発達障害のグレーゾーンの子どもは出来る事もたくさんあって、周囲との差が目立ちにくいケースがほとんどです。
でも、「今は何とか頑張っているから大丈夫」と思い込んで適切なサポートを後回しにすると、親が気付かないうちに問題行動が強く出るようになったり、思春期を過ぎてから鬱病や統合失調症などの二次障害を発症したりすることも。
グレーゾーンの子どもに必要なサポートや接し方の注意点について、発達障害の子どもを持つ私の経験を踏まえながら解説していきます。
発達障害のグレーゾーンとは
発達障害は、おおまかに下記の3つのグループに分かれています。
- 注意欠如多動性障害(ADHD)
- 広汎性発達障害(アスペルガー症候群、自閉症など)
- 学習障害(LD)
これらのグループはきっちりと分かれているわけではなく、複数の特性を少しずつ持っている子どももいれば、どれか1つに強く偏っている子どももいます。
発達障害のグレーゾーンにいる子どもは、何らかの特性はあるけれど、検査では異常が認められない、あるいは、異常が認められたとしても、健常児とほぼ変わらない程度の能力があると考えられる子どもです。
ただ、子どもの発達障害の診断は数値化される発達検査や知能検査のほかに、問診や行動観察も重要視されているため、検査を行なう医師や臨床心理士によって判断が分かれることもあります。
グレーゾーンの子どもの特徴
グレーゾーンも基本的には発達障害ですから、下記のような発達障害によくある行動をします。
- 学校での集団生活になじめず行き渋りがある
- 音や光、匂い、味、感触などに過敏に反応する
- 授業中に突然喋りだしたり歩き回ったりする
- カッとして手を出したり怒鳴ってしまうことがある
- 一方的に喋るが、人の話は聞けない
- 叱られたことを何度も平気で繰り返す
- 極端に不器用で練習をしてもほとんど改善できない
- 物への執着や行動へのこだわりが強い
- 身だしなみに無頓着で忘れ物も多い
グレーゾーンの子どもの特徴は、親御さんから見ると少し気になるような行動はするものの、普段は落ち着いた行動が出来たり、勉強が良くできたり、スポーツが得意だったりします。
「親から見ると何だか心配になるけど、問題があるのかどうか、よく観察しても分からない」というのが、グレーゾーンの子どもの特徴です。
心の中と行動がチグハグになってしまうことも
発達障害児は、その特性によって様々な問題行動をしてしまうことがあります。
グレーゾーンの子も例外ではなく、程度の差はありますが、周囲が戸惑うような行動をしてしまうことがあるのです。
たとえば、思ったことをすぐに口に出して相手を傷つけたり、感情の起伏が激しく、泣いたり怒ったりして家族や友達を困らせたり、時には人に手を出したり、物を壊してしまうことも。
親御さんの中には、そのような我が子の姿を見て「どうしてこんなにワガママなんだろう?」「育て方が悪かったのかもしれない」と、自分を責めてしまう人も少なくありません。
でも、グレーゾーンの子どもの問題行動は親御さんのせいではありませんし、本人も、周囲の人を困らせるために問題行動をしているわけではないのです。
本当は「困らせたくない」「良い子でいたい」と思っていますが、考えてもいないような言葉が口から出たり、「だめだ」と頭で分かっている行動をしてしまうのが発達障害の特徴です。
ですから、子どもの問題行動で親御さんが戸惑っているのと同じように、子ども自身も自分の行動に戸惑っているのです。
心の中で思っていることと、実際の行動がチグハグになってしまう……、そんな特徴を持つグレーゾーンの子どもをサポートをするためには、まずは子どもの気持ちに寄り添って考えてあげることから始めてみてくださいね。
特性を理解した子育てを -叱らず、良い部分を探して誉める-
グレーゾーンの子どもは不器用だったり、記憶力・集中力が弱い傾向があるため、集団生活の中で失敗する回数が多くなります。
幼児期は周りの子ども達も失敗をするため目立ちませんが、小学校低学年くらいから周囲との差が開き始めるようです。
クラスメイトの前で失敗体験をすると、子どもの自尊心は深く傷付きます。
また、同じような失敗を何度も繰り返すことで、自己肯定感が低くなります。
その状態で思春期を迎えると、他の子どもと自分を比べ、「なぜ自分は出来ないのか」「自分は駄目な人間だ」と思い込んでしまうのです。
自分に自信を失くすことが、不登校のきっかけになる子どももいます。
そうなってから発達障害の療育を始めても子どもは意欲的に取り組めませんし、傷付いた心を修復するのは簡単ではありません。
そうならないうちに、子どもの特性を理解して対処してあげることが大切なのです。
グレーゾーンの子は失敗が多い上に、感受性が強く傷付きやすい特徴がありますから、家庭の中ではできるだけ叱らず、良い部分を誉める子育てを心掛けましょう。
- 本人が得意と思っていることがあれば、結果にかかわらず誉めて、どんなところが良かったかを言葉にする。
- 直すべき点については、あまりクドクド言わずに「どうすれば良いのか」を具体的に指示してあげる。
発達障害児は耳から入った情報を頭の中で整理して記憶するのが苦手ですから、大切なことは紙に書いて視覚的に伝えるようにしてください。
具体的な言葉と数字や印を組み合わせてみることもおすすめです。
✔ 例(1)
- 学校から帰ってくる
- うがいと手洗いをする
- 連絡帳とプリントをランドセルから出してお母さんに渡す
- 宿題をする
- 明日の時間割を合わせて持ち物をチェックする
✔ 例(2)
- ○ 先生のお話を静かに聞く
- ○ お友達に優しくする
- ×授業中に立ったり歩いたりする
- ×お友達に怒鳴る
コミュニケーションが苦手な子どもについては、無理やり慣れさせようとしても逆効果になることがあるため、急いで改善しようとせず一歩引いて見守るようにしましょう。
グレーゾーンの子は集団生活に困難を感じることがよくあり、些細なきっかけで不登校になってしまうこともあります。
親御さんとしては心配になってしまいますが、「学校に行かせよう」という気持ちが先走らないように、学校や医療機関に相談しながら焦らずサポートしてあげてください。
発達障害の特性はさまざまで、子どもによって「つらい」「嫌だ」と感じるものも違います。
ただ、特性は違っても、「発達障害の子どもに苦手を克服させることは難しい」という点においては共通しています。
克服させるよりも、「どうやって苦手と付き合って生きていくか」を考えてあげなくてはいけないのです。
グレーゾーンでも病院で発達障害の診断を受けたほうが良い理由
発達障害が疑われるグレーゾーンの子の場合、「わざわざ診断を受けなくても良いだろう」と、とりあえず様子を見ていることもあるのではないでしょうか。
何か問題が生じた時に病院に連れて行こうという、そうした親御さんの考えは間違ってはいませんが、一方で、医療機関で「発達障害」と診断されることのメリットもあります。
例えば、学校にサポートのお願いがしやすくなったり、周囲に理解を求めやすくなったりします。
また、将来的に特別支援学級への転籍や療育手帳の取得を考えている時には、医療機関での診断が前提の条件となります。
発達障害児をサポートするためには学校の協力が不可欠ですが、何も診断がされていない段階では、学校は動き出せません。
私の経験からも、学校に協力して欲しい場合は、医療機関での診断が一番効果的だと感じました。
正式な形で子どもの特性が明らかになると、学校だけではなく家庭でも将来に向けた支援計画が立てやすくなり、医師と連携することで家族の側も安心感が得られますよ。
グレーゾーンの子が発達障害の検査を受ける方法
発達障害の検査は、発達障害の専門外来や小児神経科、精神科などで受けることが出来ます。
どこへ行けばよいのか分からない時は、かかりつけの小児科や住んでいる地域の保健センター、児童相談所に連絡をすれば教えてもらえます。
公立小中学校には必ず特別支援の担当教師がいますから、担任を窓口にして相談してみるのも良いですね。
「子どもの発達について心配な点があるので専門医を受診したい」と説明すれば、自宅の近くで発達検査が受けられる医療機関を紹介してくれるはずです。
医療機関での発達検査はほとんどが予約制になっており、検査を受けてから診断までにかかる期間も長くて数カ月かかります。
私の子どもの場合は、検査予約から検査までが1カ月半、検査から診断までが2カ月かかりました。
進学を控えたお子さんの場合は、入学までに診断が間に合うように早目に予約を入れてあげたほうが良いかもしれませんね。
グレーゾーンでも診断は受けられる?
グレーゾーンの子の場合、「検査を受けて発達障害と診断されなかったら?」と心配される親御さんもいるのではないでしょうか。
発達障害のサポートをお願いしたいと思って検査を受けた時に「発達障害ではない」と診断されてしまうと、「親だけでどうやって支えていけば良いのか」と、不安な気持ちになりますよね。
以前は、発達障害の診断は発達指数や知能指数などの数字で判断されることがほとんどで、中には、グレーゾーンの子どもに発達障害の診断がおりなかったというケースもあったようです。
しかし、平成19年4月、学校教育法に「特別支援教育」が位置づけられた頃から、発達障害の診断についても「数値よりも本人が感じているつらさや困難に目を向ける」という考え方に変化しています。
実際に私の子どもが検査を受けた時にも、知能指数と発達指数のどちらも平均では100を上回っていました。
生活能力としては健常児とほぼ変わらないけれど、本人が集団生活に強い不安を訴えていることや、幼少期からのこだわりの強さや音や光への過敏さなどが考慮され、「広汎性発達障害」という診断を受けたのです。
たとえ数字の上ではグレーゾーンであっても、問診や行動観察で困っていることを理解してもらえればきちんと診断してもらえます。
医療機関で診断を受ける時には、具体的にどのような行動があるのか、いつ頃から気になりだしたのか、本人が困難に感じていることは何か、親の立場から細かく説明できるように準備しておくとスムーズに検査が受けられます。
学校に支援をお願いする方法
グレーゾーンの子は自分から問題行動を起こすことがあまりないため、学校で発達障害のことが気付かれにくい傾向があります。
多くの子どもを相手にしている教師にとっては様々な個性を持っている子どもの1人にすぎませんから、こちらからお願いしない限りは特別な配慮は期待できないのです。
学校に子どもの支援をお願いしたい時には、子どもが何につまずいて何に困っているのかを説明して、出来るだけ具体的に「やって欲しいこと」を伝えるようにしてください。
すでに発達障害と診断されている場合は、医師から学校生活について助言があるはずですから、その言葉を伝えることで理解してもらえます。
その時に、診断書の提出を求められることもあります。
医療機関によっては学校向けに支援計画やサポートファイルを用意してくれますが、医療機関からの文書がない時は、親御さん自ら「希望する支援方法」を文書にまとめると良いですよ。
授業中、休み時間、給食の時間など、それぞれの場面に応じた配慮を伝えると、学校側も実行に移しやすくなります。
スクールカウンセリングの利用を検討する
公立小中学校ならスクールカウンセラーが1校に1人は在籍しており、週に1度くらいのペースでカウンセリングを実施しています。
スクールカウンセリングは、発達障害のグレーゾーンで集団生活についていけない子どもはもちろん、グレーゾーンの子どもの支援に悩む親御さんも受けることが可能です。
子どもは思春期になると親に話せないことが多くなりますから、スクールカウンセラーに話を聞いてもらい、アドバイスを受けることで前向きな気持ちになれることもあります。
カウンセリング自体は医療機関でも受けられますが、学校の中で受けたほうがリラックスできて話しやすいという子どももます。
スクールカウンセリングを利用するかどうかは、本人や担任の先生と相談をしてから決めてもよいでしょう。
私の子どもは小学5年生からスクールカウンセリングを受けていて、毎週カウンセリングの時間を楽しみにしているようです。
カウンセリングの内容を子どもが自分から話すことはありません。
そのため、私も数カ月に1度スクールカウンセリングを受けて、子どものカウンセリングの様子や、カウンセラーからのアドバイスを聞くようにしています。
悩みがあるけれど身近に相談できる相手がいないという時には、こういった制度を積極的に利用して、専門家からのアドバイスを聞いてみることをおすすめします。
まとめ
発達障害の中でもグレーゾーンにいる子どもは、必要なサポートが見落とされがちです。
目立つ問題行動がなくても、本人が困っていたり不安になることがあるなら、発達障害として適切な支援や治療を受けさせてあげましょう。
その中で重要なのは、家庭、学校、医療機関が連携することです。
学校では集団生活の失敗体験を減らすよう配慮してもらい、医療機関では専門家の立場からアドバイスや治療を受けます。
そして家庭では子どもの心のケアをメインに、失敗しても自己肯定感を育めるように支えてあげてください。
発達障害の特性の影響で自分のことが嫌になり、将来に希望を失くしてしまうことが無いように、親が社会との架け橋になってあげることがグレーゾーンの子どもへの理想的なサポートになります。
「うちの子、ちょっと心配だな」と思ったら、親御さんだけの胸の内にしまい込まず、学校や医療機関に相談してみてくださいね。
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