発達障害の子の「会話力」を楽しく育てる本

発達障害の子の「会話力」を楽しく育てる本
【著者】藤野博監修
【amazon評価】★★★★★★★★

タイトルにもありますが、本書では発達障害の子どもの「会話力」を育てることに着目しています。

発達障害児は、ユニークなコミュニケーション・スタイルを持っています。

それを否定したり矯正したりするのではなく、大切に育てていくという視点がとてもステキだなと思いました。

本書は、4つのパートに分かれています。

1章では発達障害の子どもたちの会話の特徴を分かりやすく解説しています。

2章では話がかみ合わない理由、3章では子どもにあった「会話力」の育て方、4章では「療育」のスキルを家庭で生かす方法を説明しています。

この本の中で最初に「おもしろい!」と感じたのは、発達障害児たちの感じ方や考え方が実感できる工夫がされているところです。

自分の子どもが実際にモノをどんな風に見ているのか、どんな風に考えているのかという点を知るというのは大切なことだと改めて感じました。

そうすることで、どの方法を試していけばいいのかがはっきりわかってきて、「会話力」を育てる過程に楽しく取り組めるようになると思います。

本書の魅力は何といっても、子どもたちの会話スタイルを決して否定していないところです。

会話でつまずきやすいという特徴は似ているように見えても、どこでつまずいているのかは一人一人違うものです。

まずはそうしたつまずき方、すれ違い方の違いを理解することの大切さに気づかせてくれます。

単なるマニュアルではなく、その子どもの個性やユニークな脳の働きを生かしたコミュニケーション力の伸ばし方が説明されている点に、発達障害児たちへの愛を感じます。

ADHD、ASD、LDなどの特性によってつまずきやすいポイントや対応策を提示してくれているので、ある程度子どもの特性がわかっている場合、役立つヒントが得られそうです。

また、専門的な「療育」を分かりやすい言葉で説明して、家庭で応用する方法を教えている点も魅力的です。

会話の苦手な子どもには、つい話し方を教えたくなるものです。

でも、話し方のテクニックをただ教えたり、無理やり会話させようとしたりしても、うまくはいきません。

それで、この本の中では、子どもの理解力や観察力、思考力などの内面のチカラを楽しく育てる方法が、いくつも紹介されています。

実際に人の気持ちを読み取るのに役立つ体験をさせたり、遊び心のある課題に一緒に取り組んだりするアイデアはとてもよかったです。

ただ、この本の内容は幼児から小学生くらいの子どもさんに当てはまるように感じました。

対象年齢には注意が必要です。

中学生など思春期に入ってくると、つまずくポイントも対応策も異なってくると思います。

小さな子どもを持つ親御さんに特におすすめの一冊です。

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