最近テレビや雑誌で、「発達障害」について取り上げられる場面が多く見られるようになりました。
モデルの栗原類さんも自身が発達障害であることを公表し、世間の発達障害に対する関心が高まってきています。
ですが、まだまだ発達障害に対して理解している人は多いとは言えない状況。
この記事を読んで発達障害の理解が深まればと思います。
発達障害ってどんな障害?
発達障害は生まれつきの脳機能の発達が関係する障害です。
周囲に「変わった人」「手のかかる人」と思われ、それが原因で孤立し、辛い思いを抱えながら幼少期を過ごしてしまうケースがあります。
さらに成長していくにつれて生き辛さは増し、社会生活を送るのが困難になってしまうこともあるため、なるべく早く、成人前に診断を受けることをおすすめします。
発達障害の特性
発達障害の特性には以下のものがあります。
・その場の空気が読めない。
・こだわりが強く、頑固。
・急な予定変更が苦手。
・1つの事に集中してしまう。
・相手の気持ちを読み取ることが苦手。
・物忘れが多い。
・感覚過敏
・物事を覚えるのが苦手。
・優先順位がつけられない。
・相手とのコミュニケーションが苦手。
・感情の制御が苦手。
・同じことの繰り返しを好む。
・失礼な発言をしてしまう。
これらの特性は日常生活や学校や仕事などの社会生活に支障をきたす場合が多くありますが、場面に合わせて配慮をしていけば本人にとって過ごしやすい環境になっていきます。
また、本人の得意なことを生かせる場所があれば、想像以上の力を発揮することもあります。
発達障害の種類
■ 注意欠陥多動性障害(ADHD)
注意欠陥多動性(ADHD)は「落ち着きがない」「そそっかしい」「おっちょこちょい」という特徴があります。
注意の切り替えが難しかったり、思い付きの行動が多く、うっかりミスや細かいミスが多い、優先順位がつけられないとあたふたしてしまうような行動が多く見られます。
ADHDにも種類があり、「不注意優勢型」と「多動/衝動性優勢型」に分かれています。
「不注意優勢型」
忘れ物・落し物、物をなくすことが多かったり片付けが苦手、計画通りに進められない、それによる遅刻が多いなど社会生活で苦労を感じる場面が多い。
「多動/衝動性優勢型」
順番が待てない、発言に割り込む、一方的な会話、考えるよりやってみるなど自分中心で衝動的な行動が多い。
どちらも、日常生活や社会生活で上手くいかないことが多く、苦労しやすい傾向にあります。
しかしADHDは、コンサータやストラテラを服薬して症状の緩和も出来るので、医師に相談してみてもよいかもしれません。
■ 自閉症スペクトラム障害
自閉症や、アスペルガー症候群などをまとめて自閉症スペクトラムと呼びます。
スペクトラムは英語で連続体を意味し、症状の強さや特性によって分類していた発達障害を一つの連続した症状として考えた新たな分類方法です。
症状としては「対人関係の難しさ」「コミュニケーションを上手く取れない」「こだわりの強さ」があげられます。
また、自閉症スペクトラムの中でも「積極奇異型」・「受動型」・「孤立型」の3つで分類されることもあります。
「積極奇異型」
他人と上手くかかわれないために自分のペースで行動する。
「受動型」
人間関係の不器用さから自分を押し殺してしまう。
「孤立型」
基本的に上手く関わらなくても大丈夫。
これらの障害を持った人の中にはIQ120を超える天才もいて、大人になるまで気づかない場合もあります。
■ 学習障害(LD)
学習障害は「読み書き」や「計算」が困難とされる障害です。
文章を正確に読んだり理解すること、文字や文章を書くこと、数字を使った計算や方程式の理解が難しく、周囲からやる気がないと怒られてしまう場合があります。
また、学習障害は自閉症スペクトラムやADHDと合わせて発症していることが多く、学習障害であっても自閉症スペクトラムやADHDの特性が出ることが一般的です。
発達障害の診断方法
発達障害の診断はWAIS-3と呼ばれるIQテストで、各項目の凹凸の差が激しいことなどが診断時の大きなポイントになります。
この診断で発達障害の傾向がある人は傾向のない人に比べて、IQを構成する要素にバラつきがあります。
このバラつきが「この作業は得意でこの作業は苦手」「脳のある部分は活発に働くがある部分は上手く働かない」「脳の連携・連絡が出来ていない」ということを教えてくれます。
そして発達障害の診断基準としては以下のものがあります。
・診断テストで得意な部分と苦手な部分の差が激しい事
・学生時代の通知表で発達障害の特徴が確認できること
・他の診断名では説明がつかないこと
また発達障害という診断は、マイナスの要素という印象があります。
そのため「発達障害の傾向がある」「軽度ですが発達障害です」と柔らかい言い方をされる場合もあります。
診断名は今後の方向性を決めるために役に立ちますが、診断名で全て判断することはあまりオススメはしません。理由は3つあります。
1.医師による診断の違い
最初に受診したクリニックではアスペルガー症候群と診断されたが、次に受診した別のクリニックではADHDとアスペルガー症候群と診断された…。
このように、受診した病院やクリニックによって診断が違うことがあります。
2.障害の併存
アスペルガー症候群とADHD、LDとADHDなど、二つの診断をされるケースがあります。発達障害は単独障害だけでなく合併や併存することも多いので、他の発達障害の可能性もあることを忘れてはいけません。
3.全ての特性が当てはまるとは限らない
人によって障害の軽さや重さは違ってきます。
アスペルガー症候群とADHDを診断されたが、アスペルガー症候群の「こだわりが強い」、ADHDの「落ち着きがない」「衝動的な行動」という特性はあまり顕著に出ない…など。
診断名で判断せずに個人の特性に焦点を当てて対策を考えていくことが大切です。
発達障害を持つ(傾向がある)有名人・歴史上の人物
・栗原類/モデル
「ネガティブ過ぎるモデル」として人気を博しているモデルの栗原類さん。
2015年に発達障害を告白し、話題になった栗原類さんは8歳の時に発達障害を診断されました。
人に合わせられなかったり、こだわりが強くルールに厳しいという部分に違和感を感じた先生が受診を促し、発達障害を診断されました。
栗原類さんは診断されたことについて「親や主治医が早い時期に障害を言ってくれて、弱点というか、自分に出来ることと出来ないことがより分かりやすくなった。そういう周りの環境があるから、今がある。」と発達障害の早い段階での診断の大切さを伝えています。
・トム・クルーズ/ハリウッド俳優
「ミッション・インポッシブル」や「ラストサムライ」などの有名な作品に出演したハリウッド俳優のトム・クルーズさんも発達障害を公表しているんです。
トム・クルーズさんの障害は「学習障害LD」。
この障害が原因で12年で15の学校を転々とし、特別学級にいたとのこと。
それでも文章を読めるようにすさまじい努力を積み重ねていきました。
そして、台本のセリフを覚えるときにはテープに録音して、繰り返し聞いてから本番に挑んでいます。
努力を貫く姿勢は発達障害者の希望ですね。
・スティーブ・ジョブズ/経営者
iPhoneやiPad、iPodを世界に流行らせたAppleの元社長、スティーブ・ジョブズさんです。
ADHDとアスペルガー症候群の両方を持っていたという説があるスティーブ・ジョブズさんはとにかく破天荒な性格の持ち主でした。
授業中に花火をしたり、ヘアピンが電気を通すかを確かめるため、ヘアピンをコンセントに刺して感電したりとADHDと疑われるエピソードがたくさんあります。
そしてスティーブ・ジョブズさんと言えば「黒いタートルネックにリーバイスのジーンズ、ニューバランスのスニーカー」というお決まりの服装。
これを毎日続けていたというエピソードは有名ですね。
これもアスペルガー症候群の特性である「同じことの繰り返しを好む」「こだわりが強い」に当てはまります。
それでも、彼の破天荒さが成功の秘訣でもあると言えます。
・トーマス・エジソン/発明家
蓄音機や白熱電球、電信機などを発明し、その名を轟かせた発明王トーマス・エジソンです。
そんなエジソンも発達障害の特性が顕著に表れていました。
小学生時代に疑問を感じたら納得いくまで聞いていました。
例えば「どうして11は2になるの」とか「どうしてAはBと読まないの」など探求心のかたまりでした。
その終わらない質問に怒って3か月で学校を追放されるというエピソードも。
周囲に呆れられても、エジソンのお母さんは見捨てることなく、エジソンが夢中になれる環境を用意してエジソンを育て上げました。
飽きることない探求心とその探求心を伸ばせる環境があったからこそ、エジソンは世界に誇れ発明家になることが出来たとも言えます。
発達障害は特性を武器にして、環境を選べば幸せになれる
発達障害者の特性は考え方次第では武器になります。
先ほどお話ししたスティーブ・ジョブズの同じ服装を好んでいたというエピソード。
発達障害の視点から見ると「こだわりが強いし、同じ服装を好んでいるから発達障害の傾向があるんだろうなぁ」と思ってしまいます。
しかし、スティーブ・ジョブズはそれ一択で着ていたため「スティーブ・ジョブズ黒のタートルネックにリーバイスのジーンズ、ニューバランスのスニーカー」というイメージが定着しました。
「こだわりが強い」という事は自分だけのマイルール、いわゆる美学を持って生きているという捉え方も出来ます。
このように自分の特性を良い視点で捉えれば、楽しく明るい人生を送ることが出来るでしょう。
次に環境です。エジソンのように自分の才能を思いっきり発揮できる場所があると良いですね。
実は私自身も発達障害ですが、現在、大手の企業の障がい者枠で自分の特性を発揮できる環境で働けています。
おかげさまで毎日が本当に楽しいし、希望を持って生きることが出来ています。
発達障害は日常生活や社会生活でたくさん困ってしまうことがあります。
もし、あなたの周りに生き辛さを感じて生きている人がいたら手を差し伸べて、その人の長所や特性を発揮できる環境を探すお手伝いをしてください。
そうすればきっと、幸せを感じて生きられる人が増えるでしょう。
発達障害について悩む人達の人生が少しでも良い方向へ向かうことを祈っています。
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