子どもはみんな問題児。

子どもはみんな問題児。
【著者】中川李枝子
【amazon評価】★★★★★★★★

『子どもはみんな問題児。』このタイトルにドキッとされた人も多いのではないでしょうか。

私もドキッとした一人です。

「何が問題なのか?」「どうしたらその問題が解決するのか?」……そんなことを考えながら、この本を手に取る子育て真っ最中の親御さんもいらっしゃるでしょう。

今となっては笑い話ですが、私はなぜかこの本を購入した時に「私って子どもの時、問題児だったような気がする……」とよく考えていたため、「もしかしからこの本の中に答えが載っていて、それにすべて当てはまったら、やっぱり私は問題児だったと証明されることになる!」なんて、少し覚悟を決めて読み始めたものです。

この本の作者は“中川李枝子”さんです。

そう、あの有名な絵本・童話作家の方です。

代表作として絵本『ぐりとぐら』シリーズや童話『いやいやえん』などを手掛けられています。

ですから、この本の表紙や中の挿絵にも「あ、みたことある!」という絵が多く使われています。

ドキッとするタイトルとは裏腹に、中川先生の作品に登場する子どもたちのイラストがかかれた表紙は、どこか安心感を覚えます。

この本は他に紹介した本とは違い、単行本サイズの読み物なので、持ち運びにも便利でしょう。

1ページ目の見出しを見て、私の心はスッとほぐれていきました。

子どもはみんなすばらしい問題児なのだと、大きく書かれていたからです。

本を手に取ってから得体のしれないものに覚悟を決め、ドキドキとしていたので、その時の感じた安堵感は今でも覚えているくらいです。

内容は中川先生が保母(現 保育士)時代にかかわった子どもたちとのエピソードや先生自身のお子さんやご主人との子育ての様子などが書かれています。

どこにも、「あなたのここが問題です」とは書かれていませんし、今子育てを頑張っている親御さんたちに「こんなことが問題です。あなたのお子さんはどうですか?」なんてことも書かれていません。

ただただ、真正面から子どもと向き合う中川先生の姿や「今」を一生懸命生きる子どもの姿が書かれているのです。

その文章は、まさに自分もその場に居るかのように感じさせられます。

映像を見ているかのような鮮明な状況描写や心の動きまでも伝わってくるので、自分も一緒に体験をしているかのように悩み、考え、納得しながら読み進められるのです。

最後の章では「いいお母さんってどんなお母さん?」と問いかけられます。

発達障害についての本を読もう、と思っていらっしゃる親御さんの中には「親として自分はどうあるべきなのか」ということを難しく考えてしまっている人もいるかもしれません。

この本は最後の章で「自分自身を振り返る」ことができます。

一人一人の子どもが違うのと同じで、その親御さんもまた、一人一人違うのです。

ですから、「子どもを愛おしく大切に想っているように、子育てをしている自分のことも大切にしよう」という、そんな温かいメッセージが込められているように思います。

同時に、「さぁわが子をどうやって笑顔にさせようか」「何をしたら喜ぶかな?」と子どもの嬉しそうな顔を見るのが楽しみになるのではないかとも思っています。

本の中に自分も入っているかのような錯覚をするこの本は、とても読みやすく、どんどんと読み進めることができます。

小見出しはだいたい2~3ページで完結します。

しかもその一つ一つに今まで中川先生が携わってこられた絵本の挿絵が入っているので、心が常にほぐれてリラックスした状態で読むことができます。

肩肘張らずに読める本、読み終わったら自然と子どもと向き合いたくなる本、こんな本はなかなかないのではないでしょうか。

ぜひ手にとって、読んでみてください。

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