私の娘は小2の春に「自閉スペクトラム症」と診断されました。
娘が2歳の時に言葉の遅れに気付き、保育士に「障害児」と断言されたのがきっかけでした。
発達障害には治療薬がなく、「こうすればいい!」という明確な対処法もありません。
親にとっても子どもにとっても、暗中模索、五里霧中、そんな苦しい状況が続きます。
しかし、小学生に成長した娘を見ている私には、自信を持っていえるポジティブなことがひとつあります。
この「たったひとつの大切なこと」を紹介したいと思います。
発達障害とは?
ひとくちに発達障害といっても色々なタイプがあります。
代表的なのは
- ADHD(注意欠陥多動性障害)
- ASD(自閉スペクトラム症)
- LD(学習障害)
この3つですが、スパッと明確に区別されている訳ではありません。
複数のタイプの症状を持つケースも多くみられますし、それぞれのタイプの中でも症状は本当に様々!
「知的な遅れがなく、社交的で快活な自閉症」もあれば「知的な遅れがあり、意思疎通も難しい自閉症」もあります。
「この症状が見られたら発達障害である」という解りやすい症状がなく、ケガのように外見で判断できるものでもありません。
このため、特に子どもが幼いうちは「うちの子は障害?単なる発達の遅れ?」と親は悶々としてしまいます。
発達の遅れや障害に気付く時期も乳幼児期、小学生、中学生など様々です。
さらに大人になってから気付くケースもあります。
誰の身に起こってもおかしくないけれど、判断・診断・対処法が難しいため、本人が非常につらく苦しい思いをしてしまうのが発達障害です。
確かなことは「できることと、できないことの差が大きい」ということ。
幼い頃の遅れが追いつくのではなく、どんどん差が開いていき、年齢を重ねるにつれて、明確に遅れや障害が解ってくるのです。
多動など、年齢とともに落ち着いていくというケースもありますが、個人差が大きいのが現状です。
そして、集団や一般社会で不都合・不具合を感じることが増えていきます。
ネガティブな感情を軽くする方法
発達に遅れや障害があると、極端に苦手なこと・できないことがあります。
しかし、苦手といっても、手助けやフォローがあればできる、というケースもよくあります。
視力の悪い人がメガネという道具を使って、支障なく生活することと似ています。
このフォローの方法が見付かれば、親も子どもも不安やイライラといったネガティブな感情を減らすことができるのです。
まずはメモをとり、記録し続ける
「発達に遅れがあるかも」「ウチの子、ちょっと違うかも」と、そんな風に感じたら焦らず、まずは「できないこと」「気になること」をメモしてみてください。
冷静に特徴を記録し続けるのです。
この記録を年単位で続けていくと、子どもの傾向が見えてきます。
傾向が見えれば、対策も考えやすいと思いませんか?
不安と焦りで「早く原因と理由を知りたい!」と思ってしまうでしょうが、時間をかけてじっくり子どもと向き合うことで対策が見えてきます。
まずは、落ち着いて子どものできること・できないことをメモするところから始めてみてください。
それが、対策を練るスタートになりますよ。
私の娘の場合(自閉スペクトラム症)
私の娘は言葉の理解が遅れています。
いくら口頭で注意をしたり説明をしても内容が頭に入っていきません。
これについてガミガミ叱りつけても、私と娘、お互いに気分が悪いだけです。
私の娘には「言葉と一緒にイラスト(視覚情報)を与える」というフォローが有効です。
朝起きる。顔を洗う。トイレに行く。朝ご飯を食べる。歯みがきをする。着替える。靴を履く。車に乗る。
こうした、朝の行動をイラストにして紙にプリントし、言葉で指示すると同時にイラストを見せて教える。
娘は言葉の理解は遅いのですが、記憶して習慣にすることができます。
何度か繰り返せば「次何する?」と声をかけるだけで「食べた!」「着替える!」といった風に自分で行動できるようになりました。
文字が読めるようになってからは、いわゆる「To Do リスト」を作っています。
朝の支度から学校のこと、学校から帰ってきて自宅でやること、全てをリストアップし、終わったらチェックするようにしています。
やることを自分で把握し、行動できるようにしているのです。
できないことが把握できれば対策を考えることができます。
対策が見えてくれば「これでできる!」という可能性が出てきて「できる!」という喜びに繋がっていきますよ。
フォローの方法さえ解れば希望が見えてくる
このようにフォローの方法さえ解れば、親はガミガミ言う必要がありません。
さらに「この子は大丈夫なのか?」といった不安が減ります。
それだけでなく、「リストの作り方を覚えたら、自分で計画的に学習したり行動することができるかも!」という希望が見えてきます。
なにより子ども自身も「自分でできる!」ということが増え、自信がついていきます。
私自身、娘の発達の遅れや障害に気付いた時は「どうすれば普通の子になれるのか」「どうすれば遅れが追いつくのか」という方法を必死になって探していました。
ネットであれこれ検索する自分を止めることができませんでしたし、娘のできないこと、気になる行動を直視できなくて苦しさばかり感じていました。
しかし、「フォローの方法が解れば希望が見えてくる」とわかってからは、落ち着いた気持ちで娘と向き合うことができるようになったのです。
とりあえず、親の心の整理は後回しにし、子どもの苦手を把握してフォローの方法を模索してみてください。
家庭でできるフォローが大切
発達に遅れがあったり、障害がある子どものフォローは「専門家でなければ不可能!」って思いますか?
そんなことはありません。
子どもと一緒に過ごす時間が長いのは誰でしょう?
子どもが落ち着ける場所はどこでしょう?
子どもが頼りにして甘えるのは誰でしょう?
どんなに凄い専門家の指導を受けても、その効果が子どもの身につくまで、身近にいる親や大人がフォローして行く必要があります。
しかもフォローは子どもの特徴・特性・趣味に合ったものでなければなりません。
意外かもしれませんが、コツさえ解れば発達の遅れや障害に対するフォローは家庭で出来るのです。
ABA(応用行動分析)に基づく療育
私が出会ったのはABA(応用行動分析)に基づく療育です。
ABAに基づく療育とは、人と意思疎通することが難しいといわれる自閉症の子ども向けのプログラムです。
もちろん、素人がABAを完全に把握して子どもに合った療育プログラムを組み上げることは難しいです。
しかし「家庭で無理なく楽しくできるコミュニケーション課題30」といったABAに基づく療育方法を家庭向けに解説してくれている本を活用すれば、ひとつひとつの課題が基礎から丁寧に説明されていますので、家庭療育が実現できます。
しかも、利用する道具は家にあるものだったり、ネットから無料で手に入るものがほとんどです。
高価な教材などを購入することなく、家庭で子どもに合ったフォローが自分でできるようになります。
例えば
- 椅子に座ることを教える方法
- 椅子に座っている時間を徐々に長くしていく方法
- 人の動作を真似することを教える方法
- 「どうぞ」と言われたら「ありがとう」と答えるということを教える方法
こうした行動は、集団生活の上で欠かせない行動ですが、どうやって教えていいか解りませんよね?
こうした基礎的な行動を家庭で教え、できることを増やしていけば発達に遅れや障害があっても保育園・幼稚園や小学校といった集団に入っていけるようになります。
集団に入れるようになれば、親も子も行動範囲や選択肢が広がっていきます。
家庭療育で簡単な課題をクリアする成功体験からスタートし、できることをひとつひとつ増やしていきましょう。
小さな成功の積み重ねは、必ず大きな力になる。
私はそう信じています。
💡ちなみに、私が娘にした最初の家庭療育は……
「椅子に座って」という指示を教えること。
子ども用の椅子を何もない和室に置き、娘にカッパえびせんを1本見せて「座って」と言いました。
娘が座ったら「座れたね! 凄いね!」と言葉で褒め、頭を撫で、カッパえびせんをあげました。
たったこれだけ、ほんの数秒で終わることです。
しかし、家庭でこれをした翌日、保育園で娘は先生の指示に従って椅子に座ることができたそうです。
驚いた保育士が「お母さん、何をやったんですか? 障害児なのに指示に従ったんですよ!」と私に報告してくれました。
この時、私は「ど素人の私にできたのに、子どものケアのプロである保育士には『娘を椅子に座らせること』ができなかった」と衝撃を受けました。
それと同時に「コツと知識が必要なんだ」と痛感しました。
子どもに合った療育でコツさえ掴めば、例え素人が家庭でやっても効果が期待できます。
まずは、家庭でできることを探して親子で家庭療育をスタートさせるとよいです。
専門家の指導・サービスは枠が少なく早い者勝ち!
家庭療育を勧める理由はもうひとつあります。
それは、発達障害について指導できる専門家や療育施設が不足している状況だからです。
充分ではない、不足している
- 子どもの発達についての診断 ➜ 小児神経科医
- 発達の度合いを検査する ➜ 小児神経科医、臨床心理士
- 発達障害の子どもに適切なフォロー ➜ 療育施設
残念ながら今は、専門医の診察・専門家の検査・療育施設の利用といった多くのサービスが「新規利用者の受付をストップ」「キャンセル待ちで、利用できるのは数ヶ月~数年後」という状況です。
できる限り早く相談の予約をしないと、サービスを受けられないまま年齢がどんどん高くなってしまいます。
2歳で発達に遅れを感じた私の娘も、娘に合った療育を受けられるようになったのは4歳を過ぎてからでした。
発達に遅れや障害がある場合、年齢が上がるにつれて周囲との差が大きくなっていきます。
子ども自身も「自分は周りと違う」と気付くようになり、劣等感を抱いてネガティブな言動が目立つようになることもあります。
また、ひとつのことを習得するまでに時間がかかりますので、できるだけ早く利用できるサービスを見つけて予約し、少しでも早く子どもに合ったフォロー・療育を受けられる環境を整えることをお勧めします。
療育というフォロー
発達に不安や遅れがあると、まず自治体の機関(発達支援センターなど)に相談しますよね。
相談すると大抵「療育を受けましょう」と勧められます。
この療育という言葉で傷付く親御さんもいます。
私自身もそうでした。
「療育が必要=障害児!」「この子はダメな子!」「親がちゃんと育てられなかった子!」……そんな目で見られているような不安や辛さがありました。
しかし、療育はプログラムを見てみると「全ての子どもに有意義なこと」だということがわかります。
療育とは
- できないこと・苦手なことを把握し、フォローする方法を見つけ出し、ひとつでも多くのことができるように援助すること。
- 集団生活をしたり、社会に出た時に不都合に感じること、辛く感じることが少なくなるよう援助していくこと。
このようなフォローは子育てをしている親が多かれ、少なかれやることですよね。
そして、大人になっても重要なことです。
「療育=障害者に必要なもの」とは限らないと思えませんか?
発達に遅れがあると、このフォローの重要度が増したり、フォローの仕方にコツや技が必要になる、ただ、それだけなのです。
「療育を受けた子ども」と「受けられなかった子ども」……社会に出た後、どちらがよりよい生活を送れるようになるでしょう?
子どものことを考えると、療育というフォローは大切だと思いませんか?
療育施設を選ぶ
療育にも色々なプログラムがあります。
- 作業療法士による作業療法(OT)
- 理学療法士による理学療法(PT)
- 言語聴覚士による言語聴覚療法(ST)
- 臨床心理士や発達障害児の指導ができる指導者による少人数の集団で行うソーシャルスキルトレーニング(SST)
子どもにどんな療育が必要なのか見極め、子どもに合ったプログラムで指導してくれる療育施設を探してみてください。
ただ、相性が合わない療育施設は、通うこと自体が苦痛になって子どもにとって大きなストレスになってしまいます。
療育施設は利用希望者が多くて通うこと自体が難しい状況ですが、複数の療育施設を見学して、子どもに合う施設を探すのが理想です。
私の娘の場合、最初に通った施設はプログラムが合わなくて3か月で辞めました。
新たな施設を探すのは大変でしたが、今は別の施設に通っています。
療育施設とは
- 子どものフォローの仕方を、親と専門家と指導員といった複数の人達で考えることができる。
- 就学・進学・就職などに関する情報源にもなる。
療育施設は頼れる存在になりますので、一か所だけでも確保することをお勧めします。
大切なのは「子どもに合った環境を整えること」
私の娘は2歳の時に発達に不安を感じて、小2の春に「自閉スペクトラム症」と診断されました。
診断は就学してからですが、家庭療育は2歳でスタートし、療育施設も4歳から通い続けています。
娘が小学生になった今、2歳の時に感じた「この子はどうなるのだろうか」といったネガティブな状況ではありません。
それは、娘に合ったフォロー体制をできるだけ整えてきたからだと思っています。
今や小中学生の15人に1人が発達障害の可能性があると言われているそうです。
実際、娘の同級生にもグレーゾーンと思える子が複数います。
療育を受け続けている私の娘と、何もフォローを受けていないグレーゾーンの子。
集団生活を送るという観点で二人を比べると、大きな差を感じますし、子どもの心の状態にも違いがあるように思います。
発達に遅れや障害がある場合、この社会を生きていく上で、不都合や不安を感じ、困るのは本人です。
視力の悪い人がメガネを使って楽に生活ができるように、発達に遅れや障害がある人も適切なフォローがあれば不具合を感じずに済むことがあるのです。
- どんなフォローがあればいいのか
- どうやってそのフォローを準備するのか
- その子に合った環境をどう整えていくのか
上記を中心に考えれば、親がどうすべきか、自然に見えてくると思います。
子どもの発達に不安や遅れを感じたら、大きなショックを感じると思いますし、焦ってネガティブなことばかりを考えがちです。
でも、落ち着いてください。
まず、子どもに合った環境、子どもに合ったフォローを探すようにしましょう。
子どもは必ず成長します。
子どもに合った環境を作れば、成長の度合いが大きく違ってくるはずです。
その成長をそばで一緒に感じましょう。
「できる」を見つけ、つらさの中にも喜びを見つけながら前に進んでいく、そんな将来に目を向けてみてくださいね。
【参考】
一般社団法人 日本小児神経学会 https://www.childneuro.jp/
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