいただければと思います。
対人関係やコミュニケーションが苦手
ASDの最も特徴的な特性は「人とうまく関わりが持てず、コミュニケーションを図ることが苦手なこと」です。
具体的にはどのような状態があるのかを、次にまとめてみました。
対人関係やコミュニケーションに関する具体例
- 視線が合わない、表情がない。
- 抱っこや触られることが苦手。
- 名前を呼んでも反応しない。
- 人見知りはなく、親の後追いもしない。一人遊びをよくしている。
- 自分から言葉を発することが少なく、オウム返しが多い。
- 冗談を理解できず、言われた通りに受け取る。
- その場の状況や相手の気持ちを察することができない。空気が読めない。
ASDの子どもは、身の周りで起こることに対して最適な対応を実行する部分に、何らかの問題があるのではないかと考えられています。
また、人に対しても心をふさぎがちで、なかなか安心感を抱けません。
どちらかというと、人よりも物に対してのほうが関心を示しやすい傾向が見られます。
また、周囲の状況やペースに合わせて行動することも苦手なため、いつもと違う環境に置かれるだけでもパニック状態になることもあります。
さらに話しかけても視線が合わなかったり、名前を呼んでも反応しなかったりすることが多いので、親御さんとしては愛情が伝わっていないのでは?と心配になることもあるでしょう。
このような特徴は乳幼児期から見られるため、この時期の親御さんの中には「子どもとのつながりが薄いのでは?」という不安な感情を抱くこともあります。
例えば「よその子は母親の姿が見えなくなると泣き叫んで母親を求めるのに、うちの子はそんなことにはおかまいなくずっと一人で遊んでいる」「目が合わないので笑いかけることもできず、笑顔もあまりみられない」などASD特有の特性でも、ASDに対しての理解が浅い場合はそのように感じてしまうのです。
興味があるものに対して強いこだわりを持つ
ASDの主な特徴のひとつに、興味を持ったことにはとにかくとことんこだわり、毎日同じパターンや行動を繰り返すことを好むことが挙げられます。
少しでもいつもと違うことが起こると一気に不安になったり、緊張状態が続きパニックを起こしたりしまいがちです。
強いこだわりに関する具体例
- 毎日同じスケジュールや手順にこだわる。急な変更には対応できず、激しく抵抗することもある。
- 規則性のある物の置き方などにこだわりを持つ。
- 気に入った持ち物やいつも見ている物や環境に執着が強い。
- 興味の対象が極端に狭い。しかし一度興味を持ったら深く追求しようとする。
- 同じ場所を歩き回る、何度も跳んだり手をたたく、振るなど同じ動きを繰り返す。
- ドアの開閉など規則的な動きをじっと飽きずに見続けている。
- ルールや規則は必要以上に必死に守ろうとする。
- 自分の得意分野では一番にこだわる。
ASDの特性を持つ子どもは、日常の中で起こる「変更」や「いつもと違うことへの遭遇」には極端な不安を感じます。
普通は経験値によって次に起こる出来事や未来を予測し、柔軟に乗り切ろうとしますが、ASDの特性を持つ子どもにとっては不確かな「未来」や「変化」は恐怖にさえ感じられ、「同じ行動の繰り返し」や強い「こだわり」を見せるのは少しでも安心を手に入れようとしている姿だと考えられています。
また興味の対象が極端に狭いため、必然的に「こだわり」が強くなる傾向もあるようです。
感覚がアンバランス
ASDの子どもは五感の受け止め方が独特です。
特に聴覚のアンバランスさがよく見られ、音の情報を上手にふり分け、分類することができません。
そのため、大きなサイレンの音には猛烈な恐怖を感じたり、ザワザワとした周囲の騒音やただの生活音にさえも拒絶反応を示したりします。
このように非常に敏感な聴覚をもつ一方で、誰もが嫌がる黒板を爪で引っかくような音には無反応という鈍感さもあります。
聴覚以外の視覚、触覚、味覚への反応もアンバランスで、真夏にセーターを着ても平気な顔をしているなんてことも。
また、感覚のアンバランスさに加えて、体の動かし方が不器用な場合もあります。
感覚のアンバランスさに関する具体例
- 特定の何気ない音や騒音にも拒絶反応を示す。
- 痛みを感じにくく、自分で自分を傷つけてしまうことがある。
- 「暑い」「寒い」を感じにくく、衣服の調整が自分でできない。
- 肩に触れられたり、頭をなでられることを嫌がる。
- なんでもにおいをかいだり、なめたりする。
- スムーズに体を動かせず、同時に二つ以上のことを行うことが難しい。運動が苦手で姿勢も崩れがちな傾向がある。
ASDの特性を持つ子は、特定の刺激に対して、独特な感じ方をする傾向があります。
また、体の動かし方が極端に不器用な子どもも多く、運動はあまり得意ではありません。
ただし、このような「感覚のアンバランスさや運動神経」には個人差も大きく、どのような現れ方をするのかはケースバイケースです。
このような特性は、五感で感じた感覚が脳に伝わり、そこから身体に伝わる過程で伝達や指令が上手く行われないために起こります。
見た目には分かりづらい特性のため、ASDへの周囲の理解がなければ、運動面では努力不足だと評価されたりからかわれたりしがちです。
ASDの早期発見ができれば、これらの弱い部分を療育を通してケアしていくことも可能です。
特徴的な記憶力
ASDの子どもによく見られる特徴として「高い記憶力」があります。
特に自分が興味のあることに関しては、驚異的な記憶力を発揮することがよくあります。
また何年も前のことまで細部にわたって覚えているという特徴もありますが、その特徴が「嫌なことをすぐに忘れられない」という困難に繋がる場合もあります。
また、高い記憶力を見せる一方で、忘れてはいけない大切なことや昨日のできごとはすぐに忘れてしまうこともあり、現段階ではまだ解明されていませんが、記憶のメカニズムが独特の発達をしていると考えられています。
ASDと併発する発達障害
ASDは発達障害の一種であるということは、これまでに述べてきた通りです。
発達障害とは、「脳の働きや発達の問題によって、日常生活に困難が生じる状態」を指すもので、ASDの他にもADHD(注意欠如多動性障害)、LD(学習障害)、その他の脳機能の障害などがあげられます。
これらの発達障害は微妙に重なり合う部分があることが特徴で、ASDの特性もありながら別の障害の特性もあるということも起こります。
そのため、ひとつの診断名では説明がつきにくいこともあり、医師によって診断名が変わることもあります。
また、子どもの生活環境や支援体制によっては子どもの状態や様子も変わってくるため、時期によって診断名が変わることもあるようです。
そのため、発達障害の診断は専門家でも判断することが難しく、複雑であることを理解しておかなければなりません。
複数の発達障害とは
前述した通り、ASDには他の発達障害の特性も重なっている場合が多くあります。
そのため、最近ではそれぞれの特性を単体の障害と診断するのではなく、複数の特性が「連続」しているととらえる考え方も出てきています。
ここでは、その連続するケースが考えられるASD以外の発達障害の特徴についてそれぞれまとめています。
ADHD(注意欠如多動性障害)の特徴
- 「不注意」
- 忘れ物が多い。
- 同じミスを繰り返す。
- 整理整頓が苦手。
- 集中力が持続しない。など
- 「衝動性」
- 待てない。
- 欲求を我慢できない。
- 話に割り込みたがる。など
- 「多動性」
- 落ち着きがなくじっとしていられない。
- 座っていても手足が動く。
- いつも動き回っている。など
このような特徴は幼児期から見られますが、小学校に上がる頃から最も発見されやすくなります。
ADHDの特性が出現する原因はまだ解明されていませんが、生まれつきの脳の障害によるものだとされています。
特性の特徴をみるとどんな子どもにも当てはまりそうなことではありますが、同年齢の子どもと比較した場合、その傾向が著しく目立つようであればADHDの可能性を考えてみるとよいでしょう。
特性の現れ方の特徴としては、ADHDの主な3つの特徴全てが現れるわけではなく、その中のいずれかひとつが際立って目立つかたちで現れます。
LD(学習障害)の特徴
- 読むことが苦手。
- 書くことが苦手。
- 聞くこと・話すことが苦手。
- 計算・推論が苦手。など
文部科学省によると、LDは「知的な発達の遅れはないものの、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する能力のうち特定のものに困難を示すもの」とされています。
LDの原因は生まれつきの脳障害によるものと考えられ、幼児期から様々な場面で困難な状況に直面します。
しかし、より困難を感じ始めるようになるのは本格的に学習が始まる小学校以降で、その頃からLDと気付かれることも多くなってきます。
LDの場合、知的障害と異なるため苦手なもの以外の学習能力は平均以上の場合が多く、「努力が足りない」「なまけている」という評価をうけることがよくあります。
しかし本人にしてみれば、苦手なものに対してはどんなに努力しても成果が上がらないため、徐々に自信を失ってしまうこともあります。
LDの子どもはASDやADHDを併発しているケースも多く、その特徴である社会性の困難や不器用さがより一層学習を困難にしていることも考えられています。
DCD(発達性協調運動障害)の特徴
- 全身運動が苦手。
- 寝返りやはいはい、歩くこと等の基本的な運動の発達が遅れる、または全般的な運動が苦手。
- 手先が不器用。
- ボタンのかけ外しやファスナーの上げ下げができない。
- お箸やハサミがスムーズに使えない。など
DCDには神経、視聴覚の異常はないものの、いくつかの動作を行う(協調運動)ことが苦手です。
また全般的な運動も苦手で、じゅうぶんな練習を行ったにもかかわらず上達しない場合には、DCDの診断を検討してみるとよいでしょう。
DCDの原因は生まれつきの脳の問題とされていますが、詳しいことは分かっていません。
また、DCDが単独で発症することは少なく、ほとんどが他の発達障害と一緒に発症しています。
「手先の不器用さが目立つタイプ」と、「運動が苦手なタイプ」と特性の現れ方には個人差があります。
発達障害はひとつの診断名では説明できないことが多く、障害が重なり合って起こることも珍しくありません。
ASDの特徴が強く現れていても、ADHDの特徴も見受けられれば「ASDでありADHDでもある」というような診断も認められるようになってきています。
そのため、ASDと診断された場合もASDだけに偏らず、考えられる他の発達障害についても知っておく必要があります。
「二次障害」を防ぐためには
ASDの特徴である「人と関わることが苦手」という特徴ひとつを考えてみても、日常生活の中でASDの特性を持つ子が抱えるストレスは大きなものであると予想できますね。
もしも周囲によき理解者がいなければ、敵地の中をひとりで耐え抜いていかなければならないつらさもあります。
そのようなストレスが積み重なった時、最悪の場合、新たな症状を引き起こす可能性も出てきます。
ここでは、二次的に起こり得る新たな症状についてまとめています。
二次障害とは
ASDの特性を持つ子の言動は、まわりには不思議に映りがちです。
周囲から正しく理解されるまでには一定の時間が必要なため、長期間つらい状況の中がんばらなければならないこともあります。
またASDの特性から、どんなにがんばっても周りと同じように上手くできないことも多く、失敗を重ねるたびに叱られ、挫折感を繰り返し味わう子どももいます。
本人なりに努力していてもむくわれなければ自信を失い、いつしか「僕(私)はダメなんだ……」と自分で自分を責めてしまうようになっていってしまいます。
その結果、ネガティブな感情しか持てなくなったりストレスが心や体に悪影響を及ぼしたりすることもあるのです。
このように、ASDの特性を元に二次的な症状を引き起こすことを「二次障害」と言います。
二次障害の症状とは
二次障害で実際に現れる症状は、体の不調、精神面の不調、問題行動など。
体の不調とは主に、頭痛や食欲不振、不眠、幼児の場合は夜尿症などが見られます。
精神面の不調では、過剰な不安や緊張、うつ、不登校、引きこもりなどがあります。
問題行動では、強い反抗を示すようになったり、暴言、暴力、非行などに走りがちです。
二次障害で現れる症状は、ASDの特性よりも強く出る傾向にあり、まわりの大人たちへの不信感もつのっているため、対応が非常に難しくなります。
さらに、ASDの特性があることに気づかれないまま二次障害を引き起こせば、周囲にはそれが「わがまま」や「わざとやっている」ように見えてしまい、さらなる対応の難しさと不幸を呼び込む結果になってしまいます。
このような不幸を防ぐには、家族のサポートと自分を認められる気持ちを育てることが大切となります。
二次障害を予防するには
二次障害を引き起こしてしまった場合、ASDを持つ子どもは非常に苦しむことになります。
支えてくれる周囲の大人にまで不信感を持ってしまうため、孤独な日々を劣等感と戦いながら過ごすことになりかねません。
そうならないためにも、親御さんには二次障害を予防する意識を常に持っていてもらいたいと思います。
二次障害を予防するためには、「家族のサポート」とどんな自分も認められる「自己肯定感」を育てていくことが大切です。
💡家族のサポートについて
家族のサポートとして最も大切なことは、お子さんの特性にできるだけ早い段階で気づき、理解することです。
そして、適切な対応をまずは家族がしっかりと把握し、次に周囲に伝えていきます。
理解者を増やすことができれば、お子さんが「生きづらさ」を感じない環境づくりができるようになってきます。
一方、お子さんがASDを持っていることに気づかないまま過ごしてしまうと、「どうしてうちの子は他の子と違うのだろう」「なぜ普通のことができないのだろう」と焦り、ささいなことでも叱ってしまうことが増えてしまいます。
お子さんにとってはそれが不安や恐怖でしかなくなり、自信を失うことにつながります。
その結果、最悪の場合には二次障害を引き起こし、親子そろって負のスパイラルにはまってしまう可能性が高くなります。
さらに、特性に気づかないまま過ごしてしまえば、その期間が長ければ長いほど二次障害のリスクはどんどん高くなっていきます。
二次障害を防ぐためには、もしもお子さんにまわりの子との違いや小さなことでも違和感がある場合には放っておかず、発達障害の可能性を考えることです。
家族の早い気づきこそ、二次障害を防ぐ最も重要なポイントなのです。
💡自己肯定感を育てる
二次障害を防ぐために大切なもうひとつのポイントは、子どもの「自己肯定感」を上手に育ててあげることです。
「自己肯定感」とは、自分のことが好きで大切にしたいという気持ち、自分は価値のある人間であると自信をもって言える感覚を言います。
では、どうすれば子どもの「自己肯定感」を育てることができるのでしょうか。
まずは、子どものことをしっかり見つめ、がんばっていることを見つけて褒めてあげることです。
結果はあまり重要ではありません。
結果ではなく、「がんばった」という事実を見つけて褒めることが大切です。
何かにチャレンジして失敗した場合でも同様に、「失敗してもよくやった!ありのままのあなたが一番大好きよ!」と伝えてあげましょう。
そうすることで、子どもは、「できないことがあってもありのままの自分でいいんだ!そのままでも愛されているんだ!」という自信と安心感を抱くようになります。
子どもの「自己肯定感」を育てるには、何よりも「自分は愛され、大切にされている存在なのだ」という実感を持たせることから始まります。
じゅうぶんに愛されている実感を得て成長した子どもは、将来多くの挫折や失敗を繰り返しても、それに打ち勝つ自信を持つことができるでしょう。
例えASDがあっても、自己肯定感がしっかり育っていれば、決して二次障害にはならないのです。
💡もしも二次障害を引き起こしてしまったら……
二次障害は未然に防ぐことが鉄則ですが、どうしても防ぎきれない場合もあるかもしれません。
「もしかしてこれは二次障害?」と感じることがあれば、家族だけで問題を抱え込むことは得策ではありません。
二次障害は、蓄積された数々の問題やストレス、不適切な対応が積み重なって爆発したいわば、お子さんからのSOSとも受け取れます。
問題を解決するには溝が深すぎ、家族だけでその溝を埋めるにはさらなる深刻な問題を引き起こしかねません。
そのような場合には、学校や医療・相談機関と積極的につながりを持ち、サポートを受けながら今後の対応を考えていくとよいでしょう。
すぐに改善が図れるものではありませんので、親御さんのリフレッシュも図りながら取り組んでいくことが大切です。
二次障害が改善するまでにはおそらく色々なことがあると予想されますが、大切なことは、お子さんに決して背を向けないことです。
どんな状態の時も感情的にならずにお子さんの状態をみていきましょう。
親御さんのその姿は、どんな子にもきちんと「愛情」として伝わっているものです。
まとめ
自閉症スペクトラム(ASD)は発達障害の一種です。
主な特徴は「人との関りやコミュニケーションが苦手」「興味があるものに強いこだわりを持つ」「感覚がアンバランス」などがあります。
複数の発達障害と併発して発症することもあり、特性の出方には個人差があります。
発達障害全般にいえることですが、どんな障害においても早期発見早期対応が最も大切です。
「うちの子はまわりの子と少し違う」「違和感がある」ということが頻繁にあれば、まず発達障害の疑いを持ってみることも必要です。
またASDの特性を理解し、適切な環境の中で教育を受けられれば、ASD特有の「生きづらさ」は緩和されていきます。
しかし、特性の特性を理解されなければ「二次障害」を引き起こす可能性も出てきます。
ASDがあってもその特性を理解し、カバーする力を身に着ければ社会で活躍することはじゅうぶん可能です。
お子さんにその疑いがある、またはそう診断された場合には、まずはASDの特性をよく理解し、お子さんの将来のために適切な対応とは何かから考えていきましょう。
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