子どもがADHDと診断された時、親の心の中には様々な思いが交錯します。
ショックを受ける人もいれば、自分の育て方やしつけが駄目だったのだろうかと悩んでいたけれど障害だと判明したことによって、どこかホッとしたという人もいます。
「自分が駄目だったわけでも子どもが駄目だったわけでもない、障害だったのだ」と、その事実を知って納得し、救われるのです。
知ることができたということは、次のステップへと進む準備が必要になってくるということ。
ADHDと診断されて心の葛藤や動揺はあるかもしれませんが、お子さんのこれからを支えていく必要があるため、ADHDと真正面から向き合っていかなければならないのです。
今回は、お子さんがADHDと診断された時に親御さんに最初に考えておいてほしいことと、ADHDの特性を持つ子の親として知っておいてほしいことをご紹介します。
「ADHD」を理解することから始める
はじめに、親御さんが気になっているお子さんの行動や言動などの多くは障害によるものであること、その点をまずは理解してあげてください。
ADHDはお子さんの性格や、家庭環境によって引き起こされているのではありません。
また、本人の意思でどうにか出来るものでもないということを知っておいてください。
本人は、言われたことをきちんとしようと思っているはずですが、簡単だと思われるようなことでもできない場合があり、「どうしてできないのだろうか?」と、親御さんでもそのように思ってしまうこともあるでしょう。
しかし、本人もそのことに悩んでいます。
できないことに目を向けるのではなく、できることに目を向けてあげてください。
ADHDと向き合っていくためのスタートラインは、その点にあるのです。
ADHDについて
ADHDは、心の病ではありません。
子どもの行動パターンや落ち着きのなさを見て、心の病だと勘違いされる方も多くいらっしゃいますが、ADHDは脳に原因がある障害(発達障害)なのです。
ADHDの直接的な原因はまだ判明していませんが、脳の神経伝達物質に問題があるということが分かっています。
神経伝達物質の中には、ドーパミンやノルアドレナリンといった学習や集中するために必要となる物質が存在します。
ADHDの特性を持つ人は、このドーパミンやノルアドレナリンの働きが、弱かったりアンバランスだったりということが判明しています。
つまり、勉強しようとしたり集中しようとしたりしても、その活動に必要な神経伝達物質がうまく働かない状態なのです。
ADHDであることが原因で、活発になりすぎたり、衝動的になってしまったり、注意力が散漫になってしまったりするのです。
結果、傍から見ていると落ち着きがないように見えてしまいます。
これは、本人の意思や性格には関係ありません。
ADHDの特性の中には「衝動性」というものがあります。
何かの拍子に衝動的に乱暴な行動にでてしまうという場合、時間が経てば乱暴をしてしまったことに対して反省して謝ることができますが、それでも、また繰り返してしまうのです。
本人も理由がわからないため「自分だけが感情をコントロールできないのはどうして?」「皆が当たり前にできていること自分はできない……」と悩むようになってきます。
しかし、いくら悩んでも悩むだけでは解決せず、心への負担が増えていくだけなのです。
幼い頃の心への負担は、その後の成長に大きな影響を与えてしまいます。
心の負担が大きくなる前に、適切な対応を取ることが必須となります。
適切な対応を取るためにも、ADHDは脳に原因がある障害(発達障害)なのだということを理解する必要があります。
ADHDと向き合うために必要な心構えとは?
ADHDの特性を持つ子どもの親としてADHDと向き合っていくときに必要な心構え、それは「子どもと自分を追い込まないこと」です。
「何故できないのだろうか?」「何回言えば分かってもらえるのだろうか?」「自分がいけないのだろうか?」……発達障害だと分かってはいても、そのように考えてしまうことがあります。
頭では分かっていても、心の動きを止めることはできません。
そういったときは特に「子どもと自分を追い込まないこと」を意識してみてください。
子どもと自分を追い込まないようにするためには、ADHDに対する理解が必要です。
ADHDといっても個人差があり、目立つ特性には違いがあるため、その子の特性に合わせた接し方や勉強方法を考えていかなくてはなりません。
まずは病院や専門機関で話を聞き、ADHDに対する理解を深めていきましょう。
そして、今後の対応を相談しながら探っていくようにしてください。
何でも一人で解決しようと考えることは、自分を追い込んでいくことにつながります。
親が追い込まれてしまうと、それは子どもにも伝わってしまいます。
「自分だけで解決しようとしない」ということを忘れないようにしてくださいね。
できないことを数えない
ADHDの特性を持つ子の親に多いこと、それは「あれもできない・これもでない」といったように、できないことばかりに目がいってしまうというパターンです。
この場合、そこを直すことに熱心になり過ぎてしまい、子どもに窮屈な思いをさせてしまうことにつながってしまいます。
もちろん、根気強く接していくことはとても大切なことですが、そればかりになってしまうと親も子どもも疲れてしまいます。
できないことをできるようにするためには、時間も根気もかかります。
共に乗り越えていこうと考えるのであれば、その子のペースに合わせてあげることも考えなくてはいけません。
ある程度、長期的な視点を持つ必要があるのです。
このようなパターンを防ぐためには、できないことばかりに目を向けるのではなく、できることにも目を向けるようにすることが有効です。
子どもの成長を支えていくためにも、自分たちを追い込まないためにも、できることに目を向けることは大切なことなのです。
また、「できた」ことをしっかりと褒めてあげましょう。
褒められたことが自信につながり、さらなる成長の原動力になっていきます。
できることを見つけたらしっかりと褒めてあげ、そして、伸ばしていける分野を探っていくのです。
また、「できない」と親御さんが悩むことのひとつに「時間を区切る」ということが挙げられます。
例えば、ADHDの特性を持つ子に多い「ゲームに夢中になり過ぎる」という点。
他のことには集中力が続かないのに、ゲームであればいつまでも夢中になって続けている……このような特徴がある場合には、ひとりだけで行うゲームではなく、将棋やオセロといったものを家族で行ってみることもひとつの方法です。
将棋やオセロが駄目でも、ゲームのどういったところに夢中になっているのかを観察し、様々な選択肢を探していくようにしてください。
「脱出ゲーム」に夢中になっているのであれば、「リアル脱出ゲーム」を開催しているイベントに家族みんなで参加してみる、など、色々なパターンが見つかるかもしれません。
ひとつのアプローチが駄目だったとしても、すぐに諦めないようにしてください。
根気強く探していくことが大切です。
得意なことや夢中になれることが増えていけば、必ず自信につながります。
また、親子で行えるものであればそれが共通の話題となり、コミュニケーションが取りやすくなるため、子どもの心理状況を把握しやすくなるといったメリットもあります。
現段階で、できないことを数えても意味がありません。
少しずつ克服していけるように、長い目で計画をたてる必要があるのです。
そうすることで、子どもも親も追い込まれることがなくなります。
まずは、できることをひとつでも多く見つけていくこと、そこに力を注いでみてください。
できることを見つけるために必要なこととは?
もし、できないことばかりが目についてしまっている状況なのであれば、いきなり「できることを探してください」と言われても難しく感じてしまうかもしれませんね。
そのような場合は、「子どもが何に夢中になっているのかを知る」ことを意識してみてください。
それが、できることを見つけていくポイントになります。
- 何が好きなのか?
- 時間を忘れて取り組んでいるものはないか?
日頃、子どもが遊んでいる様子をしっかりと見ることから始めてみましょう。
子どもが自由に遊んでいる中には「好き」のヒントがたくさん隠されており、また、そのヒントを見逃さないためには、日記をつけることが有効です。
日々、思ったことを日記に記入しておくことによって、子どもの「好き」を探すときのポイントが見えてくるようになります。
また、日記をつけるメリットは他にもあります。
日記をつけるメリット
- 日記を見返すことによって、日々の気持ちの変化などを自覚して、原点に立ち返ることができるようになる。
- 書くことによって思考をまとめることができる。
- 読み返すことによって、ゆっくりでも成長している我が子が見えてくる(無意味に焦る気持ちもなくなる)。
忙しい毎日を過ごしていると日々の気持ちを思い返すことが難しくなってしまうこともありますが、そういったことを防ぐことにもつながるため、日記はとても有効なツールです。
難しく考える必要はありません。
日々の生活の中で思ったこと、感じたこと、嬉しかったこと、反省するべきこと…、そういったことを書いていけばいいのです。
途中で書けない日があっても気にしないようにしてください。
大切なことは、長く続けていくことです。
長く続けば続くほど、日記から得られるヒントは増えてきます。
毎日のため、そして未来のための日記を始めてみましょう。
「今できること」と「将来のためにできること」
ADHDの特性を持つ子の成長には、特性によって時間のかかるものが存在するため、長期にわたって物事を見ることが必要となってきます。
学習方法にも様々な工夫が必要になってくるでしょう。
すぐに効果はあらわれないかもしれません。
ヤキモキしてしまうかもしれませんが、できなかったときは理由を探り、次にどのようなアクションが必要になってくるのかを考えてみてください。
「できない」という問題を細分化して、ひとつずつ試していくのです。
時間はかかるかもしれませんが、少しずつでも進んでいくことが大切です。
それでも、できなくてどうしても落ち込むこともあるでしょう。
そんなときは、自分のためにも子どものためにも、無理をしないように休憩をはさむようにしましょう。
どうしても気持ちが沈んでしまったときは、無理をするよりも休むことが大切です。
中には、休むことに罪悪感を抱いてしまう人もいるかもしれません。
しかし、長期的な視点で見たときに、今後のことを考えて休息が必要なときもあるのです。
長期的な視点で見ることによって、無理を予防することにもつながります。
長い目で見た時、どのような方法をとることが自分と子どもの負担を少しでも軽減することにつながるのかを一番に考えてください。
今できることと、将来のためにできることを分けて考えることが大切です。
今していることは、どちらにあてはまるのか?
将来のためにできることをしているのだと分かれば、不必要に焦ることもなくなりますよ。
今、できること、そして将来のために今できること。
そのふたつを分けて考えて、バランスよく行っていくことが大切です。
まとめ
子どものADHDと向き合っていくためには、根気が必要になってきます。
根気が必要になるということは、待つということが必要になるということ。
焦る気持ちもあるでしょう。
しかし、焦り過ぎて子どもに負担をかけてしまうと、事態はますます悪化しかねません。
また、焦りの気持ちが生まれてくると、前に進まないことに対して苛立ちが芽生えてしまいます。
結果的に、自分自身をも追い込むことになってしまいます。
子どもがADHDだと診断されると、今後のことを考えて不安に苛まれてしまうかもしれません。
しかし、不安に思うだけでは前に進むことはできません。
- 今、何ができるのか?
- 将来のために何ができるのか?
- そして、自分と子どもを追い込まない方法とは何なのか?
お子さんの特性を見ながら、最適だと思われる方法を探してくださいね。
そして、最適な方法を探すためにも【日記】というツールをぜひ活用してください。
最後になりましたが、分からない部分はお医者さんや専門機関の人に相談するようにして、決してひとりで抱え込まないようにしてくださいね。
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