【amazon評価】★★★★★★
著者は高校二年生の時に当時最年少で文學賞を受賞したベストセラー作家でもあり、心理学者でもあるという多才な方です。
写真家である夫とともに、健常児である長男、自閉症の診断を受けている次男、末っ子の長女という3人の子どもさんを育てていく過程が収められています。
タイトルにもありますが、自閉症の子どもを持っても「大丈夫!」という強いメッセージが印象的です。
この本が最初に出版されたのは2007年で、今回の増補新版にはその後の子どもたちの成長の様子が巻末に加えられています。
今、「発達障害」という言葉をよく目にするようになりました。
理解が進んできているなぁと実感すると同時に、親御さんの不安をあおる報道なども目につきます。
著者の言葉は、そんな親御さんに「一人じゃない」「きっと大丈夫」と感じさせてくれるのではないかと思います。
内容は、子どもの障害に気づくまでの親御さんの心の動き、受診までのハードル、幼稚園・保育園・学校を選んでいく過程、きょうだいの扱い、周りの保護者や子どもとの付き合い方など多岐にわたっています。
すべてが時系列で書かれているわけではないので、時々話がとんだり、戻ったりしてわかりにくい部分もあります。
私自身、読んでいて「あれ?」と思う場面がいくつかありました。
しかし、作家である著者の巧みで軽妙な文章運びで、一気に読み進めることができました。
この本の一番の魅力は、心理学者でもある著者が自分の知識を生かしながら、受診を決断したり、幼稚園・保育園・小学校を選択したりしていく過程ではないかと私は感じました。
子どもの発達には人一倍詳しいはずなのに「この子はどう見ても発達障害ではない」と思っていたことや少しずつ不安になっていく過程などが丁寧に描かれています。
息子さん(次男)に診断がついた後は、全力で自閉症の息子さんが幸せに過ごせる場所を探していかれる様子は心に染み入ります。
幼稚園から小学校への移行についても具体的なアドバイスが載せられています。
もちろん、子どもの特性や困りごと、家庭の事情や住んでいる地域のサポート体制はそれぞれ違いますから、選択していくのは大変なことです。
それでも、子どもが一番幸せに生きていけそうな選択をしていく姿勢にとても勇気づけられます。
もう1つ良かったのは、長男であるお兄ちゃん、末っ子の妹さんの心のケアについて文面がかなり割かれている点です。
発達障害を受け止めていくのは、親御さんだけではないと改めて感じました。
ごきょうだいが葛藤したり、傷ついたりする描写には心がギュッと痛くなりました。
そんなご長男や末っ子さんとも真摯に向き合い、ケアをされるお母さんの姿に感動しました。
理想論だけではない、涙も葛藤もいっぱいある、そんな子育ての記録です。
時には「疲れた」と弱みも見せるお母さんを慰める子どもたちの様子に心が温まります。
いろんな人に手に取って読んでいただきたいお勧めの書籍です。
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