あなたのご主人はどんな仕事をしていますか?
また、その仕事はご主人に向いていると思いますか?
日本では、専門性よりもコミュニケーション能力や様々なことをまんべんなくこなす能力を求められることも多いです。
それは発達障害者にとっては苦手なことですから、苦労している人もいらっしゃるでしょう。
この記事では私の夫の職歴を元に、「ADHDの人にはどのような仕事が向いているのか?」「どのような仕事が向いていないのか?」についてお話します。
夫の今までの職歴
私が夫と出会ったのは大学時代でしたので、大学時代のアルバイトも含めながらお話したいと思います。
彼が大学時代にしていたアルバイトは全部で2つありました。
アルバイトを始めた順番に並べると、一般企業の事務、少年野球のコーチです。
そして、現在は大企業の工場勤務をしています。
これら3つの仕事を【向いているもの】【向いていないもの】に分類しながら、「どうして向いているのか?」「どうして向いていないのか?」を中心に綴っています。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
向いているように見えたもの<少年野球のコーチ>
仕事内容と職場環境
主に近所の小学生に野球を教えるお仕事でした。
レッスン前後の会場の整備等も行っていたそうですが、事務作業や月謝の管理はすべて社員である上司の担当でした。
大学の野球サークルの友達の誘いで始めたため、職場には大学の友達が多くいましたから、過度な緊張もなく、良い意味で遊びのような感覚で仕事をしているようでした。
シフトは固定制だったのでスケジュールもシンプル。
職場が家の近所でしたので、苦手な満員電車に乗る必要もなく、自転車で通勤していました。
向いている理由
夫はADHDで様々な特性を持っていますので、健常者に比べて向き不向きがはっきりしています。
野球のコーチは、なぜ彼に向いていたのでしょうか?
側で見ていて、7つの理由があるように感じました。
1.自分の得意分野を生かせる
これが一番大きいように思います。
夫は小学生の頃から野球をやっていたので、野球は自他ともに認める得意分野です。
2.頼りにされるうれしさ
自分の得意なことを教え、成長していく子どもの姿を見ていくこと、そして子どもたちからの「ありがとうございます」というお礼の言葉が夫の自尊心を高めていったようです。
当時の教え子からは今でも年賀状が届きますので、夫が慕われていた様子を感じ、私まで嬉しくなります。
3.顔見知りの人間関係
数人で経営していた小さな教室でしたので、職員はいつも同じ顔触れでした。
子どもも固定のメンバーでしたので、ほとんどいつも同じメンバーで過ごしていたようです。
発達障害の特性から、夫は初めて会う人や初めての場所に対して過度に緊張してしまうため、おなじみのメンバーで過ごせるこの職場は彼にとって居心地がよく、ストレスが少ないように見えました。
4.適度に体を動かすから飽きない
ADHDの特性である【多動性】から、夫も長時間同じ姿勢を保つことがつらいようです。
子どもの頃も「授業中にどうしても座っていられなかった」と話していました。
ですから、長時間イスに座りっぱなしのデスクワークではなく、体を動かしながら仕事ができる環境が向いているのです。
野球を教えているので、むしろ動かないほうが不自然ですよね。
5.友達が多いため、サポートしてもらえる
職場には大学のサークル仲間が何人もいましたので、少しミスをしても仲間がフォローしてくれていました。
例えば、試合の時の持ち物。
夫は水分補給のためのジャグを持っていく係でしたが、勤務先からジャグを持ち帰るのを忘れてしまいました。
しかし、職場に残っていた友達がジャグに気付き、代わりに持ち帰ってくれました。
夫が忘れっぽくおっちょこちょいであることをサークルの友達は知っていましたので、上手くフォローしてくれたのです。
6.数字入力やお金の計算など「小さいミスが大きいミスになるもの」は業務に無い
事務作業は全て社員の仕事でしたので、お金の計算を間違えて迷惑をかける、などはありません。
子どもに対して「明日は〇〇を持って来てね~」と口頭で連絡するような業務はしていたようですが、夫が間違ったことを言うと子どもがつっこんで訂正してくれていたそうです。
少し間違えても、周りの誰かがフォローしてくれるので、大きなミスに繋がりません。
7.ジャージで仕事
ジャージで仕事ができることは、夫にとって大きな利点だったようです。
発達障害者の中には、「着るもの」へのこだわりが強い人がいます。
彼もその内の一人で、スーツのような固い素材の衣類が苦手でした。
ですから、ジャージで仕事ができるのはとても有難いことでした。
【向いている理由】まとめ
- 小さなミスが大きなミスに繋がらない職場が向いている
- 好きなことや興味のあることに関する職場が向いている
向いていないように見えたもの<一般企業の事務>
次に「向いていないように見えた」2つの仕事について紹介します。
まずは、一般企業の事務です。
📌仕事内容と職場環境
主に電話番、営業(電話を1日に20件、新規顧客対応)、振り込み手続きの手配、事務作業(売上入力、本部へのメール報告、シフト調整、他のアルバイトへのシフト連絡、チラシの制作)などがありました。
従業員の少ない会社でしたので、良い点は静かで落ち着いていることでした。
しかし、事務職がアルバイトの夫しかいないため、分からないことがあっても聞く人がおらず、ミスに気付く人がいないため、ミスに気付かないままお客さんに迷惑をかける、ということがありました。
向いていない理由4つ
1.スーツ着用
先ほど申し上げた通り、私の夫は衣類へのこだわりが強く、スーツが苦手です。
しかし、このアルバイトはスーツ着用が義務づけられていました。
彼はスーツを着るだけで落ち着きがなくなるため、スーツを着ることによっていつもよりミスが増えてしまっていたのではないか?と感じていました。
2.電話対応の難しさ
電話を苦手と感じる発達障害者は多いようです。
夫は下記のように話していました。
「突然電話で話されると、ローマ字とかカタカナで話されてる感じがするんだよね。反応できない。しかも職場で他の人が話してると、電話の音が聞こえないんだよね」
恐らく、突然話しかけられても頭がその話題に切り替わらず、言葉を意味のまとまりとして聞くことが出来ないのだと思います。
「電話の音が聞こえない」は、音の選択性の問題です。
発達障害者の中には、聴覚過敏の人が多くいます。
私の夫もその内の一人です。
聴覚過敏の特徴に「すべての音が同じ大きさで聞こえる」ということが挙げられます。
ですから、職場の話し声と電話の音が同じ音量で聞こえ、頭の中がごちゃごちゃになってしまうのでしょう。
3.営業の臨機応変さ、何を求めてるのか分からない、嘘がつけない
新規のお客さんが来た時に対応することも夫の仕事でした。
いわゆる営業です。
営業には「臨機応変さ」が求められますが、発達障害者は臨機応変に対応する力が弱いと言われており、夫も臨機応変が苦手です。
そのため、お客さんの発言から「この人は何を求めているのか?」が分からなく、必要でない情報を伝えてしまうことが多かったようです。
妻である私から見ると「素直で素敵だな」と思うのですが、彼の特徴は営業という職業においては不向きだったようです。
4.計算のミスが多いので、お金や数字にかかわることが難しい
夫は事務作業全般を任されていたので、パソコンでの数字入力、代金の振り込み手続きなどをしていました。
ADHDの人は特性のひとつである【不注意】から小さいミスが多いとよく言われますが、夫も例外ではありません。
お金の計算を間違えたり、本部に報告する文書の数字を打ち間違えたり、小さなミスを重ねる中で自信を失ってしまいました。
どのように工夫したか
幸いなことに、夫が勤務していた支店の上司はとても優しい人でしたので、ミスをしても「気にしなくていいよ」と声をかけてくれていました。
しかし、いくら優しくされても夫の「俺って仕事できない」「人に迷惑をかけている」という気持ちは無くなりません。
そこで、私は次のように提案しました。
「上司に苦手な業務を伝えて、電話や営業はできるだけ上司に助けてもらうようにしたら?」
夫は「それはわがままだと思うけどなぁ」と乗り気ではありませんでしたが、ストレスもピークに達していたので、伝える決心をしてくれました。
上司は理解を示してくださり、「電話がきたらとりあえず取ってもらうけど、すぐに俺と代わっていいよ」「新規のお客さんが来たら、少し待っててもらって。細かい話は俺がするから」と言ってくださりました。
おかげで、夫の苦手とする業務が減り、ストレスも減ったように見えました。
向いていないように見えたもの<工場>
これは現在の夫の職場です。
大学時代に「向いている職業」「向いていない職業」についてある程度分かっていましたが、大企業に入社したため、希望しない部署に配属されてしまいました。
ちなみに、彼が希望していたのは開発部署。
実際に配属されたのは工場でした。
📌仕事内容と職場環境
自動車関係の向上ですので、部品の組み立てなどをしています。
ひたすら同じ作業の繰り返しが多く、また、高温にしなければ溶接できない部品がありますので、職場は暑いとのこと。
向いていない理由2つ
1.職場が暑い
彼は発達障害の特性から元々体温調節が苦手なため、暑い環境に長時間身をおくことはつらいように見えます。
夫のように、体温調節が苦手だという発達障害者は多いため、職場を選ぶ際に「快適な温度の中で仕事ができる職場が合っていると思うよ」などとアドバイスをしてあげるとよいですよ。
2.同じ作業に飽きる
ADHDの特性である【興味関心が移りやすく、変化するものに惹かれる傾向】という点が夫にも当てはまります。
そのため、工場での単調な作業は「つまらなくて仕方がない」と嘆いており、ADHDの人には単調な作業は向かないのだと感じました。
どのように工夫したか
夫が今の職場に向いていないことは明らかです。
この職場の中で「楽しみ」や「やりがい」を見つけることは難しいと私は判断しました。
そのため、来年からは他の部署に勤務希望を出すよう促したのです。
幸いなことに、夫の勤める企業では、2年目からある程度希望を聞き入れてくれます。
「どう考えても向いていないけれど辞めるのはもったいない」と感じるのであれば、部署を変えてもらうのも選択肢のひとつではないでしょうか。
就職・転職・再就職するときに気を付けるポイント5つ
私の夫の場合、下記が重要です。
ご主人の場合と照らし合わせて、参考にしてくださいね。
- 自分の得意分野、興味がある分野か
- 職場環境が忙しすぎないか
- 小さいミスが直接大きなミスにならないか
- フォローしてくれる人がいるか
- 服装や温度が適しているか
まとめ
いかがだったでしょうか。
工夫でどうにかなるものもありますが、中にはどうしても向いていない業種もあるでしょう。
特に大企業に就職すると、部署を選べない、上司の裁量が大きいなどの問題もあると思います。
努力だけではカバーできない特性もありますので、彼らに合った環境を選ぶ必要があります。
ADHDの多動の傾向が強い場合は、単純作業が多い仕事を避けたほうが良いでしょう。
また、デスクワークなどで「ずっと座っている仕事」は集中力が切れてしまう可能性があります。
適度に身体を動かし、飽きない職場環境を選ぶことが大切です。
不注意の傾向が強い場合は、お金の計算をする必要がなく、ミスをリカバリーしやすい仕事を選ぶとよいでしょう。
売り上げの管理に直接関わると、お客様からのクレームや会社の損失に繋がります。
ミスをしても周囲の人が助けてくれるような会社を選ぶ必要があります。
普段から夫の様子を近くで見ているのは、妻である私たちです。
自分自身では何が苦手か気付けないこともあるので、客観的に向き不向きを見定めてあげる存在は大切です。
仕事を選ぶ際や部署を異動する際は一緒に適性を確認し、ストレスの少ない環境選びを心がけましょう。
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