叱らない育児を実践しようとした親御さんは多いことでしょう。
しかし、挫折している人も多いのではないでしょうか?
挫折してしまう理由は、叱らないでどう育てるのか分からないから。
💡 「叱らないのではなく、叱咤激励の激励をメインにする子育て」と考えてみてください。
スポーツ界で取り入れられているペップトークという話術がまさにそれであり、ペップトークを取り入れた子育てが「失敗しない叱らない子育て」です。
発達障害児を育てる親御さんこそ、ペップトークを取り入れてみてください。
ひとつのスキルを獲得するまで繰り返し頑張る子どもの存在と、努力を認める育児で、親と子の両方が前向きになりましょう!
子どもは言葉に強く反応する
一般的に「子どもは人から掛けられる言葉に強く反応する」と言われています。
嬉しい言葉を掛けられると素直に喜び、ガミガミ叱られたり嫌なことを言い続けられたりすると後ろ向きになり、自信を失ってなんのやる気も起きなくなってしまいます。
大人よりも、こうした傾向がはっきりとあらわれるのが子どもです。
発達障害児は特定の言葉に敏感だったり、強く反応したりする傾向があります。
また、なかなか伝わらない時でも「言葉を変えれば伝わる」という特性もあります。
筆者の娘は自閉症スペクトラムと診断されており、言葉の理解が遅れていますが、ネガティブな言葉に対して非常に敏感です。
叱られるとしょげかえって何もできなくなってしまい、立ち直るまで非常に時間がかかります。
子どもにとって「言葉」はその個性や特性を伸ばすことができるものであり、また、潰すこともできてしまう重要なものなのです。
ペップトークを取り入れた子育てをしよう
子どもが掛けられた言葉に対して素直に反応するのであれば、「好ましい方向へ向くような声掛けをしてあげれば良い」ということになりますね。
好ましい方向というのは、やる気を出し、自ら考え、前向きな行動をすること。
では、「どんな声掛けがいいか?」……この疑問の答えになるのが「ペップトーク」という話し方です。
ペップトークとは
- スポーツ選手を激励する時にコーチなどが活用している話術のこと。
- 大切な試合を前にした選手のやる気を引き出し、その背中を押して全力で戦えるような気持ちにさせる短いスピーチ。
海外では極当たり前のように行われている話し方で、最近は日本でもスポーツ界を中心に取り入れられるようになっています。
日本には叱咤激励という言葉がありますが、叱咤ばかりが目立っていて激励の存在感がないように筆者は感じています。
教育現場で体罰がNGと言われるようになってから、教師達が「どうやって子ども達を指導していいのか分からない」と困惑している、という話が良い例ではないでしょうか。
「言葉に対して素直に反応する子ども達に、大人が『良い刺激を与える声掛け』をしてあげれば、きっと素直に良い方向に動いてくれる」という考え方から、子育てにもペップトークを取り入れてはどうだろう!という動きが起こっています。
最近、叱らない子育て・怒らない子育てが注目されています。
怒らない親を目指す親御さんは少なくありません。
これは子育ての時に「叱ったり怒ったりする言葉を使わない」ということですよね。
では、叱ったり怒ったりする時はどんな言葉を使うのでしょうか?
私はついつい「ダメ」「いけない」「貴方が悪い」「早くやれ」というような、子どもの行動や状態を否定する言葉を連発してしまいます。
大人だって否定されると嫌な気持ちになりますよね。
子どもは言葉に対して強く反応すると言われますから、大人よりももっと強烈に嫌な気持ちになっていることでしょう。
つまり、前向きでやる気を出させようとしているのに、叱り付けたり怒ったりすると真逆の結果になってしまうのです。
これでは本末転倒ですよね。
「叱り付けることから良い結果は生まれないため、否定する言葉やネガティブな言葉は使わないほうが良い」……これが、叱らない子育て・怒らない子育ての基本的な考え方。
多くの親が実践しようとしている子育てが、叱咤激励の叱咤ではなく、激励を中心にしたものであるなら、これは正しくペップトークだと思いませんか?
人気の子育て法は、ペップトークを取り入れたものなのです。
ペップトークのルール
ペップトークにはルールがあります。
- 短い言葉を使う
- 分かりやすい言葉を使う
- 魂を揺さぶるような言葉を使う
- 相手が言って欲しいと思う言葉を使う
- ネガティブな言葉はNG
例えば、ピアノの発表会の本番直前、ガチガチに緊張している子どもに「緊張しないで!頑張るのよ!」と言っても、励ましにはなりませんよね。
「あなたは練習したから大丈夫。楽しく、気持ちよくピアノを弾こう!」という声掛けなら分かりやすいうえ、前向きで気分が良くなると思いませんか?
こうした声掛けが「ペップトーク」です。
人はみんな承認欲求を持っている
ペップトークのルールに従って子どもに声掛けする際、意識しておきたいことがあります。
それは、人が持っている「承認欲求」です。
承認欲求とは文字の通り、誰かに自分のことを認めて欲しいという欲のことであり、この欲求は老若男女問わず誰でも持っているものです。
子どもが「上手ね」と先生に褒められたい!と思う気持ちや、SNSなどで「いいね」の数が気になる、というものも当てはまります。
この承認欲求を満たしてあげるようにペップトークを行うことがベストです。
ただし、ただ認めれば良い訳ではありません。
間違った認め方だと、二度と立ち直れないくらいの挫折を経験させてしまう可能性があります。
まず、親が子に対してペップトークを実践する時に欠かせないのが存在承認です。
🙂 その子が生まれてきて良かった!
😉 ここに居ていい!
😳 ママにとってあなたはとても大切な存在なのよ!
というような、子どもの存在自体を認めることが欠かせません。
次に重要なのが行動承認です。
これは、「九九を頑張って覚えている」「漢字のノートを綺麗な字で書いている」「縄跳びが跳べるように練習を続けているといった、現在の行動を認めてあげること。
努力や過程を認めて褒めることは非常に重要なことです。
行動を褒めて、「努力がいいこと」「継続は力になる」ということを覚えた子どもは、たとえ結果が失敗であっても、ここまで努力できた!という自信を持ち、「次、頑張ろう」「もっとできることがあっただろう」という【次に繋がる考え】を持つことができます。
最後に結果承認。
これは、「漢字検定合格したね!」「優勝できた!」といった結果を承認することです。
喜びはしっかり共有し、より良い結果を得たい!という意欲を引き出すためにも、結果も褒めてあげましょう!
ただし、結果ばかり褒めていては望んだ結果にならなかった時の挫折が計り知れないものになってしまうため、承認欲求もその内容に注意する必要があります。
信頼している人から掛けられる言葉に最も効果がある
これまでペップトークのメリットを紹介してきましたが、ペップトークは誰でも効果を得られる訳ではありません。
例えば、見ず知らずの人に「勝てるぞ!」と言われるのと、毎日一緒に練習し、弱点克服の対策を共に対策を考え、一緒に苦労してきた仲間やコーチに「勝てるぞ!」と言われたのでは、全く感じ方が違いますよね。
ペップトークは、声を掛ける側と掛けられる側の間に信頼関係が築かれていて初めて高い効果を発揮します。
保護者と子どもの間には強い繋がりができていることでしょう。
つまり、保護者が子どもに対して実践するペップトークは大きな力を発揮するのです。
保護者が子に対して分かりやすくて肯定的で、子どもが言われたいだろう声掛けを心がければ、しっかりと子どもの心に強く響くことでしょう。
発達障害児の子育てにペップトークが合う理由
子育てにペップトークが合うと紹介してきましたが、「発達障害児には普通の子育ては無理!」と感じている親御さんもいらっしゃることでしょう。
確かに、発達に遅れや自閉症など障害があって意思疎通にコツが欠かせない場合は、一般的な子育てが通用しないケースが多いですね。
発達に遅れや障害がある子どもは「これができない」「あれもムリ」「何度も練習しないとできるようにならない」というようなネガティブな言葉や、否定的な言葉を掛けられるシーンが多いのではないでしょうか?
障害を持たない子どもが1回の練習でできるところを、10回、30回、50回と練習を繰り返してようやくできるようになるという場面も多いことでしょう。
この「努力をし続ける」「練習を繰り返す」ということは、アスリートが努力をし続けるのと同じではないでしょうか?
「頑張れ!」「君ならできる!」と前向きになる言葉を掛けながらアスリートの横にコーチが寄りそう姿を、子どもの横に親が寄りそう姿に置き換えてみてください。
こう考えると、「短く」「分かりやすい」「肯定的」「魂を揺さぶる」「相手が言って欲しい言葉」というものは、発達に遅れや障害がある子どもに必要な声掛けなのです。
私の娘は自閉症スペクトラムで言葉の理解に遅れがありますから、短くて分かりやすい言葉でなければなかなか伝わりません。
そして、とても打たれ弱いため、叱ると落ち込み何もやる気がなくなってしまいます。
その態度にまた叱ると更に落ち込んでいき、負のスパイラル状態になります。
ですから、
「さっさと宿題しなさい!」ではなく・・・
☝「宿題が終わったら、おやつにしようね」
「綺麗な字を書きなさい!」ではなく・・・
☝「その『い』綺麗だね」や「昨日の漢字ノート、『教』に花丸もらえたね」
という具合に、言葉を選んで声掛けしています。
正直なところ、時々「なんで、こんなことを褒めているんだろう?」と思うこともあります。
しかし、褒め言葉を使うと、聞いている娘の気分が良くなるのはとても明らかで、自ら宿題に取り組むようになったのです。
療育も毎週、電車に乗って通っていますが「今日も頑張ったね」「お手紙忘れず渡せたね」といったような、行動を褒める「行動承認」も意識して声掛けしています。
褒める度、娘は本当にいい笑顔になります!
発達に遅れや障害がある子どもは日常的に頑張り、努力をしています。
これをしっかり認めて褒めてあげることが、自信や次のやる気に繋がっていくのではないでしょうか。
そのためにも、アスリートの全力を引き出すためにコーチが実践しているペップトークは最適なのです。
まず、親自身が自分を励まそう!
ペップトークは人を励ます言葉ですが、そのためにはまず、自分の心を元気にしましょう!
自分の気持ちが沈んでいる時に人を励ますことはできませんよね。
特に、子どもの心配事や不安が多いと、親の心は沈みがち。
励ますどころではなく、焦りばかりになりませんか?
まずは親御さんが自分のことを自分で褒め、自分に自信を持ちましょう!
褒めることはなんでもOKです。
「今日、洗濯頑張った」「片付けをして部屋が綺麗になった」「子どものお弁当を作った」「シャツのアイロンがけが綺麗にできた」などなど。
本当は家族から励ましの言葉を貰えたら最高なのですが、なかなか要求しづらいうえ、要求したところで期待する言葉が返される訳でもありませんよね。
ですから、まずは自分で自分のことを認め、努力を認めましょう!
親がしっかり自分のことに自信を持ったうえで、子どもを励ますペップトークに向き合ってみてくださいね。
子どもに合った声掛けをしよう
ペップトークは相手が言って欲しいと思う言葉を使います。
それも相手のやる気を奮い立たせる言葉。
スポーツ界で取り入れられている話術ということなので、なんだか熱く激しく、発憤する声掛けというイメージになるかもしれませんが、熱くなければならないとか、相手に発破を掛ける言葉でないといけない訳ではありません。
🙂 子どもの性格や親の性分に合った、それぞれのペップトークで大丈夫です!
特に、発達障害児の中には騒々しいことや、押しが強い言葉、激しい接し方が苦手な子もいます。
その子、その子に合った声掛け法を実践していきましょう!
まとめ
叱咤激励の激励をメインにした声掛けで、人の全力を引きだそうとするペップトークは、スポーツ業界で取り入れられている話術です。
ペップトークには、【短くて分かりやすく、肯定的で魂を揺さぶるような、相手が言って欲しいと思う言葉を使う】というルールがあり、承認欲求を満たすことを意識して実践します。
子どもは言葉によく反応します。
また、発達障害児は日常的に努力を強いられていることがよくあります。
ですから、子どもの存在や努力を認め、一歩ずつ前に進んでいる状況をしっかり褒める育児が効果的です!
ペップトークで自分自身も激励しながら、相手を否定する言葉を使いがちな「叱る子育て」ではなく、「子どもを認め、褒める子育て」を取り入れてみてはいかがでしょうか?
<参考サイト>
一般財団法人日本ペップトーク普及協会
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