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社会生活を送る中で、「落ち着きがない」「だらしがない」「キレやすい」などといった、子どもの行動面の低下が取りざたされています。
目に見える障害がない場合、親や教師ははっきりとした原因が分からないながらも「育てにくさ」を感じ、苦労をしながら日々を過ごしていることでしょう。
一昔前なら躾と言われていたようなことですが、「学習障害(LD)」や「自閉症スペクトラム」と診断される子どもは「脳の機能不全」があるということが大きく関係してきます。
我が子の幼少期に、まだ何の診断もついておらず、しかしながら他の子どもとは明らかに違う「育てにくさを感じていました。
そこから発達凸凹に関する本をたくさん読みましたが、この「脳の機能障害」であるという解釈に出会えたことは大きかったと感じています。
- 普通ならできるはずのことを本人もルールとして理解しているはずなのに、何度も失敗を繰り替えしてしまう。
- 親はそのたびに一生懸命に伝えますが、本人はまた失敗してパニックを起こしてしまう。
これは、角度を変えずに同じ教え方をしているとしたら、伝わらなくて当然なのです。
なぜ伝わらないのか、どう工夫をしたらできるようになるのか、それを突き詰めていくと、「工夫をすればこの子はできるのだ」という結論になります。
これを、脳の配線回路にトラブルが生じて、そのために起きている「適応障害」なのだと捉えると、本人がいかに周りの無理解に苦しんできたか理解しやすくなり、この部分は配慮してあげる、または無理のないレベルでの努力をしたらいいと、考えてあげられるようになります。
これは、本人の自己有能感、自己肯定感に深く関わってくるため大切なのですが、あわせて親も自分を肯定する力に繋がっていくと感じます。
子どもを理解すること、親が分かってくれていると感じる言葉をかけることは、両者の信頼関係を深くしてくれて、より内容のある会話ができるようになります。
理解というのは、何にもかえがたい信頼なのです。
脳の機能障害がある人は、感覚情報の交通整理ができていません。
脳は自然に自分に必要な情報をその場で選び取っていますが、不必要な情報を排除できないことで「注意の集中・持続」ができずに過ごしているのです。
感覚の交通整理=「感覚統合」をしてあげることによって解決する問題は大きく、この知識が周りにあることで、本人の人生の生きやすさが大きく変わると言って間違いないと思います。
「固有覚」「平衡感覚」「感覚防衛」など、少し専門的な言葉が並ぶ内容なので、発達障害について疑い始めたという若葉マークの親御さんは最初の一冊としては手にとるのは後回しになりがちな本かもしれません。
子どもがまだ幼く、はっきりした診断や個性の傾向が読めていないとなおさらかもしれませんが、初期に知っておくことで親御さんの心もとても軽くなる知識が散りばめられています。
読むのに時間はかかりますが、何度も読み返し、いまの生活の中で無理になっているところはないか、もっと本人が吸収しやすい環境にするにはどうすればいいかなど、長期に渡ってヒントをくれる内容になっているので、もっと早くに読んでおけば良かったと悔やむくらいに良い内容です。
親とともに、特別支援学級に関わる先生には基本として身につけておいていただきたい知識がつまっており、ぜひ学校に配ってほしいと思える本です。
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