自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の人が社会に出て活動をしていく際に、つまずきやすい事柄がいくつかあります。
例えば、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の特性の中には「他者との距離感をはかることが苦手」というものがあり、日本的な文化とも言える「空気を読む」とか「間合いを読む」といった感覚をなかなか的確に掴むことができないため、対人関係でギクシャクしてしまっても本人が「何故そうなるか」を理解できず、「解決策が見つけられず困り果ててしまう」といったことが起こります。
「このままではまずい」と本人が努力をしても、その努力が的はずれだった場合、さらに溝は深まるばかり…。
でも実は、ほんのちょっとの工夫で大きな改善が期待できたり、ポイントを押さえることで周囲とのやり取りがスムーズになることもあるのです。
そのためには、アスペルガー症候群の人へ向けた【正しいノウハウ】を身に付けることが大切です。
せっかくの努力が実を結ばず悲しい思いをするようなことがないよう、この記事では正しい努力の方向とその具体的な方法を、【生活習慣】【対人関係】【社会生活】【自分自身へのケア】の4つに分けて詳しく説明していきます。
役立つヒントや、誰でも気軽に試せる対応策をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
特性と起こりやすい問題行動
最近、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)に関する書籍やインターネットから得た知識などにより、「自分はアスペルガー症候群なのではないか?」と考えて、発達障害の専門外来を受診する人が増えています。
しかし、単に対人関係が苦手、空気が読めないといった悩みがあるからといって、「自分はアスペルガー症候群に違いない」と決めつけることは早計です。
単に「コミュニケーション能力が低く、対人関係がうまくいかない」というだけでは、アスペルガー症候群とは言い切れません。
……というのも、世の中には対人関係に苦手意識を持っている人は多く、健常者の中にも人間関係に悩んでいる人はたくさんいるからです。
では、アスペルガー症候群とは、一体どういった特徴のことを言うのでしょうか?
アスペルガー症候群とは?
アスペルガー症候群は自閉症スペクトラム障害(ASD)のひとつで、知的障害や言語発達の遅れのない発達障害のことを指します。
よく似ているものに「高機能自閉症」がありますが、こちらも自閉症スペクトラム障害の一種ですが、高機能自閉症は言語発達に遅れが見られることが特徴です。
アスペルガー症候群の特性は、大きく分けて以下の3つ。
- コミュニケーションの障害
- 社会性の障害
- 想像力の障害
ひとつずつ詳しく説明していきます。
📌 コミュニケーションの障害
対人関係の中で、相手の意図や気持ちを読み取ることが苦手であり、表面上の言葉を鵜呑みにする傾向があります。
相手の表情や仕草から気持ちを察することができず、感覚的に行われる「相互の意思疎通」に疎くなりがちです。
そのため、相手の真意が分からず勘違いをしてしまったり、的外れな対応をしてしまい「常識がない」「自分勝手」などと思われてしまったりすることがあります。
いわゆる「暗黙の了解」に対応することが不得意であり、本来はあえて意識しなくても自然に身についていくそれらの感覚に、どうしても鈍感になりがちです。
コミュニケーションというものは「その場で臨機応変に対応すること」が求められるため、アスペルガー症候群の特性を持つ人にはハードルが高く感じられることも多いでしょう。
言語障害がないと言っても、必ずしも他者と良好なコミュニケーションが取れるというわけではないことは知っておく必要があります。
📌 社会性の障害
社会の常識やマナーがわからないため、年齢が増すにつれて周囲とのあつれきが生まれやすくなります。
その場の状況を咄嗟に判断して適切な行動を取ることが難しく、自分でも気づかないうちに社会のルールを無視するような言動を行い、周囲から浮いてしまうことも。
一般的にタブーとされる事柄に無防備に触れてしまったり、人を傷付けるようなことを言ってしまったりと、自己中心的な人だと思われてしまうことも多いです。
本人は気を遣っているつもりなのですが、その方向が的外れなためかえって違和感を生んでしまったり、相手から誤解を受けてしまったり……。
このように、周囲の要求を読み取って行動することは、アスペルガー症候群の特性を持つ人には大変難しいことなのです。
📌 想像力の障害
アスペルガー症候群の特性を持つ人は「こだわり」が強く、そのために必要以上に困難を抱えることになってしまう場合が多いと言われています。
反復行動やこだわり行動などは、アスペルガー症候群に非常によく見られる特性です。
また、いくつもの選択肢を持つことができずに、ひとつの物事を追い続けてしまうといった特徴もあります。
その場の状況に合わせた柔軟な対応や切り替えが苦手で、その度合いはときに日常生活をも脅かすほど。
そのため、いつもと違うシチュエーションが起こると平常心を保てなくなったり、慌ててしまって失敗してしまったりすることも多くなります。
アスペルガー症候群で問題となる言動
前述の特性によって起こりやすい問題行動には、以下のようなものがあります。
自分に当てはまる項目があるかどうか、チェックしてみてくださいね。
- 相手の気持ちを推しはかることができず、傷つけるようなことを言ってしまう
- 急な予定変更などに対応できない
- 自分の興味のあることばかりを一方的に話し続けてしまい、コミュニケーションが成り立たない
- 何でも言葉通りに受け取ってしまい、冗談が通じない
- その場の空気を読むことができず、的外れな言動をしてしまう
- その場の空気を読むことができず、的外れな言動をしてしまう
- 完璧を求めるあまり、融通が利かない
- 視覚、聴覚、嗅覚、味覚などの感覚が過敏過ぎる
身に付けるべき基本的な生活習慣
アスペルガー症候群の特性を持つ人が少しでも快適な毎日を送っていくためには、まず身の回りの生活習慣を整えることが何より大切です。
どうしても、悩みの対象である社会生活や他者とのコミュニケーションに目を向けてしまいがちですが、それらを改善するためにはまず自分自身の状態を良好にしておく必要があります。
生活リズムの整え方
生活リズムを整えることは、健康に過ごすための基本中の基本ですが、どうしても忙しい現代人はこの基本を疎かにしてしまいがち。
特にアスペルガー症候群の特性を持つ人は、その集中力の高さから、何かに熱中し過ぎて睡眠不足になったり、食事をすることを忘れてしまったりなど、生活サイクルが乱れやすくなる傾向があります。
集中力があることはとても良いことなのですが、あまりに度が過ぎると多方面に弊害が出てしまいます。
例えば、寝過ごして会社に遅刻したり、仕事中に居眠りをして周囲に迷惑を掛けてしまったり……。
また、そのような不規則な生活が続くと、風邪を引きやすくなるなど自律神経が乱れ、身体のあちこちに不調を招いてしまう原因になります。
そこで、まず一番に心掛けたいことが、「規則正しい生活」です。
社会人としてのルールを守り、なるべく摩擦の少ない社会生活を送っていくためには、まず自分の生活リズムを整えておくことが肝心です。
そのためには、以下のような工夫をしてみてください。
- 次の日が学校や仕事の日は、何時までには必ず寝るなど、布団に入る時間をあらかじめ決めておく
- スマートフォンのアラーム機能などを利用して時間の区切りを意識し、長時間ひとつのことに熱中し過ぎないようにする
- 朝、目が覚めたら朝日を浴びて体内時計をリセットする
- 目に入りやすい場所に時計を置いて、常に時刻を確認できるようにする
- 遅刻や当日欠勤、仕事中の居眠りは「してはいけないこと」だと理解する
- 食事の時間がズレるなどの生活リズムの乱れは、家族に迷惑が掛かることだと自覚する
アスペルガー症候群の特性を持つ人は、できて当然と思われている日常の生活習慣に困難を感じることがあるため、どうしても生活習慣の改善や行動の切り替えが難しいときは、家族や職場に相談をして理解や協力をお願いしてみましょう。
身だしなみについて
身だしなみに注意を払うことは社会人としてのたしなみですが、アスペルガー症候群の人はその特性により、身だしなみに無頓着な人が多いようです。
その反面、生地の質や肌触り、色や柄などに過剰にこだわるケースが多いことも特徴のひとつ。
身だしなみには、以下のようにいくつかのポイントがあります。
- 体や服を清潔に保つこと
- きちんとした服装、着こなしをすること
- その場にふさわしい格好をすること
つまり、身だしなみとひと口に言っても、ただ清潔にしていれば良いわけではなく、服の組み合わせや、季節に合った服装、また時と場所と場合に応じた服を選んで着ることなどが求められるのです。
自分の好みや感覚と、人からどう見られるかの客観性が伴っていることが理想ではありますが、アスペルガー症候群の特性を持つ人にとってはその両立が非常に難しい場合もあります。
例えば「感覚過敏」がある場合、服の皮膚感覚は本人にとっては絶対に無視できない要素ですよね。
その場合は、無理して意に沿わない服装をする必要はありませんが、頭のどこかで「人からどう見えるか?」を絶えず意識しておいたほうが良いでしょう。
身だしなみに関しては、自分がその問題に気付けるかどうかが重要なポイントです。
そのためには、毎朝、出かける前に必ず鏡の前に立って全身を写し、髪、顔、服装など、どこかおかしいところがないかひと通りチェックすることを日課にしてみましょう。
また、可能であればファッションに詳しい人に、服のコーディネートの方法などをアドバイスしてもらうと良いでしょう。
服装を整えることは大人のマナーですから、ファッションに興味を持ったり学んだりすることはとても大切なことです。
年齢に合わない服や季節にそぐわない服を着ていると、自分が思う以上に周囲に不信感を与えてしまいますので、できる範囲で身だしなみに配慮するようにしましょう。
どうしても難しい場合は、少なくとも人に不潔な印象を与えることのないよう、こざっぱりとした清潔感のある格好を心掛けましょう。
例えば、お気に入りの服を毎日着たい場合は、同じ服を数枚そろえるなどの工夫をします。
また、フォーマルやカジュアルなど、最低限必要な服の種類は揃えておきましょう。
時間の感覚の身に付け方
アスペルガー症候群の人は、自分の興味のあることへ熱中するあまり、時間の経過に無頓着になる場合が多くありますが、社会の中で生きていくには自分の興味のあることより時間を優先することが求められます。
そのため、時間の感覚を身に付けることは、社会人として必要不可欠なマナーですね。
まず「約束の時間は必ず守る」ということを厳守することが大切です。
ただ、時間の感覚を身に付けることはアスペルガー症候群の人には難しい場合もあります。
その時は、スマートフォンのアラーム機能や、日頃から時計を見ることを習慣にするなどの工夫をして、感覚を補う手段を持っておきましょう。
現代ではモノを使ってカバーできる部分も多いため、有効な手段は積極的に取り入れることがおすすめです。
時間にルーズになりがちなアスペルガー症候群ですが、中には非常に時間に厳格な人もおり、その場合はまた別の問題が生じることがありますが、そのひとつに、時間に対する厳格さを他人にも求めてしまうということが挙げられます。
時として、やむを得ない事情で時間に遅れることは誰にでもありますが、アスペルガー症候群の場合、その事情を考慮できず、腹を立てて頭ごなしに相手を責めてしまう人もいます。
自分自身が時間を厳守することは良いのですが、それを当たり前のように相手に求めてしまうことはトラブルの元となってしまいます。
まず、世間では多少の遅刻は受け入れられるものだということを覚えておきましょう。
また、相手が時間を守らなかったときは、まずその理由を尋ねるようにして、いきなり腹を立てることは好ましくないことだということを知っておきましょう。
対人関係で身に付けるべきスキル
人付き合いは、アスペルガー症候群を始めとする発達障害者にとって大きな課題となりますね。
毎日、人間関係に悩んでは落ち込み、溜め息をついている人もいるのではないでしょうか?
しかし、人との関わり方には、実はさまざまな対処法があるのです。
自分ひとりですべてを抱えてしまうと、その重さに心が押し潰されてしまいますよね。
そうならないように、ぜひ次から説明するアドバイスを参考にして、少しずつ人間関係を楽にしていってくださいね。
怒りや不安の感情をどうコントロールするか
まず最初に、自分自身の感情のコントロール法について説明します。
喜怒哀楽、人にはさまざまな感情がありますが、問題になってくるものは、怒り・悲しみ・不安・憎しみなどの負の感情。
健常者でもネガティブな感情に振り回されて苦しむ人は大勢いますが、アスペルガー症候群の人の抱く負の感情は、こだわりの強さなどから健常者とは異なるレベルで問題になるケースがあるため、他者と感情のレベルにズレが生じて共感してもらえなかったり、誰にも理解してもらえない孤立感にさらに苦しんでしまったりすることも。
ここで大切なことは、負の感情をすべてなくすことは不可能だということを知っておくということです。
その上で、自分なりの気持ちの落としどころを見つけ、負の感情を長く引きずらないように工夫することが大切です。
上記は障害があるなしにかかわらず誰にでも言えることですが、負の感情に必要以上に振り回されることなく、普段の自分の生活にしっかり向き合っていくことが傷を癒し、心を回復させることに繋がるのです。
簡単に解決できないからこそ人は悩むのです。
……ということは、いくら時間をかけて悩んだところで即座に悩みが解決することは稀であり、自分の気持ちが自然に治まるまで待つことが唯一の有効策である場合も多々あるのが現実だと言えますね。
自分で対処できる範囲を超えた感情は、「仕方ない」と観念することも必要なのです。
それは、世の中には、努力だけではどうにもならないことも実際にあるからです。
「仕方ない」と思うことは諦めのようでなかなか受け入れ難い言葉かもしれませんが、実は分別を付けたり、次へ向かうための切り替えの言葉でもあるのです。
自分の中でしっかり踏ん切りがつけば、また前に向かって進んでいくことができますよ。
大切なことは、以下の4点。
- 負の感情を全くなくすのは不可能だと知っておく
- 自分なりの気持ちの落としどころを見つけ、負の感情をいつまでも引きずらない
- 感情に振り回され過ぎず、目の前の自分の生活にしっかり向き合う
- 自分の手に負えない感情は「仕方ない」と観念することも大切
常に「今やるべきこと」に意識を向け具体的に行動することが、嫌な感情から意識をそらし前向きな気持ちを取り戻すコツです。
人との距離感について
アスペルガー症候群の特性を持つ人にとって、他者との距離感のバランスはかなりの難題です。
「ほどよい距離感」というものを感覚的に掴めず、必要以上に相手に近寄り過ぎてしまったり、また離れ過ぎてしまったりと、なかなか人との「ちょうど良い距離感」をとることができません。
物理的な距離はそのまま心理的作用を及ぼすため、近寄り過ぎると相手に圧迫感を与えてしまい、遠過ぎると逆に違和感を与えてしまいます。
問題は、健常者はこれらの感覚をごく自然に意識することなく身に付けているため、これといったマニュアル等がないこと。
距離感には周辺の環境やお互いの関係性など、デリケートな要素が複雑に絡んでくるため一様に判断することは困難ですが、一般的に失礼にならない距離の目安があるため、アスペルガー症候群の特性を持つ人はそれらを参考にすると良いでしょう。
- 相手が同性の場合:約50センチ
- 相手が異性の場合:約70センチ
相手に不快感を与えない距離感の目安は上記の通りですが、もしも相手が落ち着きのない素振りをしたり目を反らしたり、嫌そうな顔をしていると感じたときは少し離れ、距離を置くようにしましょう。
コミュニケーションについて
人とのコミュニケーションは、発達障害者が最も苦手とすることのひとつですが、社会の中で生きていくにはあらゆる場面で他者とのコミュニケーションが生じますね。
人間関係はその場の居心地や毎日の過ごしやすさに大きく影響するため、人とスムーズなコミュニケーションをはかることは誰にとっても大きな課題です。
しかし、人間関係というものは決まった型やこれといった正解がなく、その場で臨機応変に対応することが求められるため、アスペルガー症候群の特性を持つ人にとっては非常に難しいものだと感じられるかもしれません。
そこで、良好なコミュニケーションを築くためのヒントを以下に挙げますので、できそうなことがあったらぜひ取り入れてみてください。
- 会話をする時は、できるだけ笑顔で接する
- 笑顔がむずかしい時でも、力を抜いてなるべくやわらかい表情でいる
- 相手が話しているときは、途中でうんうんと頷いたり、「なるほど」や「へぇ~」などの合いの手を入れる
- 会話中に眉間にシワを寄せたり、腕組みをしたり、溜め息を付いたりしない
- 相手の会話を途中でさえぎらない
- 相手がびっくりするほど大きな声で笑ったり、あまりに大げさなリアクションを取らないように気を付ける
- 自分から話しかけるときは、事前に会話の流れを考えておく
- あまり親しくない相手の場合は、天気やニュースの話題など、ありきたりなテーマを選ぶ
- 必要以上に長く話し続けない
会話が雑談である場合、一番大切なことは相手と楽しい時間を共有することです。
コミュニケーションが相手をよく知るきっかけになりますし、会話やその場の雰囲気を楽しむことで、より親密な関係性を築くことができます。
とは言え、アスペルガー症候群の特性を持つ人にとって「何気ない雑談」というものは非常に困難をなことかもしれませんね。
仕事中の事務的な会話のほうが、まだ取っつきやすいという人も多いでしょう。
世の中には雑談に関する書籍が数多く出版されていることからもわかるように、健常者の中にも雑談を難しいと感じている人は大勢います。
深く考え過ぎてしまうと余計に話せなくなってしまいますので、できればあまり難しく考えず、相手の会話に集中することからはじめてみましょう。
相手の話を楽しい気分で聞き、たまに相槌を打ったり可笑しい時は笑ったりなど、そういった素直な反応は案外相手に喜ばれるものです。
徐々に、できる範囲で上記のヒントを少しずつ取り入れていくと、より自然なコミュニケーションを取れるようになっていくでしょう。
社会生活を快適なものにするための工夫
家の中では自分の好きなように時間を過ごせますが、外へ出たときは公共の場所でのマナーやルールに従う必要があります。
自分の部屋にいるときと多くの人が一緒にいる場所では、振る舞い方を変えなければなりません。
ここでは、「公共の場面でのマナーを身に付けること」、そして「周囲への働きかけ」を説明していきたいと思います。
公共の場面でのマナーを身に付ける
大勢の人が集まる公共の場所では、周りの人に不快感を与えないようにしなければなりません。
例えば、ずっとひとりごとを言っていたり、意味もなく歩き回ったり、何かの音を立てたりといった人の迷惑になるような行為は慎みましょう。
また、電車やバスなど公共の交通機関を利用するときは、混んでいる車内で無理にイスに座ろうとせず、お年寄りや身体の不自由な人に座席を譲りましょう。
時には他人のマナー違反を目にし、つい注意をしたくなるかもしれませんが、あなたがわざわざ指摘する必要はありません。
「自分はこのような迷惑行為はしないようにしよう」と心の中で反面教師にするくらいに留めておきましょう。
周囲への働きかけ
社会人として働くアスペルガー症候群の特性を持つ人は、前もって自分の特性や苦手なこと、得意なことを上司に伝えておくことが重要です。
さらに、一緒に仕事をする同僚にも、自分がしてしまいがちなミスや苦手なことを話しておき、何か困ったことがあったときはすぐに周囲へ協力を求めましょう。
問題が起きたときは早めの対応が重要なため、ひとりで悩んで抱え込まず、すぐに誰かに報告することが大切です。
また、得意なことも伝えておけば、仕事の割り振りで配慮してくれることもあります。
いずれにせよ、仕事はチームワークが肝心なので、一緒に仕事をする仲間に自分の得意なことと苦手なことを理解してもらうことは、仕事をスムーズに行う上でとても大事なことです。
自分自身へのケア
アスペルガー症候群の場合は知的障害や言語障害が見られないため、周囲からなかなか理解が得られず何かと風当たりが強くなる傾向にあり、本人はより悩みを深くして内面に閉じこもってしまう場合もあります。
多くの人は自然にうまくこなしていることを、アスペルガー症候群の特性を持つ人はひとつひとつ学んでいかないといけないため、その過程で周囲との摩擦に苦しむことになるのです。
周囲を気にするあまり、窮屈な思いをしている人も多いのではないでしょうか?
失敗体験が続いて自己嫌悪に陥ったり、周りとのあつれきによって傷ついたりすることが積み重なると、ひどい場合にはうつ病などの精神病を引き起こしてしまうことも……。
これらを二次障害といい、二次障害に陥ってしまった場合にはアスペルガー症候群の特性への対応のほかに、二次障害への治療を行うことが必要となってきます。
このように、アスペルガー症候群の特性そのものよりも、特性によって生じる対人関係の悩みが本人にとっては負担となり、ひどく落ち込んだり様々な方面に支障をきたしてしまったりすることがあります。
そのような悩みを抱えるアスペルガー症候群の特性を持つ人が、毎日を少しでも明るい気分で過ごすためには「自分自身へのケア」が非常に大切です。
アスペルガー症候群の特性を持つ人は自分よりも周りの人を優先してしまう傾向がありますが、そのような生活を続けていると心身ともに参ってしまいますよね。
仕事や人間関係で疲れているときは、自分の時間を意識的に持つようにして、好きなことや趣味を思いきり楽しみましょう。
緊張とリラックスのバランスがうまく取れていれば、ストレスにも負けないメンタルを保つことができます。
そこから一歩進んで、同じ趣味を持つ仲間と楽しい時間を共有できるようになると、さらに日々の暮らしがキラキラと輝き出します。
心が躍動するようなワクワクするひとときを持つことは、あなたの生活に大きな幸せと満足感をもたらします。
心が満たされていると、仕事や人間関係で嫌なことがあってもダメージはそれほど大きくありません。
ストレスに打ち勝つには、ひとりの時間をいかに充実させるかがポイントとなります。
もしも「心が疲れているな」と感じたときは、自分の好きなことや趣味の時間を大切にしましょう。
好きなことをしている時、人は一番リラックスし、心が健康に近づいていくのです。
最後に
ここまで、アスペルガー症候群の特性を持つ人が、日々の生活を改善していくために必要な4つのヒント、「生活習慣」「対人関係」「社会生活」「自分自身へのケア」について、詳しく説明をしてきました。
何か参考になる事柄や、試してみたい項目はありましたでしょうか?
上に書いてきたことはすべて、アスペルガー症候群の特性を持つ人がより充実した楽しい人生を送っていくためのヒントです。
日々、生きづらさを感じている人は、ぜひ少しずつ日常生活に取り入れてみてください。
この記事が、皆さんがすこしでも毎日を前向きに過ごすための糸口になれば幸いです。
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