自分や子どもが発達障害であると診断された場合、どうすればいいのでしょうか?
また、発達障害の特性が見られた場合に取れる行動とは?
自閉症スペクトラム障害に現在も苦しんでいる筆者が、体験談から対策と心構えについてお話をします。
発達障害……インターネットの普及によりその単語を目にする機会が増え、多くの人に広く知られるようになったのではないでしょうか。
しかし、具体的にどのような障害なのか、また、自分自身やお子さんが発達障害なのか、その知識を得ることや判断は素人目線ではとても難しく、医師による慎重な判断が必要です。
今回は、発達障害の診断を受けた筆者自身の体験からどのような問題が発生するのか、発達障害に関してアクシデントやトラブルはどのように発生するのか、そして療育手帳や精神障害者保健福祉手帳に関しても詳しくお伝えします。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
発達障害とは
発達障害はいくつかのタイプに分類されており、それは自閉症やアスペルガー症候群、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、学習障害、吃音症など多岐に渡ります。
これら全てに共通していることは、「病気」ではないということです。
生まれつき「脳」の一部に障害があり、それが影響しているのです。
そのため、同じ障害を持つ人でも症状が異なったりすることもあり、個人差がとても大きいという特徴があります。
☑(例)自閉症スペクトラム障害について
筆者の病名はこちらです。
聞いたことがある人も多いかもしれません。
特性の強さによっていくつかの診断名に分類されることもありますが、共通して脳の障害であり、「完治」はせず、付き合いながら生活していくことが必要になります。
主な特性として「相互的な対人関係の障害」「コミュニケーションの障害」「興味や行動へのこだわり」が挙げられます。
筆者が自閉症スペクトラム障害により起こったアクシデントは、社会人になってからのことでした。
中学、高校の時から対人関係がうまく行かずに悩むことが多かったのは自覚していましたが、会社に行くと必ず「努力が足りない」「やる気がない」という重圧を受ける的になったのです。
それは、複数の会社を転々としても変わらないことでした。
対人コミュニケーションも、緊張するとうまく取ることができず、大量の発汗や震えが起こることもありました。
継続的にかかっていた病院から、自閉症スペクトラム障害と診断されたのは社会人になって実に10年程経ってからのことでした。
「社会に適合できない」「対人コミュニケーションを上手く取れない」
これらは脳の障害によるもの、と断定され、「病気ではないので治らない」と言われました。
その事実を、今でも十二分には受け入れられずにいます。
自閉症スペクトラム障害は、最近では100人に1~2名存在すると言われています。
筆者のように遅くに発覚するケースもあれば、早期に発見できるケースもあります。
いずれにせよ、医師による継続的な診断が必要であり、また、医師の判断もすぐ出るものではないため、発見が遅れがちになってしまいます。
☑(例)その他の発達障害について
ADHD(注意欠陥・多動性障害)も発達障害の代表的な特性として挙げられます。
発達年齢に見合わない多動、衝動性や不注意などが7歳までに現れると言われています。
他には学習障害(LD)などがあります。
学習障害(LD)は、全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するという特定のことが困難な状態をいいます。
自閉症スペクトラム障害のサイン
前述の通り、筆者は現在自閉症スペクトラム障害と診断され、精神障害者保健福祉手帳の三級を取得しています。
精神障害者保健福祉手帳は医師の判断によるものであり、また、診断書が必要になります。
※精神障害者保健福祉手帳については、後述の4.精神障害者保健福祉手帳とはにて詳しく説明しています。
人の目を見ない、他の子どもに関心を見せないなど自閉症スペクトラム障害のサインは、一般的には1歳を過ぎた頃から現れ始めると言われています。
他に、集団行動が苦手である、自分の話したいことしか口にせず、会話が繋がりにくい等が特徴として挙げられます。
自閉症スペクトラム障害の診断受けた筆者にもそのようなサインがありました。
一対一で相手と話をする際は会話ができるのに、集団での会話では混乱してしまい、上手く話に割り込むことができないのです。
とりわけ対面で話をする時はその傾向が強く、インターネットのチャットを介しての話だとある程度は緩やかに進行できるようにはなりました。
また、大人になってからその特徴が顕著になった場合、社会に適合できないという不安や周囲の重圧に耐えきれず、鬱病などの精神疾患を発症してしまうこともあります。
筆者も鬱病になってしまい、複数の会社をその理由で退職することになりました。
現在も抗鬱剤を飲みながら生活しています。
その根本的な原因として筆者の体験を例に挙げますと、生家では両親が「発達障害」に対してほとんど理解を示さなかったため、それが一つの要因となったと感じています。
子どもの頃に発達障害の診断を受け、周囲の理解を受けて成長した人の中には、成長するに連れて症状が目立たなくなったり、能力の凹凸を活用して社会に適合したりしている人もいます。
筆者は自分が「普通の人間」であり「努力が足りない」と言われ続けました。
そのような状況で社会にどうしても適合できず、周囲との人間関係がどんどん悪化し、精神状態も悪くなる負のスパイラルに陥ってしまっていました。
現在もそのスパイラルは続いていますが、自立していけるよう、努力をする前向きな姿勢で生きていけるほどまでには回復しています。
周囲の理解が大事
筆者の生来を例にとりますが、やはり周囲、とりわけ家族の理解が薄かったということが、発達障害への認識を遅らせた原因であり、対策を取れなかった大きな要因であると感じています。
まずは当人が理解することも重要ですが、周囲がその事実を受け止め、サポートすることが大事です。
とりわけ子どもだと、親の意見が全てであり、それに左右されることが多い場合があります。
親の視点から子どもの異常をいち早く察し早期にサポートをしていけば、子どももそれを自覚し、改善への道を模索していくことができます。
はじめから「発達障害ではない」「努力不足だ」と否定をしてしまっては、改善への道が閉ざされてしまいます。
まずは親が子どもの障害についての知識を得る所から始まり、子どもの、自分の障害への理解。
それから初めて改善への道が開けると筆者は考えます。
筆者の場合は大人になってからの診断だったため、すべてが後手に回ってしまいました。
周囲の理解を得られるかどうか以前に、まず自分自身が障害について理解できなかったのです。
事実を受け入れるには社会はあまりにも適合しづらく、しかし適合しないと生きてはいけない。
その狭間で苦しむことになりました。
今更自分が障害者であるとして、これからどうやって生きていけばいいのか。
それらの方向性を、主治医が事細かに指示、模索してくれるわけでもありません。
手段についてのレクチャーはあるものの、ある程度は自分自身でこなさなければなりません。
しかし、同時に鬱病などを患ってしまった場合、気力も体力もついてこず、どんどん状況が悪化していってしまいます。
筆者は、大人になってからの発達障害診断については、それが一番の悪循環の原因と考えます。
様々な手続きにも、時間や手順がかかります。
希望すればすぐ下りる認可でもなく、取得が難しいものもあります。
やはり、発達障害の特性を持っている対象が子どもである場合、その保護者の行動が、子どもの一生を左右する大事なキーになるのです。
精神障害者保健福祉手帳とは
精神障害者保健福祉手帳は、主治医に相談し、取得できるとなった場合に診断書を書いてもらい、それを居住区の区市町村に提出することで申請できます。
等級は一級から三級までがあり、それぞれによって取得できる障害基礎年金の額が異なります。
この障害基礎年金も、正確な手続きを踏んだ上でないと取得することはできません。
筆者は三級を所持していますが、特性が気になりだしたのが社会人になってからなのか、それとも学生時代からなのかという点で、医師からの診断書に「学生時代から」と書かれてしまったため、障害基礎年金を受給できなくなっています。
何故なのか、それは学生時代には厚生年金を収めていなかったからという理由があります。
このあたりは医師の裁量によるものなので、現在筆者は別の病院にかかり、診断書を新しく取得する手続きをとっています。
障害年金は医師との詳しい話し合いが必要になることに加え、専門的な手続きも必要となるため、お住まいの居住区に近い社会保険労務士に問い合わせてみるのも一つの手かもしれません。
また、精神障害者保健福祉手帳は所持していると、居住区によってバスの料金が減額されたり、福祉施設が無料になったりします。
そちらも併せて調べてみることをおすすめします。
療育手帳とは
精神障害者保健福祉手帳とは異なり、療育手帳というものも存在します。
療育手帳は、知的障害児・知的障害者に対して発行されるものです。
障害程度によりA、Bと区分され、知的障害のある人が一貫した療育や援護、制度やサービスを受けやすくするためのものです。
精神障害者保健福祉手帳も療育手帳も、筆者個人の意見としては「取得しておくべきである」というのが一貫とした意見です。
その大きな理由は、取得していることにより様々な支援を受けることが可能になるからです。
障害基礎年金の取得には手帳の認定が必要です。
治療について
筆者が主治医から「自閉症スペクトラム障害」について最初に言われたことは「脳の病気ですから治りませんよ」という一言でした。
つまり、治療をするというよりは、状況を改善したりすることが必要になるということです。
鬱などを発症している場合には抗不安剤、抗鬱剤を服用するとある程度の改善が見られることもあるようです。
しかし筆者は、鬱に対する服薬を行っても社会に対する不安や不適合が改善はされませんでした。
発達障害と二次障害の治療には、周囲の理解と環境の改善が大きな課題になります。
自閉症スペクトラム障害に限らず、多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)なども同様です。
いずれにしても、対象者が子どもの場合はその姿勢を「怠惰である」と断定せず、親が障害について、それは性格でも病気でもなく「脳の障害である」ということを受け入れ、サポートすることが絶対に必要です。
親も受け入れる準備が必要ですが、何より違和感を抱え、苦しんでいるのは障害を持つ当人です。
その事実を理解してくれる周囲、環境が「治療」……つまり「状況の改善」には必要になるのではないかと考えます。
大人になってから発覚した場合
では筆者のように、大人になってから発覚し苦しむ場合、どのようにすれば良いでしょう。
まずはインターネットを使い「知識」を集めること。
自分の診断された病気について知り、どのように対策を立てるべきか、考えていくことが必要です。
ある程度の年齢になると、周囲の理解を得ながら行動していくのもだんだん難しくなってきます。
それ故、分からないことは病院の主治医に相談することや、精神保健福祉センターに相談するのも手段の一つとしてあげられます。
一人で悩んでいるよりも、誰かの知恵を借り、専門家の意見をもらったほうが絶対にうまくいきます。
止まっていた時間が動き出すかもしれません。
悩み苦しまないために
発達障害は脳の障害で完治しないものであり、また、障害への理解は、自他ともに必要なものです。
まずはその事実を受け入れる過程から始まり、少しでも前に進めるように生きていかなければいけません。
一番苦しいのは、障害を持つ当人です。
当人の心を周囲が守る、また、自分の心を自分で守る。
その心構えもとても大切ではないかな、と筆者は考えます。
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