「お子さんの発達が遅い」と周りの人からそう言われたとき、親御さんとしてはものすごく不安になってしまうことでしょう。
「専門家に相談し、発達障害でもグレーゾーンでもないと言われたのにどうしてなのだろう?」
そのような疑問を抱えている場合、何をしていくと良いのか、子どもとどのように接していくと良いのかを紹介していきます。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
発達障害でもグレーゾーンでもないけれど発達が遅い
「我が子の成長が、周りの子どもたちよりも遅い気がする」と不安に思い、悩んでしまう親御さんも少なくありません。
場合によっては、学校や保育園・幼稚園などで「他の子どもたちは○○ができるのに、お子さんは○○がまだ理解できないようです」と先生に言われて不安になることもありますよね。
「他の子どもと比べて……」と言われると、心配になってしまうのが発達障害です。
インターネットの診断ツールを使って、お子さんの発達障害の可能性について調べてみたことがある親御さんも多いのではないでしょうか?
発達障害には当てはまらなかったとしても、お子さんの発達が遅いと感じている親御さんは、「もしかして……グレーゾーンなのでは?」と不安になってしまうこともあります。
そもそも発達障害やグレーゾーンって何なの?
発達障害は、脳の発達に特性があり、周りの子にできることがしにくいと感じる、周りの子よりも何かが得意といった具合に、得手不得手に大きく差が出る状態を指します。
そのため、「個性的」という言い方をする専門家もいます。
昔から発達障害児は一定数いると考えられています。
細かくADHD(注意欠陥多動性障害)やASD(自閉症スペクトラム障害)、LD(学習障害)などと分類されるようになり、広く認識されることが多くなったため、最近の子どもには発達障害が多いと感じてしまう人もいるかもしれませんが、割合的には劇的に多くなっているというわけではないのです。
簡単に言えば、昔は「個性的な人」と捉えられていたものが、今では「発達障害やグレーゾーン」と言われるようになっただけなのです。
ADHD(注意欠陥多動性障害)とは?
- 1つのことに集中して取り組むことが苦手
- 衝動的
- 多動性がある
- 上記のような特性があります。
- 多くの場合は、幼稚園入学後、4~5歳頃から特性が目立ち始めると言われています。
- 中には、環境に左右されて衝動的、多動的、不注意な子どももいますが、ADHD(注意欠陥多動性障害)の場合は、環境に関わらず上記の3つの特性があらわれる子どもたちを指しています。
- また、LD(学習障害)や不安障害、気分障害をあわせ持つ子どもも多いといわれています。
ASD(自閉症スペクトラム障害)とは?
- 先の出来事を想像するのが苦手
- コミュニケーションが苦手
- 強いこだわりがある
- 上記のような特性があります。
- 知的発達に遅れのないケースでは、アスペルガー症候群という言い方をすることもあります。
- アスペルガー症候群は、人見知りが少なくマイペース、言葉の裏を読むのは苦手だが言葉は達者、こだわりが強いといった特性があることが多いです。
- 現在では、広汎性発達障害や自閉性障害、アスペルガー症候群をまとめて自閉症スペクトラム障害と呼んでいます。
LD(学習障害)とは?
- 聞き取り・書き取りが苦手
- 筋道を立てて物事を考えるのが苦手
- 計算や推理が苦手
- 上記のような特性があります。
💡発達障害のグレーゾーンとは?
定型発達と発達障害のちょうど中間に位置するもので、発達障害のように日常生活に困難を抱える状況が多くありません。
しかし、本人はADHD(注意欠陥多動性障害)のように集中力が欠如していることに苦しんでいたり、計算や推理が苦手で学校の勉強についていくのが大変と感じていたりすることも多いです。
発達障害の場合は、【3歳時健診】の際に診断されることが多く、グレーゾーンの場合は【3歳児健診】の際には通常通りの発育と判断されることもあります。
その後、保育園や幼稚園など、集団生活をする頃に、「じっとしていられない」「集団行動が苦手」といった面から、小学校入学前に行われる【就学時健康診断】でグレーゾーンと診断されるケースも多くあります。
グレーゾーンと言っても、幼稚園児くらいの年頃であれば、周りの子どもたちも自己中心的な行動が目立ちますし、じっとしていられない子もいます。
そのため、親御さんがショックのあまり、なかなか受け入れられないこともあります。
しかし、グレーゾーンと診断された時点で、早めに対処することでお子さんも親御さんも生活がしやすくなるので、受け入れて次に進んでいくことが大切です。
周りの子どもと比べる前に!年齢ごとの成長過程を知ろう
近所の子どもたちや、友人の子、保育園の子たちなど、比較したりされたりする機会は多いですよね。
比べられてしまうと「出来ないこと」に注意がいき、焦りの気持ちも出てくることでしょう。
著しく成長の早い子もいますし、ゆったりと成長していく子もいます。
年齢ごとに子どもたちがどのように成長していくのかを知っておくと、比較されてしまったときに焦らずに対応できますよ。
➡ 【基本の成長過程】
1歳頃 | ものや人に対しての愛着が出る |
1~1歳半頃 | 人の視線の先に何があるか興味を示したり、共感するようになる(発達障害の場合は10歳前後になることもある) |
2歳頃 | 自我が芽生える |
3歳頃 | 自我が強くなり、自分の意見を通すようになる(発達障害の場合は愛着が出る時期でもある) |
4歳頃 | 反抗的になるが、感情のコントロールが徐々にできるようになる |
5歳頃 | 周りの人の気持ちを理解できるようになる |
6歳頃 | 学習意欲が出る |
小学校1~ 4年生頃 |
自分に自信が持てるようになる |
小学校5~ 高校3年生頃 |
思春期に入り、精神面と身体面の成長の著しさに不安を感じるようになる。また、それらをコントロールし抑制できるようになる |
➡ 【発達障害のお子さんの成長過程】
3歳頃 | ものや人に対しての愛着が出る |
4歳頃 | 社会に適した行動がとれるようになっていなければ、ADHD(注意欠陥多動性障害)の疑いがあるといわれている |
小学校1~ 4年生頃 |
人の視線の先に何があるか興味を示したり、共感するようになる。自尊心が著しく欠如している場合は、発達障害の疑いがあると言われている |
小学校5~ 高校3年生頃 |
一般的には家族よりも友人との結びつきが強くなる時期だが、発達障害の場合は自我形成ができていなかったり愛着が少なかったりすることがあると言われている |
子どもたちは、大人へと成長するために階段を1段1段上がっていきます。
上記の【基本の成長過程】から大きくずれておらず、【発達障害のお子さんの成長過程】に当てはまらないのであれば、「自分のペースでゆっくりと成長しているだけ」と考えて良いですし、不安になる必要はありません。
少しでも不安を感じるのであれば、まずは専門家に相談することをオススメします。
友人や家族に相談すると、友人の子どもや知り合いなどと比較されて更につらい思いをしてしまうかもしれません。
また、お子さん自身も、自分の成長に合わせたサポートが受けられず苦しい思いをしているかもしれません。
親御さんとお子さん、どちらも不安な気持ちや苦しい思いを抱えず生活を送ることが大切です。
お子さんの成長が遅い理由は自己防衛かも!?
発達障害やグレーゾーンではないか、と周りに言われたお子さんの中には、「他の子と比べて少し幼い」「話を理解していない、聞いていない」「言っていることとやっていることが正反対」という子もいます。
これらの行動は、見通しが立てにくい、全体像が見えにくいといった発達障害やグレーゾーンの子どもにも当てはまります。
しかし、専門家などに発達障害ではないと言われたのであれば、お子さんとの関わり方を見直す必要があります。
上記の行動は、一時的にストレスから逃れるために行われます。
- 幼いというのは「退行」
- 話を聞いていないのは「逃避」
- 言っていることとやっていることが食い違うのは「反動形成」
と呼ばれます。
お子さんは何らかの不安を抱えていて、それが「退行」や「逃避」「反動形成」の行動にあらわれているのかもしれません。
これらの行動が見受けられるときは、親としてお子さんのことを中立的な立場で認めてあげましょう。
少々幼い行動だと感じていても、「今日はおかたづけができた」「今回は自分の支度を自分でできた」など、自信をもって励ましてあげたり、共感して褒めてあげたりしてください。
中立的な立場であることが大切なのは、お子さんが甘えてしまい、改善できなくなることを防ぐためです。
中立的な立場で励ましたり褒めたりしていても「退行」や「逃避」「反動形成」が治まらない場合は、あえて「見守る」のもひとつの手です。
お子さんに対して言葉を投げかけるのではなく、「協力も否定もしない」立ち位置にいくようにしてみてください。
発達障害を疑われたが実際は「興味がないだけ」だった
保育園や学校の先生、周囲の人に指摘されて「発達障害かもしれない」と専門機関に行く親御さんは年々増えています。
しかし、受診してみても発達障害やグレーゾーンではないと言われるケースがあります。
私の場合、4歳の息子は少々気が散りやすいです。
また、ひらがなをうまく書けない、筆圧が極端に薄いといった点から、幼稚園の先生に「発達障害ではないか?」と言われました。
どこへ相談したらよいか分からず、小児科のかかりつけ医に聞いてみたのですが、発達障害にもグレーゾーンにも当てはまらず、「ただ字を書くことに興味を持っていないだけ」とのことでした。
つまり、子どもとの接し方を変えて、成長に合わせて読み書きに対して興味を促すようにすればよかったのです。
親子で成功体験を積み重ねて成長を促す!興味を引き出す実践方法
私の息子の場合は、気の散りやすさを改善するため、家で5分程度の集中タイムを設け、何か1つのことを5分間集中して行うようにしました。
すると、少しずつじっとしていられるようになったのです。
実はこの方法は、健常児向けの育児書ではなく、発達障害児向けの育児書を参考にしたものです。
時間の感覚を捉えにくいアスペルガー症候群の子には、タイマーを使用した育児が有効だと言われています。
子どもたちはもともと、発達障害の有無に関わらず時間の概念はありません。
- 5分間の集中タイムを作ることで、5分間という時間の長さを把握することができるようになる。
- 「5分間集中できた」という小さな成功体験を積み重ねることで、子どもの精神面の成長にも繋がる。
また、筆圧の薄さは、補助グリップを使ってみると力強く線を引けるようになりました。
口で教えるよりも何度も手をとり持ち方を正してあげることで、力の入れ方も身につけたようです。
さらに、お友達から手紙をもらったのをきっかけに、なぞり書きをはじめ、まだまだ読み間違えることもありますが、ある程度読めるようになったのです。
私は、幼稚園の先生の言葉に不安を覚え、勝手に目の前が真っ暗になってしまっただけでしたが、子どもは興味を持てば一気に覚えてしまいますし、集中力に関しても二人三脚でトレーニングすればできるようになったのです。
子どもは勝手に成長していくと言う人もいますが、子どもが自発的にできるようになるのを持っているだけでは上手くいかないこともあります。
親御さんもお子さんに協力して一緒に成し遂げていくことで、お子さんのできることが増えるかもしれませんよ。
発達に関する育児法を調べるならインターネットよりも専門書で!
発達障害やグレーゾーンではないと言われたけれど、どうしても成長の遅れが気になる場合、インターネットで方法を模索してしまう親御さんもいますよね。
確かに、スマートフォンやパソコンで検索することは、時間の無い親御さんにはピッタリの方法です。
しかし、インターネットの情報では書き手が専門家ではないこともありますし、知識の薄い素人が間違った情報を書いていても気が付きません。
自分の子どもに合った子育て方法が見つけられるとも限らないのです。
あれこれ育児方針を変えてしまうことで、お子さんが混乱してしまうこともあります。
そうならないためにも、親御さんの中で1本筋を通した育児が必要です。
専門書ならば専門家が執筆しているため、情報が正確です。
また、名前を公表している分、曖昧な情報を記載する可能性は低いと考えられます。
信頼できる情報が多いのです。
他にも、発達障害児を育てる親御さんが発達障害についての勉強をし、専門書を書いている例もあります。
そういった本を活用すれば、読んだそばから実践し、効果を実感していくこともできるようになります。
お子さんの生活の困難が解消されていくだけでなく、親御さんの育児に対する不安も軽減していくので、是非インターネットの情報だけを頼りにするのではなく、専門書を読んでみてくださいね。
発達障害児向けの育児法をとり入れる
お子さんの成長が遅いのではないかと不安になったら、健常児向けの育児書と発達障害児向けの育児書を数冊用意し、見比べながらお子さんに合わせた方法で一緒に成長していく方法が望ましいです。
そもそも、発達障害やグレーゾーンは強い個性と捉えられますので、発達障害児向けの育児法だから使えないと判断するのはよくありません。
どのような子にも通じる育児法であり、より丁寧な育児法を記載しているケースが多いため、そちらを参考にするほうがお子さんに伝わりやすいかもしれません。
保育園や幼稚園、学校での出来事を聞いても答えてくれない時
お子さんが保育園や幼稚園、学校での出来事を聞いても答えてくれない場合、親御さんの問いかけ方を変えるというのも1つの方法です。
発達障害児向けに開かれている親子のかかわり方指導では、「親御さんから根掘り葉掘り聞かずに、そばで顔を見て待つ」という方法をとることを勧められます。
そうすると、時間はかかるかもしれませんが、お子さんのほうから思い出した順に出来事を話してくれるのです。
お遊戯会の踊りを覚えられない時
学習発表会やお遊戯会の練習でパート毎に練習をする場合に、パート練習で行ったことを全体練習ではできなくなってしまう子もいます。
そのまま本番を迎えてしまうと、「うちの子だけ練習内容を理解していない」と不安になってしまい、「周りの子ができているのにどうして……」と感じることもありますよね。
発達障害児の中には、全体像を認識できない、見通しが立てられないという子もいます。
その子たちに向けた育児方法として、常に全体を捉えた物事の伝え方をするというものがあります。
部分部分での練習ではなく、お子さんと二人三脚で全体練習を行うことで、お子さんの混乱を解き練習通りに発表ができるようになりますよ。
このように、発達障害やグレーゾーンと診断されていないけれど、親御さんが感じている成長の遅さを改善するために、発達障害児に向けた育児法をとり入れることは有効なのです。
まとめ
発達障害やグレーゾーンであるかもしれないと周囲に言われたことがある親御さんは、あらゆる面で不安を感じてしまいますよね。
しかし、冷静に考えてみると、発達障害やグレーゾーンの子どもたちには集団生活の困難はあっても、得意分野もあるため、悲観することはありません。
また、子どもが精神的・身体的にどのように成長していくのか、正しい知識を身につけていれば、比較された際に不安にならずに済みます。
そして、お子さんのペースに合わせて丁寧な育児を心がけてみましょう。
その際には、健常児向けの育児書だけでなく、発達障害児向けの育児書も読んでみてください。
丁寧な育児方法が書かれていることが多いので非常に役立ちます。
インターネットで情報を収集するのも良いですが、じっくりと育児法を見つめ直すには専門書がおすすめです。
専門家が監修しているものは、名前を公表している分、曖昧な情報が少なく、正確な知識を身につけることができます。
また、実際に発達障害児を育て上げた人の本などもあり、「他の子どもたちはできているのに、自分の子どもはできない」と不安になる気持ちに深く共感できることもありますし、すぐに実践できるような例が書かれていることも多いです。
また、お子さんの実践しやすい指示の出し方なども書かれているので、お子さんの成功体験を積み重ねやすくなります。
親子二人三脚で1歩ずつ前に進んでいけるようになりますので、ぜひ専門書を読み比べて、活用してみてくださいね。
[📖参考にした書籍]
- そうだったのか!発達障害2こうすればできるモン/斗希典裟
- アスペルガー症候群の子育て200のヒント/ブレンダ・ボイド
- もしかして、うちの子、発達障害かも!?/岡田俊
- 発達障害の基礎知識/宮尾益知
- 親子の間のとり方/山田禎一
- 親の自信が子供を救う!/岡田秀樹
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