「我が子が他の子どもと少し違うかもしれない」
最初は小さな違和感だったものが、子どもの成長と共に不安までもが膨らんでいく……。
診断結果はADHD。
理由がハッキリとしてホッとした人、障害という言葉に傷ついた人、それぞれに様々な想いを抱いたことでしょう。
しかし、子どもの未来を考えると落ち込んでばかりはいられませんよね。
では、今から何をしていくべきなのでしょうか?
子どもの未来を考える時、何が必要なのでしょうか?
お子さんがADHDと診断された親御さんたちに、いくつかお伝えしたいことがあります。
ADHDについて理解し、親だけで抱え込まないようにする
ADHDの子には不得意なことがあると知り、親である自分に完璧を求めない
ADHDには、「不注意」「多動性」「衝動性」といった3つの代表的な特徴があります。
📌不注意
- 他の子どもに比べて忘れ物が多い
- 何かをやっていても、すぐに他の事を始める
- 極端に集中力がない
- すぐに物をなくす
- 整理整頓ができない
📌多動性
- 落ち着きがない
- 待つ事が苦手
- 状況が把握できずに、静かにしなければいけない場所の区別ができない
📌衝動性
- 思い通りにいかないと、乱暴になる
- 会話の途中で自分のしたい話を突然始める
- 他の人がしようとしている事を横取りする
- 順番が待てない。
ADHDと向き合っていくためには、こういった特性を理解して「不得意なことがある」と認識する必要があります。
また、多くの親御さんは子どもの障害を知ると「自分がしっかりしないといけない」と完璧を求めすぎる部分がありますが、完璧かどうかを判断する基準はありませんし、子育てに正解はありません。
その点を理解し、意識しておくことも、ADHDという障害と向き合うためには必要です。
サポーターが必要だと知り、多くのサポーターを募る
お子さんに障害があると思うと、自分がしっかりとしなければいけないと考えて、頑張りすぎてしまう親御さんもいますが、頑張りすぎた結果、自分の体と心をすり減らしてしまっては意味がありませんよね。
大切なのは、ADHDという障害と向き合い続けていくことなのですから。
親だけで出来ることには限りがありますから、「無理をしない」ということを心に留めておくとよいでしょう。
学校生活を一緒に過ごすことは出来ませんし、24時間一緒に過ごすことも出来ませんよね。
全ての面において自分たちだけで対応していくことは不可能なのです。
まずは、その点を理解する事が大切です。
そして、助けになってくれるサポーターを探しましょう。
多くの人にサポーターになってもらうには、親御さんがADHDという障害についてしっかりと理解していく必要があります。
同じADHDであっても、子どもによって苦手なことや困りごとは異なります。
ADHDを理解し、子どもが何が苦手か把握することによって、どのような助けが必要になるのかが分かり、説明することができるようになります。
ぜひお子さんの行動をよく観察し、メモを取ったり、それがどの特性に当てはまるのか照らし合わせたりしてみてくださいね。
先回りして準備しておく
予想もつかないからこそ、事前の準備が大切
ADHDの子は、大人や周りが予測できないような行動をする場合があります。
「さっきまで、ここにいたのに少し目を離した隙にいなくなってしまう」といった行動も、ADHDの特徴です。
その為、常に注意しておかなければいけないと考えがちですが、ここでも大切になってくるのが「完璧を求めすぎない」こと。
では、どうすればいいのでしょうか。
危険を防ぐ為に、ある程度の準備を事前にしておくことが必要になってきます。
詳しく説明していきます。
同じ悩みを持つ人の声を聞く
ADHDの特性を持つ子どもは想像しているよりも多く存在します。
文部科学省が調査して発表したデータによると、ADHDが普段の生活や学校生活において弊害になってくる子どもの割合は2.5%とされています。
これは、1クラスに1人程度という割合です。
ということは、同じ悩みをもつ親御さんも同じ数だけいるということになりますね。
同じ境遇にいる人たちと情報を交換することによって、今までにどのような危険があったのか、どのような状況でそうなったのか共有することができるようになります。
これらの情報は多ければ多いほどいいため、ネットワークを築くということはとても大切なことなのです。
危険を予測する癖をつけ、制限は最低限にする
子どもが小さい間は様々な危険がつきものですね。
それらを回避する為には、子どもがいる状況にどのような危険があるのか?を予測することが大切です。
どのような危険があるのかを予測できていれば、対策を打つことが出来るからです。
ここでキーになるのが「情報」です。
情報を多く持っていることで、ある程度の危険を予測することができるようになります。
そして、その情報の中から優先して注意しておかなければいけないことを選択して、問題になるかもしれない芽をつんでいくのです。
どのような危険があるのかを事前に考えて、対策を講じる必要があるのです。
しかし、危険があるからといって何でも制限するのは得策ではありません。
なぜなら、子どもの自主性を損なってしまうからです。
ADHDの特性に「予期せぬ行動」というものがあるため最低限の注意は常に払う必要があり、また、非常に難しい判断となってしまいますが、許容できる範囲であればある程度自由にさせてあげるほうが子どもの自主性を育んでいくことにつながるため、制限する数を限定するが大切となります。
皆と違ってもいいと受け入れてあげる
誰一人として、同じ存在にはなれない
ADHDの特性のある子を育てる親御さんの中には、障害に立ち向かって何でも他のお子様と同じように出来るようにならなければいけないと考える人もいるでしょう。
しかし、ADHDは障害であり病気ではないため治りません。
成長の速度に違いがある事実を理解してあげることが大切です。
ADHDであってもADHDでなくても、人は一人ひとり違う存在であり、また、誰一人として同じ存在ではありません。
そのことを忘れずに、周りと比較するのではなく、我が子の成長を見守り、手助けしていくことが未来につながるということを忘れないでくださいね。
どうしたらいいのか一番分からないのは本人
成長していくにつれて、子ども自身も他人との違いを少しずつ理解していき、周りとの関係性に悩む時がやってきます。
しかし、本人もどうしたらいいのかが分からないのです。
そのような状況の中で、最もつらいことは理解してくれる人がいないという状況です。
本人がどうしたらいいのか分からない状況なのに、完璧を求めてしまっては子どもを追い込むことになってしまいかねません。
分からない状況の中で、一番頼もしく感じるのが「待っていてくれる」ということなのです。
「いつでも待ってくれている」……この安心感があるからこそ、子どもは安心して相談ができ、少しずつADHDと向き合っていけるようになるのです。
最初の一歩は「受け入れる」こと
ADHDと診断された後に、一番必要になってくることが「受け入れること」です。
「受け入れること」は長い人生の中、ずっと必要になってきます。
受け入れることが出来なければ、否定し続けることになってしまうからです。
子どもにとって、否定されるほどつらいことはありません。
ADHDの理解、そしてADHDを受け入れるということから全てが始まると言っても決して大袈裟ではないのです。
ネットワークを築く
同じ悩みを持つ人が近くにいるということは、情報を共有できる以外にも多くのメリットが存在します。
情報だけではなく、悩みを共有することもできるのです。
同じ悩みを持っているからこそADHDについても理解り、お互いに気をつかい過ぎるといった心配もいりません。
また、親同士が長く付き合うことによって、子ども同士がお互いを深く知ることにもつながり、その結果、子どもたちが「自分を知る」近道を見つけることができるのです。
一緒にトライする
根気強く待ってあげながら一緒に楽しむ
ADHDの特徴に、「ひとつのことを長時間続けていくことが難しい」というものがあります。
興味の対象がコロコロと変わってしまうのです。
これを防ぐひとつの手段が、何かをする時に親御さんも一緒に参加するという方法です。
例えば、スポーツは参加しやすいもののひとつです。
遊び感覚で一緒に行うことで、子どもは自然と興味を持ちます。
難しく考えずに、一緒に遊ぶという気持ちが大切になってきます。
また、その際に必要なことが「待つ」ことです。
ADHDの特性からすぐに他の事に興味を持ってしまいますが、本人にとっては、自然なことなのですから、それは仕方がないことなのだと理解してあげてください。
「根気強く待ってあげながら一緒に楽しむ」ことが大切です。
スポーツ、絵画、音楽、ダンス、可能性は無限大!
ADHDの特性のある子が何に興味を示すのかは最初から分かるわけではありません。
根気強く、いくつかのものを試していく必要があります。
スポーツや絵画、音楽やダンスなど、考えられるものは、ひとつずつ試してみてください。
ここで、大切になってくるのは「出来るかどうか」ではありません。
興味を持てる対象を作ってあげ、成長を促すことを目的としています。
終わった後に話し合う
一緒に楽しんだ後に話し合うということも効果的です。
夕食後でもいいですし、お風呂の中でもいいので、少し時間をおいてからその日に行ったことを親子で話し合いましょう。
「何が楽しかった?」「どんな気持ちだった?」「今度は何をしたい?」といったことを話し合うのです。
「少し時間をあける」ことがポイントです。
そして、細切れ時間でもいいので、その対象となる事柄に触れる時間を増やしてみてください。
少しずつ時間を増やしていくことで、子どもは興味を少しずつ深めていきます。
無理に行うと逆効果になってしまうので、本人の負担にならないように観察しながら行いましょう。
出来る事を一つひとつ見つけていく
成功体験を大切にする
色々なことにトライしていき、興味を持てるものを見つけた後に大切になってくるのが、成功体験です。
どんな小さなことでも成功すると嬉しいですし、誇らしいものですよね。
成功体験が、新たなチャレンジへの燃料になるのです。
そして、新しいチャレンジには自主性が必要になってきます。
出来るようになるのに、時間がかかってしまうこともあるかもしれません。
しかし、問題はそこではないということを知っておいてくださいね。
自主性は成功体験を重ねることによって育まれます。
また、成功体験はもうひとつの”大切なもの”の成長に欠かせません。
それは、自信です。
何か大きな問題に直面した時に、それを乗り越えていくためには「自分なら大丈夫」という自信が必要です。
もしも自信を持てないままでいると、子どもはADHDという障害のせいにしてしまうかもしれません。
ADHDの特性から不得意なことがあるのは事実ですが、成長して大人になると「ADHDだから」といってサポートしてもらえない事柄も出てきますよね。
社会の中で生きていくためには、ADHDという障害に負けずに向き合っていく力が必要になるのです。
その力を養うためには、成功体験を積み、自信を手に入れることが大切なのです。
自尊心を育てていく
自信を育むことにより、自尊心も芽生えてきます。
自尊心があれば、自分の存在を正しく認識し、自分を肯定することが出来るようになります。
つまり、「自分を大切にできる」ということです。
「自分を受け入れられる」ことは、つまり「ADHDが自分の一部だと理解して受け入れることが出来る」ということです。
周りの人よりも、少し集中力が足りないかもしれない。
会話の空気を読むのが苦手かもしれない。
落ち着きがないかもしれない。
それでも、「自分は自分なんだ」と思い、生きていける強い心を持てるようになれば、ADHDに振り回されたり、悩まされる人生を送ることはないでしょう。
可能性を限定しない
例えば、走るのが遅くても野球が得意な人もいます。
球技が苦手でも他のスポーツが得意な人もいますね。
何が言いたいのかというと、「可能性を限定しないでほしい」ということです。
子どもの普段の動きを見ていて、運動は苦手だと決めつけてしまう人がいますが、全ての運動を試したわけではない場合が多いのです。
走る姿がぎこちなくて遅くても、バッティングセンターでは次々にバットにボールを当てるといった子どももいるのです。
可能性を限定せず、なんでも試してみること。
それが、子どもの得意なことを見つけてあげる時に意識しておくべきことなのです。
さいごに
ADHDの特性により、人よりも不得意な分野がいくつかあることは避けられません。
しかし、完璧な人間など存在しないのです。
誰しも得意、不得意なことがあります。
人と比べて成長が早い遅いといったことは問題にならないのです。
大切なことは、昨日の自分より成長できたかどうかなのです。
周りと比較するのではなく、自分の人生を歩んでいくということが何よりも大切なことだと思いませんか?
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