【amazon評価】★★★★★★
本書は、発達障害やその可能性のある子どもたちが、毎日の「つまずき」を克服して、子どもの「できる」という自信を育てていく方法を解説しています。
「叱らないが、譲らない」提案・交渉型アプローチと呼ばれています。
「つまずく」という経験を何度も重ねると、大人でも精神的に落ち込んでしまうものですよね。
発達障害の特性を持つ子どもは、「つまずき」体験が人よりも多く、それが「行き詰まり」につながり、大きな挫折感や敗北感を抱えることになるといわれています。
周りの大人がむやみに「なんでできないの?」「~しなさい!」と叱ってしまうと、どんどん自信をなくして、引きこもりや対人恐怖などの二次障害を引き起こしてしまいかねません。
そういった子どもを減らすための画期的なアプローチ本です。
本書はシンプルな3部構成です。
1章が「提案・交渉型アプローチとは?」
2章が「事例でわかる、提案・交渉のプロセス」
3章が「提案・交渉を行う際のQ&A」
魅力は、理論的な説明だけでなく、事例を紹介してどのように実践したのか、どのように成功したのかを示してくれている点です。
9つの事例が挙げられ、事例にはショートマンガが使われています。
子どもの困った反応に出会ったときに、ついやってしまいがちなアプローチと「提案・交渉型アプローチ」とが対比になっています。
それぞれのアプローチ法によって、子どもの心にどんな変化が起きるのかということも書かれているので、わかりやすいと感じました。
あくまで、子どもを一人の人間として尊重し、子どもの行き詰まり感を理解すること、子どもの本当の気持ちに気づかせること、いくつかの選択肢を提案し、交渉することに重きが置かれています。
発達障害児は自分の気持ちをうまく言葉にしたり、感情そのものに気づいたりすることが難しいといわれているので、そのプロセスを丁寧に説明してくれている点は本当に参考になると感じました。
また、支援側の助けたいという思いが空回りすることもあります。
そんなときにどうしたらいいのかにも気づかせてくれます。
ただ、教育や養育にかかわる人向けに書かれているのか、専門的な言葉がたくさん使われ、少し難しめの書籍になっています。
事例も学校の先生やカウンセラーなどの指導例が中心です。
家庭で実践したらどんな風になるのかという例も挙げられているともっとわかりやすくなったのではないかと感じました。
自分の本当の気持ちや感情に気づいて、自主的に物事に取り組み、自信をつけていくことができれば、もっともっと子どもたちは幸せになっていけるはずです。
こういう考え方が社会に根づいていけばいいなぁと感じる一冊でした。
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