【amazon評価】★★★★★★
著者は、マイクロソフト日本法人元社長で、現在は投資コンサルティング会社や書評サイトの代表も務める多才な方。
ご自身が発達障害の診断を受けているというわけではありません。
でも、自分の子どものころのエピソードやそれまでの体験を振り返って、「もしかして自分も発達障害の傾向があるのでは?」と考えておられるようです。
本書では、著者自身の小さい頃のエピソードや、学生時代、就職してからの体験などがたくさん紹介されています。
また、やはりご自身と似た特性を持つ娘さんのエピソードも織り交ぜられています。
途中で、精神科医の香山リカさんや和田秀樹さんとの対談(おふたりとも専門家ですので、大変興味深い対談になっています)も出てきます。
この本の魅力は、発達障害を「障害」としてではなく、社会を変えていくパワーととらえているところです。
発達障害の傾向を持つ人は、物の見方や感性が一風変わっているといわれます。
そういった特性を無理に抑え込むのではなく、むしろ伸ばしていくことでこれからの社会に求められる人材となれるのではないかという考え方です。
今の時代は、過去にとらわれず、新しいことにどんどん挑戦していくことが必要になってきています。
発達障害の傾向のある人は、そういった社会でまさに必要な人材だということです。
著者自身、子どものころから不注意で衝動的に行動する傾向を持っていたようです。
しかし、そうした傾向には「すぐに行動できる」「興味を持ったことをとことん追求できる」といった良い側面もあると自信をもって語っておられます。
ADHDの傾向に対して、あくまでもポジティブにとらえておられるのが前向きだなぁと感じました。
確かに、昔から偉業を成し遂げた人たちの中には、発達障害の傾向を持つ人が多いといわれることもあります。
本書の中でもマイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏のエピソードが登場します。
また、著者の娘さんへの接し方からも学べる点がありました。
著者はお子さんの個性を生かせる学校を選んだり、興味の持てそうな就職先を提案したりして、常にお子さんがのびのびと生きられる環境に置いていくよう努力されたようです。
ご自分の経験を十分に生かして、娘さんの特性を大切に育てておられる様子に心が温まりました。
ただ、著者ご自身も述べておられるとおり、実際にご本人も娘さんも医師の診断を受けているわけではありません。
そのため、発達障害の特性に真剣に悩んでおられる場合には少し受け入れにくい記述もあるかもしれません。
私自身、読んでいて、こんなに何もかもうまくいくものなのかなぁと感じたのが正直な感想です。
本全体を通して貫かれている、発達障害の物の見方や感性は独特ですばらしいものだという意見には納得できます。
こんな考え方がもっと社会に広まっていけばうれしいなと思いました。
勇気をくれる一冊です。
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