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知的障害を伴う自閉症もアスペルガー症候群も、同じ自閉症スペクトラム(連続体)の中にある、ということは、最初聞いた時にはイマイチピンとこないものでしたが、この本を読むと「見えないものを見える化=構造化」することで「できない」が「できる」にかわることがある、というのは、知的障害のあるなしにかかわらず同じなのだということがわかりました。
支援学校、支援級、就労、それぞれの場所でそれぞれの自閉症スペクトラムを持つ人が、自立して活動できるためのヒントが「構造化」なのです。
子どもたちの自立を願って日々関わっている親御さんにとって、子どもたちの「自分でできること」が増えてくれるのは嬉しいことですよね。
そのために効果的な「構造化」について、考え方、どのような手法なのかの解説のあとに、具体的な構造化の事例を、写真付きで解説しています。
物理的な構造化では、部屋のなかの机や家具の配置を工夫することで、宿題など毎日やらなくてはいけないことに集中して取り組める環境づくりができることが紹介されています。
家具の模様替えまでするとなるとなかなか難しいですが、我が家では引越しを機に、子どもたちが遊ぶ部屋での配置を背中合わせにして、相手が見えにくいようにしています。
こうすることでお互いの存在が刺激にならず、同じ部屋で過ごしていても喧嘩になることが各段に減りました。
時間的な構造化では、時間を追ってやるべきことを絵カードや文字カードで時系列に並べることによって、スケジュールを飛ばしたり、やり忘れたりすることが少なくなることがわかります。
朝の支度、寝る前にやることなど毎日だいたい同じ、やるべきことが決まっている時に使えますよね。
我が家では特に、寝起きがよくない次男に効果的でした。
朝の支度について「まだやっていないの?時間になっちゃうよ」と注意することで機嫌が悪くなってしまうことが多く、朝からお互いにいい気分ではなくなってしまうことがよくあったため、ホワイトボードにやるべきことを書いたマグネットシートを貼り、これだけやることがあるからね、と本人の前に置いたのです。
すると、自分でそれを見て、「これまだやっていない」「これはやった」「そろそろこれやらなくちゃ」と朝の支度を自分ですることができるようになったのです。
毎日のことでも、身につくまではこのように構造化することが必要なのだと実感しました。
活動の構造化では、いつまでやるべきなのか、いつ終わってよいのか、いつ終わるべきなのかを自分で分かるようにする構造化について紹介されています。
これについては、いつ終わるのかがわからない嫌な作業(例えば、漢字の書き取り1ページという宿題)には取り組むことすらできない二人を見ていたので、終わりがわかるというのは必要なことなのだとわかります。
我が家では学校と相談の上「10分間取り組む」という方法に変えてもらいました。
タイマーで10分をはかりながら取り組みます。
デジタルタイマーの数字は、目に見えて減っていきますし、それまでなら頑張ろうと我が子はせっせと漢字を書いていました。
事例では、作業を自立して行うためや、自分や他人の気持ちを知るため、また、性のことなど、色々な事柄について写真やイラストで解説されていて、参考になることがたくさんありました。
特に事例10は、特別支援学校での例ですが、朝の会、帰りの会のスケジュールや持ち物の指示の構造化が、支援級や普通クラスでも大変参考になると感じました。
また、行事のスケジュールがあるのが大変いいと思います。
親に配られるものと同じスケジュールだけで行事をこなしていくことが難しい次男には、私が色を付けたり書き足したりして持たせていますが、学校でもぜひ構造化を進めてほしいと感じました。
学校で子どもが困っている、先生もどうしたらいいかわからない、というときに、ぜひ参考にしてもらいたい本です。
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