ADHDの特性を持つ子の子育てには様々な困難がつきもの。
「どうしてうまくいかないの?」「怒ってばかりで疲れた」……そう思ったこと、ありませんか?
こちらの記事でご紹介する心理学を応用した方法を実施するだけで、子どもも大人も「楽しい」と感じられる子育てができるようになるはずです。
放課後デイサービスでは、これからご紹介する方法を利用している施設もあります。
具体的な問題例を挙げながら臨床心理学を応用した解決方法をお伝えし、ADHDの特性を持つ子と接する上での注意点を説明します。
「また怒ってしまった」と落ち込むことがあっても大丈夫。
子どもも自分も大切にできる子育てができるようになりますよ。
ADHDとは
ADHDとは「Attention Deficit Hyperactivity Disorder」の略であり、日本での正式診断名称は「注意欠如・多動性障害」です。
一般的には、次の3つの行動のうち2つ以上当てはまるとADHDの可能性があるとされています。
- 不注意(集中力がない、忘れっぽい)
- 多動性(じっとできない、落ち着きがない)
- 衝動性(考えないまま行動する)
ADHDの特性を持つ子どもは、ADHDでない子どもにとっては当たり前にできることが苦手でだったり、できないことも少なくありません。
そのため、社会的な活動や学業で苦労することがあります。
特性のあらわれ方は人によって様々ですが、大きく次の3つに分けられます。
- 不注意が目立つ群
- 多動性や衝動性が目立つ群
- 混合群
ADHDの子どもに見られる6つの困難・対処法
子育てには困難がつきものですね。
特にADHDの特性を持つ子どもを育てている親御さんは、その特性から苦労されることも多いと言われています。
「思っていた子育てと違う」と思われるかもしれません。
💡対処する方法を考えるときのポイント
- 子どもと約束すること
- 褒めること
- できるだけ感情的に怒らないこと
- 環境を整えること
臨床心理学では、上記のポイントを踏まえて発達障がいを持つ子どもの治療を進めていきます。
このポイントをおさえておけば、家でも応用することができるのです。
ADHDの特性を持つ子どもに多く見られる6つの困難と、それぞれの対処法についてご紹介します。
片付けが苦手
ADHDの特性を持つ子どもは、お片付けができなかったり苦手としたりする場合が多いです。
なぜなら、集中力が続きにくくすぐに気がそれてしまうため、どんどん本やおもちゃを出してしまうから。
また「そろそろお片付けをして」と促しても、他のものに目が行ってしまい、片付けることを忘れてしまうのです。
💡対処法1:遊ぶゾーンを決める
最初から、ものをきちんと整理することは難しいです。
そこで、まずは部屋全体を散らかさないように、部屋の一部で遊ぶことを習慣にしましょう。
部屋の一角を【お遊びゾーン】として、「ゾーンから出たら、お母さんのものになります」と約束します。
口で言うだけだと守れそうになかったら、紙に書いて目に見える位置に貼っておいても良いですね。
ゾーンだけで遊ぶことができていたら、すかさず褒めてあげましょう。
💡対処法2:片付ける場所を一つにする
片付けを苦手とする子どもは、片付ける場所が複数あると混乱してしまう場合があります。
- 最初は大きな箱を一つ用意し、その中に出したものを全て入れるようにする。(同時に、「ものは出したらしまう」と子どもと約束する)
- できるようになってきたら箱の数を増やし、「別々に分けて片付ける」ことを習慣にしていく。
片付ける箱に、入れるものの写真を貼っておくと「何を入れる箱か」見て分かりやすくなるため良いですよ。
その他に、「何分で、この中に全部入れられるかな?」などゲーム形式にするのも良いでしょう。
片付けができたら、すぐに褒めてあげましょう。
「片付けをしたら褒めてもらえる」という式が子どもの中で完成すると、片付けを積極的に行うようになりますよ。
ゲーム形式にしても、「片付けは楽しい」という式ができるので、「片付ける」という行動を増やすことになるのです。
注意しても宿題をやらない
ADHDの特性を持つ子どもに限らず、子育て中の親なら一度は悩む問題【注意しても宿題をやらない】……何度も注意してもやらない様子を見ていると、思わず怒鳴ってしまうこともあるかもしれません。
宿題をやらない子どもの場合、4つの原因が考えられます。
それぞれの対処法とともに紹介します。
ケース1:宿題以外のことを優先する
💡対処法1:宿題する時間を子どもと決める
「好きなことを途中で辞めるのは難しい」とはよく言われることですが、大人でもゲームに夢中になってしまい、夜更かししてしまう人もいますね。
子どもなら尚更、自分自身のコントロールが難しいものです。
そのため、まずは宿題をする時間を子どもと決めましょう。
時間を決めるときは「晩ご飯を食べる前」「宿題が終わってから遊ぶ」など、明確にします。
一方的に約束を決めるのではなく、子どもと相談して決めるようにしてくださいね。
「19時からご飯だから、18時から宿題をする」など、スケジュールにしても良いでしょう。
順番に物事を進める訓練にもなります。
💡対処法2:新しい気持ちで、取り組めるようにする
宿題によって時間がかかるものもありますし、日によって複数の宿題が出る場合もあるでしょう。
一気に終わらせることができない場合、休憩をときどき挟みましょう。
「何分間はがんばる」とルールを決めて、「時間が来たら、区切りが良いところで休憩する」などタイマーを活用します。
他にも複数の宿題がある場合、時間が来たら違う教科の宿題をするなど、宿題に飽きる前に新しい気分になれるように工夫しましょう。
ケース2:他のことに気が散る
💡対処法:集中しやすい環境を作る
ADHDの子どもの特性のひとつに、【集中力の散漫】が挙げられます。
最初は宿題に集中していたのに、他のものが近くにあるとそちらに注目してしまうのです。
そうならないように、まずは宿題するスペースを整えて、注意が他に向かない環境にしましょう。
机を部屋の端に置いて、壁しか目に入らないようにします。
部屋の設計上で難しい場合は、ついたてを使うのも手の一つです。
部屋だけでなく、机の上も片付けましょう。
宿題に必要なものだけ机に出しておくことで、集中して取り組むことができます。
ケース3:宿題の存在を忘れる
💡対処法1:管理方法を子どもと決める
宿題そのものの存在を忘れてしまう場合、子どもと宿題の管理方法を決めて、共有しておきましょう。
例えば「宿題専用ファイル」を作り、宿題は全て入れるようにすると、そのファイルを見るだけで宿題があるかどうか、子ども自身と親も確認できます。
他にも、子どもが自分で書いた連絡帳に宿題の内容が書かれているか、担任の先生にも確認してもらうとよいでしょう。
子どもと親、先生がそれぞれ宿題を確認できるようにするのがポイントです。
ケース4:授業に集中できないため、勉強が分からない
💡対処法1:授業に集中できる環境を、学校に作ってもらう
授業そのものに集中できない場合は、担当の先生に相談して、授業に集中しやすい席にしてもらいましょう。
一番前の席なら周りに刺激が少なく、先生の目も届きやすいです。
こまめに声をかけてもらうように、お願いしても良いでしょう。
💡対処法2:勉強そのものが苦手な場合、他の機関を利用する
勉強そのものに苦手意識があり、授業にもついていけない場合は、個別指導塾・家庭教師・放課後デイサービスを利用しましょう。
子どものペースに合わせて、指導してくれます。
※なぜこのような過度の不注意が起きるのか
ADHDの特性に見られる過度の不注意は、「ワーキングメモリー(※ワーキングメモリー:短い時間の中で情報を保持しつつ、同時に処理する能力のこと)」の未発達が原因と言われています。
☆例えば「18+78−3」という計算問題を解く場合 |
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上記の一連の過程を「ワーキングメモリー」と呼び、この能力は日常生活にも使われます。
☆例えばおつかいで「タマネギを買ってくる」ようにお母さんに頼まれた場合 |
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このように、私たちは「ワーキングメモリー」の働きによって自分が置かれた状況を把握し、判断することができます。
しかしADHDを持つ子どもの場合、「ワーキングメモリー」が十分に働いていないために、「現時点での状況を客観的に分析して、その場に合った行動につなぐ」ことができないと考えられています。
突然その場から飛び出して、どこかへ行ってしまう
子どもは自分の目指す先しか見ておらず、周りへの注意がおろそかになりがちです。
例えば、信号待ちをしていて青になった瞬間、車が強引に突破しようとしてくることもある等、こちらがルールを守っていても、相手の不注意で命を落とすこともあります。
どう予防すればよいか、下記に示します。
💡対処法1:幼い間は手をつなぐ、またはハーネスや音の出るサンダルをはかせる
飛び出しの危険がある場合、子どもが小さいうちは手をつないでおきましょう。
また、ハーネスを付けておくことで、飛び出してもこちらに引き寄せることができます。
動いたら分かるように、音の出るサンダルはかせるのも良いですよ。
💡対処法2:視線コントロール
ある程度の年齢になったら、ハーネス・手つなぎに抵抗が出てくる上に、子どもの力が強いと引き留められない場合もあるかもしれません。
そんなときにオススメする方法が、【視線のコントロール】です。
飛び出してしまう子どもは自分の目指す方向だけを見ているため、左右後方には注意を払っていません。
そこで信号待ちのときに子どもと同じ目線に立ち(しゃがみ)、左右から近づいてくる車や自転車を指さして注意を促します。
それだけでは注目しない場合は、子どもの肩に優しく手をあてて、車や自転車がやってくる方向に体ごと目線を動かします。
子ども自身が車や自転車に注目することができたら、はねられる危険性はぐっと減るはずです。
💡対処法3:飛び出す前に、行き先を人に伝えることを習慣づける
飛び出し行動は道路にいるときにだけ現れるのではなく、「家から外に飛び出してしまう」という場合もありますね。
家から飛び出した際に車や自転車にはねられるかもしれませんし、迷子になってしまうかもしれません。
最悪の場合、誘拐や事件に巻き込まれる可能性もあります。
この場合「飛び出し=命の危険」ですので、叱っても大丈夫です。
しかし感情的に怒るのではなく、引き留めた後に【なぜいけなかったのか】穏やかな声で話すようにしましょう。
そして、家を出るときは「親・家にいる人に行き先を伝えること」を子どもと約束します。
このようにして、一歩踏みとどまって行動することを習慣化していきましょう。
乱暴してしまう
ADHDの特性を持つ子どもは衝動性・多動性の特性から感情を抑えることが苦手な傾向があるため、感情に伴う発言や行動も抑えられず、手を出してしまうこともあります。
また、どこにも本人を怒らせる要因がなさそうな普通の会話をしているのに、突然怒り出してしまったということもあります。
子どものうちは自分自身のコントロールが難しいだけでなく、言葉を柔軟に受け止めることができないこともあり、乱暴してしまうのです。
💡対処法1:感情的に怒るのではなく、まず本人の気持ちを落ち着かせる
自分の子どもが他の子どもに乱暴している姿を見てしまうと、思わず「やめなさい!!」と声を上げてしまいますよね。
しかし、子どもが興奮状態のままでこちらが声をあげるとますますヒートアップしてしまいますので、まずは本人の気持ちを落ち着かせてあげましょう。
その上で、どうして手を出してしまったのか理由を聞きます。
その際、穏やかな声で聞くことがポイントです。
💡対処法2:どうして乱暴はだめなのか話す
乱暴した理由を聞いたら、その気持ちに共感し、代弁してあげましょう。
乱暴してしまったときの気持ちを子どもが理解するためです。
幼い子どもは自分の感情を理解できていないことが多いため、これを怒り・悲しい・悔しいなど、自分の感情を把握する訓練と考えましょう。
「●●くんにこう言われたことが悔しかったんだね」と伝えた上で、乱暴がダメな理由を話します。
下記二点を伝えるようにしましょう
- なぜ乱暴がダメなのかというと、叩かれた本人だけでなく、自分のことを知っている人も悲しい気持ちになるから。
- 理由が分からないままだと、叩いた本人に周りが悪い印象を抱くようになってしまい、損をしてしまう。
「あなたが損することになる」としか伝えなかった場合、「別に損しても良い!」と返してくることがあるため、必ず上記二点を一緒に伝えるようにしましょう。
乱暴をしてはいけない理由を話したら、次に手を出しそうになったときの対処法について説明します。
💡対処法3:手を出しそうになったときの対処法を教える
次に、子どもが自分自身で気持ちのコントロールができるための方法を教えます。
主な方法
- 深呼吸
- その場を離れさせる(タイムアウト)
1つ目は、気持ちを落ち着かせることができる深呼吸です。
「叩いてしまいそうになったら、ゆっくり息を吸って、はいてごらん」とお手本を見せてあげましょう。
2つ目は、手を出しそうになったら、その場所を離れさせる方法(タイムアウト)です。
「叩きそうになった」そのときの感情を持つ場所から離れることで、気持ちを一度リセットします。
日ごろから、絵や写真を使って説明しておくのも良いでしょう。
しかし、ストレスをためてしまい、感情が爆発することがありますので、我慢を強いることはやめましょう。
※その他に大人ができること
授業中クラスメイトへの乱暴が見られる場合、先生と協力して「相性の良くない子」と近くの席にしないよう、環境設定をしてあげましょう。
その他「子どものわがままが通らなかったときに、乱暴された」など、明らかに子どもが悪い状況の場合は叱ってもかまいません。
叱っても止まらない場合は、思い切って無視をするのも方法のひとつです。
【「乱暴」という行動では親はこちらを見ない】という認識を子どもに持たせることができます。
乱暴がおさまったタイミングで、「落ち着いた?」と話しかけてあげましょう。
落ち着きがなく、よく動く
ADHDの特性を持つ子どもは、多動性という特性からよく動き回っていることが多いものですが、一般に多動は成長とともにおさまる傾向があります。
思春期の頃にはほとんどおさまると言われていますが、それでもじっとしていると落ち着かないと感じることが多いと言われています。
ADHDの特性を持つ子どもがよく動いてしまう理由として、下記のふたつが考えられています。
- 動いていないと落ち着かない。
- 筋力・バランス感覚が弱く、姿勢を保てない。疲れやすい。
それぞれの対処法について見ていきましょう。
ケース1:動いていないと落ち着かない
💡対処法:好きな遊び道具を持って行く
いつかはなくなるとは言われても、外食の際や電車に乗るときに多動が起きると「他の人に迷惑がかかる」と気を張ってしまいますよね。
多動は、不慣れな場所・緊張する場で起こることがあります。
また、多動が目立つADHDの子どもの場合、「落ち着く姿勢=座る」ではなく、「体を動かすこと」ですから、「おとなしくしていなさい」と言うだけでは、効果は見られません。
そこで、【好きな遊び道具を持って行く】ようにしましょう。
絵本やお絵かき道具など、好きなことに夢中になると、緊張がほぐれて多動がおさまります。
ケース2:筋力・バランス感覚が弱く、姿勢を保てない・疲れやすい
💡対処法:休憩を挟む・トレーニングする
ADHDの特性を持つ子どもは、同じ年齢の子どもに比べて筋力・バランス感覚が弱いことがあるため、同じ姿勢を続けていると疲れてしまい、体を動かしたくなってしまいます。
授業中に多動が見られる場合、ときどき休憩を入れて体を動かす時間を作ってあげましょう。
他にも、体幹を鍛えるトレーニングで筋力をつけるのも方法のひとつです。
※多動が見られる子にとって、「座ったままでいること=がんばること」ですので、短い時間でも多動を抑えて座ることができたら褒めてあげましょう。
「今3分座れているよ、すごいね!」と具体的な数字を入れて、大げさに褒めてかまいません。
この過程を続けて、徐々に座っていられる時間を延ばしていきましょう。
声が大きく、いつもしゃべっている
ADHDの特性を持つ子どもは、おしゃべりのコントロールが苦手です。
場の空気を読むこと・発言を抑えること・周りを見ることが苦手なため「今は大きい声で話して良いときかどうか」を考えず、行動(発言)してしまうのです。
💡対処法:声の大きさに段階をつけて、場面によって使い分けることを教える
最大ボリュームが「5」だとしたら、最小ボリュームは「0」だというように、声の大きさには段階があるということを教えます。
そして「それぞれの数字の声はどの場面で使って良いのか」を説明していきます。
数字ではなくても、動物の大きさで例えても良いですね。
声の大きさの段階
- ボリューム0:心の声
- ボリューム1:ひそひそ声
- ボリューム2:電車で使う声
- ボリューム3:家で使う声
- ボリューム4:学校で先生に当てられたときに使う声
- ボリューム5:叫び声。助けを求めるときに使う。
このように表にして、目視できるようにしてもいいでしょう。
ひとつひとつ説明していくときには、実際にその声の出し方も一緒に伝えましょう。
例えば「ボリューム1は【ひそひそ声】、これくらいの大きさで話すんだよ」と、実際に子どもの耳元で話し、その次に「やってみよう」と子どもにも声を出してもらいます。
この過程で、それぞれのボリュームを覚えさせていきます。
こうしておくと、子どもが「静かにしなければいけない場面(電車の中など)」で大きな声で話していたときに「今の声の大きさはボリューム3だよ、ボリューム2にしようね」と注意することができます。
「静かにしなさい!」と抽象的に注意するよりも、子どもが覚えやすく、実践しやすくなります。
授業中にも大声を出す行動が見られるようでしたら、担当の先生にも協力してやってもらいましょう。
学校で行っていることと、家で行っている訓練に違いが生まれないようにすることがポイントです。
子育て体験談
ここまで、ADHDの特性を持つ子どもの子育てをしているときに起こりうる困難と対処法について、説明してきました。
しかし、ADHDの特性も子どもの性格も違いますので、子育て方法は家庭によって様々です。
ここでは、ADHDの特性を持つ子どもを育てている保護者の子育て体験談をいくつかご紹介します。
中学3年間ほとんど外に出ていない息子も、今は学習支援とカウンセリングに通って、高卒資格を取るためにいま頑張っています。私がしてることは、必要な支援を裏で確認していること、私の思いを伝えるより息子の話を聞くこと、そして何より息子を信じて焦らないこと。今が辛い皆さんも、きっと大丈夫。
— Tubomi (@hajimenoippo_75) June 3, 2017
「辛いのは子ども」だとよく言われる中、同じくらい親も辛いことがありますが、成長しない子どもはいません。
焦らず、信じてあげましょう。
RT娘が慌てて出かけた時、娘の部屋にはたくさんの服が散乱していて、それが何日も続き結局私が片付けてた。でも最近は翌日には綺麗スッキリ片付いてる。多分だけど、クローゼットや引き出しではなく、大きめの棚やボックス、ハンガーフックに変えてからだと思う。方法を変えれば出来ることもあるよ✨
— Tubomi (@hajimenoippo_75) March 29, 2017
「片付けられない」のはなぜか? ……それは、片付け方が分からないだけかもしれません。
少し環境を整えてあげると、できることも増えていくのですね。
苦手なことと、どう付き合っていくか。
まずはできるところから。
子どもが行き詰まってしまったら、そこから手伝うというイメージです。
できるようになってきたタイミングで「ひとりでやってみたら?」と促してみるといいでしょう。
接し方
予め【接し方】を知っていると、ADHDの特性を持つ子どもと接するときに予想外のことが起きてもうまく対応することができます。
ここでは、ADHDの特性を持つ子どもとの接し方を、3つのポイントに分けて説明します。
守りやすいルールを決めよう
困難が起きたとき、解決するために目標を設定して「ルール」を決めることは非常に有効ですが、その目標のためにルールを複雑にすると子どもは混乱してしまいます。
- ルールは、具体的な言葉で設定する
- ひとつのルールは、なるべく短くする
- 段階を踏んで、最終目標を達成する
この3つを踏まえて、ルールを設定するようにしましょう。
ルールが守れたら、忘れずに褒めてあげるようにしましょう。
シールなどのご褒美を用意しておくこともオススメです。
「どれだけできるようになったのか」を目で見て確認できるので、達成感につながります。
成功体験を作る
ADHDの特性を持つ子どもに起こりやすい問題として、「劣等感を持ちやすく、自尊心が低くなりやすい」ことがあります。
周りに特性が理解されていない場合、いじめやからかいの対象になったり、叱られることが多くなるからです。
そこで、成功体験をたくさん積ませてあげるように工夫してみましょう。
子どもが何か良いことをした・できるようになったときに、すぐに褒めてあげてください。
何をして褒められたのか分かれば、子どもは褒められる行動を多くするようになります。
さらに、達成感を味わうことが自己肯定感につながるのです。
できて当たり前のことでもかまいません。
ポイントは「大げさに」「積極的に」褒めることです。
良くないことはよくないと伝える
子どもが危険なことをしていたり悪いことをしていたら、どのように指摘していますか?
ADHDの子どもに限らず、叱り方には注意が必要です。
- 人格を否定するような叱り方をしない
- 他の子どもと比べない
上記のような叱り方をすると、「あの子にできて、僕にできないなんて。僕はなんてだめな人間なんだろう」「なんで比べられなくちゃいけないんだ」など、無力感や反発心を生み、子どもを深く傷つけてしまいます。
叱るときは、冷静に、穏やかな声で【何がいけなかったのか】具体的に指摘するようにしましょう。
思わず怒ってしまったときの対処法
「手を出したらだめ!」……そうは思っていても、思わずペチンとはたいてしまった、なんてことはありませんか?
そこから、「だめだと思っていてもやってしまった」「感情的に怒ってしまった」「自分はダメな親なんじゃないだろうか」と悩んでいる親御さんも実は多いのです。
ここでは、「気をつけていたのにやってしまった」というときの対処法について紹介します。
「悪いことをした」と思ったら謝る
体罰は子どもの心だけでなく、自分の心も傷つけてしまうため、絶対にしてはいけません。
それでも子育てがうまくいかないとき、体調が悪くイライラしていたときに「思わず手が出てしまった」という場合もあるでしょう。
思わず手が出てしまったら、まずは子どもに謝りましょう。
謝るときは
- 子どものためを思ってやったということ(でもいいことではなかった)
- 何を失敗と思っているのか
- 「反省(ごめんなさい)」の気持ち
- 今後どうしようと思っているか
を伝えるようにしましょう。
例えば、「あなたのことを思ってやったけれど、叩くのは間違いだった。怖い思いをさせてごめんなさい」と正直に謝ります。
その上で、「これからは言葉で伝えるようにするね」「このことに気づけたのはあなたがいたからだよ。ありがとう」と今後はどうするかの反省と、感謝の気持ちを伝えると良いでしょう。
その気持ちがあれば、親子の信頼関係も深まるはずです。
自分のストレス解消法を考える
「冷静でいようと心がけていたのに、手が出てしまった」というときは、ストレスをため込んでしまっている可能性があります。
子育てに行き詰まってしまったときは、可能であれば子どもと距離をとり、クールダウンすると良いでしょう。
自分自身のストレス発散方法を持ち、気持ちのリセットや気分の安定を図ることは大事なことです。
子育て中、子どもが言うことを聞いてくれなくて悲しい・悔しい思いをすることも多いでしょう。
その一方で子どものめまぐるしい成長、笑顔を見ることができる嬉しさもありますね。
子育ては親がひとりだけでするものではありません。
学校の先生、医師、両親、友達などあなたを守ってくれる人がいます。
「自分自身を休ませる」ということを決して忘れないでください。
自分自身を大切にできることで、気持ちに余裕が生まれ、子育てが楽しくなってきますよ。
ペアレントトレーニングを活用する
「子育てがうまくいかない」という保護者の中には、「子どもとの接し方が分からない」という状況の人もいます。
この問題を解決すべく、「親が子育てを学ぶ」という方法をとる親御さんも増えてきています。
現在はADHDの治療方法として、子どもだけを対象にした心理社会的支援が主流になっていますが、それに加えて子どもだけでなく親も子育てを学ぶことで、より効果的に治療を進めることができるのです。
推奨されているトレーニングは「ペアレントトレーニング」と呼ばれるものであり、発達障害児の親が子どもの行動を変えるテクニックを身につけることを目的としています。
ペアレントトレーニングでは、子どもの好ましい行動を増やし、好ましくない行動を減らすためのテクニックを学びます。
トレーニングを続けることで、親が抱えていた悩みや不安を軽減させる効果があります。
現在の「困った状態」を解決するために、まずは親が関わり方を変えて子どもの変化を促し、子どもが変わることで親もさらに変わるという相乗効果を目指しています。
ペアレントトレーニングを学習するには、講座や研修に参加しなくてはいけません。
「講座にわざわざ行かなくても、心理療法の専門書読めばいいんじゃないの?」……いいえ、独学では不十分な場合があるのでおすすめできません。
ペアレントトレーニングは、心理学やコーチングの専門知識を土台にした本格的なトレーニングです。
知識が不十分なまま実践するより、講座で専門家に直接講義してもらうほうがはるかに効率的です。
与えられた宿題や、関わり方を家庭で実践していきましょう。
まとめ
ADHDの特性を持つ子どもの子育て中に起こりうる困難とその対処法、接し方についてご紹介しました。
子どもの行動を変えたいときはまず目標を決めて、できそうなことから一つずつ取り組む「スモールステップ」で進めるようにしましょう。
あれこれ一度に言うのではなく、具体的に、短く伝えることが大切です。
目標を達成したりルールを守れたら、すかさず褒めてあげましょう。
子どもが成功体験をすることで、自己肯定感を上げることができます。
叱るときは、感情的にならないようにしましょう。
冷静に、穏やかな声で【何がいけなかったのか】を伝えることがポイントです。
どうしても子育てに行き詰まってしまったときは、子どもと物理的に距離をとってもかまいません。
その際ストレス発散方法を見つけておき、自分自身を休ませるようにしましょう。
発達障害児の子育て方法を学ぶ、「ペアトレーニング」を活用することもオススメです。
即効性のある子育て方法というものは存在しません。
すぐにできなくても大丈夫です。
ADHDの特性を持つ子どもの子育ては、「気長に向き合っていけばいいんだ」という気持ちでいましょう。
「子どもを大切にしたい」という気持ちがあり、そして自分自身も大切にすることができたら、きっと楽しい子育て生活を送ることができますよ。
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