我が家の子どもは発達障害のグレーゾーンです。
1歳半の頃から発達の遅れが気になり、5歳になった現在も定期的に療育を受けています。
発達の遅れが気になり始めたあの頃は、「この先どうなるの?この子にも他の子と同じように楽しい経験をさせてあげることはできるの?」と不安ばかりでした。
同じような悩みを持つ未就園児の親御さんに、療育を始めたばかりの頃のことと、子育てが楽しくなった現在について体験談としてご紹介します。
療育に通い始めるまで
言葉がなかなか増えない
息子に初めて違和感を持ったのは、1歳半の頃でした。
1歳ちょうどで初語が出た息子でしたが、単語数個を覚えたきり、一向に言葉が増えないのです。
同じ時期に話し始めた子たちは色々な単語を覚え、上手にコミュニケーションを取れるようになっていました。
「この子なりのペースがあるんだ」と思いつつ、それでも不安は頭から消えませんでした。
1歳半検診の際、保健師さんに息子の発達について相談してみました。
返ってきた答えは「項目は全部クリアしているし、きっと大丈夫。2歳を過ぎても心配だったら電話をくださいね」……大丈夫、という言葉にホッとしたことを覚えています。
しかし、この頃から「なんだかうちの子、反応が鈍い?」と思うことが増えていきました。
例えば、名前を呼んで返事をしてくれるのは3回に1回。
絵本を読もうとしても、注目を引くのに時間がかかります。
簡単な指示なら分かりましたが、振り向いてくれるまでに数回声をかけないとならなかったのです。
すぐそこにいるはずなのに、まるで間に透明なガラスが一枚あるような気分でした。
幼児教室や支援センターでトラブルメーカーに
1歳半を過ぎた頃、お友達に誘われて幼児教室に通い始めました。
週に2回、50分1コマでみんなでリトミックをしたり、工作をしたりする内容のものです。
息子はリトミックや絵カードなど好きな課題は張り切って取り組みましたが、興味のないことが始まると途端に席を立って走り回ってしまうのです。
私は止めるのに必死で、毎回汗だくでした。
一緒に始めたお友達や他の子たちも同様でしたが、半年ほど経つといつのまにかみんなお行儀よく座れるようになっていました。
また、子育て支援センターや児童館ではお友達と仲良く遊べず、外に出るのが憂鬱になっていました。
場面の共有ができず、同じプラレールの線路で違う電車を走らせている子を突然叩くことがあるので、危なくて目が離せませんでした。
インターネットで子どもの発達について調べては「名前を呼べば返事はするし、指差しもできる。きっと大丈夫」と自分を何とか納得させる日々。
気が付くと、もう間もなく保健師さんに指定された2歳というところまできていました。
2歳になる前日、発達支援センターに電話し、面談の予約をしました。
親子教室に通い始める
初めての面談
面談当日、息子はとても落ち着いていて、私が心理の先生と話している間用意されたおもちゃで大人しく遊んでいました。
「親子教室があるんだけど、待機している人も多いから、案内できるまでにかなり時間がかかるかもしれません」という先生の歯切れの悪い言葉にがっかりしていましたが、事件は帰り際に起こりました。
さあ帰ろう、と息子に声をかけると、「やだー!!!」と癇癪を起こしたのです。
声を枯らして泣いて大暴れ。
当時は知りませんでしたが、この「気持ちの切り替えの苦手さ」は発達障害の子に多く見られる特徴です。
パニックを起こした息子を見て、先生はすぐに「多分、親子教室に案内できると思います」と言ってくださいました。
恐らく、気持ちの切り替えが上手にできるかを先生は重視して見ていたのでしょう。
無事、当日のうちに、翌月から始まる親子教室の案内を貰うことができました。
週に1回、親子で発達を促すグループに通う
面談の1ヶ月後から、発達支援センターの親子グループに通うことになりました。
週に1回、2時間のグループで、毎回広いホールで行われます。
先生8人ほどに対し、大体20組程度の親子が参加していて、2歳から5歳ぐらいまでの子どもがみんな一緒に活動するグループでした。
まず、初めの30分間は自由遊びの時間です。
プラレールやおままごとセットなどの玩具が広いホールに所狭しと並べられ、それを使って自由に遊ぶことができます。
この30分間の間に、発達支援センターの心理士さんと保育士さんがそれぞれの親子の間をまわり、子育ての悩みを聞いたり子どもの特性を見てくれるのです。
☑自由遊びが終わると次は体操の時間。
- 子どもたちになじみがある曲を使って親子一緒に踊る
- 「ラララぞうきん」や「バスにのって」などのふれあい遊び
上記のような身体を使ったさまざまな遊びを、30分間近くを使って楽しみます。
特に、ふれあい遊びは愛着形成のために重視されていて、毎回複数のプログラムが取り入れられていました。
☑その後は集まりの時間。
- 椅子に座り、名前を呼ばれたら返事をし、挨拶をする
- 皆で手遊びをしたり季節の歌を歌ったりする
- 音楽に合わせた紙芝居やパネルシアターなどを見る
親はそれぞれの子どもの椅子の後ろに座って、一緒に参加します。
子どもの注目を引きやすいようにぬいぐるみや絵カードなどを適宜使い、工夫されていました。
☑集まりが終わると、その日のテーマに合わせたメインの活動へ。
- 粘土遊び
- 簡単な工作
- ボールプール
- トランポリン
- 新聞紙遊び
などが多く行われ、家でも取り入れられる発達を促す遊びが多くありました。
メインの活動が終わると、最後にまた集まって「さようならの歌」を歌い、挨拶をして活動は終了です。
ジャンプをしたり、走ったりといった身体を大きく動かす粗大運動から、クレヨンを使ったお絵かきやシール貼りなどの微細運動まで、バランスよく組み込まれたプログラムでした。
2歳の息子には盛りだくさんな内容で、親子ともに楽しんで通っていました。
年度の終わりに療育のグループへの案内を受ける
親子クラスへ楽しんで通ってはいましたが、発達に劇的な変化があるわけでもなく、言葉も増えないため正直に言うと私はとても焦っていました。
「ネットには親子クラスに通い始めたら一気に伸びたって書いてあったのに……」
今でこそ笑ってあの頃を振り返ることができますが、当時は必死でした。
心理の先生に相談すると、4月から始まる週3日の「療育」の親子クラスへの参加の打診を受けました。
💡これまでの親子クラスと「療育」の親子クラスの違い
- これまでの親子クラスは特別な手続きが必要なく利用できた
- それに対し、療育は「児童発達支援・放課後等デイサービス」のため、「障害児通所支援受給者証」が必要になる
- 「障害児通所支援受給者証」の取得には医師の意見書が必要
- 意見書を提出する過程で早期に診断がつく場合もあり、親の精神的なハードルが高い
特に4つめの「意見書を提出する過程で早期に診断がつく場合もある」という部分は悩みましたが、信頼できる心理の先生が案内してくれるのならそういうことなんだろう、と覚悟を決めて受給者証を申請することにしました。
結局、息子の場合はまだ2歳ということもあり、「ことばの遅れ」で意見書を書いていただき、無事に受給者証を手にすることができました。
「振り分け」の親子クラス
この親子クラスは、その子がどんな子なのか、本当に支援が必要な子なのかを見極めるグループだったように記憶しています。
そのため、同じ2歳で親子クラスへ通っていた子の中でも、息子と同じように療育クラスへ進むことになった子、引き続き親子クラスへ通うことになった子、卒業した子、と進路が分かれました。
進路を考える際に発達支援センターの対応で何よりも嬉しかったのは、「親の意思や感情を優先して考えてくれる」ということでした。
色々なブログを読み漁っていたあの頃、発達相談に行き、いきなり発達検査をされて「あなたの子どもは自閉症です」と宣言される記事を読んでは、気軽に相談したら簡単に診断がついてしまうんじゃないか、という不安を抱えていました。
しかし、実際にはそんなことは全くなく、振り分けの期間を通してその子の個性をじっくり見てくれ、本人や親の困っていることに寄り添ってくれたことが本当に嬉しかったのです。
本格的に療育に通い始める
2ヶ所の児童発達支援事業所を利用
3年保育での入園を希望していたため、幼稚園への入園まであと1年。
2歳児に上がったのと同時に、「障害児通所支援受給者証」を利用してサービスが受けられる2ヶ所の児童発達支援事業所で療育を受け始めました。
ただ、複数の事業所を併用する場合、それぞれの事業所で子どもに対する接し方の方針が違うと本人が混乱してしまうこともあるようです。
担当の心理の先生に相談し、合わない場合は療育園1本に絞ろうと決めて併用することにしました。
週に3日、親子で通う発達支援センターの2歳児クラス
まず1つは、振り分けの親子クラスからステップアップで通うことになった行政の療育園です。
幼稚園のような設備が整った園舎に、1クラスあたり6人編成で、先生は常に3~4人配置されていました。
また、この先生方は保育士さんを中心として心理士、言語聴覚士、作業療法士など専門の先生が日替わりで加わり、より専門的なアドバイスが受けやすくなっていました。
グループの内容は前年に通っていた親子クラスとほぼ同じでしたが、1クラスの人数が減った分先生との距離が近くなり、グレーゾーンの子どもに対する対応をしっかり学ぶことができました。
- 「走ってはダメ」のような否定文では子どもは何をしたらいいのかわからない。「ゆっくり歩こうね」のように、してほしい行動に言い換える
- 気持ちの切り替えがしやすくなるよう、「時計の針が3に来たらお片付けだよ」など事前予告が大事
- 絵カードを使って指示を分かりやすくする
- 指示は簡潔に
子どもと一緒にグループ活動に参加する中で、このようなことを学べたのはとても大きな収穫でした。
特に、息子は気持ちの切り替えが苦手だったのですが、事前予告を徹底的にすることで少しずつスムーズに次の行動に移れるようになっていきました。
また、お友達と仲良く遊べずに手が出てしまうという課題もあったのですが、毎日同じお友達と顔を合わせるうちに、年度の終わりには手をつないで走り回ったり、おもちゃの貸し借りがスムーズにできるようになりました。
週に1日、民間の児童発達支援事業所
発達支援センターでの2歳児クラスの他に、民間でやっている療育も受けることにしました。
知人から民間でも療育が受けられると教わったのが3月。
聞いたその場で事業所に電話してみると、1枠だけ空いているとのことだったので、すぐに申し込みに行きました。
ちょうど年度の入れ替わりのタイミングだったため、運よくすぐに始めることができましたが、時期によっては半年以上も待つこともあるようです。
民間の事業所では個別指導を受けました。
白い壁の狭い部屋に机と椅子が置いてあり、教材は布で隠されていて、集中しやすい環境で指導を受けることができます。
2歳の頃は遊びながら言葉を引き出すことをメインでしたが、毎回必ずひとつはパズルや紐通しなど、認知課題が取り入れられていました。
若い先生がとても多く、息子も先生というよりは優しいお兄さんお姉さんと遊びに行く、というスタンスでしたが、何をしても褒めてもらえるので自己肯定感を高めることができたようです。
親としても、指導や先生の接し方を見ていて「そこまで褒めるんだ!」ととてもよい勉強になり、「今までの自分は怒ってばかりだったんだな」と反省するきっかけにもなりました。
期待した言葉の伸び自体はあまりありませんでしたが、
- 順番を守る
- 見通しを持って行動する
など、これから始まる集団生活に適応できるような基礎を整えることができました。
療育園は2歳児クラスで卒業しましたが、こちらの事業所は5歳になった現在も通っています。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)をメインに教わり、幼稚園生活に役立てているようです。
早期療育は親のためでもある
パニックにならないような導き方や対処法が身に付いた
療育を受けて、劇的に子どもが伸びた!ということはありませんでしたが、親の私が接し方を学んだことで、少しずつ他の子と同じような経験を楽しめるようになりました。
例えば、息子は見通しがつかない急な予定変更などに対応できず、2歳の頃は1日1回は必ずパニックを起こしていました。
しかし、事前予告の大切さを知ってから、毎朝その日のスケジュールを話すようにし、少しでも変更の可能性がある場合はその詳細についても細かく話すようにした結果、パニックを起こす頻度が減り、2人で遊園地に出かけたり、旅行にまで行けるようになりました。
スーパーへ買い物に行くことすら憂鬱だったあの頃を考えると夢のようです。
「予定が変更になったけど大丈夫だった」「大好きな○○に行けなくなっちゃったけど、△△も楽しかった」こんな成功体験をたくさん積んだことで、パニックにならないよう導きやすくなったのです。
私の場合、早期に正しい接し方を学んだことで、辛かった子育てが驚くほど楽になりました。
親子で療育に通うことが難しい場合は、ペアレントトレーニングなど、子どもとの接し方を親が学ぶことができるプログラムもおすすめです。
幼稚園に適応するために療育を受けているわけではない
最初、療育に通い始めたばかりの頃は「誰も集まりで椅子に座っていない。うちの子が悪いことをするとみんながすぐに真似して申し訳ないし、通っている意味あるのかな」「全然言葉も社会性も伸びてない」とマイナスなことばかり考えていました。
しかし、3年経った今では、子どもにどんなに色々なことを教えても、本人の心と身体が整っていないと獲得することは難しいのだと理解できます。
「幼稚園で適応するため」と焦ってばかりいましたが、実際は幼稚園のために療育を受けるのではなく、長い目で見た将来、困り感をなくしたり上手く対応できる手段を身につけるために通っている>んですよね。
幼稚園入園前の時期は焦る気持ちが大きく、大事なことを忘れていたように思います。
同じ悩みを持つ保護者同士で悩みを共有できた
グレーゾーンの子どもたちは一見すると躾が悪いだけに見えてしまいますが、実際は違います。
ルールが守れなかったり、些細なことでお友達を叩いたり、こだわりが強くパニックを起こしやすかったり……、「どうして普通にできないんだろう」という悩みを共有できたのは、いつも療育で出会ったママたちでした。
健常児のほとんどは発達支援センターに通うこともなく、子育てについての悩みの内容が根本的に違います。
お互いに身をもって実感しているからこそ、悩みに共感し合い、特性を理解して安心して遊ばせられるママ友がいるということは本当にありがたいものなのです。
まとめ
「療育」は発達の遅れが気になる子どもだけではなく、親のためでもあります。
とはいっても、自分の子が療育に通うことを勧められると不安になり、怒りすら覚える人もいらっしゃるかもしれません。
そんな時は、考えるよりまず先に一歩踏み出してみましょう。
療育で教えてくれる接し方は、発達障害児だけではなく、子育てに共通しています。
ちょっとしたコツを知ることで、あなたの子育てを楽にしてくれるはずです。
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