【amazon評価】★★★★★★
著者ご本人が発達障害を抱え苦しまれた時期もあったようですが、今はカウンセラーとして広く活躍されています。
タイトルにもあるように、「発達障害を『才能』ととらえる逆転の発想で、どんなふうに自分を生かしていけるか」が全体のテーマであり、内容は5章に分かれています。
第1章は「仕事の進め方でつまずく11の例」
第2章は「コミュニケーション&人間関係でつまずく9つの例」
第3章は「『常識がない』と言われそうな言動10の例」
第4章は「あなたはどのタイプ?大人の発達障害」
第5章は「あなたのまわりの変わった人を理解する」……興味を持った章から読んでみても良いかもしれないですね。
この本の魅力は、何といっても発達障害とはっきり診断がおりないかもしれない、いわゆる「隠れ発達障害」、つまり「グレーゾーン発達障害」について正面から向き合っていることです。
はっきりとした問題行動もなく、学校での成績もよかったのに、社会に出たとたん周りが普通にできることがなぜかできないという人が増えているようです。
そうなると、「自分なんかダメだ」「努力してもムダだ」などと考えてしまい、うつになったり、引きこもったりしてしまう人も少なくありません。
この本は「隠れアスペルガー」さんが、もう一度自信を取り戻し、社会で生きていくための教科書のような存在といえるかもしれません。
特徴は、発達障害のマイナスに見られがちな点をすべてプラス、長所、才能として肯定し直していることです。
よく「長所と短所は表裏一体」と言われますが、徹底的につまずきポイントを長所として言い換えている点を「すごい!」と思いました。
また、つまずきポイントの原因を分析して、対策法まで一つ一つ考えてくれています。
周りの人に助けを求めるときには、どんな言葉を使って助けを求めたらいいかということまで提案してくれています。
人に相談することが難しい発達障害の特性を本当に理解してくれているなぁと感心しました。
ご本人の分析力と研究の賜物だと思います。
ただ本のボリュームは結構あります。
そのうえ、イラストや図解はほとんどないので、文章を読んで内容を把握するのが苦手な場合、ちょっと難しいと感じるかもしれないといった印象です。
イラストや図を使って、視覚的に把握していくと「発達障害マニュアル」として、もっとわかりやすい内容になったのではないかと思います。
内容は面白いだけに、その点が残念です。
「グレーゾーン発達障害」に悩む人って実はかなり多いのではないかと最近思うのですが、この本を読んで、障害を「個性」や「才能」と考えて生かすことができたなら、社会がもっと豊かで色彩豊かなものになるのではないかなという可能性を感じました。
そのためには周りの理解が欠かせません。
発達障害かもしれない人をサポートするためのヒントもたくさん載っています。
「家族が発達障害かも?」「上司や部下が発達障害かも?」と思う人には、ぜひご一読をお勧めします。
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