発達障害児は「集中力がない」「飽きっぽい」「不器用」「習得までに時間がかかる」といった特性がみられるために、習い事を始めても長続きしなかったり、先生や仲間と衝突したりということも多く、頭を抱えている親御さんも多いことでしょう。
また、「何か子どもの得意なこと、個性を伸ばしてあげたいけれども、どのような習い事が向いているのかわからない」と思っている親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか?
発達障害児におすすめの習い事は、運動系、自然体験系の習い事です。
子どもの興味や好きなことを伸ばすこと、仲間との関わりを持つことを促せる習い事もよいでしょう。
習い事を始める前に大切なことは、親と子どもとの間で、習い事をなぜやるのかという理由と目的をはっきりさせて「ここまではがんばろうね」という目標を明確にしておくことです。
今回の記事が、「どのような習い事がよいか悩んでいる」「なかなか習い事が続かないと悩んでいる」という親御さんたちの習い事の選び方のヒントになりましたら幸いです。
習い事を始める前に:習い事を始める理由と目的をはっきりさせる
習い事を始める理由は、
- 子どもが習い事をやりたいと言い出したから
- 保護者が子どもに身につけてほしいことがあったから
- 保護者が子どもの苦手なことを克服して欲しいと思ったから
- 何か得意なこと、好きなことを見つけるきっかけになって欲しいと思ったから
など、様々ですね。
習い事を始めるときに、
- どのような理由でその習い事を習うのか
- 何を目的として習うのか
- どこを目標とするのか
ということを、子どもと保護者間で明確にしておくことが大切です。
例えば、スイミングであれば、「学校の授業でも水泳は必要だから○級をとるまでは続けよう」「クロールで25m泳げるようになるまでは続けよう」「体力をつけるために小学生の間は続けよう」など、子どもと保護者との間で習い事をする理由・目的と、いつまでは頑張ろうという見通しを立てることがおすすめです。
最初の理由と見通しの部分の確認を省いてしまうと、「お母さんが行けって言ってるから行ってる」「本当はやりたくないのにやらされている」という「嫌々習っている」という状態となってしまう可能性が高く、「やる気が見えない」、「すぐにやめたいという」ことになりがちです。
また、習い事は学校とは違って私的な活動であり、また、習い事を始めるうえでどれだけのサポートを受けられるかは指導者や環境によっても異なるため、お子さんがどれだけ指導者の指示が理解でき、実践できるかどうかを習い事を始める前に確認する必要があります。
体験を活用する
今はほとんどの習い事に、実際に習う前に体験して入るかどうかを決めることのできる【お試し制度】があります。
習い事を始める前に、「本当に子どもが続けられるのか不安」「子どもに経験させたいけれども子どもがあまり乗り気ではない」「この習い事どうかなと思っているけれども迷っている」など、不安を感じるときには体験を活用しましょう。
体験は、ただ子どもをお願いするだけではなく保護者もついていって、先生と子どもとのやり取りやレッスンの内容を中心に、子どもの様子や習い事の環境、先生の様子をチェックしてくださいね。
✓チェックポイント:個別レッスンの場合
- 思っていた目的を達成できそうな内容であるか
- レッスンのレベルは子どもに合っているか
- 先生の子どもへの接し方で気になる点はないか など
✓チェックポイント:集団レッスンの場合
- 他の子どもの中でうまくやっていけそうか
- 子どもはレッスンについていけているか
- 楽しめているか など
レッスンの後すぐに子どもに体験がどうであったか尋ねても、興奮していたり疲れたりしていてなかなか本心が見えない場合もあるため、すぐに即決はせずに、一度家に帰ってから子どもとレッスンを振り返ってみて、また行きたいと感じたかを話し合い、入るかどうかを決めるほうがよいですよ。
衝動的に「やる」と答えても、後から落ち着いてみれば「やっぱり……」ということもあります。
実際に体験に行って習い事を始めるかどうかを決める時に、判断材料とするとよいことを以下に示します。
- 子どもが楽しかった、またやってみたいという感情を持つことができたこと
- 保護者が子どもをお願いしてもよいと思う環境、指導者であったこと
- 習い事をするうえでの目的を達成できそうであると判断できたこと
家から習い事まで安全に通えるか、雨の場合の交通手段、料金、曜日・時間などが家庭の都合に合うかどうかも判断するポイントです。
何を習ってよいのか迷うときには
習い事を何かさせたいけれども、何を習って良いのか迷うというときは習い事に求めることや、子どもの興味の方向性から絞っていくことがおすすめです。
習い事に求めることから選択する
個別レッスンと集団レッスンとでは、習い事へ求める要素も変わってきますね。
集団で受けるけれども、個人で進める習い事もあります。
マンツーマンの個別レッスンの場合は(塾のマンツーマンでの個別指導でもそうですが)質を重視する場合が多いようです。
子どもの理解を深めたい、技術をじっくり身につけたい、集中しやすい環境をつくりたい、ということを求めることが多いのではないでしょうか。
- 個別指導塾
- ピアノなど
集団レッスンの場合は、仲間とのコミュニケーションや他の子どもたちとの関わりも重視したいとき、指導者の言うことを聞いて実行するという、学校生活にも通じるところがあります。
- サッカーやバレーボール、バスケットボールなどのスポーツ
- コミュニケーションをとるということで、英会話のグループレッスンなど
集団で受けるけれども個人で行うものには、そろばんや集団塾、スイミング、習字などがあり、また、体操やリトミックなど、みんなで一緒に取り組む課題と個人で取り組む課題の両方の要素があるものもあります。
何をしていいのかわからないというときは、
- 子どもに集団での関わりを持ってほしいのか
- 技術を磨くことに特化したいのか
- スポーツをさせたいのか
- 学習をさせたいのか
という視点から選択し、絞り込んでいくのもよいでしょう。
子どもの興味の方向性を知る
子どもが興味を持っていることを伸ばすことは、とても大切なことです。
子どもがどのようなことに興味を持っているのかを、普段の生活や園・学校生活での先生からの言葉をヒントにみつけてみましょう。
発達障害児は苦手なことがある反面、得意なことを持っていることも多いといわれています。
虫が好き、恐竜が好き、ブロックが好き、ロボットが好きなど、子どもの興味から広げられそうな可能性を習い事で探してみるのもよいでしょう。
今は、サイエンス教室やロボット教室、レゴ教室、料理教室など、実にさまざまな習い事があります。
子どもの興味をさらに追及するという視点で、習い事を選択することもおすすめです。
発達障害児におすすめの習い事
子どもの興味や好きを伸ばせる習い事、仲間との関わりを持てる習い事もおすすめですが、発達障害児におすすめしたい習い事は全身を使う運動系の習い事、自然体験系の習い事です。
運動系の習い事
発達障害児は体力に乏しく、体幹筋力が弱く、バランス力も低めである子が多いです。
全身を使って体を動かし、体力や筋力を促すことのできる運動系の習い事は発達を促すうえでもおすすめです。
習い事では運動に適した環境で思いきり身体を動かすことができます。
指導者がついていることで、自分で運動している限りではなかなか広がりにくい運動のバリエーションも広げることができます。
水泳や体操といった王道の運動系の習い事から、ボルタリングやトランポリン、カヌーなどの体幹の安定性と全身の協調性を要求される運動系の習い事もおすすめです。
トランポリンやはしごをよじ登るなどの全身のバランスをとる必要がある運動は、発達障害のリハビリテーションでも活用されています。
自分の身体をどう適応させていくか、どのように動かしていくのかということを経験して、自分の身体イメージや身体の使い方を身につけていくことができるのです。
自然体験系の習い事
発達障害児は不器用であることや苦手なことも多く、知識や経験が積み重なりにくいことがみられます。
家庭でできることには限りがあり、親がついている環境と親が居ない環境では子どもの取り組みの姿勢も変わってきますね。
新しい経験をたくさん積むことのできる野外活動やボーイスカウト、ガールスカウトなどの自然体験系の習い事もおすすめです。
グループでリーダーがいて規律を守って行動するということも集団行動を行う、ルールを守る練習にもなります。
役割を担って行動することで達成できた時は成功体験も得られます。
様々な体験を通して、子どもの「できた」を増やすこともおすすめです。
まとめ
発達障害児は新しい環境に適応しにくいこともあり、なかなか環境に馴染むまでに時間がかかることもあります。
色々な子どもをみてきている指導者の場合、子どもに合わせて環境を整えてくれるケースもありますが、なかなか支援が行き届かないケースも多いでしょう。
習字や個別指導塾など、個人のペースで進めることのできる習い事では、時間を短くする、一回で行う量を減らすなど、子どもの許容量やペースに合わせて調整が可能な場合もあります。
ただし、集団で一緒に同じことを行う習い事の場合は、なかなか一人だけ別メニューでということは難しいかもしれません。
そういった場合、指導者から「一緒のペースで行うことは難しい」とはっきりと告げられることもあるかもしれません。
習い事はそれぞれの私的な機関や個人が行なっているものですので、どこまで受け入れや対応が可能かはそれぞれの教室によって変わり、保護者が習い事へ求めることのできる範囲も異なります。
「ここでは目的を達するのには難しい」と判断した場合は、習い事を変えてみるのもひとつの手です。
また、習い事をすることで「何曜日は何時から○○がある」と習慣づけや予定管理ができるようになるメリットもあります。
ただし、習い事をたくさん積み込み過ぎて子どものストレスにならいように気をつけてくださいね。
子どもの体力や許容量、ペースなどとも相談して、無理のない範囲で楽しみながら子どもの自信を増やしていけるようにしましょう。
コメント