「うちの子元気だけど、他の子とちょっと違う?」「もしかして最近よく耳にする発達障害なのかな?」「こんなに元気なのに、少し手がかかるだけで発達障害のはずがないよね……」など、悩んでいる親御さんはいらっしゃいませんか?
私には、発達障害の1つである自閉症スペクトラムと診断された子どもがいます。
私もすぐには自分の子どもが発達障害かもしれないという事実を受け入れられませんでした。
けれども、療育に通うことで、子どものことが今まで以上に理解でき、私の考え方も、子どもの行動も変わっていきました。
そこで今回は、早期療育の重要性、発達障害を受け入れることで起こった親子の変化をご説明します。
読んで下さった方の悩みが少しでも解決し、前向きな気持ちになって下さったらうれしいです。
発達障害の特徴?それとも個性?違和感を抱えていた時期
他の子とちょっと違う?
自分の子どもが他の子とちょっと違うかも?と違和感を覚えるのは、いつも子どもの近くでたくさんの時間を一緒に過ごしている親御さんではないでしょうか?
うちの子、言葉が遅いかな
他の子とあんまり一緒に遊ばないな
癇癪がひどくて大変だな
偏食が多いな
何か違う気がするけれど、どう違うのか、はっきりわからない。
このように感じることが増えるのは2歳前後からのことが多いようです。
ただし注意しなければならないのは、こういった行動は子育てしていく上で、普通に見られることでもあり、一概に障害の特性とは言い切れません。
その子の個性の範囲かもしれません。
しかし親御さんが感じる違和感は大切にしてほしいと思います。
もしこの違和感が発達障害の特性であるとしたら、早めに気づいて支援を考えるということはとても重要だからです。
こだわりが強すぎる息子
わが家の場合は、息子のこだわりが強すぎると感じたことが最初の違和感でした。
- 朝食のリンゴの切り方、お皿が同じでないと食べない。
- 牛乳が同じ量入っていないとイヤだ。
- 毎日の歯磨き、お風呂などの順番が同じでないとイヤだ。
- 車のドアを開ける順番が同じじゃないとイヤだ。
息子なりのこだわりがたくさんあり、イヤなことがあると癇癪がひどく、泣き続けてしまう為、なかなか次の行動をすることができませんでした。
違和感を持ちながらも、1人目の子どもということもあり、男の子ってこんなものなのかなと思うぐらいでした。
抱えていた違和感を他人から指摘された時期
発達障害と疑われた健診
健診ではその月齢で大半の子どもが出来ている項目について保健師さんがチェックしています。
- 名前を呼んだ時に振り返るか
- どのくらい話せるか、またはどんなことを話すか
- 他の人とどのように関わるか、
息子の違和感を初めて他人に指摘されたのは、2歳半健診の時でした。
名前は?と聞かれた問いに対して、突然、歌を歌い始めたのです。
息子は人見知りだった為、恥ずかしくて歌い始めたとすぐにわかりました。
また次の質問をされました。「今日は誰と来たの?」「○○(弟)はお家にいるよ」
またもや、質問の意図とは全く違う回答をしました。
その後、保健師さんから市が開催している親子教室の案内書を手渡され、ぜひ参加してみてくださいと言われました。
帰りに息子に今日のことを聞いてみると、「あの人知らない人だからあんまり話したくなかった」という答えでした。
きちんとできるところを保健師さんに見せたかったなと少し残念に思う気持ちはありましたが、知らない人に対しては、いつもそうだったので発達に問題があるとは全く考えていませんでした。
案内された親子教室についてもただの親子リクリエーションのようなものかな?と思う程度でした。
経過観察のための親子教室
健診の時に案内された親子教室に参加してみました。
親子教室の内容は次のような流れになります。
- まず、保健師さんがシール貼りや簡単な質問をし、個別に子どもと対応します。(この時に保健師さんは、理解度をチェックし、人とのやりとり、コミュニケーションがきちんとれているか、また手先を上手に使えているかをみています)
- 個別の対応が終わったら、参加する子どもたちが集まるまで自由に遊びます。
- 集合時間になったら、親子での手遊びや音楽を使ったリトミックが始まり、のりやハサミを使った制作をして絵本を読みます。
- 最後に参加者全員が保健師さんとの面談をします。
時間にして約1時間ぐらいでした。
保健師さんとの面談で、「今日のお子さんの様子はいかがでしたか?ご家庭で何か困っていることはありませんか?」と質問されました。
親子教室に参加した時点では、息子に障害があるなんて微塵も思っていなかったので、無理矢理困っていること、大変なことを聞き出そうとしている気がして少しイヤな気持ちになりました。
きっとその頃の私は、息子が少し変わっているということを必死で否定したかったのかもしれません。
保健師さんがいろいろと気にかけてくれる言葉を素直に受け取れなかったのです。
発達障害・グレーゾーンじゃなくても療育は必要だと思ったきっかけ
伝え方の違いで行動が変わる!療育施設で気付かされたこと
保健師さんの勧めもあり、療育に見学に行くことにしました。
見学した療育施設は母子通園で、年齢別にクラスが分かれており、幼稚園や保育園のような流れで活動します。
療育見学の日、席に着くように促された息子は、遊んでいた車のおもちゃを離したくなくて、ずっと握ったまま椅子にも座ろうとしませんでした。
その時の私は、どうしてみんなと同じように椅子に座って話を聞けないのだということが気になって、息子を注意したい気持ちがありました。
しかし療育の先生は普通なら怒ってしまうところを
「まだ遊びたかったね。後から遊べるようにこのかごの駐車場に入れて椅子の下に置いておこうか」と声を掛けて下さいました。
すると、普段だとなかなかおもちゃを手放さない息子が、すんなりとおもちゃをかごの中に置き、椅子に座りました。
そして先生は椅子に座れた息子のことを褒めてくださったのです。
「よく座れたね。まだ遊びたかったのに我慢できたんだね」と。
療育の先生の伝え方は、いつも怒ってばかりいる私の伝え方とは違っていました。
療育で息子は少しずつ変わるかもしれない。
そして私も先生からいろいろ学んでいきたい。
療育に通ってみようと思ったきっかけでした。
そもそも療育とは?早期療育はどうして大切?
療育とは?
療育とは、「治療教育」の略称です。
療育では、1人1人の個性に寄り添い、それぞれの子どもが持つ力を伸ばしながら、できることを増やし、その子なりのレベルで自立して生きていけるように適切な教育をしていきます。
療育を受けることで、発達障害・グレーゾーンと言われていた子どもが、発達障害とは診断されないレベルまで成長することもあります。
もし後々、発達障害ではなかったということになっても療育を受けてマイナスになることはありません。
早期療育は子どもの成長が期待できる
発達障害の診断が確定的になるのが、3~4歳頃が多いようです。
発達障害は生まれつきの脳の機能障害であり、治らないと言われています。
現在のところ、効果的な薬も開発されていません。
しかし、子どもは生まれてから7~8歳ぐらいまでは、脳が目覚ましく発達します。
早期療育を始めれば、子どもたちは変わります。
毎日の生活が生きやすく、また家族も過ごしやすくなります。
一番子どものことを分かっているのは親御さんです。
子どもの違和感はそのままにせずに専門家に相談したり、療育の場所を探したり情報収集してください。
いきなり病院で発達障害のことについて相談したり、診断したりするのは気が引ける…という方は、健康診断が気軽に相談するチャンスです。
保健師さんは、子どもの発達に関する情報、適切な支援施設や支援方法についての情報を知っています。
もし気になることがある場合は思い切って相談して下さい。
子どもの行動が変化した療育の具体的方法
癇癪の原因である不安や恐怖を減らす
発達障害の特性を持っている子どもたちは、私たちとは違った感覚を持っていることがあります。
大きな音が苦手であったり、相手との距離感がうまくつかめなかったり。
言葉も文字も全くわからない外国に1人で放り出された状態を想像してみると、わかりやすいかもしれません。
自分では対処しきれない出来事が発生し、不安や恐怖を強める刺激が加わった時に、パニックや癇癪が起こります。
子どもがパニックや癇癪を起こしてしまう原因は様々だと思いますが、その原因を理解し、不安や恐怖を減らす工夫をすることで、パニックや癇癪を起こすことが少なくなります。
息子が強いこだわりを持っていたのは、毎日の流れが変わってしまうと、変化にどう対応すればいいのかわからなくなり、混乱してしまうからでした。
「こだわりを持つということは違いに気付いているということだから良いことだよ」
と療育の先生に聞いてからは、出来るだけ息子のこだわりも尊重することにしました。
どうしても出来ない時は、事前に出来ない理由を説明して他の方法があることを説明しました。
息子は、車のおもちゃを同じ順番に並べたいというこだわりがありました。
お気に入りの15台はいつも同じ順番に並べていないと気がすみません。
そこで約束をしました。
「時間がある時は、決まった順番に並べていいよ。でもお友達が遊ぶ時や、お出かけする時などの時間が無い時は同じ順番に並べられないこともあるよ。」
と説明すると、息子の方から質問してきました。
「他にもできない時があるの?」
「あるかもしれないね。同じ順番に並べたいのは分かるよ。でもできない時もあるよ。お友達は違う順番に並べて遊びたいかもしれないし、時間がなくて、お出かけに間に合わなくなるかもしれない。その時は分かってね。時間がある時にあとで並べることもできるからね。」
息子のこだわりを理解しつつ、できない状況や理由があることを説明しました。
そして、こだわりを妥協することができた時には褒めました。
「順番に並べたかったのによく我慢したね。あとからでもいいやって思えたね。すごいよ。理解してくれたから時間にも間に合ったし助かった。」
少し丁寧に説明するだけで息子も私自身も納得して、パニックや癇癪を起さずに過ごせるようになりました。
否定的ではなく、肯定的な伝え方でわかりやすく
年齢の小さい子どもは自分の気持ちをまだうまく表現できません。
その代わりにイヤだということを行動で示しているのです。
発達障害の子どもたちはなおさらで、人とうまくコミュニケーションがとれないがゆえに行動で表し、怒られてしまう機会が多くなってしまいます。
そこで、子どもが伝えたい言葉を代弁し、正しい行動ができたら褒める。
それを繰り返すことで、次第にイヤなことがあれば言葉で伝え、相手と交渉しながら正しい行動ができるようになるのです。
怒られてもどのように行動すればいいのか具体的に教えてもらわないと、わからない子どももいます。
「○○したらダメでしょ!」ではなく、「○○した方がいいね」という伝え方の方が理解できます。
例えば、コップを片手で持って運んでいて、中身がこぼれそうな時
× 「こぼしたらダメだよ!」
○ 「両手で持ってゆっくり歩けばこぼさないで運べるよ」
否定的ではなく、肯定的にわかりやすく伝えます。
息子も慣れない人と会うと緊張して大きな声を出したり、走り回ったりしてしまうことがありました。
ダメだよ!と注意はしても正しい行動をどうすればいいのか示していなかったので、悪い行動を繰り返し、怒られてばかりでした。
そこで、「緊張して恥ずかしい時は、お母さんの後ろに隠れていてもいいよ。大きな声を出したら、びっくりするからお母さんに、恥ずかしいということを耳元で教えてね」と伝えると大声で走り回ることは少なくなりました。
スモールステップで自信をつける
どの年齢の子どもでも苦手なこと、なかなかやれないことがあります。
しかし目標を達成するための手順を細かく分けて、ひとつずつスモールステップで取り組み、成功体験を積み重ねることによって、子どもの「出来た!」という自信につながり、達成できることが増えていきます。
そして、これも出来たから、あれもやってみよう!という良い連鎖につながります。
「幼いから、まだできない」
「障害があるからできない」
そういう思い込みはせず、子どもが持っている力を親御さんが信じてあげることが一番です。
息子は初めてのことに対する不安が強く、とても慎重な性格でした。
3歳になったばっかりで、ズボンの着脱にも自信がなかったので、タイミングは分かっていてもトイレがなかなかできるようになりませんでした。
先生がトイレで行う過程について1つ1つ手順表を絵で描き、説明してくださいました。
「今日はトイレの中まで入れたね」
「ズボンを脱げたね」
「今日は便器に座れたね」
スモールステップで進めていき、1つ出来るごとにシールを貼って、褒めてくださいました。
達成感を得ることで子どもの自信につながりました。
そして出来たシールがたくさん貼られたカードを見て、自分が出来たことが実感できると、次もやってみよう!という気持ちになり、1カ月程繰り返していくうちにトイレができるようになりました。
療育を続けることでこれから期待できること
子どもが自分の気持ちを伝えられるようになる
療育は障害自体を治療するものではありません。
なかなか話せない子どもが、療育を受ければ流暢に話せるようになるということではありません。
また、短期間で自立した生活ができるようになるわけでもありません。
しかし、療育を受けるうちに、その子なりの方法で、親御さんや周りの人たちとコミュニケーションができるようになっていきます。
例えば、自閉症スペクトラムにはコミュニケーションの問題がありますが、言語で伝えることが苦手なら身振り、手振りなどの非言語コミュニケーションもありますし、絵や文字を用いたカードで表現する方法もあります。
今まで泣いてパニックや癇癪を起していただけの子どもが自分の気持ちを伝えられるようになることは成長です。
特性のため、イヤだと感じてしまう事実は変わらないかもしれませんが、
そのことを伝える手段が分かると、子どもも親御さんも毎日の生活が過ごしやすくなります。
子どもの成長する姿を見ていくことで子育てに希望が持てる
はじめに療育を勧められた時は、どんなものなのかあまりピンときていませんでした。
しかし療育に通うにつれて、療育を続けることの意味が理解できるようになりました。
成長のスピードは一般的な目から見ればゆっくりかもしれませんが、子どもなりに一生懸命に学び、成長していくのです。
今まで、「出来ないこと」が気になり怒ってばかりだったけれど、
「出来ること」に目を向けると、子どもの努力、頑張っている過程もたくさん褒めたくなります。
そのように考え方が変わったのは療育を続けたからです。
療育での子どもの成長を見ていくことで、家族の考え方も変わり、希望を持ちながら子育てに取り組めるようになります。
発達障害の診断は受けるべき?
発達障害の診断を受けるかどうかは、心の準備ができてからで大丈夫!
療育施設に通うにつれて、息子は何かしらの発達障害があるのかもしれないと思う様になっていました。
しかし、最初に感じていた、息子が出来ないこと自体を否定しようという気持ちはなくなっていました。
障害があるということは「苦手なことがあれば、そこの部分を支援してあげればいい」という考えに変わっていました。
目が悪い人は眼鏡をかけるということと同じように、人とのコミュニケーションが苦手なら、その部分を手助けすればいい。
右利きの人がいれば左利きの人もいるように発達障害も1つの個性として認めていけばいいのです。
私の場合、このように考えられるようになるには時間が必要でした。
療育を受け、先生や周りの親御さんと接する中で、私の考え方が変化し、
徐々に息子の個性を受け入れ、もし発達障害だとしても支援していけば、大丈夫だという自信が出てきました。
肯定的に捉え、前向きに向き合えるようになっていったのです。
気持ちが変化してきたことで、診断を受ける心の準備ができたのだと思います。
発達障害の診断(病院での検査)を受けてよかったこと
診断を受けるまでは発達障害の特性だと理解できずに怒ってしまうことも多々ありました。
しかし、診断を受けることで子供に対する理解が今まで以上に深まりました。
息子の困っていることが理解できるようになり、どうすればもっとやりやすくなるのか一緒に考えられるようになりました。
次に、医師が説明してくれる子どもの特性、発達検査結果を基に、
保育園や学校にも子どもの特性について説明しやすくなりました。
保育園や学校の先生の理解が深まれば、集団生活の中で起こる問題の対応の仕方が違ってきます。
また、私が住んでいる地域では、就学まで定期的に面接し、発達検査をしてくれます。
福祉、行政のバックアップもあるので、一人で悩むことが少なくなりました。
気をつけなければならないことは、発達障害の診断ができる医療機関が少ないという現状です。
やっと診断できる機関を見つけても初診を受けるまでに数カ月、検査を受けるまでに数カ月というように診断まで長い間待つことになる場合もあります。
私は、子ども発達センターでの小児科医の発達検査の予約をしました。
この時で約1年待ちでした。1年の間に親子で何回か面接を重ね、発達検査を受けて発達障害の診断に至りました。
検査を待っている間も療育を見つけたり、情報収集したり計画的に行動することをおすすめします。
まとめ
子どもが発達障害かもしれないとしたら、否定したい気持ちもあると思いますが、親御さんが一番の理解者となって専門家に相談したり、療育施設を探したり情報収集してください。
発達障害またはグレーゾーンであるという事実を受け入れ、行動することが前向きな未来に進む第一歩です。
早期療育で親御さんの考え方も変わり、子どもも成長します。
出来ないことが気になってしまうかもしれませんが、子どもの出来ることに目を向けましょう。
苦手なことは手助けしてあげようという気持ちでいると、子どもの出来た!が積み重なって自信につながります。
子どもは絶対に成長します。持っている力を最大限に発揮できるように、子どもを信じて頑張りましょう。
親御さんのいつも応援してくれている温かい気持ち、子どもたちには伝わっています。
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