発達障害の代表的なものに、ADHDや自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群)というものがあります。
発達障害というと子どもに焦点が当たりがちですが、大人の発達障害もメディア等でよく取り上げられるようになってきました。
大人の発達障害は突然出現するものではなく、大人になるまで気付かれることがなかっただけで、その兆候は子どもの頃から出ていたはずです。
子どもの頃は多少変わった行動をしていても、「こういう性格の子なのだな」と見過ごされてきただけのかもしれません。
しかし、社会人となると「変わっている」というだけでは済まされない事態に遭遇するようになってきてしまいます。
他人が困るような事態が続くと、それが発達障害の特徴的な特性が原因であっても社会での評価は下がり、誰からも信用されなくなる可能性が出てきてしまいます。
しかし、例え発達障害があったとしても【発達障害のある自分】をよく理解し、その特性と上手く付き合うことができれば社会で活躍することは十分可能です。
今回は、大人の発達障害とうまく付き合っていくための対処法についてまとめています。
下記の対処法をカスタマイズすることで、あなただけのオリジナル対処法を作成することが可能なはずです。
ぜひ興味のあるものから読んでみてください。
大人の発達障害とは
子どもの発達障害の特性は3~4歳頃より顕著にみられるようになりますが、小学校に入学するくらいからハッキリと診断されるケースが増えてきます。
小学校での集団生活がうまく送れなかったり、授業中にじっとしていられなかったりすることが増え、発見されやすくなるからです。
一方、ADHDや自閉症スペクトラム障害には知的な遅れがないため周りに気づかれにくいことが多く、大人になるまで気付かれないケースもあります。
大人の発達障害は、誰からも発見されないまま社会人となり、周りとの違和感を抱きだしてからようやく障害を持っていることを知ったというケースがほとんどです。
大人の発達障害は、ある日突然出現するものではありません。
子どもの頃からその兆候はあったはずですが、見過ごされたまま成長してきてしまったのです。
もしも子どもの頃に発見されていれば、療育や薬物治療などの治療を行うことができるのですが、何の治療も受けないまま社会人になると、コミュニケーション能力に問題があり協調性がないと評価されたり、忘れ物や遅刻が続き、責任感のない人というレッテルをはられてしまうこともしばしばあります。
そのような状態が続くと、本人にかかるストレスは日に日に大きくなってしまいます。
誰にも助けを求めることができずじっと孤独に耐え続けた結果、職や人間関係も全て失い、うつやひきこもりになるケースも少なくありません。
上記のような状態は、以前は性格的な欠点として見過ごされてきましたが、発達障害に対する社会の認知度が上がるにつれ、きちんと原因があるということが少しずつ理解されるようになってきました。
最近では30歳を過ぎてから診断されるケースや、お子さんの発達障害からご自分にも発達障害があると自覚されるケースもあります。
そのため、大人であっても不安に思う必要はありません。
心当たりがある場合、まず専門医に相談してみるとよいでしょう。
生きづらさの原因が分かれば、心も軽くなりますよ。
大人と子どもの発達障害の違いとは
ADHDの特性は、子どもの頃にそう診断されても、大人になるまでにその特性が残るのは3分の1程度といわれています。
その他の子どもは思春期までに特有の特性はなくなるか、多少は残るものの目立たなくなっていきます。
子どもでも大人でも、発達障害の基本的な特性は同じですが、成長の過程で少し変化することはあります。
例えば、ADHDの子どもの特性は落ち着きのなさが目立ちますが、大人の場合は不注意や集中力が持続しないなどの特徴が目立ち、仕事や家庭生活にも支障をきたしてきます。
子どもであれば親や学校が大部分をカバーしてくれますが、大人になると誰も助けてくれません。
職場でケアレスミスや忘れ物などを繰り返せば、当然周りからの評価は下がってしまい、挽回するには相当のエネルギーが必要となります。
自身が発達障害と自覚しないまま社会生活を送ると、厳しい現実が待っているのです。
残念ながら現在の日本の実情では、たとえADHDの特性が原因であっても、基本的なことが全くできなければ言い訳さえも聞いてもらえないのです。
上記はほんの一例ですが、大人になると子ども時代よりも辛い経験をすることが多くなります。
子どもの発達障害と大人の発達障害の大きな違いは、社会に出るとトラブルが増え、周囲からのサポートを受けにくくなることです。
さらに何でも自分で決めて行動しなければならないため、失敗するとその代償が大きくなりやすく、追い詰められてしまうこともあります。
そんな最悪な状態を避けるためにも、大人の発達障害に対する適切な対処法を知り、実行していくことが大切です。
その第一歩として、下記に発達障害を見分ける簡単なチェック項目を載せています。
ぜひご活用ください。
大人の発達障害を見分ける方法
もしも今、あなたが社会に生きづらさを感じているのであれば、それは発達障害による特性が出ているのかもしれません。
心当たりがある場合、簡易的なものですが発達障害特有の特性をはかるには役に立つため、以下のチェック項目を試してみてください。
いくつか当てはまる場合、発達障害の疑いがあります。
その場合は、なるべく早いうちに、最寄りの専門医に相談してみることをおすすめします。
チェック項目
- 子どもの頃から「変わった子」と言われることが多く、友達との関係作りが苦手だった。
- コミュニケーションをとることが苦手で、意図せずとも相手を怒らせたり困らせたりすることがよくある。
- 会話の内容や会議の内容を理解できなくて、とんちんかんな受け答えをして周りを変な空気にさせてしまうことが度々ある。
- 何度注意されてもなぜか同じ失敗を繰り返してしまう。
- チームワークや協調性を求められることが苦手。
- 手順や段取りが悪く、仕事がスムーズに進まない。また、計画的な仕事が苦手。
- 計画性がなくいつも見切り発車で、途中で挫折してしまうことが多い。
- 周りと自分はなんとなく違う気がしている。
- 生きづらさを感じたり、憂鬱な気分になったりする時が時々ある。
大人の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)とは
大人の発達障害で代表的なものは「自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)」と「ADHD」です。
ここではまず、【大人の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)にはどのような特徴があるのか】について説明します。
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の基本的な特徴は大人も子どもも同じですが、社会に出ると突然の会議の予定変更に対応できなかったり、指示されなければ何をすればよいのかわからなくなったりして困ることが増えてきます。
主な特性の例
- コミュニケーションが苦手。
- 相手との相互的なやり取りが上手くできず、一方的に話し続けるか、相手の話を聞くばかりで会話を続けることができない。
- 孤立しやすい傾向がある。
- 突然の予定変更にはパニックになってしまうなど、物事に臨機応変に対応することが苦手。
- 断ることが苦手・できない。
- 「就業後、上司に誘われてもいつも断る」など社交性のない行動をとりがち。
人に騙されやすいという一面もあり、いつの間にか金銭トラブルに巻き込まれていた!なんてことも。
他には、初対面の人に普通では考えられないようなプライベートな話をしてしまい、相手を困惑させてしまうこともあります。
加えて、思ったことは状況を考えず、すぐに口にだしてしまうのでトラブルに発展しやすいことも特徴のひとつです。
自閉症スペクトラムを簡潔に表すと「空気がよめない」「コミュニケーション能力が低い」「計画的な行動ができない」などが挙げられます。
一方よい面は「感性が鋭い」「記憶力がよい」「関心があることには集中力を発揮する」などがあります。
たとえ自閉症スペクトラムと診断されても、特性による問題点をカバーし、よい面の特徴を活かせば社会で活躍することは十分可能です。
次章からは自閉症スペクトラムの特性をカバーし、社会でうまく生きていくための具体的な対処法をご紹介します。
大人の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の対処法
社会人になると、子どもの頃には感じにくかった様々な問題が浮き彫りになってきます。
放っておくと、本人は途方もない苦労をしながら生活していくことになり、かなりのストレスを抱えてしまうことでしょう。
ここで紹介する対処法は一般的なものですが、もし大人になってから自閉症スペクトラムと診断された、またはその疑いを持っている方がいらっしゃれば、役立つ部分もあるかもしれません。
興味のある項目からぜひ読んでみてください。
上手くコミュニケーションをとるには
自閉症スペクトラムは、相互的なやりとりが苦手です。
例
- 話しかけられたら返事をすることが苦手。
- 笑顔を向けられたら笑顔で返すことが苦手。
上記のように、自閉症スペクトラムでない人が「意識しなくても自然にできること」を、自閉症スペクトラムと診断された人は上手くこなすことができないという特徴があります。
社会人として相互的なやりとりが全くできないとなると、働ける場所は狭まってしまいます。
そのため、最低限度のコミュニケーション能力を身につけることは非常に重要です。
といっても、全てを上手く行う必要はありません。
「あいさつ」は人間関係の基本ですから、まずは「あいさつ」から練習してみましょう。
これをクリアするだけでも、相手はあなたによい印象を持ってくれます。
あいさつの基本は「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」、また、できれば「暑いですね」や「寒いですね」など天気や季節に合わせた言葉をそえると、ぐっと親近感が湧きます。
別れる時には「お疲れさまでした」「お気をつけて」「失礼します」など。
まずはこれだけでOKです。
それにプラスして、あいさつをする時に、相手の目を見ながらニコッと笑い、軽く頭を下げることを意識して実践してみると、周りの変化を実感できるはずです。
こうすることで、あなたの印象はガラッと変わります。
自信がないときは頭を下げるだけでもかまいません。
慣れないうちは難しく感じますが、やり続ければ自然にできるようになりますよ。
仕事をスムーズに進めるためには
職場では、たくさんの人たちと情報を共有しながら仕事を進めていく必要がありますね。
しかし、自閉症スペクトラムの特性を持つ人は、仕事を頑張りたいという意欲はあっても変な勘違いをしたり、状況が把握できず何を優先して行えばいいのかわからなかったりすることが多く、やる気が空回りして裏目にでてしまうこともよくあります。
まずは、職場の基本的なルールをしっかり理解しておくことが重要です。
また、もしも分からないことがあれば黙っていても何も解決しないため、例えば上司の指示がよく理解できなかった場合、「すみません、確認ですが…ということでよろしいでしょうか?」と、必ず確認するクセをつけましょう。
分からないまま当てずっぽうでなんとなく仕事を進めると無駄が多く、周囲のあなたへの信用度もみるみる低下していきます。
さらに仕事をスムーズに進めるためには、仕事の基本である「ほうれんそう(「報告、連絡、相談のこと)」を忘れてはいけません。
不安なことや疑問があれば、一人で悩まず上司や同僚に相談しましょう。
トラブルが起きた時も自分でなんとかしようとせずに、上司からアドバイスをもらうよう心掛けておきましょう。
最後にもうひとつ、注意しておくべきことは、言葉使いです。
上司との会話や、質問の仕方には特に気をつけてください。
年齢が自分より若くても、上司であれば敬語を使います。
自閉症スペクトラムの特性を持つ人は、油断するとため口になりやすい傾向があるので、注意しておきましょう。
トラブルに巻き込まれないようにするためには
自閉症スペクトラムの特性を持つ人は、人の話をすぐに信用してしまいがちです。
うまい話を持ちかけられても、悪意の有無を見抜いたり、うまく断ったりすることができないため、トラブルに巻き込まれやすい傾向があります。
例えば「お金を貸して」と言われると、断れないまま貸してしまいます。
「このことは内緒にしておいて」と言われると律儀にその約束を守るため、金銭トラブルに巻き込まれてしまうこともあります。
そのため、お金の管理の仕方を学んだり、断るスキルを身に着ける必要があります。
特に、借金の申し込みには簡単に応じてはいけません。
どうしても断ることができそうにない場合には、「家族に相談してみるから」と答えるようにしましょう。
そして、実際にお金に関することは必ず、家族や信用できる人に相談してから決めるようにしてください。
断るスキルについても少し書いておきます。
例えば、職場で上司から膨大な量の仕事を頼まれたとします。
もしも言われるままに引き受けて、期限までに間に合わなかった場合、あなたの信用度は下がってしまいます。
他に急ぎの仕事などがあって期限に間に合いそうにない場合には、例え上司の頼みであっても「今は仕事が立て込んでおりまして、申し訳ありません」と断ることも必要です。
自閉症スペクトラムの特性を持つ人は、どんなに無理なことでもなかなか「ノー」と言えません。
そのため多くのストレスを抱えたり、体調不良を引き起こしがちです。
しかし断ることで、あなたも会社も仕事が滞ることなく進んでいくなら、そちらの方が双方ともに何倍もハッピーです。
無理なことは無理と断ってもいいのです。
初対面の人を困惑させないためには
自閉症スペクトラムの特性を持つ人は、人と適切な距離を取ることも苦手です。
そのため、初対面の人にでもなれなれしい口調で話しかけてみたり、何度も会ったことがあるのにいつまでも他人行儀な態度を取ってしまったりすることもあります。
悪気はなくとも、このような態度を取られると相手は困惑してしまうでしょう。
初対面の人にはそれにふさわしい会話があります。
例えば、初対面の人に個人情報(自分の学歴や勤めている会社など)はあまり話さないようにする等いくつか覚えておき、その中から状況に合った話題をチョイスできるようにしておくとよいでしょう。
「天気」や「季節」に関すること、「時事的な話題」や「タイムリーなイベント」について話すこともよいでしょう。
相手の持ち物や姿が素敵だと思った時には、その「気持ち」を素直に伝えてもよいですね。
💡避けたほうがよい話題
- 自分や相手のプライベートに関わる話題
- 学歴や宗教について
- 相手が触れたくなさそうにしている話題
恋愛をうまく進めるためには
人間関係づくりにおいて、最も難易度が高いのは恋愛です。
もともと対人関係が苦手な自閉症スペクトラムの特性を持つ人なら尚更、その壁は高いものになります。
好きな人ができてもどうすればよいのか、何をすれば相手を喜ばせることができるのか全く分からないという人も少なくありません。
さらに、よかれと思ってしたことが、普通とは少しずれているために相手を困惑させてしまうこともあります。
恋愛マニュアルを丸暗記してデートでそれを忠実に再現したり、テレビドラマのセリフをそのまま言ってしまったり……ということをやりがちです。
さらに相手がつまらない様子でも、自分の行動が原因とは思わないので軌道修正が難しく、上手くいかないケースが多くなります。
自閉症スペクトラムの人が恋愛を成功させるには、まず特性の特徴を自覚しておくことが大切です。
例えば、相手の意図をうまくつかめない、一方的に話しがち、親しくなる前からプラベートなことを話したり聞いてしまいがち……このような特徴を理解し意識していれば、大きな失敗は少なくなります。
さらに、映画やテレビで素敵なセリフを耳にしても、それをそのまま使うにはかなりハードルが高いことを覚えておきましょう。
いくら素敵にみせようとしても、無理が続くとすぐにめっきがはがれてしまいます。
無理をしないと一緒にいられない相手とは、長いお付き合いは期待できません。
自然体で飾らない自分と一緒にいられる相手こそ、大切にするべき人ではないでしょうか。
また、断ることも苦手なので、誘われるままにズルズルと意味のない関係が続いてしまう場合もあります。
断る時には「その日は都合が悪いので」「お気持ちは嬉しいけれど付き合うことはできません」など、はっきりと伝えるべきです。
その方が相手にとっても親切です。
学校の先生やママ友とうまくつきあうには
お子さんがいらっしゃる場合には、幼稚園や保育園に入園する頃から、ママ友や先生とのお付き合いがはじまりますね。
自閉症スペクトラムの特性を持つ人にとっての【苦手な社交の場】に加えて、「周囲との関係を悪化させては子どもに悪影響が出るのでは?」という不安な思いから、余計にプレッシャーを感じてしまう人も少なくありません。
しかし、ママ友などは子どもが成長すれば自然に離れていくものなので、やっきになってママ友たちとの関係作りを頑張る必要はありません。
必要最低限の付き合いを続けていれば問題ないでしょう。
幼稚園や学校の先生と話すときには少々緊張するかもしれませんが、まずは「いつも子どもがお世話になっています」というあいさつから始めましょう。
先生からお子さんについて注意を受けることもあるかもしれませんが、その時はまず謙虚な姿勢で先生の話をよく聞くことです。
その後に、できるだけ穏やかに自分の考えを伝えるようにしましょう。
話しているうちに興奮してきて一方的になってしまうこともあるかもしれません。
そのため、深呼吸をするなど常に落ち着いていられる方法をいくつか持っていると便利です。
いかがでしたでしょうか。
対人面に関する対処法がほとんどでしたが、意識しているのとしていないのとでは大きな違いがあります。
機会があればぜひ試してみてください。
大人のADHDとは
自閉症スペクトラムと並んで大人の発達障害で代表的なものに「ADHD」があります。
子どものADHDはよく知られるようになってきましたが、大人のADHDはまだまだあまり認知されていません。
そのため、社会にでるとADHD特有の特性であっても、「なまけている」というレッテルを貼られてしまうこともあります。
子どものADHDの場合は小学校に上がる頃には発見されるケースが多いのですが、【不注意優勢型(集中力がなく、片づけが苦手なのが特徴)】の子どもは、その特性を見過ごされたまま大人になる可能性が高いのです。
大人のADHDの不注意優勢型の特性も基本的に子どもと同じなので、
- 職場では机の上が散らかっている。
- 遅刻を繰り返す。
- 仕事を最後まで終えられない。
上記のような傾向が見られます。
そのため、周囲からは「ルーズで仕事ができない人」と見られがちです。
また、大人のADHDには不注意優勢型以外にも多動性型、衝動性型の特性があり、基本的にはこのタイプも子どもの特性と同じ特徴があります。
多動性型の例
- 常に気持ちが落ち着かず、気が散りやすく集中するのが苦手。
- 短気で少しのストレスにも耐えられず、逃げ出してしまう傾向がある。
衝動型の例
- 待つのが苦手で、優先順位を考えず瞬間的に動いてしまう傾向がある。
- 計画を立てたり準備をしたりすることが苦手。
(職場で長期的なプロジェクトなどに関わるとストレスを感じやすくなります) - 決められたやり方や手順に従うのが苦手。
(責務を果たせないこともしばしばあります)
このような特性による困りごとを抱えている場合、仕事だけでなく家庭生活にも深刻な影響を与えてしまいます。
次章からはADHDの特性をカバーし、社会や家庭で上手に生きていくための具体的な対処法をご紹介します。
大人のADHDの対処法
ここでは、大人のADHDと上手く付き合っていくための具体的な対処法をご紹介します。
ここで紹介するのは一般的なものですが、もし大人になってからADHDと診断された、またはその疑いを持っている場合は役立つ部分もあるかもしれません。
興味のある項目からぜひ読んでみてください。
落ち着いて行動するには
大人のADHDの場合、大人になっても落ち着きがなく、常に動き回っていないと我慢できないという人もいます。
その欲求を無理やり抑えつけてしまうと、イライラがつのり悪影響を及ぼしてしまいます。
対処法としては、何かワクワクするような楽しいことを計画すること。
特に男性の場合は、楽しみを追い求めたいという欲求が強くあります。
結婚していても、パチンコや賭け事などの娯楽に興じてしまう人は少なくありません。
そのようなことを繰り返していれば、いずれ家庭は崩壊してしまうでしょう。
しかし、家族で楽しめるレジャーやイベントなどを計画すれば夫婦仲も上手くいき、お子さんも大喜びするはずです。
愛する家族の喜ぶ顔を見ると、次の計画を立てるのもきっと楽しくなってくるでしょう。
このように、定期的にイベントやレジャー企画することは効果的です。
もちろん、男性に限らず女性にも効果的です。
趣味や旅行など楽しめることを可能な限り楽しんでください。
さらにもうひとつ、落ち着きのなさという特性を活かしてあなたらしく生きられる方法があります。
落ち着きがなく退屈に耐えられないということは、裏をかえせば好奇心が強く、おそらく流行にも敏感だと考えられますので、その特徴を生かし、一度日常生活を見直してみるとよいでしょう。
上手くいっていないところがあればピックアップし、アップデートするつもりで新たな解決策を考えていきます。
その時に、自分がコントロールしやすい一日の流れや、おおまかなスケジュールを考えてみることもよいですね。
余暇や趣味の時間もたっぷり一日の中に組み込んでください。
スケジュール作りにはメモや手帳、携帯、パソコン、iPadなど使えるものはなんでも使ってみてください。
考えているうちに楽しくなってくるはずです。
これを定期的に繰り返し、自分がコントロールしやすい完璧なスケジュールを考えていくと、うまくいく生活パターンとその逆のパターンも見えてきます。
計画を立てること、そして一日を落ち着いて過ごすトレーニングにもなるので一石二鳥です。
片付け下手を防ぐには
ADHDの人は片付けが苦手。
家の中だけでも、食事の片付けから衣類や物の整理整頓、収納までありとあらゆる【片付け】がありますね。
「家が片付かない」と悩んでいる人の多くは、どこから手を付けていいのかわからないため、そのまま放置してしまっているのではないでしょうか。
しかし、工夫次第で片付け下手から脱却できる方法があります。
できることから試してみてください。
「片付ける」の意味とタイマー活用法
【片付ける】とは「部屋の中に物がちらかっていない」状態を指すのではありません。
もちろんその状態をキープすることは素晴らしいことですが、キープの仕方によっては片付いていることにならない場合もあるので注意してください。
具体的には、物が見えないように、クローゼットや収納棚に押し込んでいるだけでは意味がないということ。
【片付ける】基本は、出した物を元の位置に戻すこと。
そのためには、まず家の中の物の位置から決めなくてはいけません。
最初のうちは大変ですが、それさえ決まってしまえば後は簡単です。
家族にも協力してもらえば、常にきれいな状態をキープできるでしょう。
また大掃除は別として、苦手な方付けを毎日すると思うと気が重くなり、継続する自信が無くなってきませんか?
📌対処法:タイマーを15分だけセットし、一日のうちその間だけ片付けに集中します。
タイマーが鳴ったら残りは明日にまわしてOKです。
片付けは毎日少しずつでも継続することが大切です。
ぜひ試してみてください。
片付け下手から脱却する方法
家の中で最もちらかりやすく、片付けにくい「服」「本」「子どものおもちゃ」の片付けについてご紹介していきます。
■ 服
家族がいる場合、大量の服がありますよね。
服の整理は実は最も体力のいる仕事ですので、一気に片づけてしまうほうが楽です。
- 放置されている家中の服を一か所に集める。
- 洗濯、クリーニング、すぐに着るもの、季節外れのものに分類する。
- クリーニングするものは袋につめてお店に持って行く日を決める。
- 洗濯する必要がなく今すぐ着られるものはハンガーにかける。
- 季節外れのものは、洗濯の必要がなければ衣装ケースや袋に入れて保管する。
- 一年着なかった服は、スッパリと捨てるかリサイクルに出す。※最も大切!
ワンシーズンのみの流行りの服や「来年着るかも……」と思った服も、結局はもう着ないということのほうが多いので、思い切って処分してしまいましょう。
これを季節毎に何度か繰り返していけば、洋服はずいぶんスッキリするはずです。
■ 本
持っている本が多ければ多いほど、この方法は役立ちます。
- 全ての本を仕事用と楽しみ用に分ける。
(子どもの本が多い場合は子どもの本用にも分ける) - 家にある本棚に全て収納できるか確認する。
(不要な本を処分するか本棚を追加するか検討する)
処分する本が出た場合は、袋につめてリサイクルに持って行く日を決めたら必ず実行しましょう。
片付けの最中に、本をうっかり読み返してしまうと瞬く間に時間が過ぎてしまいます。
「絶対に読み返さない」と決めて作業にあたるようにして下さい。
■ 子どものおもちゃ
おもちゃはよく使うものですし、上手く片付けにくいもののひとつです。
- おもちゃが入るボックスをいくつか用意する。
- そこにブロックや乗り物のおもちゃなど5、6種類に分類して入れる。
ボックスにおもちゃの絵を描いたり写真を貼ったりしておくと、お子さんが片づけやすく便利な上、片付けのトレーニングにもなり一石二鳥です。
段取りよく家事をするには
家事は終わりのない仕事です。
次から次にこなしていっても、あくる日にはまた同じ仕事が待っています。
このエンドレスに思える仕事をみんなひたすら淡々とこなしていますが、ADHDの特性を持つ人は計画を立てたり、段取りよく家事をこなすことや色々なことをバランスよく行うことが苦手なので、家事をこなすには膨大な時間がかかってしまいます。
もしも働いている場合には、平日は必要最低限の家事だけにするとよいでしょう。
例えば2時間の中で行える食事の準備、洗濯、簡単な方付けといった最低限度のメニューを決め、それだけを行います。
普段できない家事は休日にまわします。
その際に、普段から気になる箇所をリストアップしていると効率的です。
できれば優先順位まで決め、優先度の高いものから着手するとベストです。
専業主婦の場合は、一日の大まかなスケジュールをつくります。
子育ての時間、リラックスや趣味の時間もたっぷり組み込んでください。
ゴミ出しの日、買い物やクリ―ニングに行く日など曜日ごとのスケジュールを決めて作っておき、それを見やすい場所に貼ってひとつずつ実行していきます。
時間内に終わらせる内容を考え、ゲーム感覚で取り組むと楽しめるかもしれません。
スケジュールが上手くまわるようになれば、自分にも自信がついてきます。
作業効率も上がり、好きなことができる時間も確保できたり、子どもとの時間もたっぷり取れるようになるでしょう。
忘れっぽさを防ぐには
ADHDの特徴として、やるべきことを後回しにするうちにすっかり忘れてしまっていたり、物を置いた場所を忘れたり、大切な予定や仕事もうっかり忘れてしまったりするということがよくあります。
これは、脳内メモリーが少ないことが原因といわれています。
本人には全く悪気はなく、大切な要件を忘れてしまうとその時は反省するものの、それもすぐに忘れてしまうのでまた同じことを繰り返してしまいます。
このような忘れっぽさの対処法は「書く」ことが有効です。
メモをとるなど書くことによって記憶は定着しやすくなります。
また、書くだけでなく、書いたメモを常に「確認」することも大切です。
具体的には仕事や家事でその日にしなければならないことは、必ずメモをして一日に何度も確認します。
また今週、今月やることもカレンダーや手帳に書き込み、一日に一度は確認するようにしましょう。
カレンダーなどは、目につきやすい場所に貼ると効果的です。
絶対に忘れてはいけないことは玄関のドアに貼り、確認してから家を出る習慣をつけるとよいでしょう。
先延ばしを辞め、できることはすぐに実行する習慣づけるように意識してみてください。
また、慌てると余計に忘れ物をしやすくなるので、翌日の準備は必ず前日までに行うようにします。
スムーズに仕事を進めるためには時間に余裕を持ち、常にメモと確認を忘れないことが大切です。
最後までやり遂げられるようにするには
ADHDの特徴は、アイデアが次々と浮かび、フットワークの軽さがある反面、最後までやり遂げる力がないことが弱点です。
斬新な発想ができるため高い評価を得ることもありますが、勢いでだけで始めてしまいがちなので少しでも壁に当たると途中で挫折し、アイデア倒れになってしまうこともあります。
仕事でそのようなことを繰り返していれば、常に誰かに後始末をしてもらうことになり、「口先だけの人」「いい加減な人」という評価を受けるようになってしまいます。
あれもこれもとアイデアが浮かぶままにやってしまうと、仕事に悪影響を及ぼしてしまうのです。
このような場合の対処法としては、まずは今日やるべきこと、今週、今月やるべきことを全て書き出し、スケジュール表を作るとよいでしょう。
カレンダーに書き込んでもOKです。
次にいつまでにそれを終わらせるのか、優先順位はどれかなどを色鉛筆やマーカーなどで色分けして記入し、これをいつも目につく場所に置いておきます。
作業が終わるたびにひとつずつ消していくと、達成感を味わうこともできるでしょう。
豊富なアイデアを思いつくことが得意な人は、仕事でその力を活かせるように努力すればもっともっと社会で活躍できるようになります。
アイデアを出したら、まずはそれが実行可能かどうかよく吟味し、上司などに相談してみることを習慣にしましょう。
さらに仕事に着手する前にしっかりとした計画を立て、ひとつひとつの問題をクリアしていきます。
スケジュール通りに進めていくことは難しいかもしれませんが、はじめに期限やノルマを決めていると毎日に張り合いを感じられるので、途中で投げ出すことも少なくなります。
親子関係・夫婦関係を上手く築くには
ADHDの特性によって、親子関係や夫婦関係がうまくいかなくなる場合も少なくありません。
特にADHDの特性を持つお母さんは、子育てをする際にも態度が一貫せず、その時々で違ったことを言うこともあります。
昨日はダメと言ったのに、今日はいいよという……そうなると、言われた子どもは判断基準が分からないので混乱してしまいます。
また肝心なことを忘れてしまったり、せっかちな一面もあります。
思い通りの結果がでないとすぐに怒るので、子どもは反発するようになってしまいます。
夫婦関係にもこれと同じようなことが起こります。
家事や育児が上手くいかないとつい感情的になってしまい、言い争いが絶えない夫婦になることも少なくありません。
自分がADHDだという自覚がなければ、自分を責めてしまいどんどん自信を無くしてしまうでしょう。
しかし、うまくいかないのはあなたのせいではなく、ADHDのせいなのです。
そう考えると心が楽になります。
対処法は、自分の苦手なことは素直に認め、家族に協力を求めることです。
家族で十分に話し合い、ADHDについての理解を求めること。
もし現在はっきりと診断されていない段階でも、そういう傾向があるということを伝えるだけで状況は大きく変わります。
ADHDの特性を持つ人は社会にでると失敗が続くので、自信を持てなくなりがちです。
しかし、自分では気付いていないだけであなたにも【よい面】がたくさんあります。
自信を失う前に、楽しかったこと嬉しかったことを手帳に書き出してみてください(楽しい気分で書くとより効果的です)。
できれば、毎日1個でもいいので書くことを続けてみましょう。
そうすれば、それはあなたの自信を取り戻してくれる最強のツールとなります。
つらい時には読み返し、プラスの感情を思い出せば心に余裕ができ、笑顔でいられるようになります。
ぜひ試してみてくださいね。
いかがだったでしょうか。
全てのADHDの特性を持つ人に有効な対処法ではないかもしれませんが、意識するかしないかでは大きな違いがあります。
機会があればいくつか試してみてください。
最後に
今回は発達障害と診断を受けた、またはその疑いを自分で自覚している人に向けてその対処法についてまとめました。
全ての人や状況に当てはめることは難しいかもしれませんが、一般的に多いとされる特性に対する対処法をまとめましたので、「そんなこと分かっているよ!」と思う人も中にはいらっしゃるかもしれません。
しかし、少しでも役立つ内容がありましたらぜひ活用してみてください。
大人の発達障害は子どもの発達障害に比べサポートを受けにくく、全てにおいて自分で対応しなければならない場合がほとんどですが、そんな時、必要な対処法が分かれば少しは楽になれるかもしれません。
大人の発達障害と上手く付き合っていくためには、専門のクリニックに相談すること、そして自分にできそうな対処法を実践してみることが大切です。
今回ご紹介した対処法の中からできそうなものがあれば、ぜひ試してみてください。
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