小学生の上の子は並行通園を経験してから、小学校に進学し、普通級へ。
下の子は、幼稚園との並行通園中です。
発達面の障害が重度ではない場合、親も問題点に気づくきっかけが少なく、療育施設や専門医にめぐり会う機会はなかなかありません。< 親として、診断を受け入れられない気持ちや、療育が本当に必要なのかどうか躊躇する気持ちもありますよね。 しかし、我が家の子どもたちは療育で学び、それらを栄養にして成長しています。
我が家の体験談が、この記事をご覧になっている人の『きづき』につながれば幸いです。
迷走した「上の子のケース」
現在は順調に療育を継続しているふたりですが、ここに至るまでの道のりは紆余曲折ありました。
上の子の場合、初めての子育てでしたが、ごく初期の頃から違和感があったのです。
保健師さんに相談したり、1歳半健診でも相談したり、子どものために動き回ってみましたが、解決方法が見つからないままでした。
この章では、そんな上の子に焦点をあて、当時の様子や振り返って気づいた改善点についてご紹介いたします。
困り果てる毎日
上の子の違和感に気づいたのは、ほんの赤ちゃんの頃でした。
すやすや眠っていることの多い時期ですが、我が子は抱っこしていないと泣いてしまい、昼夜を問わず、少しでも腕から離れると絶叫のような泣き声が止まらなかったのです。
「何かが違う」と思いました。
ひとたび泣き出すと、連れて出かけるのもやっと、小児科に行くのもやっと。
悩んでいた私は電話で育児相談できるところに相談しましたが、返ってきた答えは「泣いているように見えて、いつの間にか赤ちゃんは眠っているものですよ」「心配ないですよ」……月並みな言葉に困り果ててしまいました。
保健師さんの訪問相談
地域担当の保健師さんから産後に訪問すると連絡が入ったとき、「良かった!相談できる!」とホッとしたことを覚えています。
当日、知らない人が家に入ってきて、大きな体重計を出したのに気づいて、泣くのを止めた息子。
嫌がって反り返りながら体重も計測してもらっていました。
泣いている時間のほうが多いくらいの毎日だったのに!
保健師さんから「お母さんも少し休んでね」「気にし過ぎないように」とお話があり、「赤ちゃんもびっくりしたことがきっかけで、フッと様子が変わるかもよ」と元気づけてくださいました。
私は専門家である保健師さんと話すことができて、心底ホッとしました。
人と会うことで子どもにも刺激になり、相談することで何か変化が出てくる!と感じたのです。
息子は、保健師さんたちが帰ったあとは相変わらずの絶叫泣きでしたが。
児童館での「育児相談会」
大泣きが日常的になっている息子にびくびくしながら、児童館で開催される育児相談会に出かけることにしました。
「どこかに連れていきたい」「相談したら、また何かが変わる」「ほんの少しでもいい」そう期待しながら、息子を抱えたままで身支度をして出発しました。
しかし、現実に打ちのめされたのです。
大人しく順番待ちをしている赤ちゃんや小さなお子さん達に対して、うちの子は絶叫で反り返って泣き続けました。
全身に力を込めて反った板のように固くなっている息子、みんなの視線……、外に出るしかありませんでした。
その後も何度か相談会や読み聞かせの会に行ってみましたが、室内に数分しかいられないのが大半でした。
私の脱力も大きく、限界……、でも「どこかに連れて行きたい」「相談していけば、何か見つかるはず」そういう気持ちだけは持ち続けていました。
待ちに待った「1歳半健診」
1歳半健診の案内が届いたときは「ヤッター!」と思いました。
かかりつけの小児科でも「発達に詳しい先生から説明が受けられる。健診で相談を」と言われ、期待していたのです。
自立歩行も早い時期からできるようになって自在に歩き回るようになった我が子は、いたずらも多くなり、物が壊れて無くなって探して……その繰り返しの毎日でした。
待ちに待った「1歳半健診」、広い部屋に同じくらいの小さい子たちが大集合です。
たくさんの親子連れの中で泣き出す我が子でしたが、そのうちに泣き止んで動き回り始めました。
備品を触り、順番待ちで相談している親子の横から割って入り、ドアを開け、引き出しを開け……、私は息子についてまわることしかできない状態でした。
やっと順番がきて、今の様子を相談。
簡単な知能検査のようなテストにも息子はうまく反応することができず、私も日ごろの様子を説明しましたが、結果は「様子を見ましょう」……鉄板のコメントが返ってきたのです。
当時の私~改善すべき点~
1歳半健診のあと、帰宅しながら悩みが深くなりました。
親としては「病気の心配はないのだろうか」「病院にかかる必要性は?」など様々な疑問が浮かんできます。
- “様子を見る”って、いつまで?
- どんな様子になったら病院に行けばいい?小児科?
- 判断基準は?
- 今、してあげられることはないの?
突き放されたようにも感じましたが、親である私も、下記のように、相談の場ですべきだったことがちゃんとできていなかったのです。
- 私が疲れ切っていて、相手に分かりやすく整然と説明できなかった。
- 様子を見る“基準”を具体的に聞いておくべきだった。
- 異変や異常を感じた時、どこにコンタクトを取ればスムーズに話が伝わるのか、打ち合わせのように相談しておくべきだった。
悔やまれる事柄がいくつも思い浮かびました。
初めて聞く場所で開催された“遊びの場”と専門医への受診
小児科通いの多かった息子は、どこでも走っていってところかまわず触って回るためか、熱が出ることが多かったのです。
頻繁に小児科に通っていたある日、初めて聞く施設で開催される「遊ぼう会」を見つけました。
色々調べてみた結果、「遊ぼう会」が開催されている施設は療育のための施設で、子どもを遊ばせながら育児相談できる場が開催されているということを知ったのです。
また、「児童発達支援員」という専門の職員さんにこれまでのことを打ち明けたときに、私は人生で初めて「療育」という言葉と「発達障害」という言葉を聞きました。
その職員さんから週1回の練習通園の話があり、同時に発達の専門医を紹介されたため、総合病院を受診することになりました。
「発達障害」というショッキングな診断結果も、私には納得感があったため飲み込むことができました。
懸命に児童館へ連れて行ったことが、逆効果だった…?
専門医を受診した際に説明を受けて、ショックだった事実もありました。
それは、「慣れさせよう」「専門の方に見てもらおう」と思い、児童館などへ懸命に連れて行っていたことでした。
子どものためになると思って、倒れそうになりながら頑張ってきたことが我が子にとっては逆効果……、本人が嫌がる場所は、避けてあげるべきだったのです。
医師に説明されるまで、私は全く気づくことができませんでした。
大切なことは、嫌がることを無理にさせず、本人が安心した生活を送ること。
そして、人とのコミュニケーション力を伸ばし、心を発達させてあげること。
私は、息子の気持ちに反して、赤ちゃんは児童館で遊ぶもの、読み聞かせの会を楽しむもの、子どもがたくさん遊んでいる公園に出かけるもの、それが良いことだと思い込んでいたのです。
息子は一生懸命、泣いて私に伝えていたのに。
「受診して本当に良かった」と私は心から感じました。
教えてもらわなければ、その後も続けていただろうと思います。
発達専門医を受診できたことは、とても大きな転換点になりました。
それから練習の通園を経て、療育生活がスタートしました。
小学校入学が見えてきた!「就学前相談」で普通級を希望
年数がたち、年長さんになった長男。
小学校進学に向けた「就学前相談」の時期になりました。
息子は普通級に入れるかどうか微妙なところでしたが、親の希望としては普通級。
当時の息子の様子から、少人数の中だと自分中心に生活しがちだと感じていたこと、そして、多くのクラスメイトと気持ちをぶつけながら過ごす方が友人もできやすく、楽しいことが大好きな息子に合うのではと思ったことが、普通級を希望した理由です。
以前の反省点から、息子の様子をまとめた文章を用意しておきました。
- 職員の方々が日ごろ接し方で工夫している方法
- 発達外来のドクターのコメント
- 親の立場から期待している点や、普通級への希望
その年のうちに小学校へ事前の見学に行くこともでき、その際に支援級の先生と面談もできました。
通知された結果は、普通級への進学でした。
健常児なら、時期が来れば“当然”やって来る小学校入学。
クラス分けも、大半の皆さんが何の疑問も持たないと思いますが、我が家の場合は、ギリギリでした。
頑張りを重ねて、やっとみんなと同じ普通級が認められたのです。
「療育を受けてきてよかった」と、合格を勝ち取ったような感覚でした。
一方、思わぬ方向だった「下の子のケース」
下の子も「同じような要素を持っているかもしれない」という心配はありましたが、何か持っていたとしても、「きっと軽いはず」という思いがありました。
それは、上の子よりおとなしい性格で、落ち着いた面が多く、泣き止まないということもなかったからです。
上の子を育てていると、「”一般的”の範囲内」という感覚がアヤフヤになっていたのかもしれません。
今回は普通に迎えた1歳半健診でしたが、帰りに臨床心理士さんとの面談を案内されました。
後日、面談の中で日ごろの様子を説明していると、発達の相談会について紹介されたのです。
確かに、歩き始めた頃から家具を越えるなどの動きが多くなり、手から物を絶対に離さない面や、周りが見えなくなる様子もありましたが、大丈夫だろうと思っていたのです。
上の子はもう小学校にあがっているので、できれば下の子は保育園に通わせて、私も働きに出たいと思っていた時期でした。
行動の様子に不安はあったため、相談で解決できる部分があるかもしれないと期待し、日時を予約して訪問すると、待っていたのは療育の案内。
1歳半健診の段階でも、臨床心理士さんの所見でも、実は“要・療育”とのコメントだったようです。
「療育?この子も必要なの?」と、上の子の時よりも思いがけなくて、私は大きなショックを受けていました。
専門医を受診。意外な「診断」
療育施設の紹介で、専門医を受診することになった下の子。
言葉の遅れも感じていたので、「施設から療育を勧められている以上、この子のためになることをしなくては」と思い、医師としっかり話をしました。
結果、受けた診断名は「自閉症スペクトラム障害」……「まさか!」と私は思い、帰り道、涙がボロボロ出てしまいました。
上の子よりは落ち着いていて、ちょっと言葉の出方が遅くて、でも騒ぎまわって遊ぶのが大好きだし、ニコニコの笑顔で笑い声も出ているし、遊ぶ時はとても器用で驚くほどの子……それなのに……ショックしかありませんでした。
目標を決め、療育に通うことに
赤ちゃんの頃から泣き方があまりに力強く、成長は順調だったものの「疲れないの?眠くならないの?」と不思議になるくらい動き続ける毎日だった上の子の時は納得感があり、診断もすんなり受け入れることができました。
だけど下の子は……と、ショックを受けたままでしたが思い直し、「親だからできること」を考えました。
療育日程を考えると、仕事は始められそうもありません。
私は目標を「並行通園できるように成長する」に設定し、子どもと一緒に療育に通い始めました。
ふたりの療育を受けて思う【メリット】【デメリット】
心配だった下の子も並行通園できるようになりました。
このようにして「療育」と出会った子どもたち。
療育は、その子どもにとって必要な面を補っていくため、方向性は様々です。
家庭で試行錯誤して取り組むこともひとつの方法だと思いますが、私のケースのように親として見ていると見落としや思い違いもあります。
我が家の場合は、私だけではきっと対応しきれず、子どもをここまで伸ばせなかっただろうな、と実感しています。
下記から【メリット】【デメリット】をそれぞれご紹介します。
【メリット1】成長の方向性を手助けできる
子どもの特性について、医師、臨床心理士、発達支援員の方々に診てもらっていますが、これは本当に助かること、代えがたいことです。
親が気づかなかったことや知らなかったこともハッキリしました。
早期からの療育で成長の方向性を適切に促していけることは、子どもの人生にとって、とても大きなメリットです。
【メリット2】育て方、過ごし方が分かる
継続して専門家に見てもらうことで、成長に合わせたケア方法が分かってきます。
子どもに止めてほしい行動がある場合、上の子は目を合わせて話しかける方法が適していますが、下の子は絵カードで示すことで、行動の切り替えができます。
絵カードと言っても、本人が納得できるカード選びがポイントです。
カードの内容、色あい、写真のカードか、イラストのカードか、カードの大きさ、文字入りが良いのか。
子どもの手助けにはひとつひとつコツが要りますが、親が悩むよりも支援の方々へ相談することで適切なアドバイスがもらえます。
【メリット3】子どもの特性についてポイントが分かる
説明を聞き、発達障害に関する本を読み始めると、療育の大切さがとてもよく分かります。
「療育」という言葉を初めて聞いた私が発達障害について学ぼうと思っても、日々の育児や生活で手いっぱい。
でも、相談し続けることで、親として学ぶべきポイントが絞り込まれてきます。
ふたりの我が子が抱えている問題点はそれぞれ違うため、読むべき専門の本も別々です。
生活環境を整える面、学習遅れの対策なども含めて、日々、試行錯誤しています。
【デメリット】は考えず「子ども本人にとってのメリット」を重視
学校や園以外に、他の所に通うのは労力も時間もお金もかかりますが、私の場合はデメリットを考えないようにしています。
それは結果として、ふたりとも療育を受ける機会にめぐり会えて良かったと実感しているからです。
自力で解決策を探しだすことはできませんでした。
子ども本人も、動作がうまくいかない事や、どうして友達とケンカになるのか、困っているけれど説明できない状態です。
毎日洪水のようにやってくるたくさんの問題を解決する方法なんて、独力で何とかできるものではありません。
発達面の問題の全体像を知っている人たちから、たくさんアドバイスをもらうことが早くて適切だと感じています。
まとめ~療育は、親だけができる対策~
発達上の問題点については、これから成長に合わせてどんどん増えていきます。
だからこそ早めの準備が必要です。
療育は、できるだけ早い時期からスタートすることで効果も大きく現れると言われています。
一般的な育児の悩みとは異なり、我が子が必要としている部分の的確な支援なんて、並大抵の方法では見つかりません。
現状を見つめて、手探りで進んでいくことになります。
発達障害には多くの壁や悩みが包まれているため、子どもを将来にわたってトータルで支えてあげる必要があります。
生き方の道しるべとして、療育という方法が大きな意味を持っていると実感しています。
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