保育園や幼稚園、学校などの集団生活が始まると、ADHDなど発達障害を抱える子どもたちは様々な問題と直面します。
先生やママ友など、周りの人から指摘を受けて初めて「自分の子が周りと違う」ということに気がついた親御さんも多いのではないのでしょうか。
私もそうでした。
今振り返って考えてみると、我が子には周りの子と違うと感じることはたくさんあったのです。
例えば、次のような行動や発言。
- おもちゃを与えても全て壊してしまう
- 本を破いて読もうとしない
- すぐに走ってどこかへ行ってしまうので目がはなせない
- 人に対して唐突に失礼なことを言ってしまう
しかし、当時の私は我が子に対して「そういう性格なのだろう」「やんちゃな子なんだな」「成長すれば次第におさまっていくだろう」としか思っていなかったのです。
周りの人たちも、我が子が小さいうちは「面白い子だね」と笑って許してくれていました。
我が子はいつもニコニコしていたため、みんなに可愛がってもらえていたのです。
そのため、私は我が子の上記のような行動について、当時そんなに気にしていませんでした。
そんな状況が一変したのは、幼稚園で集団生活が始まってからでした。
今回は、私の子どもと私が体験したことを通して、発達障害児が直面する問題と、私たちがどう向き合っていったのかについてお伝えします。
少しでも参考になりましたら幸いです。
初めての集団生活
幼稚園に入園した頃から、我が子の言動がだんだんと問題になってきました。
大人たちに囲まれて許されていたことも、同じ年の子どもからは許されるわけもなく、「変なやつ」「ダメなやつ」と思われてしまい、我が子にはお友達と呼べる子がほとんどいなくなってしまったのです。
- 他の子はみんな座っているのにウロウロと立って歩く
- 決まりごとも守れず1人で違うことをする
- 先生や同級生への暴言
- 突然訳のわからないことを言う
我が子には上記の行動が目立ちました。
幼稚園から帰宅したあと、みんなは友達と遊びの約束をしているのに、我が子が誘われることはありませんでした。
周りが羨ましく、とても寂しい思いをしました。
親を通してなんとか遊びに入れてもらおうとしたこともありますが、子ども達に拒否され、何も言えなくなりました。
お友達のいない幼稚園が嫌いだったのか、我が子は「幼稚園を今すぐ車で壊して!」と毎日のように繰り返し言うようになってしまったのです。
それでも先生は根気よく、優しく注意をしてくださいました。
それなのに、その先生にもおしっこをかけてしまうということがあったのです。
先生もお手上げ状態。
私は、自分のしつけが悪いのだと随分悩みました。
色々な本を読んだり、ネットで調べたりもしました。
親には相談しましたが、他の人には恥ずかしくて言えませんでした。
当時は「発達障害」という存在を知らず、自分なりに接し方や話し方を工夫し、色々試してみたのですが我が子には響かず、むしろどんどん悪化していってしまったのです。
それでも、「小学校に入ればどうにかなるかもしれない」と少し期待はしていました。
言葉や数字に関しては問題がなかったので、「学校なら勉強をするところだから、なんとかなるかもしれない」「それで自信がつくかもしれない」「周りも認めてくれるかもしれない」と思っていたのです。
しかし、現実はそんなに甘くありませんでした。
小学校に入学してからも、周りからの「変なやつ、ダメなやつ」というイメージは変わりませんでした。
我が子は登下校では1人だけ置いて行かれ、毎日のように「みんなと学校に行きたい。みんなと帰りたい」と訴えていました。
先生にそのことを相談すると、「みんなと話してみましたが、どうやらお宅のお子さんのことを下に見ているようなのです」とハッキリ言われました。
わかってはいましたがショックでした。
先生が話をしてくれても状況は変わりませんでした。
珍しく遊びに行ったかと思えば公園で蹴られたり、踏まれたりして帰ってきます。
「嫌なことは嫌だって言わないとダメだよ」と言っても「嫌じゃないから大丈夫だよ」と笑っていました。
「どうしたらいいのだろう」「うちの子は、周りからみるとそんなにダメなんだ」「そして、その親の自分もダメなんだ」と、ずいぶん悩みました。
他の親御さんや子ども達と関わったら不快な思いをさせてしまうのでないかと思うと、人と話せなくなってしまいました。
夫はあまり育児に関心がなく、親に相談することも恥ずかしくなってしまい、相談できる人は誰もいませんでした。
目をそらしてしまった「ADHD」の存在
ちょうどその頃にテレビでADHDのことを知りました。
ADHDの特徴がいくつか挙げられていましたが、そのADHDの特徴が驚くほど自分の子どもにあてはまっていて「まさか……」と思わず口に出してしまいました。
そこで病院にいけばよかったのに、私は目をそらしてしまったのです。
「まさか自分の子が障害なんて」「少し変わったところはあるけれど、そこまで日常生活に支障はないし、大丈夫だろう」と思ってしまったのです。
それでもやっぱり気になったため、夫に相談してみましたが「そんなのは言い訳だ」と言われてしまい、その言葉がまた私を苦しめました。
高学年になると、学校生活はますます苦しいものになりました。
我が子は毎日のようにいじめを受けているにも関わらず、「大丈夫だよ」と学校に通い続けていました。
しかし、明らかに笑顔が消えていき、あんなにニコニコしていた表情が暗くなっていくのがわかりました。
先生もこまめに連絡を取り合ったり、対応してくれていたのですが、一向に改善されませんでした。
正直、もう限界でした。
受診のきっかけ
特別学級や教育相談を学校で勧められたことはありませんでしたが、小学6年生のときに担任の先生から、「お子さんがこれから学校生活を楽しく送る手助けをして行きたいと思っています。お子さんの特徴を知り、どのように接していけば良いかを考えたいので、一度、検査を受けてみて頂けないでしょうか」と言われたのです。
ちゃんと勧められたのはその時が初めてでした。
丁寧に説明してくださったので、あんなに抵抗があったのに意外とすんなり受け入れることが出来ました。
もしかしたら、私は誰かに背中を押してほしかったのかもしれません。
担任の先生の言葉をきっかけに検査を受けようと思い、私はインターネットで色々なことを調べました。
子ども専門の発達障害を診てくれる先生がいる病院を見つけ、連絡をしてみましたが「予約がいっぱいで診察が半年後になる」「先に児童相談所で知能検査を受けてからでないと受診できない」「児童相談所も予約待ちである」と言われました。
こんなに時間がかかるのかという反面、こんなに発達障害のことで受診する人がいるのかということも感じ、同じことで悩んでいる人がたくさんいるんだと実感しました。
でも、検査に不安を感じていました。
どんなことをするかもわからない未知の世界。
当時は「児童相談所は素行の悪い子が行くところじゃないの?」という偏見もあり(今は「発達障害の相談も児童相談所の管轄だ」と理解しているので、その偏見はなくなりました)、半年間不安を抱えて過ごしていました。
それは子どもも同じで、「どんなところに行くの?何をするの?」と度々不安を口にしていました。
児童相談所での検査と通院について
児童相談所で検査を受ける日になりました。
親と子どもで別々の部屋に行き、子どもは簡単なテストや検査員さんとの面談、親は検査員さんとの面談がありました。
2時間~3時間くらいかかったと記憶しています。
児童相談所の皆さんはとても丁寧で優しく、抱えていた不安が少し軽くなっていくのを感じました。
検査の結果、知能には問題なかったのですが、能力の一部や人とのやりとりに偏りがあるとのことでした。
後日、その検査結果を持って、病院を受診。
病院の先生もとても優しく、子どもが診察中に椅子でグルグル回り始めても「いいんですよ」と優しく受け止めてくれ、子どもも安心したようです。
(この後、通院することになるのですが、我が子は「あの先生だったら何でも話せる」と話していました)
まずは、親と子どもがそれぞれ困っていることを聞かれました。
ずっと「大丈夫だよ」と言っていた子どもの口から「毎日、いじめられてつらい」という言葉を聞き、私は「本当はこの子はずっとつらい思いをしていたんだ」と改めて思い、大きなショックを受けました。
いじめの具体的な内容を子どもの口から聞き、どんなにつらかっただろうと涙が出ました。
その後も色々と問診があり、診察の結果は「ADHD」でした。
「やっぱりそうだったんだ」「これからどうしよう」「薬を飲まなきゃならないのだろうか」「副作用は大丈夫なのかな」など、たくさんの不安が沸き起こる中、先生から「まずは学校と連携して、いじめを何とかしましょう。このままでは本人の心が壊れてしまいます。治療はそれからです」と言われ、しばらく通院してカウンセリングを受けることになりました。
これからの生活でどんなことを工夫していけば良いのか、学校ではどんなふうに周りと接していけば良いのか等、先生は本当にたくさんの相談に乗ってくださり、そして、我が子も自分の状況を理解したようでした。
今まで抱えていた疑問が解けたようで、我が子はショックを受けた様子はなく、むしろ清々しい表情をしていました。
きっと私達と同じように本人も、「どうしていじめられるんだろう」「どうして変だと言われるんだろう」「どうしてみんなと同じことができていないんだろう」と苦しんでいたのでしょう。
きっと本人なりに工夫し、それでもうまくいかず苦悩していて、そして私達には心配をかけたくないという気持ちで「大丈夫だよ」と言い続けてくれたのだと思います。
私は今まで、認めたくない一心で目をそらし、病院へ行くのをためらっていました。
その結果、ずっとこの子を苦しめていたのだと思うと、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
翌日、診察の内容と結果を担任の先生にお伝えしました。
担任の先生も状況をきちんと受け止めてくれて、「教えていただきありがとうございます。早速、クラスで話し合いの時間をつくります」と言って、すぐに対応してくださいました。
まず、ADHDのことは言わずに、いじめについての聞き取りをおこなったそうです。
そして、この現状を子ども達にしっかりと理解してもらいながら、自分達のしていることが人をどんなに傷つけているかを、真剣に切々と話してくださいました。
すると、あんなに何年も続いていたいじめが少しずつなくなり、クラスの雰囲気が良くなっていったのです。
子ども達がまだ小学生だったということもありますが、あまり乱暴なことは言わないようになっていったそうです。
もちろん、我が子にも周りの人との関わりかたや、やってはいけないことについて等、丁寧に指導をおこなっていただきました
私は、子どもが少しずつ変わっていくのを感じました。
ADHDと向き合う
ある日、先生がとても嬉しそうに電話をしてきました。
学校ではクラス対抗の大縄跳び大会が毎年あります。
うちの子どもは運動が苦手で、大縄飛びでも一度も入れず、連続で飛ぶことが出来ませんでした。
そして、クラスの子からいつもその事を責められていたそうです。
しかし、クラスの雰囲気が良くなってきたこともあり、周りで応援してくれる子が増えてきました。
そのおかげでしょうか、その日は思い切って縄に飛び込み、飛ぶことが出来たのです。
飛べた瞬間、歓声があがり、「良かったね。頑張ったね」とクラスのみんなが拍手をしてくれました。
「本当に嬉しかったです」と先生も言っていました。
私も本当に嬉しかったことを覚えています。
先生のおかげでクラスの雰囲気が変わったのはもちろん、何より子ども本人が自分の現状を理解し、勇気を出して変わろうとしていることが嬉しかったのです。
病院でも、学校での過ごし方や困ったことについて相談に乗ってくださいました。
周りの人々のおかげで、だんだん子どもに笑顔が戻ってきたのです。
「もっと早く病院を受診していれば」という後悔もありますが、良い先生達に出会えて良い方向に向かえたことは本当にありがたいことだと思っています。
そして、子どもの困っていることから目をそらさず、しっかりと現状を受け止めること、困っていることを解決する為には、病院での受診等、周りの助けも必要であることを学びました。
おわりに:我が子が高校生になった今
高校生になった我が子ですが、今でも色々と問題があります。
周りとの関わりや授業態度等、どうしてもうまくいかないことがあり、先生と連絡を取り合いながら手探りで進む毎日です。
それでも、今の子どもの表情は明るいのです。
やりたいことも見つけました。
これまでの経験から、同じように、ADHDなど発達障害の疑いのあるお子さんを育てる親御さん達は本当に毎日が大変で、不安になり悩んでおられることだと感じています。
病院を受診することや、周りに相談することを躊躇されている親御さんもいらっしゃるでしょう。
もしも周りに相談することが難しい場合、ネットや電話等の相談窓口を利用するという手もあります。
一人で抱え込んでしまうと本当に苦しいです。
疑いがあるのであれば、病院を受診して早めに診断してもらったほうがよいですよ。
そうすることで、問題を解決する方法を知ることができ、相談できる存在ができるのです。
私達にとって病院の先生や担任の先生は本当に心強い存在でした。
他にも色々な人に支えられ、今はADHDと向き合うことが出来ています。
私達の体験談が少しでも悩んでいる親御さん達のお役に立てましたら幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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